南半球からはたった2つのフェスしか紹介できないが、南半球はこれから暖かな気候になっていくにつれてベストなシーズンを迎えようとしている。そのほかにも、私たちが世界中から厳選した良質なフェスを紹介する。

10. Lake of Stars
September 30 - October 2
Nkopola Lodge
マンゴチマンゴチ, マラウイ

今年8回目の開催となるLake of Starsでは、開催地となるマラウィ湖畔に70を超える出演者をはじめ、音楽以外にも劇場やスポークン・ワードやダンスなど多彩なプログラムを用意し3000人以上のクラウドを迎える。今年のヘッドライナーはFoalsと南アフリカのグループFreshlygroundと、近年にも例を見ないほど幅広いラインナップ。このフェスの主催者Will Jameson氏はかつてリヴァプールの雑食パーティーCibuku Shake Shakeに所属していたこともあり、その幅広い音楽的指向（クウェートの民族音楽からインディー・バンド、レゲエ、ダブステップまで）はこのLake of Starsのポリシーにも反映されており、また地元マラウィをはじめアフリカのアーティストたちも積極的にピックアップし参加アーティストは非常に国際色豊か。

RA pick:マラウィの地元DJ、Sonye。地元シーンでは圧倒的な人気を誇る

09. Treasure Island Festival
October 15 - October 16
Treasure Island
サンフランシスコ, アメリカ
Day 1 | Day 2

サンフランシスコのゴールデン・ゲート・ブリッジの端に作られた「人工的に作られた睡蓮の葉」ことトレジャー・アイランドで行われ、今年5回目を迎えるこのフェスティバル。パーティーを待ちきれないというインディー・ファンたちのために、9月には前夜祭的にJens Lekmanのライブがメインランドで行われる予定。このJens Lekmanによるソロステージはこのフェスティバルの音楽的指向を如実に表していて、Beach HouseやSteven Malkmus、Warpaint、Explosions In The Skyといったインディー・ポップ界の著名バンド／アーティストが出演者に名前を連ねている。例年のように、エレクトロニック寄りのアクトはフェスの初日に集中していて、オーストラリアの変態ポップ・アクトEmpire Of The Sunをはじめ同じくオーストラリアのCut Copy、Chromeo、レトロサウンドで人気のYACHTなどがこの日出演予定。また、UKの地下シーンのヴァイブそのままにAloe BlaccやDizzee Rascalもライブを繰り広げる。Friendly FiresやFlying Lotus、そしてBattlesといったアクトの並びは内省的なギター・バンドとお祭り騒ぎなパーティー・サウンドが好対照になっていて興味深いところ。

RA pick:Buraka Som Sistemaの先進的なクドゥロ・サウンドは一見の価値あり。

08. Iceland Airwaves
October 12 - October 16
Various Venues
レイキャヴィーク, アイスランド

Iceland Airwavesはもともとインディー・ロックを主体としたフェスだが、RAでもActive ChildやBeach House、Glasser、K-X-Pといったバンドがよく登場しているように、ここ数年インディー・ロックとエレクトロニック・ミュージックの距離は縮まっている。アイスランドはほぼ地元といってもいいGusGusやSBTRKTはポップの良心というべきステージを5日間にもわたり繰り広げる。Dustin O'HalloranやJohann Johannssonは鳥肌を生じさせるほどの静寂さに満ちた荘厳なステージを展開する。そしてこのフェスが開催されるアイスランドの自然の美しさも当然特筆すべきものだ。小さくも驚きに満ちた街レイキャビクはもちろんだが、そこから離れた田舎の風景の美しさも目を見張るものがある。そう、仮にあなたがフェスの滞在中バーや小さなヴェニューを中心に過ごすとしても。

RA pick: アイスランドの空港近くにある天然温泉Blue Lagoomもぜひ訪れてほしいスポットのひとつ。

07. Parklife
September 23 - October 3
Various Venues
Various Cities, オーストラリア
Melbourne | Perth | Brisbane | Sydney | Adelaide

