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大きなスタジオを構築し、機材に大金をはたく。そして最良のエンジニアを雇う—やろうと思えば可能だが、ことクラブ・ミュージックに関しては感覚を掴み取ることより大事なものは無い。PeverelistとKowtonは、制作のエキスパートではないと自ら認めた初めての存在かもしれない。彼らは高価な機材を所有しておらず、最近まではシンプルなソフトウェアのセッティングで自身の音楽のほとんどを制作してきた。代わりに両者が共に持ち合わせているのは、グルーヴを構築していく驚異的な感性と、言葉にするのが難しいが、20年に及ぶイギリスのダンスミュージックの歴史を、自分自身のスタイルと呼べるものに精製していく能力だ。

Peverelist（Tom Ford）とKowton（Joe Cowton）の2人は、AsusuことCraig Stennetとつながり、レーベル兼ライヴ・パフォーマンス名義となるLivity Soundを結成する前から、既にソロアーティストとして称賛を集めていた。Fordはブリストルの初期ダブステップ・シーンにおける重要人物だ。セルフ・レーベルPunch Drunkを通じて音楽制作、およびリリースを重ねている他、同市のレコード店Rooted Recordsに務めていた。Cowtonもハウス、グライム、テクノに捻りを加えたトラックを発表し、Rooted Records閉店後にオープンしたレコード店Idle Handsで働くなど、同市で名を成してきた。FordとKowtonが2011年にLivity Soundから初となるリリース「Beneath Radar」を制作した際、彼らはレーベルに関して大々的な計画を立てていたわけではなかった。2人は堅苦しく考えることなく、気楽に自分たちの仕事について話し合っているようだが、「Beneath Rader」以降、これまでに展開してきたタイトルは、近年で最も強力なディスコグラフィーとなっている。（2013年のフェイバリット・レーベルとしてRAはLivity Soundを選出している）

先日ロンドンにてFordとCowtonを訪れた際（Cowtonは現在、ロンドンを拠点としている）、彼らのシンプルな制作手段は、音楽制作に対する姿勢の中にも投影されていることが明らかになった。2人は自身の技術を、無意味さを取り除くアプローチで捉え、自分がイメージしているものに出くわすまで、セッティングされた少量の機材上でセッションしていたのだ。

初めて一緒にスタジオに入ったのはいつですか？

Kowton: 何年だったっけなぁ？

Pev: たぶん、3、4年前か、そのくらいかな。

Kowton: 2010年だと思う。トラックを作ろうって、しばらく話し合ってたんだよな。でもブリストルにいると、そういうことは結構時間がかかるんだよ。それで最終的に...

Pev: ...1曲（"Beneath Radar"）作ったんだよ。2人で何曲か作ろうとしていて、いいバイブスかもって思えるようなものが出来たんだけど、仕上げることが中々出来なかったんだ。それで、お互いに素材を家に持ち帰って、自分のバージョンをそれぞれやろうってことにした。

ブリストルだと物事に時間がかかるって言いましたけど、それはどういう意味ですか？

Kowton: ブリストルだと、物事を済ませるということに対してのんびりした態度を取ることがあるんだよ。

スタジオで一緒になるまでに、2人の間に共通点があると気付いていましたか？

Pev: 俺たちが音楽をやるときは、実際に音楽を作るよりも、音楽について話すことにいつも時間を費やしてる。でも、何が好きだったか、音楽的にどういう存在になりたかったか、ということについて似通ったアイデアを持っていたのは確実で、俺たちはそのアイデアに基づいて作業してる。

Kowton: そのアイデアだけど、レコード屋を通じて分かったんじゃなかった？たしかTomがRootedで働いていてカウンターに入っているときに、俺はたくさん買い物してたけど、Chris (Farrell) がIdle Handsをオープンして、Tomが店に来ていて、そのときは俺がカウンターに入っていて、それでまた同じアイデアを話し合ってた。音楽シーンの中で小さな集まりが出来ちゃうっていう一つの例だと思うんだけど、この時の小さな集まりは、たぶん、俺とTomとChrisだったと思う。

