Luke AbbottとBorder Communityの組み合わせには違和感が全くなく、実際彼抜きのBorder Communityは想像できない。同レーベルの他のリリースタイトル同様、Abbottが2010年にリリースした彼の素晴らしいアルバム『Holkham Drones』では、使用されている機材が全てギリギリでコントロールされている印象を与えており、まるで今にも全ての音がノーフォーク（イングランド東部）の田舎へと駆け出してしまうかのように蠢いており、シンセのフレーズが予測不可能な動作のレゾナンスフィルターを通過しながら叫び、ドラムはその流れの中で懸命にリズムを保とうとしている。まるで全てのサウンドがコントロール不可能な状態に陥っているかのように思えるが、そこには完ぺきにシーケンスされたメロディーが存在しており、Luke Abbottというミュージシャンが非常に優れたミュージシャンであるという事実を浮かび上がらせる。

彼の音楽は良い意味でアクシデントに満ち溢れているため、機材に溢れる彼のスタジオのメイン機材がEurorackモジュラーシステムだということを知っても驚く人は少ないだろう。このシンセサイザーはほぼ無限に音を作り出せるため、ワイルドで予測不可能な結果を生み出すことができるのだが、この特徴こそが彼がメイン機材として用いている理由なのだ。Luke Abbottは自分が想像できる音楽制作を行うつもりはない。自分では全く予測することができない音楽を生み出したいのだ。

自作のMIDIコントローラーについて教えてもらえますか？

かなりシンプルなんだ。市販されている大半のMIDIコントローラーよりも機能はシンプルだけど、頑丈に出来ている。今まで沢山のMIDIコントローラーが壊れたからね。APC40を持っていたんだけど、もうまともに動かなくなってしまったし、ここにあるEvolution UC33もよく壊れたよ。Evolutionはもう1台持っているんだけど、そっちはディスプレイが壊れているし、ノブも動かないし、ボタンは正確に機能しない。Faderfoxも持っていた。かなり長い間ちゃんと使っていたけれど、ノブが全部壊れてしまった。この自作の奴は凄くシンプルだけど、最高級のポテンショメータを使っているから、操作感が凄く良いよ。

ノブが大きいですね！

そう、ノブが大きいんだ。でもライブの時には大きなノブが必要だよね？　このMIDIコントローラーは触感を大切にしている。各ノブには機能が1つずつ割り当てられている。その理由はエンコーダーがずっと問題なく機能することはないからね。いつも反応が凄く遅くなったり、正確な反応をしなくなったりする。だから僕はライブの時にマルチファンクションのエンコーダーを使うのは嫌いだ。でもこいつはしっかりと仕事をこなしてくれるよ。

何かを基に作ったのですか？　それとも自分で最初からデザインしたのでしょうか？

中枢を司っているボード（基盤）は誰でも買えるDoepferの奴だよ。殆どの部分が既存のパーツを集めて作られたと言っていいだろうね。でもフロントパネルは自分でデザインした。ポテンショメータは上手く配置することができたと思う。USBもバスパワー接続じゃないから、本当に簡単に作れる。難しいのは実際の組み立てかな。僕は木材を扱うのは得意じゃないからね。でも頑丈な機材を作りたいというのが目的だったんだ。

あなたはモジュラーシンセを使っていますが、モジュラーシンセのどこに魅力を感じているのでしょう？

全てが本当にしっくりくるんだ。何かをやろうとする度に設定し直さなければならないという部分が気に入っているよ。限界がない楽器で、何でもできる。想像できる殆ど全ての音楽的な作業を行うことができるんだ。モジュラーシンセでは毎回音を作ることから始めるから、「ドラムマシンとシンセを持っているから、ドラムマシンとシンセの音が入ったトラックを作ろう」というアイディアに固まる必要がないんだよ。そうじゃなくて、「よし、色々パーツが揃ったから、今まで試したことのない方法で接続してみよう」という感じで考えることができる。だから制作のスタート地点や、ゴール地点を自由に設定することができるんだ。

