初夏を感じさせる青空が広がる5月の第3土曜日、THE STAR FESTIVAL 2014が京都府南丹市にある「スチールの森ひよし」で開催された。西日本を代表するダンスミュージック・フェスティバルTHE STAR FESTIVAL、通称「スタフェス」は、大阪の中心地から少し離れた元造船所「名村造船跡地」を中心にクラブイベントとして年に1、2回開催されていたが、2012年からは1泊2日のオープンエア・フェスティバルにスタイルを変え、今年で3回目を迎える。屋内フェスとしてすっかり定着していたこともあり、第1回目はキャンプギアをほとんど持たずにクラブ感覚で遊びにくる人も多く、「クラブの延長線上にある野外パーティー」という印象だった。しかし2年目からは、1年目に「山の寒さの洗礼」を受けた人たちが、マイテントを持参するようになり、自然の中でキャンプをしながら音を楽しむ野外フェスティバルに成長した。京都から電車で約30分、大阪からも車で1時間とアクセスが非常に良く、幅広いジャンルのラインナップを良心的な価格で楽しめるアウトドアフェスとして、関西の野外フェス好きにとって今やマストの存在となっている。

ゆるやかな坂を上り、エントランスを抜けるとまずはカラフルなフラッグとキュートな星でデコレーションされたマーケットプレイスとフードコートがお出迎え。その横に青々とした芝生のキャンプサイトとダンスフロアが広がっている。去年までは2つのステージとサブブースの3つのステージがあったが、今年はメインフロアとバーカウンターに隣接したラウンジエリアというシンプルな構成になっていた。複数のステージの往復にかなりの時間を取られてしまい、1つのフロアに集中できなかったという苦い経験をしたことはないだろうか？「1人1人のアーティストをじっくり楽しんでもらいたい」という思いから、あえてメインフロアは1つにしたとのこと。そして今回サウンドシステムにはFUNKTION-ONEを導入。FUNKTION-ONEと言えば、RAでもお馴染みのThe Labyrinthが有名だが、The Labyrinthにもけして引けを取らないクリアで心地の良い音を響かせていた。

正午を回ってすぐ、MinilogueのSebastian Mullaertのオーガニックなアンビエントでフェスがスタート。当初は、日本初となるMinilogue vs Mathew Jonsonのインプロビゼーションライブが予定されていたが、MinilogueのMarcusのビザが間に合わず、急遽Sebが3時間のDJセット、そしてMathew Jonsonが2時間のライブセットをプレイすることになった。FUNKTION-ONEから聴こえてくるSebの極上ダンスミュージックをBGMにキャンプの準備が出来るなんて、ある意味Minilogue vs Mathew Jonsonのライブと同じくらい贅沢な体験だったかもしれない。テントのセットアップも終わり、フロアに人が集まり始めた頃にMathew Jonsonがステージに登場。ライブ前にプレゼントしてもらった京都の地酒『蒼空』のボトル(Richie Hawtinが.ENTERで紹介している日本酒)をステージのお供に、1曲目からフルパワーのプレイでオーディエンスを引き込んでいく。大好きな日本酒を飲んでご機嫌だったのか、ステージの前にたちユニークなダンス姿を見せる場面も。名曲「Marionette」が掛かった時には、フェスのピークかと思うような盛り上がりを見せた。

Mathewの怒濤のライブの後は、Takahiro UchiboriによるソロプロジェクトMetome、raster-noton初の女性アーティストとして注目されるベルリン在住のKyoka、チリの奇才Ricardo Tobar、ダブステップ・シーンをリードするGoth-Trad、そして髭を伸ばし、別人かと思うほど男らしくなったNathan Fakeのライブがスタート。”Outerhouse”や”Sky Was Pinkなどの往年の名曲を織り交ぜた、迫力のあるプレイでオーディエンスを湧かせた。DJ ZINC & MC TIPPAのドラムンベース、THA BLUE HERBのトラックメーカーO.N.O、BOSS THE MCの情熱的なメッセージが印象的だったTHA BLUE HERBのライブが終わり、Peter Van HoesenがDJブースに姿を現した。THA BLUE HERBでヒートアップしたフロアを一旦クールダウンするかの如く、まるで映画の始まりのような壮大なトラックがフロアに響き渡った。ジャンルの引き出しがとても広く、毎回違ったテーマのセットを披露してくれるPVHだが、今回はまさにテクノ一色。アゲすぎず下げすぎない絶妙なグルーブでジワジワとフロアを暖めていく。ステージに映し出されたミニマルな映像とPVHのディープなサウンドがシンクロする光景はまさに圧巻、ここ2、3年で見たPVHのプレイの中では1、2を争う素晴らしいセットだった。続いて登場したDJ NOBUは、「PVHのストイックすぎるプレイではちょっと物足りない」と感じたオーディエンスたちのニーズに合わせたフロアライクなトラックを次々とプレイしフロアを湧かせた。初日にも負けない快晴の日曜日、SANDRIENのパワフルなテクノで起床。KENJI TAKIMIを聞きながら身支度を整え、フロアに向かうとウクライナ出身のVALUKAがプレイ中。自然に囲まれたピースフルな雰囲気は、どこかTAICOCLUBの野外音楽堂を思わせる。続くAOKI Takamasaライブ終了後、トリのFUMIYA TANAKAが登場。フェスティバル終了の17時まで4時間のロングセットを披露した。

今回はステージ後方のキャンプサイトだけではなく、会場の至る所にテントを立てることが出来たため、2500人強の来場者があったにも関わらずテントサイトがすし詰め状態になることもなく、ゆったりとした空気が流れたのがとても印象的だ。駐車場からキャンプサイトがとても近いため、野外フェスに慣れていない人や家族連れにもピッタリだ。会場から駅まで定期的にシャトルバスも走っており、車がない人でも気軽に参加できるのも嬉しい。回を重ねるごとに素晴らしいフェスになってきているTHE STAR FESTIVAL。今後、日本を代表する野外フェスティバルになる日もそう遠くない気がする。