すごく大まかに見たとき、2人のテイストで重なり合っているのは何だと言えますか？

Kowton: 無意味な要素が入っていないということだと思う。個人的には、イギリスの音楽を引き立てているのは、すごく核心を付いているというところだ。それはミニマルで、あまり難しく考え過ぎていないものだと思っていて、たぶんこの捉え方が俺らに共通している点だと思う。マキシマムな効果を持った完全にミニマムなものをやろうっていう欲求というか。そこには俺らが好きで共通しているものが全部出ていると思う。グライム、初期ダブステップ、デトロイト・テクノ、ジャーマン・テクノ、クラブ・ミュージック初期のものが全部がつながりあったようなものなんだ。

じゃあ、何よりもまずは姿勢ということですか？

Pev: うん、そうだと思う。こういうことを分析するのは本当にダメなんだよ俺。単に音楽を聴いて時間をかけて構築されるものの方がもっと自然だよ。

Kowton: 自分が持っている暗黙の基準のようなものがあって、それはフィルターみたいなものなんだ。そして、その基準は変わっていくっていう。

そうすると、今話しているようなことはもはや議論する必要は無くて、2人がやっているのは、後付けで影響を映し出すことが出来るようなもの、ということですか？

Kowton: うん、そう思うな。俺らが一緒に作業しているときって、「なんであの素材がそこにあるの？あの部分は何なの？なんでそうしたの？」ていう瞬間が絶対にあるんだけど、でもそれから「ああ、そっか。確かに」ってなるから、わざわざ説明をしなくてもいいんだ。「おっと、これは細か過ぎるな。無意味だ」って分かるからね。

Pev: 逆に「わ、これ、いいじゃん」っていう瞬間もあるよ。その瞬間はハッキリ分かる。

Kowton: だよね。そういうときは、3つの素材だけが同時に鳴ってるような場合もあって、ベースラインとか、ハイハット1つとか、何でもいいんだけど、今言ったような感じで、トラックをそのままにして変更したりしない。

最初に一緒に制作をし始めたとき、スタジオのセッティングがどんなものだったか、覚えていますか？

Pev: 俺はずっとコンピューター・ベースでやってきて、ハードウェアを使うのにハマっていったのは最近のことなんだ。Abletonを2、3年使ってるけど、それより前はFL Studioを使っていて、本当にベーシックなものだったよ。機材的なことに関して全く詳しくないんだ。ベーシックな機材をいつも使って、出来る限りベストの結果を出そうとしてただけ。

確か2011年だったと思うんですが、Real Scenesの撮影でTomの家に行ったとき、FL StudioとMIDIコントローラーだけで制作してましたよね。何年もずっとその環境でやってきたんですか？

Pev: そうだね。イギリスではすごく当たり前のことだったよ。俺の仲間の内では、たくさんの人がFL StudioかReasonを何年も使ってた。

Kowton: あまりみんな口にしないよね？たぶんこの10年で作られたビッグ・チューンの多くは、ほとんど基本的なソフトウェアで書かれたものだと思う。「こういうふうにエディットしたんだ」とか「俺はこういうふうにやったよ」とか、みんな大げさに言うけど、単にサウンドを正しく並べて、かっこよければいい、ってだけの話だからね。

Tom、何故FL Studioを使い始めたか覚えていますか？

Pev: 何年も前だけど、俺が制作をするようになったとき、俺が手にすることが出来たプログラムはFL Studioぐらいしかなかったんだ。エレクトロニック・ミュージックを作ってみたいと最初に思い始めたときっていうのは、まだみんながコンピューターを持ち始める前の話で、全部ハードウェアだった。ハードウェアから制作に入っていくのは本当に値段が高くついて、スタジオを持っている人を知らない限り、若い人にとっては本当に手の届くような金額じゃなかった。でもみんながコンピューターを手に入れるようになるにつれて、音楽制作が手頃な値段になってきたんだ。そのおかげで若い人がコンピューターを持つようになって、イギリスのシーンは2000年前半のグライムやダブステップと一緒に再び活性化したんだよ。新しいソフトウェアがたくさんあって、そのソフトウェアによって当時の音楽シーンが生まれて、シーンのサウンドが形作られていったんだ。

