Ike Yardは、1979年から1983年にかけてニューヨークを拠点に活動したノー・ウェーブ・バンドだ。マンチェスター・サウンドを牽引し、Joy Division、New Order、Happy Mondaysなど錚々たるバンドが所属したレーベルFactory Recordsから初となるアメリカン・バンドとして注目を集めるも、惜しくもバンドは解散。時期を同じくして、メンバーの1人であるStuart Argabrightは、西ベルリンに長期滞在をし、ノイエ・ドイチェ・ヴィレ真っ只中の当時の空気を体感し、ニューヨークに帰国後、故Rammellzeeも参加したDeath Comet Crewを結成している。その後、ニューヨーク・サウンドの再評価をきっかけに、再び注目を浴びることになったIke Yardは2007年に再結成を果たし、2010年には実に28年ぶりとなる新作『Nord』をDesire Recordsより発表。ここ数年は元メンバーのFred Szymanskiや、Vessel といった新世代のアーティストを迎えたリミックス・シリーズを展開している。約30年という月日の間には、社会や技術、多くの分野で劇的な変化が起こっている。そうした変化はバンドにどのような影響をもたらしたのだろうか？そして今後、どこに向かうのだろうか？

今となっては想像し難いことだが、Ike Yardが活動していた80年代のニューヨークは犯罪率が高く、最も危険な街とされていた。世界で最も多く犯罪率を減らした存在として名を馳せることとなるジュリアーニ市長の就任前後を比べると街の状況は大きな変化を遂げている。Ike Yardの他、RammellzeeをMCに迎えたDeath Comet CrewやBlack Rainといったプロジェクトの中心人物でもあるStuart Argabrighttは、これに対して以下のように語っている。「確かに危険だったね。俺がニューヨークに住みだした最初の年は1978年なんだけど、汚くて危ないどうしようもない通りがいくつかあったよ。既に街は経済的にどん底に陥っていたし、1977年には大停電があったしね。"ハードコア"が生まれる前のハードコアだったよ！クラックが流行った時期でもあって、3ドルそこらのロックを買うために強盗するやつもいた」

こうした環境がメンバーに与えた影響はどういったものだったのだろうか？「うーん、答えるのが難しいな」と前置きをした上で答えるのはメンバーの1人Michael Diekmannだ。彼もDeath Comet Crewに参加している。「意識してはいなかったけど、当時は、身近なものを飛び越えて創造力を押し広げるような音楽やアート、それにそういった文学にいつも焦点をあてていた。市内では、自分たちを取り巻く現実に閉じ込められていたのは確かだけど、それはある一面でしかなくて、俺たちはそれぞれ、意識的に、もしくは無意識に、新たな地平を探していたし、政治的、経済的、社会的な制約に捕らわれてしまうようなものではないものを求めていたんだよ。俺たちはそういった制約に抗っていたんだ。少なくとも家賃は高くなかったし、リハーサル・スペースは一応はたくさんあったかな。クラブ・シーンが盛り上がってたんだよ。音楽業界の会社については、何とも言えないけど、インディ・シーンの盛り上がりと、必死に負けまいと苦しんでたことは確かだな」

一方で、当時の音楽業界やシーンに対する影響について、もう1人のメンバーであるKenneth Compton は異なる見解を示している。「個人的には80年代は、業界やシーンがかなりコマーシャルになっていったと思う。パンク、ニュー・ウェーブ、ノー・ウェーブ、ハードコアの後に続くものが無さそうに思えたし。アンダーグラウンドでは何が起こっていたのかは分からないけどね。ヘビー・メタルかな？70年代前半のクラシックなロックの時代が過ぎて、ものすごくコマーシャルな方向に流されていってたように思う。もちろん、素晴らしい音楽もあったけど、爆発的なシーンとして生まれていたわけではなかったと思う」。こうした状況における当時のオーディエンスの姿勢についてMichaelは「観客の規模はそれほど重要ではなくて、その観客の1人1人が重要だった。アーティスト、ライター、他のミュージシャンはみんな等しく、既存の表現のあり方を現場レベルで変えようとしていたんだ。挑戦的なものや、別の場所に連れていってくれるようなものを求めていたんだよ。天井を突きぬけて、その上を走る電車や高速道路を飛び越えて、点滅している街灯よりも明るい光に照らされ、乾いた地下鉄の叫び声よりも大きな声で笑えるようなものをね。バンド、観客、みんな、日々の重苦しいことを忘れられる最高の飛びを求めていた。再び活力を得るためにね」と語っている。

