「今は、お金を稼ぐ為のブッキングを取る為にレコードを作っている。レコードを出してもお金にならないからね」。これは昨年、Move DがRAのインタビューで90年代の活動状況と比較しながら語った言葉だ。2007年以降、レコードの売上が増えていると見受けられる。しかし、業界全体の総売上が増えているとは言え、各タイトル単位で見た時、特にエレクトロニックミュージック界隈でのそのプレス数はここ数年、むしろ減少傾向にあるようだ。それは「200枚限定」などといった喧伝付きのプレスリリースを目にする機会が増えたことからも裏付けられる。総売上が増えていながら各タイトルのプレス数が減っている状況は、レコードをプレスするDJ/アーティストが増えたということ、さらには彼らのブッキング獲得競争がますます激しくなっていることを示唆している。テクノアーティストとして知られるAkiko Kiyamaは、2004年にPortableのレーベルSüd Electoronicからデビューを飾り、Richie Hawtinのミックス『DE9: Transitions』にトラックがフィーチャーされる等、活動初期から既に高い評価を築き上げていた。彼女が母国日本からベルリンに拠点を移したのは2007年。そうしたクラブミュージックにおけるビジネスの変遷期に身を置くこととなった彼女も、各地で毎週のようにライブパフォーマンスをこなしながらコンスタントにリリースを重ねてきた。傍から見ればアーティストとして順風満帆に活動を続けているように思えたAkiko Kiyamaだったが、2012年、モスクワのレーベルNervmusicより発表したアルバム『Deviation』を境にリリースが途絶えてしまう。

そして2年が過ぎた昨年の秋、筆者は彼女がKebko Musicという名のレーベルを始めるという話を耳にする。Akiko Kiyama自身もディストリビューションを手掛ける他、本人のウェブサイトを通じて、カセットテープを媒体とした作品が届けられるというのだ。シルクスクリーンプリンティングが施された第1弾シングル「Newmud」、4月に予定されているアルバム『Ophelia』には、これまでAkiko Kiyamaが主に発表してきた所謂ダンスミュージックとは異なり、踊れるか否かという単なる二元論で語ることの出来ない、より俯瞰的な視点を持ってサウンドを見つめ直し構築した音楽が収められていた。

この2年の間に彼女に何があったのだろうか。そして何が彼女をレーベル設立に導いたのだろうか。Akiko Kiyamaのパーソナルな一面にまで話が及んだ今回のインタビューでは、スカイプ越しに一つずつ丁寧に質問に答える彼女の発言から、ライブパフォーマンスを行い生活していく自分、そして、制作者としての自分、その狭間で理想を追い求め葛藤を繰り返していたことが明らかになった。また彼女は7年という月日を過ごしたベルリンを後にし、日本に帰国するのだという。今もダンスミュージックファンに留まらず、多くの人々を惹き付けてやまないベルリンを離れるという決断を下した彼女が語る言葉には、音楽活動を継続していくもうひとつの在り方が示されているのかもしれない。

今、ディストリビューターに頼らず、ウェブサイトを持って自分で販売している人が増えてきていますよね。

多いと思う。テクノの場合、Bandcampはそこまで流行っていないし、少し形にこだわるというか、レコードを綺麗につくって、数百枚しかないものを流通会社にしっかり通して、そこにもある種の格付けというか。流通会社そのものがレーベルのようなブランドや役割になっているのかな。インディロックなんかは、作った曲をそのままBandcampにアップして、直接売っていて非常にシンプルで、そういうスタイルが普通になってきていると思う。

今回、ディストリビューションを自分でもやろうと思ったのには、何か直接的な理由があったんでしょうか？

最初に友達とカセットテープをやりたいって話していて、カセットプレイヤーを持っている人も少ないし、好きな人や興味のある人に手に取ってもらえるように、と思ってリミテッドでカセットテープをリリースしてみようと思ったんだけれど、よくよく考えたらカセットのサイズは封筒にも入るし、100本とか200本とかの数なら自分でさばける量だなって思って。流通に使うコストの代わりに、良いパッケージにしようとか、良いカセットにしようとか、良いマスタリングにしようとか、そう考えました。