オーストラリアで最大規模を誇るフェス、Parklifeの登場だ。このフェスの趣旨はここ数年不動のもので、とにかく多彩な出演者を招いて、ほとんど無作為に並べてオーストラリア各都市の会場に出演させようというコンセプトだ。メルボルンでスタートし、アデレードで幕を閉じるこのフェスはその間オーストラリア国内の様々な都市を巡る。今年のラインナップを眺めていると、やはりダブステップ勢の出演が例年以上に増えていて、Magnetic ManやJoker、Katy Bといったメンツが出演する予定だ。エレクトロ人気が続くオーストラリアでは、DigitalismやSebastiAn、MSTRKRFTといったアクトも依然衰えぬ人気を誇る。重苦しいベースよりもメロディを好む向きにはTensnakeやLittle Dragonがうってつけだ。今年もこのフェスはヴェテランプロモーター集団Fuzzyによってプロデュースされる。

RA pick:テクノやエレクトロの枠を飛び越えるパフォーマンスを見せるSimian Mobile Disco。

06. Time Warp Milan
October 1
Fiera Milano
ミラン, イタリア

誰がこんな凄い場所でTime Warpが開催されるなんて想像できただろう？ある意味ではこれほどふさわしい場所もないかも知れない。マンハイムでスタートしたこのビッグイベントのクルーは、イタリアでの初開催となる今回のTime Warpを345,000㎡の収容力を誇るミラノのFiera Exhibition Hallで行うことを決めた。ここイタリアでTime Warpを開催するというアイデアはこの近年彼らがイベントを開催してきた国（オランダ、オーストリア、チェコなど）を考えれば至極自然な流れかもしれない。イタリア国内でも最大級となるこのフェスには、Sven VathやRichie Hawtin、Loco Dice、MagdaといったビッグネームDJたちがラインナップに名を連ねる。アリーナクラスのフェスといえば、トリノでのMovementなどの成功例もあるので、今回のTime Warpでもきっと大勢のクラウドが押し寄せることだろう。Movementの母体パーティたるTime Warpには今回Carl CoxやChris Liebing、Ellen Allienなども出演する。イタリアでの初開催となる今回のTime Warpはきわめてシンプルな理論ー「大きいことはいいことだ」—を証明する一大イベントとなるはずだ。

RA pick:すでにレポートされている通り、今年のイビザでも絶好調だったというCarl Cox。

05. VIA
October 05 - October 09
Various Venues
ピッツバーグ, アメリア
Day 1 | Day 2 | Day 3 | Day 4 | Day 5

ピッツバーグの市内全域で4日間にわたって繰り広げられるオーディオ／ビジュアル・アートの一大フェスティバルVIAは今年2回目の開催を迎える。トラディショナルな会場でのイベントと共に、市内でも最も開発が進む区域であるEast Liberty地区に特設ステージを設置し2日間のフェスが展開される。そのヴァラエティ豊かなラインナップには、UKのFour Tet、Trans Am、Battles（映像を組み合わせたライブを披露する予定）、そしてURのMad Mikeが率いるInterstellar Fugitivesなどが居並ぶ。その他、Toy Selectah、Falty DL、Walls、昨年に続いての出演となるDam-Funk、Tim Sweeney、Rvng Intl.のPink SkullやBlondesもラインナップされている。

RA pick:Sutekh、Dozzy、Nuelらによるアンビエント・セットはフェスの週末の終盤を見事に演出してくれるだろう。

04. Elevate
October 20 - October 26
Various Venues
グラーツ, オーストリア

あまり注目される機会こそ多くはないものの、オーストリアのグラーツ（とりわけその近郊の丘にある名物クラブDom im Berg）は非常にしっかりとしたエレクトロニック・ミュージックの土壌を有している。5月に開催されているSpring Festivalではエレクトロニカと先端アートを融合したプログラムを毎年展開しているのに対し、このElevateフェスティバルはよりダンス寄りで、進歩的な社会的／政治的両面のメッセージを打ち出している。このフェスでは毎年ごとにテーマが掲げられていて、今年は「21世紀を駆け上る」というどこか意味深なテーマに基づいて様々なパネルディスカッション、フィルムプレゼンテーションなどのプログラムが用意されている。ラインナップに関しては、まだ第一弾のアナウンスがされたばかりなのでこれが全てではないのだが、現在のところKyle Hallのような若手注目株をはじめSaul Williams、Space Dimension Controller、Pearson Sound、そしてMorphosis、Mark Eといったヴェテラン勢、DMZのLoefah、Boddikaなど注目のラインナップがすでに発表されている。