1982年、イースト・ビレッジの住民と、後から移りこんできた若者との間に居住地を巡って緊張が走っており、その騒動に巻き込まれたStuartは肺を負傷している。「療養しているときに西ベルリンに思いをはせるようになったんだ」とStuart。「それで、バッグ2、3個に荷物を詰め込んで1983年の春に西ベルリンに行って、その年の秋まで滞在したんだよ」。この時期のドイツと言えば、ノイエ・ドイチェ・ヴィレ全盛期にあたり、DAF、Liasions Dangeruses、MALARIA!、Einstürzende Neubautenなど、後のテクノ、ノイズ・ミュージックに絶大な影響を与えたバンドが数多く活動していた頃だ。

「すごくよくしてくれる友だちがいてラッキーだったよ」とStuart。「Mudd Club（当時のニューヨークで名を馳せたクラブ）でMartin Fischer（元Defunktのキーボーディスト）と既に知り合っていて、Martinを通じてベルリンの人は何人か既に知っていたんだ。1978年にThe Futants（Ike Yardの前にStuartが組んでいたバンド）を始めて、Martinが後に参加して、一緒に活動していたからね。そして、Gudrun Gutと会って、MALARIA!の結成があったんだ。シンクラビアを使って録音したばかりの曲をSusanna Kuhnke（MALARIA!のメンバー）に聞かせたことを覚えてる。工場の跡地を利用したコンクリートの建物で、Christlo Haas（DAF、Liasions Dangerusesのメンバー）にIke Yardの曲を聞いてもらったりもした。その跡地は確かLiasions Dangerusesが使っていて、Beate（Liasions Dangerusesのメンバー）が持っていた山のようなOberheimのシンセがまだセット・アップされたままだったんだ。西ベルリンでの時間は特別だったね。Blixa（Einstürzende Neubautenのメンバー）は本当にすごい人だった。彼は空き家に無断で住んでいて、パンパンに膨らんだゴミ袋の上でくつろぎながらTRA magagineのインタビューに答えてたよ。ある夜、その場所でChristlo Hassと一緒にたむろして酒を飲んでたら、ほっぺたつるつるの男子グループと一緒にDaniel Miller（Mute Recordsの設立者）が入ってきたんだ。そしたら、それがDepeche Modeだったんだよね。1983年には、TRA magazineのベルリン特別版をカセットと一緒にまとめるのを、俺たちがやったんだ。当時の西ベルリンは、面白いパーティー体験が出来る場所として第3位に選ばれていたからね。Wim Wendersの『ベルリン・天使の詩』を見れば、どんな感じだったのか分かるよ」

###

当時のポスト・パンクのムーブメントから離れ、誰も到達したことのない領域を目指したサウンドを標榜していたIke Yardは、ドラム・マシーン、シーケンサー、シンセサイザーなどを積極的に取り入れることで、ロックで用いられる典型的な楽器とは異なるアプローチと楽曲構成を生み出そうとしていた。そしてIke Yardが唯一送ったというデモを受け取ったのがベルギーのレーベルLes Disques Du Crépusculeだった。レーベルを主宰していたMichel Duvalの目に留まったそのデモは「Night After Night」としてデビュー作を飾っている。そして、Les Disques Du Crépusculeと親しい関係にあったFactory Recordsは「Night After Night」を耳にし、Ike Yardにコンタクトを取ったのだった。Factory RecordsはJoy Division、New Order、Happy Mondaysなど錚々たるバンドが所属したマンチェスター・サウンドを牽引するレーベルで、このとき、レーベルはアメリカの支部を設立しようとしていた最中であり、そこで抜擢されたのがIke Yardだったというわけだ。レーベル初となるアメリカン・バンドとして注目を集め、デビュー・アルバム『Ike Yard』を発表したIke Yardだったが、後続作を目にすることなくバンドは解散に至ってる。「Ike Yardが解散した大きな理由の1つは、次回作のオファーをもらえなかったからなんだ」とStuart。「Factoryからアルバム発表後も、素晴らしい音楽を作っていたんだけどね。俺たちは集まるときにはいつも、新しいことをやるのが習慣だったし、より良い作品を引き続き作ろうとしていたのに」