あと、この10年くらいは90年代と違ってレコードの売上だけで食べていくっていう考えがそもそも無くて。ライブパフォーマンスやDJをしてミュージシャンは生活するのが普通になっているんだけど、私の場合、いざクラブイベントでライブをして、ふと自分のやっていることに矛盾を感じるというか、なかなか満足出来ていない部分もあって。私自身、昔からコンサートとかライブとか自分から行かなくて、そういうところで感動することって悲しいことにほとんど無くて。どちらかというと一番感動する時って、家にいて一人で聴いている時なんです。ライブとかそういう空間に行くと、どうしても周りのお客さんの雰囲気とか、異常に大きい音とか、照明とかスモークとか、そういう色んな要素が入ってきて、静かな気持ちで音楽を聴けなくなっちゃうっていうのがあって。

ライブを否定するわけじゃないんだけど、数年前に毎週ギグを入れてやってみたら、自分としては逆にやる気がなくなってしまったり、音楽のモチベーションが下がってしまうことがあったんです。本来、自分が音楽をやろうと思ったのは、まず音楽が好きという、非常に個人的で、ある種、自分のためにやっていたものに、たまたまお客さんがうけてくれて、お客さんとマッチしてくれたからライブに出させてもらっていたんだけど、毎週やっていると本質がズレてれてきて、次第にライブと制作をどうにか分けられないかなと考えるようになったんです。

でも、今の音楽業界のシステム的に、リリースだけの売上では厳しい、それでも音楽を買ってくださるお客さんもいる中、何でそんなにコストがかかるのかっていうことを色々考えて、結局アーティストが全部自分でやればいいんじゃないかって思い始めて。それがセルフディストリビューションをやろうと思った理由の1つかな。あとレーベルと昔契約した曲が今どこで売られているのか全く把握出来なくなっているものがいくつかあって、私の意図と関係なく、例えばSpotifyに自分の曲が置かれているとか、知らない人がリミックスしているとか、そういうことがあって。もう少し自分の曲は自分で管理出来るようにしたいなっていう思いもあります。

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数年前にライブでモチベーションが下がったというのは、具体的には何年前ですか？

2008年、2009年にヨーロッパで頑張ってライブのツアーした後あたり。それからまたもう1回頑張ろうってことで2011年くらいからライブするようにしたんだけど、楽しいことはもちろんあるんだけど、あくまでそれはパーティーだとか人に会えるっていうのがプラスなのであって、自分がやっていることをもう少し良く出来ないかな、といつも思っていたんです。ライブをやる度に落ち込んじゃうことがあって。なるべく自分が好きな場所でやるようにし始めて、それで本当に良くなったんだけど、全然違う場所に呼ばれてプレイすると、自分が思っていることが全然伝わらないというか。

私が好きじゃないことをちょっとやってみると、例えば、分かりやすくローをカットしてブレイクの後でドンとキックやベースを出すとか、そういうものの方が反応が良かったり、単純に自分の出す音がお客さんと合っていないなって思うことがあったり。でも、それはある種当たり前というか、お客さん一人一人に好みの違いがあって当然だし、お客さんの前でライブをする以上は楽しんで帰ってもらいたい思いもあるし、ライブ空間というのは一方通行でもいけないと思うし。そういう矛盾です。特にクラブという環境では、DJの人がやっていて自分が2時とか3時にライブするってなった時に、それまでガッツリお客さんが踊っている状況で突然ライブを始めても、お客さんが期待しているのはむしろDJの続きのようなプレイっていうことが多いんじゃないかな。

お客さんが求めるものと自分のやっているプレイにズレを感じていたと。現在はライブの数は減らしているんでしょうか？

今は月に1回くらいです。

それは意識的に？

そういうわけでもないけれど。前はライブのオファーがあれば、なるべく引き受けるようにしていたんです。それは自分がミュージシャンって形で生活をしていて、ライブは仕事でもあるから好き嫌い言っていられないし、ブッキングしてもらえること自体とても有り難いとも思っていたけれど、音楽的な面でライブと制作で矛盾が生じた辺りから、音楽と生活を分けるように努力していて。つまりはライブに依存しない生活というか。2年くらい前からちょっとずつ分けることが出来てきたんだけど、代わりに時間的な制約もあるので、何となく月に1回くらいが平均的かな。

2年前から音楽以外の仕事やアクティビティーも行ってきたということですか？

そうですね。ある種、そうしたかった部分もあって、そうすることで自由の身になれるというか。ただ自分の好きなものを作って、しかも自分でリリースするとか、もっと自由に出来ると思って。

2014年にTape HissからEPをリリースするまでの、2年くらい何もリリースしていない時期と重なりますね。

そうですね。単純に音楽以外の仕事で忙しかったのと、リリースしなきゃっていう気分じゃなくなったので、もう少し好き勝手な、全く売れなさそうなものとかたまに作ったりして。結局そういうものの一部が今度のアルバムだとかシングルに入っているんだけど。もちろん、この2、3年のうちに作ったものの中で4つ打ちのものもあるんだけど、その数は少なめですね。

