多くの島の景気が傾く現状にも関わらず、イビザ島はそれを後ろ目に、波に乗っている。イビザのクラブSpace、そしてDC−10は集客動員数の記録を叩きだし、ホテルは殆ど満員御礼。International Music Summitまでも開催され、ユニークなイベントをやる場所としてイビザが注目の的になっているのだ。 UshuaiaはSpaceの目の前にあるホテルを改装し、マイアミスタイルの大人達の為の遊び場をオープン。Snakeyも島に新しいクラブを開店したのだ。

毎日がミュージックフェスティバルのようなイビザ島。特に夏の4ヶ月間は毎日がお祭り騒ぎだ。殆どのフェスティバル同様、音楽のジャンルもテンションが許す限り幅広い。　
そして、プロモーターたちも、クラブを人で一杯にする事を目的にしたブッキング方法ではなく、営利的目標を達成するとう事は考えながらも、音楽を第一にしたブッキングを行っている。そういった動きは一見分かりづらいが、シーズンの終わり頃には、６〜７もの新しいパーティーが、ウィークリーパーティーカレンダーに載る結果になっている。これは例えれば、ベルリンでは、6、7もの新しいWatergates のオープニングパーティが開かれるようなものである。

ポップ系ダンスプロデューサー David Guetta, Tiestoそして Swedish House Mafiaといったイビザを稼ぎ場所としている人たちだけでなく、ハウスミュージック界でもメジャーなアーティスト達にとって、イビザはグローバルに成功するという点で重要な場所になっている。例を挙げるとキリがないが、Ricardo Villalobos, Loco Dice, Marco Carolaや Lucianoといった CocoonのDJたちはイビザでのプレイをきっかけに世界的DJへと変化を遂げた存在の例だ。またこの夏、イビザではダブステップの人気も高まっている。

最近では、イビザでの決まり文句は「今よりも昔の方がよかった」というのではなく、ベルリンやロンドンのショーディッチタイプの人たちからの「イビザは想像とは違ったけれど、良い意味で期待を裏切ってくれた。とても大好きだ」という支持の声だった。こういった反応はオーディエンスだけではなく、所謂イビザに対して固定観念を持っていそうな‘アンダーグラウンド’系のDJ達からも同様だ。島、それとも音楽のせいなのか、イビザを訪れた人は、この島に夢中になってしまう。2011年も楽しみ満載なイベントばかりだ。

Ibiza 2011 preview by day:
Monday / Tuesday / Wednesday / Thursday / Friday / Saturday / Sunday

Monday

Are you Loco?

Cocoon at Amnesia
Circoloco at DC-10

まずはイビザ島に来たなら必ず行くべきパーティを開催している有名な箱、Cocoonから紹介したい。イベント自体には事細かな形式はない。彼らは、超大物DJたちをブッキングし、そこにおとぎ話のようなキラキラしたチリが撒っているようなコンセプトを持っている。Sven Vath、Ricardo Villalobos、Loco Dice、Richie Hawtinそして Marco Carolaといったテクノ界のモダン派軍団を中心としたラインナップに、イビザの人々が食いつかないわけがない。Kyle Hall、Stacey Pullen、Nina Kraviz、Seth Troxler、Zipそして Jamie Jonesなど様々なジャンルのアーティストが彼等を取り巻くサポーティングキャストとして出演し、イベント自体をより豪華なものにさせている。

また、DC-10オープン当初から始まった Circolocoは、世界中のパーティに出演するような人たちのキャリアを養育するパーティとして知られるようになり、"The New Era（新しい時代）"から "The Next Level（ネクストレベル）"へと変貌を遂げた。
Davide Squillaceと Matthias Tanzmannによる活気のある関係を始め、Dan Ghenaciaと Dyed Soundoromの家族的繋がりをはじめ、またCrosstownが与えた影響は今のイビザにとって大きい。 Damian Lazarus、Seth Troxler、Jamie Jonesそして Art DepartmentによってDC-10のサウンドは確立されていった。しかし多くの人から崇拝されているクラシックハウスやガレージパーティの原理が成功の鍵だと言えよう。マーケティングもなしに、イビザでパーティを行うのはとてもユニークなアプローチである。興味深い話では、テラスとスカスカのサウンドシステムの発展で、昨年には屋根にある Paradise Garage風のパネルもサウンドプルーフ搭載のパネルへと張り替えられ、コンクリートフロアーも音響の理由で覆われてしまったという。

コマーシャルなイメージの強いパーティでは、PrivilegeでのTiesto、Spaceでの Mark Knightと Roger Sanchez、そして Pachaでは Swedish House Mafiaがイビザ島のミュージックナイトでバトルを繰り広げる。

Tuesday

Can anyone match Carl Cox's success on Tuesday?