2000年にはEurorackの開発者、及びメーカーは数える程しかありませんでしたが、今は50を越えていますね。

凄いね！　素晴らしいと思うよ！　でも実際開発はそんなに難しい話じゃないと思うんだ。Eurorack用に何かを開発することは比較的簡単だと思うよ。というのは、自分でもいくつか作ってみたことがあるし、販売できるような機材を作りたいとさえ思っているんだ。でもそれにはまだ色々学ばないといけないな。

モジュラーを自作した場合、どんな機能になるのでしょう？

多分最初はドラムモジュールになるだろうな。あとは友人のPhilと一緒に作っている小さなシンセだろうな。これはMake NoiseのPressure Pointsみたいな奴だ。4チャンネルのタッチパネル式なんだけど、特定のピッチを設定できるオシレーターが4基組み込んであって、タッチパネルに触れることで、オシレーター間に電圧を流す。つまりタッチパネルに触れるとピッチベンドになるんだ。凄く便利だよ。オシレーターはドラムサウンドに便利な存在だということに気が付いたんだ。何故なら、ピッチベンドが可能だから、変わった動きを導き出すことができるからね。触感的だから、練習することなく楽器を演奏している感覚を得られる。簡単にノイズを生み出すことができるんだ！　凄いだろ！　モジュラーは基本的には自分で作れると思う。

モジュールでどうやってシーケンスを組むのでしょう？　スタジオにはシーケンサーモジュールのPressure PointsやMFB SEQ01がありますが、基本的にはモジュールで組んでいくのですか？

かなりの部分をモジュラーシンセの中で行っているけれど、ラップトップ経由のMIDIシーケンスも頻繁に使っているよ。ラップトップは何台か持っているけれど、基本的には1台を使って各パートをレコーディングしていく。ドラムのシーケンスについては、自分が望んでいる形はSEQ01で殆ど組めちゃうね。Pressure Pointsは時々使う感じだよ。

僕はDoepferのモジュールA-152を持っているんだけど、これはポリフォニックサウンドを疑似で生み出せるんだ。1つの電圧を複数のオシレーターに送ることができる複雑なスイッチングメカニズムだと思ってもらえればいいかな。例えば、モノフォニックのMIDIパートを、MIDI-CVインターフェイスに送って、それを今度は6つのオシレーターに送る。そうすると6ボイスのポリシンセのアルペジオになる。でも、この6ボイスをそれぞれ変化させることができるから、各ボイスを異なった波形にしたり、特定のボイスの音程を変えたり、オシレーターの1つにディストーションをかけたりすることができるんだ。これはProphetみたいな6ボイスが全て同じというようなシンセを使うのとはかなり異なっている。違う可能性を与えてくれるね。

これらのオシレーターを低い周波数で鳴らすように設定して、パルス出力をドラムのトリガーに使用する。そして同期させて、パルス幅をスイングのクオンタイズコントロールに使用すると、凄く変わったリズムを生み出すことができる。シャッフルのクロック周波数を変化させるためにも使用できる。多くの時間はCVトリガーのパターンの作成を色々試すために費やされることになるけれど、凄く楽しいんだ。「サウンドの生成」と言うには自分で行う作業が多過ぎるけれど、自分では作れない音楽を作るために使っているという意味では、「生成」するためのシステムだと思っているよ。

MIDIで同じ作業はできませんよね。

無理だね。MIDIでやろうとするとかなり厄介になる。というのは、コンピューターは全てをきちんと実行させて、完ぺきに仕上げようとするからね。でもモジュラーシンセで、超低周波数のオシレーターを3基鳴らして、それをお互いに同期させて変わったCVトリガーをパルス幅に送ると、混乱して面白い結果が生まれる。そして凄く変わったスイング感のあるドラムのリズムを得ることができるんだ。

