トップに上り詰め成功を収めた後、一体何が自分に起こるのだろうか？デトロイトのClaude Youngにとってその答えは倦怠だった。デトロイト・テクノの正当な担い手DJ/プロデユーサーとして、彼はすべての有名フェスでプレイをし十分に快適な生活を送れるだけの金を稼いでいた。しかし00年代の初め、彼はそういった日常にウンザリし、基本的に活動を止めてしまう。いちばん最近のレコードリリースが存在の証になってしまうようなダンスミュージックの世界に於いて、2005年の自身名義でのリリースを最後に、彼の存在感はどんどんぼやけていくのだった。

彼がTakashi Nakajimaとコラボレートした最新プロジェクトDifferent Worldによって脚光を浴びていないことは何の助けにもなっていないが。一方でClaude Youngは決して自分に脚光を浴びせたいと望んだことも無かったのだ。彼は、あまねく賞賛を受けた今年のMovementでのパフォーマンスについてさえも「いつも通りの、少し雑な感じのセット」と軽く流すのだった。更に突っ込んで聞いてみても「多分たまたま選んだ旋律が共鳴を呼び起こしたのかな？どうしてあんなに激しく盛り上がったのかは分からない、結果的に嬉しいけどそうしようと思ってしたわけではないんだ」と考えを述べる。

私たちは、この日多くの人々がDJ Claude Youngの素晴らしさを再び思い起こしたのではないかと見ている。もしマネージメントが付いていたらならば、決してやらないよう強く忠告するような類のことを再三に渡って彼はやってきた（現に彼は殆どのブッキングをオフィシャルウェブサイトを通して自分自身でこなしていることはどう見ても明らかだ）。しかしだからこそ、彼は彼の思うようにやってこれた。他に対し異を唱えることはビジネスにとっては良くないだろうが、アートにとっては重要なことだ。

多くの人々はあなたがどういった経歴を持っているのか知らないでしょうね？

ほとんどみんな知らないと思う。そういったみんなが好きとか嫌いとかいうようなこともこのビジネスのうちだとよく分かっている。

あまり多くのインタビューを読んだわけではないんですが、あなたはそう思っているんだなと気付きました。

音楽の部分は楽しい。プレイすることはほんと楽しいよ。だけど旅するのは楽しめなかったし、有名人たちのくだらない四方山話しも好きじゃなかった。なかには好きな人間も少しはいるけど、彼らの殆どは自分自身をプレゼンしきれている人間だよ。でもその他の多くはクソみたいな人間で、正直言ってまったく相手にならないよ。僕はそういったくだらないことに我慢ならないたちだから、そんな奴には唾を吐きかけるし、実際何度かそうしたし、だからといって気にしてこなかった。自分の時間なんだから自分流に過ごした方がいい。それで得したことも無いけど、自由だし、やりたいようにやるんだ。

　2004年に読んだんですが、あなたは既に自分が有名人になっていたことを察していて、その結果とても窮屈に感じていた。今はどう感じていますか？

　そう、それは2004年のことで、実際に僕は活動を止めた。ご破算にして、エージェントや全てのくだらないことにオサラバするって言ってやったよ。もうウンザリだった。エージェントに属してやっていたことはまあ良くあるようなことだったし、凄く上手くやっていたし、仕事も山ほどあった。だけどもう全くパーティーを楽しめないところまで来ていたし、客はハードテクノしか欲してないって言うんだ。

　最初ヨーロッパに移った時は楽しかったけど気が付いたら「この飛行機には乗りたくないとか、このパーティーではプレイしたくないとか、やらせのセットはやりたくない」みたいな事を言ってたよ。それまでの15年で初めてDJを楽しいと思えてないことに、ある朝起きてふと気付いた。だから止めたんだ。経済的にもだし、それまでそれ以外の世界に出た事もなかったからきつかったよ。なんか違うものに変身でもしたみたいな感じなんだけど、きつかったね。