では、JoeもFruityLoopsを何年も使っていたんですか？

Kowton: うん。たしか5、6年前にCubaseに乗り換えて、その2年後にLogicにした。どのプログラムもいいよ。結局はどれもほぼ同じ仕事をやってるし、単にどのプログラムに慣れているか、どのプログラムが一番速く自分のアイデアを形に出来るかってだけの話だよ。以前は、あるプログラムは違って聞こえる、とか、あるプログラムはサウンドが豊か、とか色々話題にされていたけど、今は実践面ではどれも同じだよ。どのプログラムを使っているか、ということはそれほど重要だとは思ってないな。

そうすると、2人が一緒に制作し始めた時点では、ベーシックなソフトウェアのセッティングでやっていたんでしょうか？

Kowton:俺はCubase SX2とか、それくらいしか持っていなかったと思う。そんなに興奮するような機材は持っていなかった。あと、アウトボードのEQはいつも使っていて、それくらいかな。機材を持っている人と何年も知り合いだったのはラッキーだったな。Moog Voyagerをずっと借りてたからね。

Moog Voyagerは相当いい機材ですね。

Kowton: 超イケてるよ。Rolandの202も少しの間借りていたし、KorgのPolySixとか、その手の素敵な機材もね。だけど、どの機材も俺が所有してるってわけじゃなかった。この手のサウンドをいつも使っていたいなら、Tomの今の環境が結構いいと思う。俺がMatt（Julio Bashmore）とRed Bullのスタジオで一緒に制作するときは、MattがJupiter-8やYamaha CS60とかヤバイのをいっぱい持ってて、めちゃくちゃ音がいいんだ。

ハードウェアをセッティングに加えようと思った最初のステップは何でしたか？

Pev: Livity Soundでライブ・セットをやってみようと決めたときだったと思う。それよりも以前は3人ともライブ・セットをやったことが無かったから、新たな挑戦だったね。自分たちにとって面白いと思える方法でライブセットをやるには、どういうアプローチが出来るか、何を音楽に加えることが出来るかを考えながら、6ヶ月くらいアイデアを出し合ったんだ。ライブ・セットをやるなら、より面白いことをやらないといけないと思う。そうじゃなければ、レコードをプレイした方がいいでしょ。

しかも、1人じゃなく3人いますもんね。

Pev: そうなんだよ。音楽をライブで表現するとき、自分たちでいいと思える方法はどういうものかを考えて、それから自分たちが使える楽器の中からライブに加えられるものをいくつか選んだ、ってだけの話なんだ。

そのときに選んだ楽器を覚えていますか？

Kowton: Jomoxだっけ？

Pev: うん。ドラム・マシーンは使いたいっていうのがあって、JomoxのXBass 999を選んだ。Craig（Asusu）は何個かエフェクターとかを持っていたと思う。どうやって全てをまとめていくかっていうことを単に考えていただけだね。

Kowton: テープ・ディレイもあったよね？既に持っていた音素材を一緒に貼り付けていって、各トラックとドラム・マシーンのパートに分けよう、ってことになったんだ。それで、エフェクターを使って各素材をつなぎ合わせようとしたんだよね。アウトボードのエフェクターがしっかりと活用されるようになったのは、このときからだったと思う。エフェクターが無ければ、ライブが出来なかったと思うな。

Pev: エフェクターが全てをまとめ上げる接着剤になって、勢いが生まれたんだ。それで、すごくエキサイティングになったね。

Kowton: エフェクターはすごく没頭できるものだと思うよ。反復するテープ・エコーやフランジャー、リバーブをかけると、音楽に違う要素を加えるようなもので、レコードとして聴いたら、そんなエフェクト聴きたくないって思うかもしれないけど、ライブの環境だとエフェクトの中に我を忘れちゃうんだよね。