83年のIke Yard解散後から2007年の再結成まで、実に四半世紀近く及んだわけだが、この期間は決して空白となっていたわけではない。むしろこのときの活動がきっかけとなって再結成に至ったと言えるかもしれないのだ。「1983年にStuartがベルリンから戻ってきてから、Death Comet Crewとして一緒にエクスペリメンタル・ヒップホップを制作したよ」と語るのはMichaelだ。強烈な個性と世界観を打ち出したアーティストであるRammellzeeが後に参加することになるプロジェクトだ。Death Comet Crew以外にも、Stuartは女優のDominique Davalosをボーカルに迎えたプロジェクトDominatrixを展開。1984年にリリースした"The Dominatrix Sleeps Tonight "がクラブ・ヒットとなり、そのフリースタイルな音楽性が世代を超えた評価を獲得することとなる。

そしてこのリリースから10年以上が過ぎた90年代後半、Tommy BoyからのコンピレーションやAndy Weatherall『Nine O'Clock Drop』へライセンスされるに至っている。こうしたライセンスによってStuartを取り巻く環境が徐々に動き始めていく中、彼は、Jean-Michel Basquiatが組んでいたバンドGrayの創立メンバーの1人であり、かねてからの知り合いでもあったMichael Holmanと偶然、再会している。そのときにStuartはHolmanから、ドイツのレーベルGommaのコンピレーションの話をもちかけられたのだ。そして、それこそが2001年に発表された『Anti NY』であり、Ike YardとDeath Comet Crewの活動当時の楽曲が収録されることになったのだった。

他にも、2003年から2006年の間に発表されたSoul Jazz Recordsのコンピレーション『New York Noise』シリーズなど、ニューヨーク・サウンドの再評価の流れをきっかけにIke Yardは再び注目を集め始め、Acute Recordsからの再発企画『1980-82 Collected 』に至る。『Ike Yard』発表後から解散までの間に作られていた未発表音源と共に再発された『1980-82 Collected 』（2006年）だが、この音源に対してStuartは以下のように語っている。「この時期に録音したもののいくつかはAcute Recordsのコンピ『NY Noise 3』でも聞くことが出来るよ。"A Dull Life"と"Wolfen"が収録されてる。"Oshima Cassette"の初期バージョンも、この頃にやったんだ。『Ike Yard』以後のシンセを使った作品は、この頃のセッションが絶頂期を迎えていたかもしれない」

Acute Recordsからの再発により、Ike Yardに対する再評価は決定的なものとなり、現行のシーンに再びその名を広めることになった。この頃、同じ団地に住んでいたStuartとMichaelの2人は、Death Comet Crewを既に再始動させていたこともあり頻繁に会っていた。「俺たちの作品が再発されていく中で、もう一度、Ike Yardをやってみようかなと思うようになったんだ」と語るのはStuartだ。「また一緒にやるなんて思ってもみなかったけどね。Acute Recordsから2つの再発があって、まだバンドでセッションしたらどうなるかなと思って試しに集まってみたんだ。それで最終的に『このバンドでイケるな』ってまた思えたんだよ」。かくして再結成が決まったのだった。

前述の未発表音源をAcute Recordsからの再発に収めたことで、過去を清算することが出来たIke Yardは、それでもなお、さらなるアイデアと可能性を感じ、未来へ向け前進をし始める。そうして結実したのが、2009年のPhisteriaからの10インチ「Öst」であり、2010年、Desire Recordsから発表した実に28年ぶりとなるアルバム『Nord』だ。80年代当時のIke Yardの世界観は維持しつつも、より繊細なテクスチャーを実現したダークなサウンドスケープを展開し、古臭さを一切感じさせず、むしろフューチャリスティックなクオリティは衝撃をもって迎えられた。

現在のIke Yardの音楽観についてメンバーはどのように捉えているのだろうか？「（音楽観は）変化したとも言えるし、変化してないとも言える。両方とも当てはまるね」と意味深い回答をするStuart。この回答に対する説明は、Michaelの次の回答の中に隠されているように思う。「基本的には同じだね。メロディはミニマムに、リズムはマキシマムに。だけど、俺たちの経験値や知識はこの数十年の間に広がっているし、計り知れないほどの影響を音楽観に与えているのは確かだ」