あなたのキャリアはラジオから始まったんですよね？

ああ、父親がWJLBというラジオ局の創設を手伝った人間なんだ。それまでJLBには出た事無くてWHYTって言うもっとポップなラジオ局に出たことはあったんだけどね。Mark Jacksonていうほんとに素晴らしい番組ディレクターがいて、父の知り合いだったんだ。そんな素振りなんて一切しないから、僕達が親子だなんて誰も気付かなかっただろうね。それでそこに紛れ込んでマーケットリサーチをしながらインターンとして働いていたんだ。ある日父に呼ばれて彼のオフィスに行ってみると「２人ほどショウを辞める人間がいるんだけど、やってみたいか？」って僕に聞くんだ。それでオーディションがあって僕が一人に選ばれたってわけなんだよ。

それよりもだいぶ以前からDJはやっていたんですか？

うん、ちょこちょことはやっていたよ。けれど初めて自分のターンテーブルを手に入れたのも、その後ロンドンに引っ越してからのことなんだ。テクニクスのSLB5という小さなレコードプレーヤーとカセットデッキを持っていて、レコードを買ってはテープに録音して、それをレコードとミックスしたものだよ。Radio Shackっていうちゃちなミキサーを通してね。僕はそうして自分のスキルを磨いたんだ。クラブでプレイする時は実地訓練。その後ラジオで仕事するようになってから初めてオープンリールデッキを触ったんだ。

あなたの始めての大きな仕事にKevin Saundersonのエディットがありますが、彼とはどのように知り合ったのですか？ラジオの仕事を通じてですか？

　基本的にはそういうことになるね。僕は当時ラジオのミックスショウでたくさんのローカルアーティストの音源をプレイしていたんだけれど、ディレクターのお気には召さなかったみたいでね、プレイリストをアップしても殆どのトラックに曲名すらなかったからね。僕の2時間番組の欄だけリストが空白なんてことがよくあったよ。ある日「もっとコマーシャルなものをプレイしろ」ってメモが回ってきた。ボスが最初の１時間は何でも好きなものをかけていいけれど、残りの１時間はコマーシャルなものをかけろって言うんだ。

とにかくそんな感じで、ある日Metraplexを恐る恐る訪ねたんだ。そこにはShakeがいてね。「Claude Youngっていうんだけど、僕もプロモ盤を送るリストに加えてくれないか？」って聞いたんだ。そしたら彼が「Young？親父さんのこと知ってるぞ！」って言うんだ。彼とはその時からずっといい友達だよ。
ShakeがKevinを紹介してくれたんだ。最初の2つは彼のWarner Brothersでの仕事のエディットだった。Kevinが「お前エディットをたくさん作ってるんだって？俺のもやってみてほしいんだけど」って言うんだ。それで彼のKMSのスタジオに行ってラジオ（用の）エディットを作ったんだ。そしたら彼はギャラも支払ってくれた。それが今の質問のやつさ。その当時は3～4人の人たちが僕を人間として成長させてくれたんだ。それがKevin、Richie (Hawtin)、Shake、Dan(iel) Bellだよ。とくにDanとShakeとはとても親密な関係だった。

A sampling of Young's early 12-inches for 7th City, Djax-Up-Beats and Frictional.

Danとはもともとどういう風に知り会ったんですか？

ラジオだったと思う。そのあとにRecord Timeっていう地元のレコード屋でも一緒に働いたんだ。Buy-Rite 7 MileにはKenny Dixon、Sherard Ingram (注：DrexiyaのDJ Stingray)、Blake Baxterもいたよ。僕の家はそのすぐ近くだった。そこの近所にはもともとのURのオフィスがあって、Mike Banksの家の側だった。レコード屋に行くにはMikeのお母さんの所を歩いて行かなきゃならなかったんだ。本当の出だしの頃、僕らはみんなそこにいたんだよ。
　
その頃僕は数多くの地元の人間に会った。いつもたくさんのローカルな作品をプレイしていて、他にはそんな人間はいなかったんだ。みんな僕に電話をかけてくるようになって、ラジオ局に顔を出してプロモをくれて、そこから始まっていくのさ。DanとShakeと僕とはいつも兄弟みたいだった。ロンドンに引っ越してからはJames Ruskinととても仲が良かったよ。グラズゴーに行ってからはWarpで働いてるJackmasterとCallum Mortonと出会った。彼らのことを未成年とか呼んだりはしなかったけれど、でもまだ15歳と16歳でグラズゴーのRub-a-Dubにたむろってたんだ。僕は近所の凄くナイスなアパートメントに住んでいたからみんなよく遊びに来ては溜まっていたんだ。彼らはうちにほんと良く遊びに来て、僕はよくブースで遊ばせてあげてた、ほんとに楽しい時間だったよ。