最初にハードウェアを使い始めたとき、その影響は直ちに自分たちの制作方法にも表れましたか？3人のフロウが変わったりしました？

Kowton: ライブでプレイするようになってから、ハードウェアを使って曲を作ることが理にかなっていると思うようになったかな。ライブ性、というのがキーワードだな。一緒に座って互いに音を鳴らしながら制作できるようになったし、それによって6分間あるトラックの土台を作れるようになったからね。俺らがやった"Junked"ってトラック、覚えてる？あのトラックは、いくつかのループをほんの1時間いろいろ試しながら鳴らしていって、それからそのループをDubkasm Studioに持っていったんだ。スタジオには20チャンネルの大きな卓があって、卓上でライブ・エフェクトをかけていったんだ。それが"Junked"の正体なんだよね。すごく原始的なドラム・トラックに少しエフェクトをかけただけ。だけど、それだけで展開が成り立ってるし、6分間まるまる聴いて飽きないトラックだとみんなにも思ってもらえるといいんだけど。

ライブとスタジオの境目が曖昧になっているのが面白いですね。最終的にはライブ・パフォーマンスをして制作するようになると思いますか？

Pev: 個人的には、そのように制作するためにハードウェアに転換したわけじゃない。俺が自分1人で制作するときは、すごくソフトウェア・ベースだよ。たまにサンプルやハードウェアをいくつか使うこともあるけど、コンピューターを使ってやる方が好きだね。俺たちが一緒に何かをやるときの方が、ハードウェアは便利なんだ。コラボレーションをやっているときに、2人の人間がコンピューター・スクリーンに向かって一緒に座っていることほど最悪なことは無いよ。そんなことをやっても、何かいいものに引き寄せられるわけじゃないし。だからハードウェアを持っているということは便利だと思ってる。次の10分間、誰がマウスをコントロールするのか争うよりも、ハードウェアがあれば2人で互いに音を鳴らしながら何かを作っていって、出てきたアイデアを基に素早く作業をして、もっとバイブスを生み出すことが出来る、っていう一連のシナリオが生まれるからね。

2人が制作をするとき、普段、一番最初に取り掛かるのは何ですか？

Kowton: ドラムかな。だよね、Tom？

Pev: ノリを生み出すのに手っ取り早いのはドラムだと思う。

ドラム・マシーンを2つ持ってるんですよね？

Pev: うん。今のところはね。JomoxのやつとVermonaのやつを持ってるよ。

Kowton: ボトムのパートを作るのにVermonaはいいよ。キックを作るにはベストだね。Jomoxにもキックがあるけど、単に、すごくドンって鳴る、ってだけだから、あまり使うことがないな。でも高い帯域のパートに使ってるよ。

基本的にはVermonaを鳴らして、俺らがいいなと思えるサウンドを作って、その上にパーカッションを鳴らしていくんだ。それから卓に通して、エフェクトを加えて、上手く展開が作れるか試してみるんだけど、こうした過程は重要だと思ってる。トラックを作るにあたって、何がよくて、何がそうじゃないか、予想するのがだんだん上手くなっていくからね。

普段、常に録音している状態ですか？

Kowton: そんなことないと思う。文字通り、お互いに音を鳴らし合って、いい感じだったら、それでよし、っていう感じかな。1時間音を鳴らし合って、「これはいいね」って感じでやってたのはPublic Enemyだったと思うけど、俺たちは5分間だけやって、それでよくなければ、そこで止めて、最初からやり直すんだ。

では、一緒に制作しているか、ソロで制作しているかは関係なく、いつもドラムから取り掛かっているんですか？

Pev: だいたいそうだね。

Kowton: リズム主体の音楽をやってるなら、ドラムが全てだと思う。うーん。全てではないな。ドラム以外のものは全部、グルーヴがトラックが終わるまで保たれるように装飾として使われるだけだと思う。クラブとかそういう場所だと、グルーヴは大事な部分でしょ。もしトラックのグルーヴが最後まで続かなかったら、意味が無いよな。