制作機材の面でも劇的な変化が起こっているのは言うまでもないが、その変化がバンドに与えた影響は大きくはないようだ。「1980年～82年にはアナログ機材を使う必要があった」とStuartが話す。「Rolandの606や303、KorgのMS-20、Arpなんかもそうだね。Ike Yardをやっていたときは、シンプルに自分たちが持っているものを使っていたよ。そこに幸運が訪れていい結果を得られるかどうかなんだ」。これに加えてMichaelは「音楽制作ではアナログ・シンセからデジタル機材に変わったという点では、変化があったと言えるけど、Ike Yardのサウンド自体はそれほど劇的には変わっていない。俺たちはいつも、そのときに使えるものを使って、自分たちのイマジネーションに従ったサウンドを作り出してるからね」と語る。「俺たちはその時その時のものを取り入れてきた、利用可能なものなら何でも使う新しい方法を見つけようとしているんだ。俺たちはみんな、ニューヨークの街のサウンドにすごく影響を受けているんだと思う。多くの機械音にね」と話すのはKennethだ。つまりは何を使うかではなく、Stuartが言うところの「同じ意識を持って一緒に音楽を作ること」がIke Yardにとって重要だということなのだろう。

さらにKennethは制作過程について以下のように語っている。「お互いを補完し合うのではなく、どうやってお互いを対照化するかってことで、俺たちのサウンドが作られているんだと思う。俺たちみんな自主的に活動しているし、自分自身のサウンドにフォーカスしているから、それぞれがやりたいことをやって、それを一緒にまとめるだけだよ。そうすることで、ある種の緊張感が生まれて、俺たちのサウンドだと言える音楽になるんだと思う。Ike Yardのサウンドはニューヨークみたいだって言われたことがあるけど、それには同感だね」

現在の彼らのインスピレーションはどこからやってくるのだろうか？Michaelは以下のように答えている。「今でも70年代、80年代の音楽から確実にインスピレーションを得てるよ。と言っても、Ike Yardは、この時期のアーティストから特にこれといった音楽的影響を受けているわけではないんだけどね。どちらかと言えば、もっと精神面での影響で、この時期の革新的なアーティストの、表現における新たな基準を見つける方法だったり、新たな方向性を生み出す方法に、俺たちの意識は向いているんだと思う。そうしたアーティストたちが作った音楽にインスパイアされたし、今でもそのエネルギーを感じているよ」

一方で、ここ数年の内にリリースされた一連のリミックスでは、元メンバーのFred SzymanskiやMonotonといった同世代のアーティストだけでなく、RegisやVesselなど異なる世代からもリミキサーを選出している。その背景についてStuartは以下のように語ってくれた。「Factory RecordsからのアルバムをDesire Recordsが再発したとき、当時のトラックを出来るだけ多くリミックスしてもらいたいと思ったんだ。2006年のAcute Recordsからの再発のときも同じことを考えていたんだけど、Ike Yardの名前が再び知れ渡り始めたばかりだったから、少し時期が早いと思って。それに2012年になるまでは、アナログ盤（リミックスはアナログ盤でリリースされている）に対する盛り上がりもそれほどではなかったしね」

リミキサーの人選について、Stuartが続ける。「俺たちは現在の音楽状況がどういう風になっているのか分かっているつもりだ。丁寧な仕事をしている人をリミキサーとして選んでいるよ。友達のときもある。そういう人たちは、クリエイティブな同志だと思っている。それ以外に、新興のアーティストを選ぶときもある。バンドではマネージャーとして音楽以外にも色んな役割を担っているから、俺が本当にいいなと思ったアーティストに連絡を取っていたんだよね。そこに、Michaelが選んだアーティストも加えたんだ。VesselはMichaelのアイデアだよ」。逆にアーティストの方からIke Yardに連絡してくることもあったようで、そうして出会ったのがBlackest Ever BlackのKiran SandeとRaimeだった。