今って昔に比べてリリースする人が増えている状況で、その中でブッキングを得ようと自分を売り込むためにリリースをしているような風潮があると思うんですが、そういうことをしなきゃいけないっていうプレッシャーが無くなったということですか？

そう。プレッシャーが無かったっていうのと、そういう構造自体にうんざりしていて。本来、私が音楽を始めたきっかけから考えると音楽は自然発生的なものだったし、リリースしなきゃいけないというプレッシャーは持つ必要ないかなと思って。1つ1つのレーベル単位で見ると90年代と比べると売上が少ないのかもしれないけど、市場に出ている曲の数は膨大だと思うんです。特にテクノ界隈で言うと、レコードをリリースして、それをパーティーに持って行って名刺のように渡すんです。私もそういうスタイルをなんとなくやってきたけど、自分にはあまり合わなくて。本来そうじゃなくてもいいのかなって思っていて。DJは未発表のプロモトラックを持っていることが大事になっているようなところがあって、ちょっとプレイされて実際にリリースされると、もうその曲は古い、みたいな。それって曲1つ1つが割り箸のように使い捨てにされていて、それじゃあ1つ1つの曲に制作者も思い入れ出来ないし、それよりも量。新しいリリースを常に出さなきゃいけなくて、質より量という感じがちょっとね。もちろんそうじゃないアーティストやDJもいるんだけど。自分が好きな曲は、例えば中学生の時から聞いていたような曲は、今聞いても好きだし、数えられない程聞いているんだけど、そこまで好きな曲ってそんなに出会えない、出会える訳が無いと思うので、もう少し1つ1つの曲に時間をかけて向き合えたらなと思っています。

4つ打ちの曲を作る量が少なくなっていると言いましたけど、op.discからアルバム『Doublethink』を出した時、ミニマルなテクノ/ハウスとは別に、そうではない楽曲も入っていました。所謂ダンスミュージックに限らない音楽をやっていこうという姿勢はこの頃から表れていたように思います。

『Doublethink』にも2曲、ダンスフロアで流すタイプではない曲を入れさせてもらって、あとその次に出した『Deviation』（Nervmusicより発表されている）でもそういう曲を何曲か入れさせてもらいました。アルバムだとそういうものを入れられるんだけど、いざ作ってみると楽しくて。それで最近はそういうのばっかりやっているんだけど、作っていて面白いです。

『Doublethink』をリリースしてからは、違うやり方、違う気持ちで制作をしてきたんでしょうか？

クラブで音楽を流す時、音質がすごく物を言うんですよ。家で聞いているだけだと、クラブほど家のシステムが良くないこともあって、それが最優先ではないんですが。例えばBen Klockのキックの良さっていうのは、クラブで聞くとすごく分かるじゃないですか？でも家で聞いている身としては、ある程度音が良ければ、アーティストが伝えたいことっていうのは分かるものがあると思うんです。The Ghost Of A Saber Tooth Tiger、Timber Timbre、Revolverとか好きなバンドがいて、特にThe Ghost Of A Saber Tooth Tigerは初期の頃myspaceにものすごくダメな録音を載っけていたんですよ。マイクがたまに遠くなっちゃうとか。録音としては本当にダメで。その後、その曲はちゃんとアレンジ録音されてアルバムとして出たんだけど、私は最初のその、言葉は悪いけれど貧相なレコーディングが本当に好きで。何というか淋しい感じ、切ない感じ。もっと素直に純粋に音が鳴っていたのかな。もっと作為的じゃなくって、たまたま自然な流れのものが録られていたのかな、っていう。拙いところが良いと思ったんです。私が音楽で感動するところっていうのは、テクニカルな部分とか良い機材とかではなくて、作品の本質の部分。テクニカルな部分が本質、っていう考えも否定しないし、そういうスタイルのアーティストもいると思うんだけど、もっとメロディとかメッセージの方向で人の気持ちを動かすアーティストっていうのもいて。自分はピアノを弾くとか、そっちの方の人だったので、音楽的なものに興味があるんです。