色々正しくない部分もあるんだけど、そこがいい。モジュラーシンセをこうやって鳴らしていると、音が滅茶苦茶になる時がある。でもそれが全く期待していなかった形で突然ひとつにまとまるんだ。聴覚が刺激されるよね。そしてこういう感覚を得るにはこの方法が簡単だし、面白い。こういうシステムが無ければ、ただひたすら座ってこういう音楽を作るのは無理だよ。あと音質も無理だよね。たとえばProphet 600のような素晴らしいシンセを持っていたとする。各セクションは特定の設定がされているから、各セクションの音量もメーカー側で決めた音量に決められていて、僕が変更させることはできない。でも、モジュラーシンセの場合は、オシレーターの音量をブーストしたいって思ったら、VCAに突っ込んでしまえばいい。そうすると音が歪むし、僕の好きなようにできる。ディストーションは僕の制作においては凄く重要だね。各モジュールがどういう形で歪ませるのか、そしてその限界はどこなのかを把握していくんだ。

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DoepferのWaspフィルターを2基持っていますね。これはそのような歪みを生む、ザラついた質感のフィルターですよね。 

そうだね。激しく使うと変な音になるからね。安いのも気に入っているんだ。別のアナログシンセ用ラックを組んだらもう1つ買うかも知れないな。自身では音を発生させないってところも気に入っている。これのレゾナンスは音色的な意味合いが強い。例えばその隣にあるDoepfer A 105のレゾナンスはKorg MS10のクローンに近いから、オシレーターが加わる感じなんだけど、Waspフィルターは単純に音色を変化させる感じなんだ。

最近になってからピッチクォンタイズモジュールを導入したと言っていましたが、つまり今まではCVのクォンタイズは行っていなかったということですか？

そうだよ。アルバムには音程がかなりずれている部分が何か所かあるんだ。酷いチューニングだけど、別に問題ない。僕はかなり歪ませたシンセをかなり大雑把にレコーディングすることから制作を始める。そしてそれをVSTの綺麗なFMシンセ音で補強して、音を整えたり、そこに他の要素を加えたりする。僕の音楽は完全にアナログで全くデジタルな部分を使ってないって思っている人がいるけれど、大抵の場合は半々だよ。モジュラーシンセは作曲をしたり、アイディアを得たりするのに凄く刺激的だから、ここから制作を始めるけれど、その後は同じ位コンピューターを使うよ。

アナログVSデジタルという論争は理解が足りないと感じますか？

馬鹿げているよ！　本当にそう思う。僕には理解できないね。アナログにもデジタルにも良い部分はある。なんでお互いに反目しあう存在だって考える必要があるんだい？　どうしてどちらかだけで制作しなければいけないんだい？　そんなの人が決めることじゃない！　本当にくだらないよ。理解できないね。

モジュラーシステムの中にもアナログとデジタルがお互いの垣根を越えた部分が数多くあります。

そうだね。アナログとデジタルの関係について心配するのは時間の無駄だよ。インターネット上にはこのことについて沢山書かれているよね…。馬鹿な連中がフォーラム上でオーディオインターフェイスの音質の違いとか、DAWのサミングバスの違いとか書いているけれど、ああいうのを読むと、黙ってDjango ReinhardtやRobert Johnsonを聴けよって思う。彼らの作品は安いマイクで安いアナログテープに録音されたものだから、ノイズが沢山乗っている。でも素晴らしい演奏だし、素晴らしい音楽だ。例えば安いコンピューターでも1964年以前のレコーディングスタジオよりも断然スペックが高いんだよ。僕のこのスタジオよりももっとシンプルな機材で素晴らしいレコードが生み出されたんだ。Ableton Liveのサミングバスが64ビットだろうが、32ビットだろうが僕には関係ない。どうでもいい。僕にとっては十分だ。

スタジオにはかなり数多くの機材がありますが、コンピューターでの作業はどの程度行いますか？　半々だと言っていましたが。

その通り。半々だと思う。

それはシンセやミキシングの部分でも半々ということですか？

そうだよ。全てさ。BBEを通してトラックをモジュラーシンセやテープレコーダーに通すこともある。BBEはVSTバージョンもあるよ。僕のは￡50で買ったけれど、VSTバージョンはもっと高い。だからハードウェアの方が安いんだ。

