4月という時季はフェス業界にとって興味深い月だ。カリフォルニアあたりでもないかぎり、アウトドアで開催するにはまだ若干肌寒く、このリストを見ても分かるとおりほとんどのフェスが様々なヴェニューで開催されていて、ビッグネームや巨大ステージが目立たないかわりに、コンセプチュアルでよりリラックスしたフェスが数多く用意されている。ともあれ、アメリカのポロ競技場からヨーロッパのアリーナまで、しっかりと楽しめるフェスがこの月も目白押しだ。

10. L.E.V.
4月27日 - 4月28日
Laboral Ciudad de la Cultura
ヒホン／スペイン

このL.E.V.のようなフェスにおける簡潔さは称賛すべきものだ。6年目の開催となる今年、彼らは音楽とヴィジュアル・アート両面でのプレゼンテーションを予定しており、スペイン北部沿岸部に位置するヒホンのLaboral City of Cultureにおいて2日連続で開催される。この場合、"city"とはいささか誇張しすぎた表現にも思える。というのも、ショウが行われるシアターや教会、エキシビジョン・ホール、庭園などはごく近距離でまとめられているからだ。金曜にはPrefuse 73、Soap&Skin、Tri Angle's Holy Otherが、土曜にはMika Vainio、Anstam、Kuedo、Old Apparatusといったエクスペリメンタル色の強いラインナップが登場する。

RAの注目: 50 WeaponsのAnstamによる、クラブ・ミュージックの常識を覆すプレイ

09. Rokolectiv
4月19日 - 4月22日
National Museum Of Contemporary Arts
ブキャレスト／ルーマニア
Day One | Day Two | Day Three

ルーマニアで開催されるRokolectiv Festivalはかつてチャウシェスクの宮殿として建造されたブキャレストの現代美術館で行われる。現在では世界でもっとも巨大な一般建築として知られるこの建物には、ルーマニア政府国会とミュージアムの両方がある。今年7回目の開催となるRokolectivではエレクトロニック・ミュージック界の多彩なアーティストたちがラインナップされ、4日間を通してポートランドのハウス・ポップ・デュオThe Miracles Clubをはじめドイツのアヴァンギャルド・ピアニストHauschka、謎めいたシンガーソングライターMaria Minervaなどが出演する。クラブ寄りのラインナップとしては、InnervisionsのDixon、ComemeのMatias Aguayo、フットワークのパイオニアとして知られるDJ SpinnとDJ Rashadなどが出演。

RAの注目: グラスゴー出身Korelessによるカラフルなメロディ

08. Mayday Festival
4月30日
Westfalenhallen
ドルトムント／ドイツ

24以上ものテクノ／ハウス界の大物たちがドルトムントで一堂に会するこのMaydayは言うなれば間違いのない選択だろう。Westfalenhallenで5つものフロアーで展開される今年のMaydayにもスタジアム級のアクトが目白押しだ。Chris Liebing、Sven Vath、Carl Coxといった面々が王道のMayday路線を踏襲する一方、ハウス・ルームではKarotteをはじめとした面々がラインナップされている。例年通り4月30日に開催されるMaydayは翌日の朝遅くまでぶっ通しで開催される。

RAの注目: Dominik Eulbergによる鮮やかなテクノ・セットは見逃せない

07. Awakenings 15th Anniversary
4月7日 - 4月8日
Gashouder
アムステルダム／オランダ
Day One | Day Two

1997年、文字通り巨大なガスタンク跡地を利用して始まったAwakeningsは、ここ数年Awakenings Weekenderというタイトルで開催されてきたが、今年15年目のアニバーサリーを迎える。名前の些細な違いはさておき、Awakeningsのスタッフがスペシャルなフェスを用意すべく全力を尽くしてきたことに間違いはない。イースターの週末に合わせて開催されるAwakeningsでは、初日にDave ClarkeやDJ Rushが出演し幕を開ける。さらに日曜にはRichie Hawtin、Marco Carola、Chris Liebingといったビッグネームが続々登場。ちなみに、円形のガスタンクを使ったGashouderにほとんど逃げ場は用意されていないのでご注意を。

RAの注目: Planetary Assault Systemsによるライブセットはこの記念すべきアニバーサリーにふさわしい

06. Communikey Festival
4月25日 - 4月29日
Various Venues
ボールダー／コロラド州

まるで気の良い友人のようなフェス、それがこのCommunikeyだ。多様なカルチャーの交差点となるこのフェスの基本的なメッセージがあるとすれば、それはコミュニティそのものだ。Communikeyはコロラド大の学生街でもあるボールダーでリラックスした雰囲気の中5日間にわたって開催される。複数の会場に分散しているものの、各ヴェニューはすべて徒歩圏内にあり、もし必要とあればCommunikeyの主催者が用意する自転車レンタルのサービスも利用できる。今回5回目の開催となるこのフェスでは、今年5つのパートに分かれたドキュメンタリーの制作を並行して行っているので、カメラを向けられた際はスマイルしてみよう。これまでエクスペリメンタル系のアーティストが多く出演してきたそのラインナップの傾向は今年も継続され、Morton SubotnickやLaurie Anderson、Lillevanといった面々がヘッドライナーを飾る。ダンスフロア向けのラインナップとしても、Kyle HallやDeniz Kurtel、Claude YoungそしてDJ Sprinklesと粒ぞろい。

RAの注目: Silver Apples of the Moonで知られる巨匠、Morton Subotnickの貴重なパフォーマンス.