昔使っていたドラム・マシーンに惹かれた理由は、何だったか覚えてますか？

Pev: そうだなぁ、Rolandのものは欲しいとは思わなかったな。過去30年に発表された他の作品と同じサウンドになっても意味が無いよ。

自分たちの音楽がクラブでどれだけ力強く鳴るのか、イメージと違っていたことはありますか？

Pev: ライブのときの方が、違いがハッキリしてる。「うわ、このシステムだと、すごくいいサウンドだな」って驚いたことがあったと思う。

Kowton: それってfabricのRoom 1でやった2回目のときでしょ？サウンドチェックを前もってやっていて、メインのシステムから真っ直ぐに届くドラムのサウンドを聴いたときは「マジかよ」って感じだった。フロアに行って、しばらく立ちっぱなしになったよ。レコードをかけて「うわー、この曲ってこんなによく聞こえるの？」ってなることは、そんなに無いかな。だけど、何の影響も受けていない生のドラム・マシーンのサウンドはすごかったな。

ある意味、図らずともLivity Soundのサウンドを形作ってきたのは、こうしたドラム・マシーンだと思いますか？

Pev: 一部ではそうだと思う。俺は今でもサンプルもたくさん使って制作してるから、ドラム・マシーンとサンプルの組み合わせと言った方が答えに近いと思う。サンプルを使うやり方だと、ドラム・マシーンとは全く違う音がするんだ。去年、俺たちがやったトラックの1つに、ブレイクビーツ主体の"Aztec Chant"があるけど、ドラム・マシーンの逆の例だと言えるね。だから2つの組み合わせなんだと思う。ドラム・マシーンの方向に突き進みたいと思ったことは一度もない。だけど、ドラム・マシーンも絶対に俺たちのサウンドの一部だよ。

サウンドを加工しながらドラム・マシーンを走らせることが多いですか？

Pev: うーん、そうだなぁ、組み合わせだね。ハードウェアのエフェクトを使うこともあれば、録音後の加工が多いときもあるし、少しEQやコンプレッサーをかけるときもあるけど、手をつけないままがほとんどだよね？少しリバーブとEQを使うことがあるかもしれないけど。

ミキシングとエンジニアリング面のことについて、どれくらい口うるさいと思いますか？

（2人、笑）

Kowton: 素材をそのままにしておく、ということがもっと語られていいと思う。俺のアプローチは、全部を少し暖かい質感にして、それでボトムの部分がぐちゃっとしていなければ、それでよしって感じだよ。全帯域をごっそりと削った音を聞くと、ラウドなミックスになるかもしれないけど、少し加工し過ぎたように聞こえるんだ。俺は何もかもありのまま鳴らす方が好きだな。

俺らのトラックをプレイすると、レコードじゃなくても、巨大な乗り物みたいに聞こえると思う。ブォー、ブォー、ブォーって感じでさ。そういうほうが好きなんだよね。

「暖かい質感にする」には、どういったものが必要になるんでしょうか？

Kowton: Tomの卓に通すか、俺が持ってる真空管EQが質感を暖かくするにはすごくいいんだ。世界で一番高いEQではないけど、このEQに3、4回音を通せば...。TL Audio Ivory SeriesっていうEQだよ。Culture Vulturesとか1400ポンドくらいするのを使ってる人も知ってるよ。俺の真空管EQは150ポンドだけど、十分いいよ。比べてもほぼ同じぐらいいいね。全く同じってわけじゃないけど、ほとんど同じだよ。

送ってくれた機材リストに、いくつか面白いアウトボードが書かれてました。特にEkdahl Moisturizerのスプリング・リバーブですが、この機材について教えてくれますか？

Pev: ああ、あれは俺たちの機材の中でも変わった部類に入るよ。基本的にはスプリング・リバーブで、内部にはフィルターも一緒に付いていて、外側にバネがある。何度かこのリバーヴがカオスの原因になって、いくつかのギグでは、観客の中に熱狂し過ぎて俺たちのライブに加わろうとした人がいたことがある。

Kowton: マルメ（スウェーデンの都市）で10人くらいを相手にプレイしたんだけど、Livity Soundの3回目のギグだったかな。酔っ払ったスウェーデンの女の人が前の列にいて、俺たちがプレイしている最中に、バネを前後にブワンブワンやってきたんだ。かなりおかしかったよ。