それはマキシマイザーですか？

エキサイターだね。倍音を分離させるから音が明確になるんだ。でも極端な使い方をすれば、音が完全に壊されてしまう。僕はテープレコーダーを多用していて、実際ミックスを全部済ませることもあるんだけど、最初にBBEを通せば、テープレコーダーの欠点を少し補ってくれるんだ。低域を少し豊かにしてくれて、高域には少し余裕が出る。僕は最終的なミックスに対してはあまり時間をかけないようにしているんだ。というのも、最終的にはマスタリングエンジニアが作業してくれるからね。マスタリングはかなり中毒性が高くて面白い作業だけど、マスタリングエンジニアに頼んだ方がいいよね。

テープレコーダーの話が出ましたが、テープのどこが気に入っていますか。

単純にノイズがかなり気に入っているんだ。十分に活かされていない音色だと思っている。古い録音物はテープを使っていたから必然的にノイズが存在していたけれど、今はノイズなしでレコーディングできるし、リスナーも必要ないと感じている。でもノイズは音楽における一部だと僕は思っている。テープへのレコーディングは、音をまとめるのに凄く向いていると思う。アナログ機材の素晴らしい点の1つは、「動かない」という明確なポイントがないという点で、「使えない」というポイントまで徐々に歪んでいくような感じに近いんだ。例えば、鳴りがクリーンすぎると感じるドラムがあった場合、これをテープにレコーディングすれば微妙に汚れて、コンプレッサーのかかった音になるんだ。

僕が特定の音に対して行いたいと思っている2、3の作業を自然に行ってくれるから、テープレコーダーは便利なんだと思う。でもこれは素晴らしい音のテープレコーダーを使った場合だね。あの（別のテープマシーンを指さして）オープンリールはローファイ過ぎて使えないに等しい。まず使うことはないけれど、見た目が綺麗だからスタジオに置いてある。あとはウォークマンとか色々持っていて、時々使っているよ。結局6、7台持っているんじゃないかな。でもこのナカミチのテープレコーダーは最高だよ。大好きだ。手に入れた時は本当に嬉しかったよ。サウンドエンジニアの友人に僕がテープにバウンスさせたミックスを聴かせたんだけど、カセットテープの音だとは思えないって驚いていたよ。

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DAWに関してはAbletonですか？

そうだね。気に入っているよ。バージョン3から使っている。それ以前はCubaseを使っていたんだけど、全然楽しめなかった。Excelのワークシートと一緒の感覚で、なんていうか気が滅入る。Abletonはコンピューターが得意とする部分を上手く利用しているし、作業を簡単に、そして素早く進められるから、コンピューターに向き合う時間が少なくて済むんだ。ミキサーのルーティングも完ぺきだしね。僕はセンドを多用するんだけど、この部分について心配しなくていいのは嬉しい。あと、ライブ用としてしっかり使えるプログラムはこれだけだから、ライブの時にスタジオで慣れ親しんでいる環境を持ち込めるという部分も気に入っているよ。

デフォルトのエフェクトも好きだね。かなり使っているよ。コンプレッサーなんかはサイドチェーンに向いているしね。EQも良く使うよ。ステレオスプレッドは特に気に入っている。Spectrumも便利だね。カットしたい倍音を見つけるのに便利なんだ。小さなスタジオの小さなモニタースピーカーで、低域をモニタリングするのはちょっと難しいから、低域が大きすぎるかどうかを視認できるのはかなり便利だよ。Abletonは素晴らしいね。あとはMax/MSPとの連携もいいと思う。