05. Elita
4月18日 - 4月22日
Various Venues
ミラノ／イタリア

Elitaは4月に世界各地で開催されるフェスの中でもとりわけ優雅さを誇るもののひとつだろう。年に1度、4月中旬にミラノ市内の各地で開催されるElitaは自信を持ってハウス、テクノ、インディの各ジャンルから充実したラインナップを揃えている。なかでもRichie Hawtin、Jamie Jones、Maya Jane Colesらの出演は大きな目玉となっているが、そのほかにもスウェーデンの4人組Little Dragon、UKのヴェテランMatthew Herbert、The Fieldといった注目のラインナップが控えている。全5日間の日程には18ものパーティが組み込まれており、その会場にはTeatro Franco Parentiをはじめ、Magazzini GeneraliやTunnelといった場所が選ばれている。

RAの注目: Riche HawtinはMagazzini Generaliの強力なサウンドシステムの実力を遺憾なく引き出してくれるはず

04. Electron
4月5日 - 4月8日
Various Venues
ジュネーヴ／スイス
Day One | Day Two | Day Three | Day Four

ここ10年近く、ジュネーヴのElectron Festivalは映画、ヴィジュアル・アートそしてエレクトロニック・ミュージックを融合したプログラムを実践し続けている。12近いヴェニューで4日間にわたって繰り広げられるこのフェスでは、会議やワークショップ、ダンス・パフォーマンスなどのプログラムも組み込まれている。こうした多様性は招聘するエレクトロニック・ミュージックのアーティストのラインナップにも表れており、それらがリーズナブルなチケット価格で楽しめるとくればなおさらだ。1日目のハイライトは復活したMouse On MarsのライブとJohn Cageの生誕100周年を祝うJohn Cage's Thirteenによるパフォーマンスが双璧だろう。2日目にもAddison GrooveやCarl Craig presents 69がヘッドライナーを飾り、3日目にもPepe BradockやTrevor Jacksonがプレイし、最終日となる4日目にはDarshan Jesraniも登場する。

RAの注目: 1日目に登場するKangding Rayによる幻惑的なパフォーマンス

03. Coachella
4月2日 - 4月22日
Empire Polo Field
インディオ／アメリカ
Day One | Day Two | Day Three

Coachellaは南カリフォルニアの砂漠地帯の中にあるポロ競技場の芝生という、実に非現実的な会場を利用してで開催される。北アメリカのフェスティバル・サーキットにおいても重要な位置を占めるこのフェスは今年2つの週末を跨いでの開催となり、その2つの週末ではまったく同じラインナップが並んでいるのだ。Dr. Dre & Snoop Dogg、Radiohead、the Black Keysといった超メジャーどころがヘッドライナーを飾っているのは予想通りだが、David GuettaやSwedish House Mafiaといったビッグルームなエレクトロニック勢もしっかりとそれらに追随している。こうしたメイン・ステージ組はさておき、LAのビート・シーンを代表するThundercatやFlying Lotus、Gaslamp Killerといった顔ぶれも決して見逃せない。毎年チケットはソールドアウト必至のこのフェスだが、会場近くでは非公式なイベントも便乗して開催されており、そのなかでも昨年はA Club Called Rhondaが高い人気を集めていた。

RAの注目: 各週の土曜日夜に登場するRadioheadはハイライト必至

02. Snowbombing
4月9日 - 4月14日
Mayrhofen
ツィラータール／オーストリア

昨年RAのIn Pictures特集でTom JonesがSnowbombingを紹介した記事でいみじくも「注意：ゲレンデの内外で起こるであろう非現実的な出来事に対して寛容であること」と書いてあったことを思い出してみよう。言い換えてみれば、1週間にもわたってぶっ通しで開催され、奇妙なドレス・コードとスキー／スノーボードが組み合わされたこのフェスは必ずしも万人向けのものではないかもしれない。しかし、毎年オーストリアのマイヤーホーフェンを訪れる人々にとっては、このSnowbombingは一大フェスティバルでありつづけているし、まちがいなく唯一無二のユニークさを持つフェスであるはずだ。このフェスの運営スタッフは常に前年を上回る内容を提供すべく努力しており、今年2012年のラインナップにもその意気込みは表れている。Dizzee Rascal、DJ Shadow、Groove Armadaといった有名どころをはじめ、Seth Troxler、Jamie Jones、Soul Clap、Tensnakeといったテクノ／ハウスの注目アクト、Oneman、Boddika、Pearson Sound、Rustieといったベース・ミュージック勢まで抜かりのない充実のラインナップが並んでいる。

RAの注目: Skreamのビートはこのフェス特有のクレイジーさにぴったりハマるはず

01. Unsound New York
4月18日 - 4月22日
Various Venues
ニューヨーク／アメリカ

これまで多くの人々がニューヨークでフェスを開催しようと試みてきたが、実際に成功を収めることができたケースはごく一握りに過ぎない。そんななか、今年3年目を迎えるUnsound Festival New Yorkは複数の文化団体や地元プロモーターと協力し、BAMcinématek、(Le) Poisson Rouge、Public Assembly、Lincoln Center、ISSUE Project Roomといったニューヨークでもベストのヴェニューを舞台にこの世界有数の都市ならではのフェスの在り方を確立させたと言っていい。今年5日間にわたって開催されるこのフェスでは、2562やDistal、Throwing Snowといった面々が彩りを添え、その他にもJacaszek、Julia Holter、Monolakeなど多彩で見逃せないアクトが続く。

RAの注目: BiosphereとLustmordの初競演