Pev: そんなことあったね。どういうサウンドだったっけ？

Kowton: 水中みたいだったね。

Pev: 繊細ではないんだけど、繊細ではないことが俺たちをこのリバーブに惹き付けてるんだと思う。

Ibanezのマルチ・エフェクトも書かれてましたが、一般的にはギターに使われるんじゃないですか？

Pev: そうだね。実は、80年代初期のギター用ラック・エフェクターなんだ。入っているディレイはまあまあかな。だけど本当にクールなフランジャーが入っていて、それでこのエフェクターを使ってるよ。

Kowton: 俺らの武器の中で一番観客が喜ぶのはフランジャーだな。「おい、もっとフランジャー！もっとフランジャーかけろ！」ってライブ中、Craigに向かって叫ぶ人がたくさんいるよ。

ソフトウェアを使っているときには出来ないけど、ハードウェアだと出来ることがあると思う。Ekdahl Moisturizerのリバーブ、もしくはこのフランジャーと同じくらい素晴らしいサウンドが鳴るソフトウェアを使ったことがないな。だから、たぶん俺らはとりわけ最小限の機材を持っていて、そのうちの1つを使うことでトラックに命を吹き込むんだ。ミックスに奥行きを持たせるために、聞こえるかどうか微妙なリバーブを使うことと、トラックを特徴付ける要素としてフランジャーを使うこと、この2つの違いが、ハードとソフトの分かれ目みたいなものだと思う。全体的に見て、トラックにとってとても重要になりそうだったら、たぶんハードウェアを使うと思うな。

リバーブ、空間、静寂のような要素がLivity Soundの音楽で大事な役割を果たしているように見えるんですが、適切な見方でしょうか？

Pev: そうだね。俺たちが普段やっている進め方は、まずたくさんの要素を取り込んで、不必要な部分を取り除くんだ。「この音は必要かな？」「これは必要？」「これは取り除ける？」ってね。そうして残ったものは、もしかしたら骨格だけみたいかもしれないけど、しっかり機能するトラックだと思ってるよ。

Kowton: 多くの音楽は詰め込み過ぎてると思う。俺が買ってプレイしようとしてるたくさんのレコードは、あまりにも多くの要素が含まれてる。Tomも俺と似た見方をしてるよ。

初期の作品で自分がやったことを悔いたりしました？

Kowton: ははは。ほぼ確実にそうだね。

このスタジオで印象を受けたことの1つに、エフェクトの機材はかなり多くあるように見えるのに、アウトボードのシンセをそれほど多く使っていない、ということなんですが、これには理由はありますか？

Pev: 俺たちはメロディが特に得意だと感じたことは一度もないかな。正直言うと、メロディが俺たちのサウンドの一部だと思ったことは一度も無いよ。俺はたまにソフトウェアのシンセを使うけど、それよりもドラムだよね？ドラムとベースライン。それが俺たちの一番の売りだよ。

では、メロディではなくとも、メロディのような要素は普段どこからやってくるんですか？

Pev: たぶん、もっとサンプルをベースにしたものからだと思う。サンプルのピッチをいじるとか、そういったところからかな。俺らはアナログ・シンセ・オタクとかではないよ。

Kowton: 俺が気に入るサウンドのシンセはそんなに多くないんだ。さっき話したMoogは長く持っていたよ。TomがDave SmithのTetraを買ってさ、音はまあまあなんだけど、俺にとっては特別何かしてくれるというわけじゃない。サンプリングしているとき、特に昔のジャングルで使われてたパッドをサンプリングするとき、そのサウンドはちょっとメランコリックで、煌びやかな感じがするんだ。色んな機材を買わなきゃいけないってよりも、単にサンプリングするだけだから簡単だよ。だって、そのサンプルは自分が一番最初に欲しいと思ってた音に近いからね。

俺らが好きな音楽の系統は、ほとんどのシンセ・パートがサンプルなんだ。Benny Illがブリストルで一度プレイしたときに、一緒に話をしたんだけど、彼が言うには、90年代初期のイギリス人は、それまで何年もアメリカ人の作品からパッドをサンプリングしてたらしいんだ。同じサウンドを使ったトラックを20、30曲くらいリストにしていくことが出来るって言ってたよ。当時は単に、誰もシンセを持っていなくて、みんなサンプラーを持っていたからなんだ。俺はこのサンプリングに関するアイデアを引き続きやっていきたいかな。