その部分について話をしようと思っていました。

僕はプログラミングが得意というわけじゃないよ。Reaktorは昔かなり使っていたけどね。ただ、MAXは使わないで済むならそうしたいんだ。というのは、自分がどうしたいのかを理解するのに凄く時間がかかるからね。でも、ライブ用のちょっとしたプログラムを作るには凄く便利なツールだと思う。たとえばドラムパートの中の特定のMIDIノートをミュートするためのプログラムを組んだりしてね。だから気に入っているよ。

私はまだAbletonのその部分については足を踏み入れていません。

しっかりと理解するには一生かかるだろうね。だから僕はあまり関わらなくていいと思っているんだ。James（Holden）は素晴らしいMAXのプログラマーだよ。シーケンサーなどのツールをプログラムしていて、僕も少し使っていたことがある。

"僕は昔ドラムを叩いていた。だからドラムパートには今でもその感覚を持ち込もうとしている"

James Holdenの話が出ましたが、最近のCaribou Vibration Ensembleのライブで、彼はモジュラーシンセをステージに持ち込んでいました。あなたもいずれはそうしてみようと思っていますか？

一度だけ使ったことがあるんだ。アルバムリリースの時に、小さなラックを1つだけ持ち込んだ。かなりの大きさだし、デリケートだから、飛行機での移動が無い限り問題ないと思う。でもモジュラーシンセのような自由度の高いシステムはライブに最適とは言えないかもしれない。というのは、セッティングに凄く時間がかかるんだよ。

あと、モジュラーシンセだと20分間同じプレイを続けることになってしまう。オーディエンスはそんなの聴きたくないと思うんだ。みんな飽きてしまうだろうね。１割位のオーディエンスは楽しんでくれるかもしれないけれど、アルペジオを１０分聴かされたら本当に退屈してしまうと思う。ただ僕のライブの場合は問題ないよ。上手くやれると思う。色々仕込んだものになると思うし。ただ実用的とは言えないだろうな。

JamesがCaribou Vibration Ensembleでプレイした時は、１つの機能だけを使って素晴らしいアルペジオをプレイしていたけれど、あれは色々仕込んだものとは違ったよね。僕は１人だけでライブをするわけだし、そういう方法は意味がないんだ。今はもっと色々安い機材をツアーで使いたいって思っているんだよ。実際壊れている機材でも問題ないね。

Ableton以外でよく使っているソフトウェアはありますか？

マスターエフェクトにiZotopeのOzoneをよく使っているけれど、基本的にはチャンネルストリップで使っている。本当に素晴らしいよ。ハーモニックエキサイターも良いけれど、全部が最高さ。マルチバンドのダイナミクス系は本当に細かい部分までよく出来ているから、ディストーションとしても使えるんだ。コントロールパネルではリリースとアタックがゼロに設定できるんだけど、これらを使ってかなり正確に倍音を歪ませることができる。これはメーカー側からの使用方法としては書かれていないことだけれど、こういう形で使うことができるんだ。あとは、モジュラーシンセやProphet 600のような、モノフォニックのアウトプットが多数備わっているような機材に対して中高域にステレオ感を与えたい時にも向いているね。ラウドネスマキシマイザーは僕が今まで聴いた中で最高の出来だと思う。

MFBのドラムマシンやドラム用モジュールが数多くありますけれど、MFBのどこが気に入っていますか？

Rolandのドラムサウンドとは違うからだよ。RolandのCR-78やTR-66は好きだけど、909の音は好きじゃないんだ。808の音は多少使う時がある。最初の段階で使う基本的なノイズだからね。でもドラムを正しく鳴らすのは本当に難しい。本当に難しいと思っているんだ。自分の好きなドラムの音を見つけるのには凄く時間がかかる。コンピューターの中のサンプルを使うこともあるし、例えば基本的な部分をハードウェアで鳴らしてサンプルで肉付けするように、両方を組み合わせることもある。以前はVermona DRM1 MkIIIを持っていて、アルバムでかなり使ったから売ったんだ。これ以上使わないように自分を仕向けたんだ。Vermonaがアルバムのキャラクターのような気がしちゃってね。売ったのは馬鹿げた行為だったかもしれないな。スタジオになくて寂しいよ。