「2010年か2011年にロンドンで会って、意気投合したんだよね。リミックスの1枚目を決める前だったから、Blackest Ever Blackが、リミックス・プロジェクトに興味があることをDesire Recordsに伝えたんだ。俺自身もKarl（Regis）の大ファンだったから、自分でも彼には連絡を取っていたし、KarlもBlackest Ever Blackから音楽を発表していた。そうやって、Regisがリミックス・シリーズの先陣を切ることになったのさ」。そうして生まれたのが第1弾となるリミックスで、レコードのジャケットにはDesire RecordsとBlackest Ever Blackのロゴが並び、共同プロジェクトであることを表している。それ以降のリミックスはDesire Recordsが単独で担当しているが、これは単に、「Blackest Ever Blackと仕事をしていないアーティストがリミックスをしたから」のようだ。

数十年も前の音源、しかも予想していなかった再発という状況の中、マスター・テープを見つけるのは困難を極めたようだ。「マスター・テープをもう持っていなかったから、"Kino"と"M Kurtz"をリミックス・プロジェクトから外すことになってしまった」とStuartが話す。「Factory Recordsのアメリカ支部のトップだったやつから、テープを持ってるって連絡があったんだけど、実際は、Ukrainian National Home（ニューヨークにある会場）でNew Orderと一緒にやったときのライブ映像で、しかもIke Yardの部分が編集でカットされてたんだよね！」。そして日本人の妻を持つStuartらしく、日本語で「ショウガナイ...」と締めくくった。

Ike Yardの活動は現在を経てさらに未来へと向かう。「Ike Yardのニュー・アルバム『Rejoy』がDesireから2015年に出る予定なんだ」とStuartが話す。「その制作にあたって、80年代当時のIke Yardの音源を聞きなおしていて、昔に書いていた歌詞を見つけたんだ。新曲の"Slaves Of Janet"では、その歌詞を使ってるよ。1982年の"Mach Kurtz"か"Cherish 8"の歌詞ではSMプレイに向けてアプローチしたんだけど、この新曲も同じテイストを持ってるんだ」。そしてStuartはバンドが現在、勢いに乗っている状態にあることを語ってくれた。「それまでにやっていたことを押しのける勢いで、新しいものがどんどん形になってきてるんだ。バンドにとって初の野外となる新潟のruralでのライブに向けてリハーサルもしていて、新曲も用意してるよ」。Ike Yardの新作の狙いについて尋ねると、Stuartは「Ike Yardらしさのある総合芸術を作る」ことだと語っている。「これまでに経てきた全ての経験を、リズム・パターンと波形を組み合わせたシンセシスにして、書き出すアルバムだ。俺たちがシンセサイザーになるんだ」

Ike Yardの名前はAnthony Burgessの『時計じかけのオレンジ』での一場面に登場する名前に由来しており、メンバーはこのディストピア小説の代表作の大ファンであるようだ。こうしたメンバーのテイストが音楽に影響を及ぼしているかについて尋ねると、Michaelは以下のように回答している。「好きに思ってくれていい。俺たちは楽観的でもあるけど、現実主義者でもある。未来が、人間性のない失意に満ちた世界になるとは限らないよ。だけど、この現実からどこに行こうっていうんだ？」。またStuartは「未来がどうなるかは分からない。批評家は未来に行ったことはないし、多くの金持ちがカスタムメイドの未来を作って登りつめようとしたけど、誰も未来に辿りつくことは出来なかった。だれも未来という世界にジャンル付けすることなど出来ない。ディストピアという考えが全盛期だった頃、そうしたものを好きだったのは自分でも分かってるけど、Ike Yardの音楽をディストピアで括ることはしないね。当時から、リスナーのためにダークなサウンドにしようとはしなかった。俺は闇も好きだし、光も好きだ。時にはグレーがすごくいいときもある。ディストピアと呼ばれるたくさんの本、映画、場面を消化してきたけど、闇がなければ、光を持つことは出来ないし、だから、俺はだいたいいつも楽観的でいるよ」。さらにStuartは『Rejoy』に収録される予定の新曲"Night Klub"の歌詞を引用してくれた。「Dreams? Dreams are our speciality. Dreams? We dream of eternity. （夢？夢は俺たちの得意分野だ。夢？俺たちは永久の夢を見る）」。Ike Yardがどのような夢を見ているのか。それを目にするのも、そう遠くはなさそうだ。

Ike Yardは、7月19〜21日に新潟県マウンテンパーク津南で開催される野外フェスティバル、ruralに出演します。