Carl Cox at Space
Tonight at Amnesia

2010年、最も印象的だったのがCarl Coxだ。彼のDJは色々な意味でとてもユニークで、‘レジェンド’と新しい世代から拝まれる存在とは違い、彼は間違いなく様々な世代のクラバーたちからの人気を断続的に保持している唯一のDJだろう。今年Spaceでは彼による10周年パーティが開催されるが、ラインナップも豪華なものになっている。Laurent Garnier (LBS show)、Green Velvet、John DigweedそしてAndyCも再登場し、Amnesiaから Richie Hawtin、そして Loco Diceがゲストに迎え入れられる。7月5日に開催予定で、Carl Cox本人による10時間セットも予定されている。

去年のすさまじい観客数をみれば、半分クレイジーでないとCarl Coxのイベントには行く気がしないとは思う。Amnesiaは今までの活動を全て取り払い、他のパーティとは違いラインナップに重点をおいた新しいイベントTonightを立ち上げ、注目している。Eric Prydzと Annie Macを中心に立ち上がったそのイベントは、概要からみてもゴチャ混ぜのイメージがあり、イビザでのイベントとしてはリスキーな部分もあるが、上手くいく可能性も否定できない。Prydzは彼のサウンドにも似たAdan Beyer、2000 and One、Sasha、そして Sebastian Legerなどをゲストとして呼ぶ一方、Annie Macは中の良い Skream、Benga、Katy B、Diplo、Tiga、Chase & StatusやBoys Noizeをゲストとして引き連れる予定だ。PrydzとAnnieのサウンドには大きなコントラストがあり、彼等の音を一緒にするのは難しい。このようなプレッシャーは、主にEric Prydzの肩に乗しかかっているようだ。このパーティーがどうなって行くのか楽しみである。

Wednesday

Guitars: The new sound of Ibiza

From Disco to Techno at DC-10
Ibiza Rocks at Ibiza Rocks Hotel
Channel Zoo at Gala Night
Be at Space
Subliminal Sessions at Pacha
Godskitchen and Gatecrasher at Privilege

様々なをジャンルをひとつにしたイベント From Disco to Techno は、2010年 DC-10で毎週水曜日に開催されていた。今年は7月を皮切りに行う予定で、テクノ界からは Martin Buttrich、DVS1、Visionquestそして Circoloco、レギュラーメンバーには Squillace、Tanzmannや Jamie Jonesがおり、ディスコそしてハウス界からも Tony Humphries、Danny Krivitそして Nicky Sianoが出演。 Humphriesは2010年に出演したが、彼のクラシックガレージサウンドはDC-10という場所に完璧にマッチしている。彼のパフォーマンスは昨年のハイライトとしても良く話題にでる程だ。

ビジネスライクなイベントという点で注目すべきは、マーケティング戦略されたイビザの‘商品’、Ibiza Rocksだ。 Chase & Status、Magnetic Man、Tinie Tempah、Professor Greenなどのポップ系アーティスト、そしてギターをベースにしたライブで有名なDizzee Rascalも参加予定だ。80年代にヒットしたバンドの1つMadnessは9月に出演予定。

Zoo Project のオフショット、Channel Zooはレーベルによるショーケースに焦点を当てており、2010年には Wolf + Lamb、20:20 Visionそして Area Remoteを招いた。詳細が決まっているのは、 SpaceでのArmin Van Buuren、Pachaでの Erick Morillo、そしてGodskitchen and Gatecrasherの再公演がPrivilegeで予定されている。

Thursday

The Asian-themed Kehakuma moves to Thursday

Kehakuma at Space
Monza at Sankeys Ibiza
Various events at Ushuaéa Ibiza Beach Hotel
Cream at Amnesia
F*** Me I'm Famous at Pacha

KehakumaはSpaceでの代表的なハウス系パーティーへと急速に成長していった。2011年は、Booka Shade やアンダーグラウンド界の若いアーティストたちを招聘するなど、オーディエンスがあまりの激しさに、挙げ句の果てに脱いでしまう程のヘビーで熱いパーティを予定している。パーティの主催者でもあるNick Curlyは長い期間を通してアーティストのサポートもしている。Seth Troxler、Jamie Jones、Radio Slave、Maya Jane Coles、Johnny Dそして Christian Burkhadtはそんなアーティストの中の一人だ。つまり、イビザ念願のサウンドとDJなんだ。

そして間違いなくイビザの人達のお気に入りパーティー Monzaは、Playa D'en Bossa でのSankeyによる主要なパーティーとして人気から成功への道を目指している。Paco Osuna、Nima Gorji、Masomenosそして Manu-Lの他に、ゲストとして CircolocoのDJ達や、Closing Partyの定番として Ricardo VIllalobosが招かれる予定だ。これから先どうなるか分からないパーティだけに、今年の夏の彼等は必見だ。

木曜日はUshuaiaにとって一番盛り上がる日。 Lucianoと Cadenzaによる隔週レジデンス。彼等はSashaのパーティーNever Say Neverとのコラボをする予定であり、2010年は Cassyや Damian Lazarusをフィーチャーして盛況に終わった。

Friday

Pete Tong comes home to Pacha in 2011

All Gone Pete Tong at Pacha
Come Together at Space
I Want My MTV at Amnesia
Pandemonium at DC-10