アルバムで重要な位置を占めていた機材から離れなければいけないと感じたのですか？

そうなんだよ。同じことをしないようにしているんだ。ここにあるAnalogue Solutionsの機材、そして他のいくつかの機材は、スペースが足りないし今は繋げていない。スネアドラムモジュールのノイズのアウトプットだけを使っている。でもそれは他に便利なノイズモジュールがないっていうのが理由さ。BD78はかなり使っているし、スネアドラムもかなり使っている。MFBのスネアドラムはRolandのよりもかなり良いと思う。ある意味壊れた感じなんだ。キックモジュールもいい感じのノイズが乗っていて、歪んでいる。

MFBの522については、直接鳴らしても問題ないけど、基本的には安いDJミキサーを通して歪ませて使っている。ミキサーのチャンネルが調子悪いから、これを通すとかなり面白いキックの音が生まれるんだよ。ドラムはどの音を使うかという点と同じ位、ディストーションとEQについても考えなければいけないと思っているんだよ。あと、リピート感を出さないループを組むのは凄く難しい。僕はエレクトロニックミュージックを始める前はバンドでドラムをプレイしていたから、この部分には凄くこだわっているんだ。今でもそのバンドでの感覚をドラムパートに持ち込もうとしている。ある種の「動き」が欲しいんだよ。

"もうこれ以上クラブミュージックや
クラブサウンドを作りたくない"

ドラムサウンドはモジュラーを通して処理する時が多いですか？

そうだな、今僕がやっているのは…。ちょっとプレイしてみようか。このドラムサウンドはMake NoiseのQMMGを使ってゲートしただけの音なんだ。オーディオチャンネルはコンピューターから出ている。これはモジュールを使って作った奇妙なドローンみたいな音で、3オクターブ位下げてあるから、かなりヘビーな低音なんだけど、それを全部Ozoneでまとめている。

Ozoneではリミッターをかなりハードにかけているから、出力レベルは安定しているね。そしてそれを今度はコンピューターから出力してQMMGに入れて、そこから信号を抜き出してFLAMEのFX6のピッチシフターを通してピッチを上げた音を作る。こうやって2つの違う音を得るんだ。そしてQMMGにはVactolのゲートがあって、オーディオテイルの付いたVCAの役割とローパスフィルターの役割を果たすから、Buchla Bongoみたいな自然なドラム音を生み出すんだ。でも、この音はゆっくり変化するドローンだから、その変化に合わせてドラム音が表現豊かなドラム音に聴こえるんだ。1回消えて、また聴こえてくるみたいな感じさ。

ゲートには何を使っているんですか？　何でトリガーしているのですか

SEQ01から直接トリガーしているよ。ドローンで変化が加わっているから、あとはシーケンサーを色々変化させればいいんだ。音に生の感覚が加わっているから、ただのサンプルループや変化のないものを聴くよりも良いよね。

RolandのTRシリーズよりも良いですか？

そうだね…。僕は別にRolandのドラムマシンを非難したいわけじゃないんだ。素晴らしい機材だと思うからね。でも808は、僕たちが今聴いている音楽を色んな意味で定義づけたよね。808の音がサウンドシステムから聴こえると、素晴らしいエネルギーが生まれるし、現代のバイブが生まれる。単純に僕はクラブミュージックやクラブサウンドを作りたくないって話なんだ。

本当に多くのダンスミュージックが、クリーンでパンチの効いたドラムに囚われている。僕はそういう音楽は聴かないよ。僕はそうじゃなくて、なんていうか…　うーん…　言葉じゃ上手く言えないな。例えばContainerの『LP』は本当に素晴らしいテクノだよ。歪んでいてローファイだけど、同時に不思議な感覚を与えるよね。ドラムも決してしっかりとなっているわけじゃない。でも素晴らしい鳴りだ。大抵のミニマルテクノよりも断然いい音だよ！