一人のDJとして、デトロイトで育ったということから何を学びましたか？

デトロイト、ベルリン、ニューヨーク、シカゴなどなどの都市では、君はリアルにいい感じでなければならないと思う。マーケッタータイプのDJではいられないし、そうあってはならないんだ。Derric MayやKevin Saunderson、Jeff Millsみたいに自分を売り出そうなんて土台無理だよ。何かしらのスキルとともに進んでいくしかないんだ。僕もそのことを常に心掛けているよ。競い合うという発想は、どんな場所に居ても自分にとっては違うものだと思うことにしてる。

あなたのプレイに関してデトロイトとは何なんだと思います？

君らがChris LiebingをフィーチャーしてやったRA Exchangeから、僕が何かをピックアップするとすれば、ドイツ人、とりわけベルリンのやつがずっといつも自分の延長セットをプレイできる環境でやってこれてラッキーだなってことだろ？ドイツのDJ達は仕事としてDJをやっていける状況を作り出したし、だから更に自分を進化させていく場もあるんだ。でもデトロイトの状況は違う。「DJが12人いて、みんな持ち時間は45分だから詰め詰めだよっ」って感じなんだ。

45分で人に何か印象を残せってことなんですか？

みんな未だにJeff Millsばりの魔法使いみたいなことをやらないとのし上がっていけないんだ。最初は僕もマジでトライしてたよ、でもいまはデトロイトとジャーマンをミックスしたスタイルになっている。いまでも無心になってDJはするよ。ジャズみたいな感じで、リアルに自然発生的にね。数曲はできるけど大半の場合はただガチャガチャになるけれどね。でもそんな感じにトライしてみる事は凄く面白いんだよ。それが決まりきったセットを決まったようにやるだけなら僕もできるし、お客も気に入るかも知れないけど、僕はめちゃめちゃ退屈だろうしそれは明らかな事なんだよ。

Different Worldのプロジェクトについて教えてください。

Takasi Nakajimaとやっている僕のプロジェクトだよ。共生してやっている。彼は以前DMCにも出場していて、僕と音楽のバックグラウンドが似ているんだ。ファンク、ソウル、ヒップホップ、アブストラクト、そしてテクノとね。初めて彼のオフィスを訪ねたとき（彼は日中はウェブデザイナーなんだけど）、同じレコードをたくさん持っていることに気づいたんだ。彼もそうだった。僕の全てのレコードは持ってないけどね。ある日一緒にミックスを録って見ようということになってPCをCDプレイヤーにして、CDとレコードとPCでやってみた。なにをするかは決めずに録音ボタンだけ押して記録してみたんだ。2人ともとにかく楽しんだ。ずっと素晴らしかったんだ、お互い思っていた以上にね（笑）。そこには何かしら感じるものがあった。

それ以前にあなたがしたことと何か違いはあったのですか？それまでに経験した事の無い、あなた達が夢中になった事は何だったのでしょう？

　たくさんのサウンドデザインとストリングスだね。僕らの友人の間では、誰かが僕の所に来て何かをするのは、テクニカルサポートかサウンドデザインの為か、何か特定の音が欲しくて探している時だったんだ。僕はより多くの時間をサウンドデザインに費やすようになって。Takashiはいつもドラムをやってる。彼はプログラムの鬼でいつでも物凄くクールなのを考え付くから、僕は家に帰ってもっと沢山のことをやらなきゃならないんだ。僕らはお互いにパーツを交換してるだけなんだけれど、それらは僕にとって、空気感であったりストリングスであったり様々な種類のものなんだ。

ライブはけっこうやっているのですか？

さほどでもないよ。でもそうしたいとは思っている。日本以外の場所でもっとやりたいと思っているんだ。皮肉な事に、日本ではあまり活動していないんだ。日本はとても奇妙なところなんだ。15年くらい前はとても素晴らしいところだった。とてもユニークな場所だったんだ。でも今は基本的に東版のヨーロッパだ。ヨーロッパで見ることが出来るような連中ばかりが不定期にやって来るんだ。