このような事がイビザのクラブシーンの外観だ。シーズンの終わりには、月曜日の対抗馬としてフライデーナイトが白熱する。 Pete Tongが以前のホームでもあったPachaで、有名どころのDJを招待する。Stacey PullenはFatboy Slimファンに必見だ。 Derrick Carter、Paul Kalkbrenner、Matthias Tanzmannそして Laurent GarnierのAll Gone Pete Tongは最も面白いイベントになりそうである。

Pete Tongのこのパーティは、木曜日の戦場から移動した、Spaceで開催される Come Togetherをゾッとさせた。MTVがイビザに再上陸し、Amnesiaで7月初めから週一でパーティをオープンさせるおかげでもあるけど。Come Together には2011年、De La Soul、Chase & Status、Faithless、Magnetic Man、Boys Noize、Mark Ronsonや Tinie Tempahといったアーティストが招待される。MTV側も Snoop Dogg、Plastikman、Duran Duran そして Primal Screamと前例のないショーを持っており、 I Want My MTVもまた Marco Carola、Magda、Layo & Bushwhacka!、James Murphy (LCD Soundsystem)、Beardymanや Nina Kravizに加えて大物DJをフィーチャー予定だ。

クラブに特化した夜といえば、 DC-10で開催される Tania Vulcanoの音楽に忠実なパーティ Pandemoniumで、2番目に盛り上がるイベントとしてその存在を確立している。Cassy, DJ Qu, Art Department, Kerri Chandler, Willie Grafがこのイベントの代表的出演者だ。

Saturday

The Zoo Project once again takes advantage of a slow day

The Zoo Project at Gala Night
Various events at Ibiza Underground
Matinee at Amnesia
Cafe Ole at Space
Hed Kandi at Es Paradis
Defected at Pacha

イビザでも一番ゆっくりしているのが土曜日。多くのDJ達はイビザの外に行ってしまうため、様々な工夫をしないといけないのだ。 The Zoo Projectはそういった欠点をプラスに変えた一つの例と言ってよい。ユニークな手法を使いオーディエンスにエレクトロニックミュージックを提供し、ここ数年間で最もタイトなグループへと確立していった。毎週一人のヘッドラインゲストを呼ぶ彼等のイベントには Ray Okpara、Monika Kruse、Hectorそして Catz 'N Dogzなどがよく出演している。

島の中心San Rafaelに位置するクラブ兼バーUndergroundについても話しておこう。良質なサウンドを提供するUndergroundでは、テラス付きのバーでありながらハウスパーティのような小さなクラブイベントが出来るスペースがあり、土曜日が一番賑わっているという。DJ Sneakや Alex Cellerも来た事があり、Nima Gorjiがブッキングの鍵を握っている。

土曜日には他に、バリエーションの富んだパーティーが勢揃いしている。ゲイのMatinée、シンプルなCafe Olé、気取ったHed Kandiなどがあるが、PachaでのDefectedが個人的には唯一本当のハウスミュージックが聴ける場所だと思っている。

Sunday

Last year's biggest success story, Luciano, returns to Pacha

We Love at Space
Cadenza at Pacha
Privilege Live! at Privilege

皮肉を込めた宣伝‘世界で一番のショー’でも知られているWe Loveは、島の中で最も前衛的な草分け的パーティーと言えよう。 Space "Big Top"にある6つのアリーナは、満足しない人などいないくらい盛り上がっている。 Fatboy Slim、2 Many DJs、James Zabiela、Joris Voorn そして Groove Armadaが大部分の聴衆を盛り上げる中、 Carl Craig、Derrick May、Octave One そしてJeff Millsがデトロイト旋風をイビザに巻き上げる。 Caribou、Pearson Sound、Lindstromそして Appleblimなどもゲストとして呼ばれているが、 We Loveはイビザで注目されていないようなアーティストも多く招聘しているのだ。言い出したらキリが無いのだが、 Laurent GarnierのLBSや Slam, Tensnake, Claude VonStroke, Aphex Twin、そしてRAによるPartyでもあるAme, Henrik Schwarz そして Dixonをホストにした Innervisions Showcaseも7月24日に開催される。

2010年に最も成功を遂げたと言えるCadenzaとLucianoは、Vagabundosをテーマにした夜と良質なエレクトロニックミュージックをお届け。LucianoとCadenzaにばかり注目が行ってしまうところだが、Cadenzaはそれにも関わらずフレッシュなブッキングを展開している。レーベルから出ているアーティスト全員が多くフィーチャーされており、2010年にはCarl Craig、Stimming、Moodymannや DJ Kozeが参加した。2011年にはニューフェイスとして Larry Heard、Stacey PullenそしてIsoleeに注目がいっている。

詳細がまだ未定なものが多いのは Privilege Live!だ。名前の通り、ライブスタイルのイベントへと変化する予定であるらしい。Infected MushroomとJamiroquaiが出演予定だ。