アムステルダムはADEのようなイベントを開催できるという点で、世界でも希有な都市だ。もしくは、そうしたビッグイベントをさも簡単にやってのけているように思えるという点で希有な都市だというべきだろうか。ADEのプログラムに参加しているクラブはほとんど散歩のような感覚で移動でき、もっとも離れているクラブ同士でもほぼ1時間以内で徒歩移動できてしまうし、そうしてみたいという気にさせてくれる。アムステルダムはヨーロッパのなかでも最も魅力的な大都市のひとつだ。イベント終了後の主宰者側の正式発表によれば今年のADEには約140,000人もの観客が集まったそうだが、今回のADEのメイン会場となったFelix Meritisエリアをはじめとした大きなヴェニューでも混み過ぎと言う感覚もなかったし、かといってキャパが余っているような感覚もなかった。イベントの週末中に各会場間を移動していると必ず友達や同僚、知り合い、仕事の取引先、DJなどさまざまな人々と出くわし立ち話ができる。これもアムスならではの一極集中型の都市構造ならではだろう。

ADEのようなビッグイベントを可能にしているのは現地のクラブ同士のネットワークであり、そこには巨大ステージを有するヴェニューから地元客の集まる小さく濃密なヴェニューまでさまざまなクラブが含まれる。今年のADEには延べ52以上のクラブ、バー、アートスペースなどが参加した。そのうち、アムステルダムでもベストと思われる7つのクラブを以下に紹介する。

Melkweg

オープン：1970年7月
収容人数：2,200人

「Melkwegはオランダ国内でもとりわけユニークな存在だと思います。というのも、ここはどんなアート形式でも受け入れることができるからです。コンサートやダンス・イベントはもちろん、映画、写真ギャラリー、コンテンポラリー・ダンス、演劇、メディアイベントなどあらゆるイベントを開催しています」
— Hidde Pluymert氏（ブッキング担当）

Air

オープン：2010年4月
収容人数：1,300人

「Airはアムステルダムでも唯一のクラブ専用スペースです。建物の設計段階からクラブ専用に作られているという点でもアムス唯一だと思います。他のアムスのクラブはたいてい古い映画館などを転用していますからね。わたしたちは国際的なフィーリングを持ったクラブにしていきたいと考えています」
— Sjoerd Wynia氏（インターナショナル・ディレクター）

Paradiso

オープン：1968年
収容人数：1,400人

「Paradisoはもともと教会だった建物を利用しているんです。ゴシック建築ではないですけれどね。ステンドグラスや建物の内部に沿った大きなバルコニーも教会当時のものをそのまま使っています。ビッグネームのパフォーマンスを至近距離で見ることができますよ」
— Maz Weston氏（プログラム担当）

Studio 80

オープン：2005年
収容人数：550人

「Studio80には良いサウンドシステムがあるので、遊びにいらっしゃるお客様は本物の音楽好きがほとんどですね。ですから、目立ちたがり屋っぽいギラギラした感じもなく、それがこのクラブの存在感を特別なものにしているのだと思います。他のアムステルダムのクラブに比べても、すごく密度の高い雰囲気ですよ」
— Gert van Veen氏（ナビゲーター）

Studio K

オープン：2010年10月
収容人数：300人

「Studio Kの何が素晴らしいかというと、ここには沢山の区切られたスペースがあるところですね。すべてのスペースを繋げると、まるでインドア・フェスティバルのようになります。それぞれのスペースで違うヴァイブを楽しめますし、それぞれのスペースで様々なアクトを同時に見ることが出来るのも当クラブならではだと思います」
— Mats Siffels氏（プログラム担当）

Sugar Factory

オープン：2005年4月
収容人数：500人

「私たちの自慢はサウンドやビジュアルを含めた設備の水準の高さですね。ブッキングという点ではアムス随一の幅広さだと思います。私自身、いわばGilles Peterson的な感覚でブッキングを行っていますからね」
— Myra Driessen氏（クリエイティブ・ディレクター）

Trouw

オープン：2009年2月
収容人数：1,150人

「Trouwはエレクトロニック・ミュージックをはじめ食事、アート、ニュー・メディアなどの分野において同時代的なインスピレーションを提供したいという基本理念のもとスタートしました。他のアムスのクラブと違う部分は数多くありますが、すべてはまずお客様の質の高さがあるからこそだと思います」
— Olaf Boswijk氏（設立者）