自分が持っているレコードからネタを探し出すことが多いですか？それとも、ネタを掘りに出かけますか？

Pev: これまで一度もしっかりと使ったことのないハード・ドライブに10年分のサンプルを入れてるんだけど、そこから適当にサンプルを探し出して、選んでる。

最近は、どのDAWを使ってますか？

Pev: Abletonを使ってるだけだよ。JoeはLogic使ってるよね？DAWは全部試してきたけど、LogicとCubaseは俺にはちょっと....、どちらもコツを掴むのが簡単じゃないんだ。Abletonならもっと分かりやすくて、簡単に取り掛かることが出来るよ。Logicは白紙の状態みたい。

全体的に見て、ソロか共作かでアプローチは変わることが多いですか？

Pev: そうだね。変わると思う。コラボレーションをしているときは、相手のエネルギーからアイデアがもらえるけど、俺の場合、1人で制作しているときは、確実に、もっと熟考して考え抜いたものになる。

2人が一緒に制作したときの成功率は高いと思いますか？

Pev: 答えるのが難しいね。

Kowton: 何曲かいいトラックは作ってきたと思うよ。

Pev: でも、ときには何かやっても全然よくないことがある。その日の終わりになって、全然よくないなぁ、って思うことがあるよ。そういう過程なんだよ。ある日には上手くいくけど、違う日には上手くいかない、ってことを自分で理解していれば、折り合いをつけて上手くやっていくことが出来るよ。

現在、Joeがソロの作品を作るときは、全体的に見てどういうアプローチを取ってますか？

Kowton: 今でも移動中にたくさんトラックを作ってるね。ラップトップだけ使ってね。でもレコーディングにはRed Bullのスタジオを使ってる。ラップトップに入ってるものは全部そのスタジオで録ってるけど、もともとは良質な素材から録ったものだよ。だから基本的には、スタジオに入るたびに下準備をして、移動中に「これをこうして、あれをこうして」ってアレンジし直してる。

最近、Joeはディストーションとノイズを使った実験をたくさんしているように個人的には思うんですが、これは何に起因しているんでしょうか？

Kowton: どうして始めたのか自分でも思い出せないな。さっき話した真空管の機材を買った後、その真空管はすごくいい感じのエッジを生み出すことに気付いたんだ。デジタルのつや立ちを丸くして、キックとビートだけとか、さらに音数を減らしても大丈夫な気がしてきて、それで十分な感じになるんだ。あの真空管が加える音響と倍音が十分にあるから、最もシンプルなループでもグルーヴが長く維持できるんだ。

では、結局はほとんど微調整ということですか？

Kowton: その通り。（俺がやっているのは）骨格だけのパーツと、骨格のままでも機能できるようにする要素だけ。

2人は今、違う街に住んでますが、もっと一緒に制作していく予定ですか？

Pev: うん。何個か取り組んでいるところだよ。俺たちの制作のやり方は、結構気楽なものだけどね。あと、もちろん俺たち2人共、自分自身の音楽もやっているけど、ビジネス・プランや実用的なアプローチを取っているわけじゃないし、お互いに時間があるときに気楽にやってる。楽しむものであって、強制されるものじゃないからね。

それだけ気楽にアプローチしているにも関わらず、Livity Soundに関連した全てのことが、ここまで人気になり成功を収めてきたことは驚きじゃないですか？驚く、というのは言葉が悪かったですね。ですが、昨年は非常に注目を集めましたよね。この前進をどのように捉えていますか？

Kowton: 停滞しないかどうか少し心配はあるかな。全てを1つにまとめ上げるのにすごく時間がかかったし、それに、俺は違う街に住んでて、Craigも時々街を出てることがある。毎週毎週ブリストルに行って制作をするのは簡単じゃないよ。唯一のプレッシャーに思うのは、前進し続ける、ということだな。

Pev: 何て言った？

Kowton: おまえ聞いて無いだろ？前進し続けること！あとインタビュー中は集中すること。