違うインタビューであなたは、日本にはローカルのアーティストを育て上げる基本構造が無いとおっしゃってましたが、あなたの意見は今も変わらないでしょうか？

　まったく変わらないよ。よくない傾向だ。日本がかなり長い間アジアのトップを走り続けてきたのに、今は中国にその座を脅かされていることは非常に興味深いよ。中国は未だに足元もおぼつかないようなところがあって、厄介な問題や出来事もある。でもそれら全てに収拾がついたら、中国はホットな場所になるだろうし、その一方で日本は何もユニークなところが無いからさらに凹むだろうね。もし僕がヨーロッパやアメリカなんかにいて、独自のユニークな日本らしさを捜し求めていたとしても、それを見つけるのは非常に困難だよ。増してやメージャーな所では無理だね、メジャーな所は大概観光ツアーとタイアップしてるんだ。クラブに人を入れなきゃならないからね。

“アティテュードがどうこうなんてのも僕にとっては興ざめするだけだよ。「おいおい、大金を儲けてる訳じゃないんだから、自分のことくらい整理をつけて置きなさいよ」って感じだね。”

あなたは日本に対して違った視点を持っていると思います。そこにやってきて何日もの素晴らしい時を過ごし、そして帰っていくだけの誰かに対して、立場を異にしながらそこに住んでいる。

そう、日本は世界中で最も手厚いもてなしを受けられる場所だし、だからそこを離れる際には「素晴らしい時間を過ごしたよ」と言うことになるようなところなんだ。去年James Ruskinとランチをした時、まあ同じようなことなんだけれど、日本はいいんだけれど、もっと頻繁に来れたらなって言うんだ。それでいつも「何でお前は日本でプレイしてないんだ？」って言うんだ。で結局、それはきちんとした人間に話の出来る、プロモーターに恵まれるかどうか次第だなってことになる。僕は一緒に何かショウをやるにしてもとても絡みやすい人間だと思うんだけれど、彼らは僕に近づいて来ないんだよ。それでいざ連絡があったときには、彼らはよく事情を分かってから来てるから、僕がわざわざ出て行って彼らのために懸命に働くことになる。残りの連中はどうかって？知るかって感じだよ。興味ないね。

　僕のキャリアを通してずっと、何かを求め僕を発見してくれるような人がいつもいた。願わくば、蓋を開けてみたら、このシーンを知るには知っておかなければならないような人物になっていたらいいとは思う。すでにだいぶ昔のことだけれど、僕は父親のおかげで沢山の有名人に囲まれて育ったんだ。13歳のときPrinceを見に行ったときもバックステージにいた。うちの父親は有名人と撮った写真をずっと取っておいていて、Quincy JonesやIsaac Hayes、Barry Whiteとも一緒に写っていたっけ。僕はそういったタイプの人間の中で育ったんだ。だからこの業界で誰かが真剣に何かをやっていれば、僕もそれを真摯に受け止める。でもそれがハイプなことだったら見て見ぬふりをするよ。だってそいつらが真剣にやっている人間に優る訳が無いから。アティテュードがどうこうなんてのも僕にとっては興ざめするだけだよ。「おいおい、大金を儲けてる訳じゃないんだから、自分のことくらい整理をつけて置きなさいよ」って感じだね。

それは先ほどあなたが言ったようなことに通じますね。あなたはフェスティバルで仕事をするような環境になっていくと共に何かを見失っていった。

この期に及んでフェスティバルDJをやりたいとは思わないだろね。経済的にはとても素晴らしいよ、でもきっとかけたくも無いレコードをかけないといけないんだ。ぼくはむしろバックルームでDJするほうがいいし、自由にしたいんだ。君はとてもたくさんのDJに会うだろう、凄い大物たちに、彼らは一種のキャラクターだよね。僕にそういったキャラ性を求められても無理、僕はそういったところからは程遠いんだ。Derric Mayを見てごらんよ、彼の振る舞いの中には皮肉っぽいところがあるだろう？彼はアーティストだ。僕はそういうタイプじゃない。テクノロジーおたくが音楽をやっているんだ。それが僕なんだよ。