RA pick:Planningtorockのパフォーマンス・アート。

03. Movement Torino
October 31
Palaisozaki
トリノ, イタリア

デトロイトで行われているMovementフェスのトリノ版も今回で3回目の開催となるが、すでにヨーロッパでも一、二を争うメガ・レイブとしての評価を確立している。もしもこの「メガ・レイブ」という表現が大げさだと感じるのなら、まず会場となるトリノのPala Olimpico Isozakiを見てほしい。これを見たら「メガ」以外の形容詞を当てはめるのは難しいとわかるはずだ。Movement Torinoは今年もこのコロシアム会場を一晩借り切ってパーティーを行う。もちろん地元DJを中心としたプレ・パーティーも開催されているので、外から訪れた人でも自然とフィナーレへ向けた盛り上がりに溶け込んでいくことが出来るだろう。これまでにアナウンスされているラインナップでは、まず木曜の前夜祭パーティーにSpace Dimension ControllerとKyle Hallが出演する。土曜に行われるCirco Loco主催のパーティーではStacey Pullen、DJ W!ld、Tania Vulcano、Davide Squilaceといった面々が盛り上げる。翌日がイタリアの祝日となる月曜は数千人のクラウドがPala Olimpicoに押し寄せ、Carl Craigの69名義でのライブセット、Green Velvet、Laurent GarnierのL.B.S.、Visionquest、Derrick May、Damian Lazarus、John Digweed、Steffi、Cassyといったビッグネームたちのパフォーマンスに酔いしれることだろう。イタリア自動車産業の中心であるトリノは驚くほどエレガントな都市であり、こうした巨大レイブに行くことを検討するならまちがいなくMovementはその候補リストのトップにくるべきフェスだ。

RA pick:ワイドスクリーン級のスケールを誇るDigweedのプレイはこうした巨大レイブでこそ本領を発揮する。

02. Unsound
October 09 - October 16
Various Venues
クラクフ, ポーランド

ポーランドのクラコウは普段それほど脚光を浴びる街ではなかったが、2003年以降ここでUnsoundフェスが開催されるようになって以来、世界中のエレクトロニック・ミュージック・シーンから選りすぐりのラインナップを集めるこのフェスのおかげでにわかに注目を浴びるようになった。たとえばBen Frostというアーティストの名前を聞くことがあっても、そのライブを見ることが出来る機会はほとんど稀だといってもいい。だが、彼が28ピースのCracoiva交響楽団を率いてライブを披露したのが昨年のUnsoundフェスでのことだった。こうしたUnsound独自のアプローチは今年のラインナップにももちろん反映されている。やはり話題はRicardo VillalobosがMax LouderbauerとChristian Wallumrodをパートナーに展開するRe:ECMライブセットだろう。また、電子音楽界の大御所、Morton Subotnickもブックラー・シンセを用いた1960年代の作品をライブで披露する運びになっている。もちろん、よりダンスにベクトルを振ったラインナップも非常に渋くマニアックなアクトが揃っている。これまでアナウンスされたところではKassem MosseやKink、Morphosis、Joy Orbisonなどが名を連ねている。

RA pick:Tin Manによる、静かに燃えるようなアシッド・サウンド。

01. Amsterdam Dance Event
October 19 - October 23
Various Venues
アムステルダム, オランダ

エレクトロニック・ミュージックを中心としたフェスではよくパネル・ディスカッションなどのプログラムが併催されているのだが、こういう時には必ず根本的な問題が持ち上がる。要するに、これだけ素晴らしいパーティーをやっている最中なのに、誰がわざわざ早起きしてパネル・ディスカッションなんかに参加するんだ？という意見だ。しかし、このAmsterdam Dance Eventはそうした懸念を一蹴する。いくら夜のパーティーが供給過剰な状態にあろうと、ほとんどのスタッフはパーティー疲れを引きずりながらも昼間のプログラムが開催されるFelix Meritusアートセンターに足を運ぶ。今年のAmsterdam Dance Eventのプログラムは例年以上に濃密だ。市内52ものヴェニューではPlastikmanやCarl Craigの69名義でのライブをはじめ実に700組程度のアクトが出演し、あわせてInnervisionsやKompakt、CLR、Fachwerk、Ostgutなどのレーベル・ショウケースも開催される。この時期のアムステルダムの気候はマイアミのWMCやバルセロナのSonarほどの好天ではないかも知れないが、アムステルダム独特の運河や石畳が醸し出すムードは決して負けてはいない。

RA pick:RA XはこのAmsterdam Dance Eventの期間中の週末、土曜のTrouwで華々しくフィナーレを迎える