自分の音楽はどこか拙いというかダメだなと作る度に思うことがあるし、ジレンマを感じていたんですけど、制作と並行してライブをする時に、お客さんが「オリジナルだ」って言ってくれることがあって、それはすごく嬉しい褒め言葉で。だから、ああいうキックやハットの音が出せないっていうところで一喜一憂するんではなくて、なるべくオリジナルなもの、自分が出来ることにフォーカスするようにしようと思ったんです。

『Doublethink』が出て、次に『Deviation』を作るって時に、もう少し自分の苦手なところを受け入れて、自分が得意としているというか、他の人から見て違っているところにもうちょっとフォーカスしてみようかな、という気分になれた。2009年から2010年の期間は色々と音楽の方向性に迷っていたんです。たまたまテクノを作り始めてリリースしてライブし始めちゃったから、テクノの人ってイメージになっちゃったけど、よくよく考えれば、色んなジャンルが好きだったし、もう少し幅広く自由に考えた方が良いのかな、って迷っていて、だから『Doublethink』ってタイトルにしたんです。

そうして音楽との向き合い方が変わった中、今回レーベルを始めるようになったきっかけは何だったのでしょうか？もともと構想はいつぐらいから考えていましたか？

2011年の9月かな。ロシアに仲の良い女の子がいるんですけど、ライブでロシアに行くと、いつもその子が「こないだ曲を作ったんだ」って聞かせてくれるんです。それで、その時の曲がすごく面白かったんですよ。すごく気に入ったんです。フィールドレコーディングのようなものに彼女の声のパフォーマンスっていう内容で、すごく録音の状態が悪くって。あまりテクノレーベルをやろうっていう気持ちは無かったんですけど、もし自分がレーベルをやるとしたら、こういう音楽を出したいなってその時に思ったんです。絶対的に世の中に知られていないタイプの音楽、だけど私が聞く限り良いと思った音楽を出せたら良いなと思って、その時彼女とその話をして「どうやって出す？」ってなった時に、何故か私が「カセットテープ」って答えてしまって。そうしたらその子も「それすごくいいじゃん」ってなって。何となくカセットテープでちょっと変わった曲をやってみようかなって、その時少し頭に思い浮かんだって感じですね。

その友人というのがVarya Pavlovaという名前で、Lisokotという名義で活動している人です。Kebko Musicから出る曲の半分くらいは彼女の声を使っています。Kebko Musicからは私が最初にリリースするけど、自分じゃない人の音楽でも良いと思っています。私が面白いと思うもの、好きな曲を出したいというのがあって、あんまり聞いたことが無いような曲を、ジャンルでいうとよく分かんない音楽を出したい。アンチダンスという気持ちも無いし、ただどこかに作品として面白いところがあれば、ジャンルは4つ打ちでもロックでもエクスペリメンタルでもいいです。どこか不思議な感じのものを出したいですね。だから必然的に多くの人が好きとは言えないようなものになるかも。

今回、シングルカットの「Newmud」とアルバム『Ophelia』を聴かせてもらって、ビートが控えめになっている印象を受けました。ビートではないところの素材の動きで見せるというか、音と音の重なりで出来る響きというか、そういう要素が色濃くなっている印象を受けました。

サンプリングに関しては、自分の声やギターなど曲に合わせて録音してしまうこともあるし、ただサンプルとして録っておいて後で使ったりとか。以前から、演奏したり直接録音したりすることはあったんですけど、今回かなり演奏部分が多い分、メロディやハーモニーが増えていますね。

メロディやハーモニーというのは、子供の時に学んだクラシックが基礎になっているんでしょうか？

和音とか自分の癖が出るっていうのはあると思います。でもそこへクラシックの理論とか和声だとか、そういうものを入れることはしていないですね。むしろクラシックをやっていた時はバッハがすごく好きだったから、聴き方という面で影響を受けているかもしれないですね。横のラインとハーモニーの縦のラインが並行して時間で動いていく感じを聴いていくっていうやり方をクラシックでよくやっていました。実際に楽器を弾いていた時期はほとんどクラシックのものを弾いていたので、今何かを弾こうとした時、ジャズとかそういう方向になるってよりも、クラシック寄りに自然に行っちゃうかもしれないですね、あまり自分で意識はしてないですけど。特に演奏面ではそうかもしれないですね。

今回レーベルを始めるにあたって、完全にビートを無くすということは考えませんでしたか？

いや、そんなにアンチビートというわけでもなくて。そういうリズム要素も好きなんです。ただ、リズムやグルーヴは踊るために使わなくてもいいんじゃないかって。

どういうアルバムにしようというアイデアはあったんでしょうか？

“Newmud”を少し前に作った時に、初めてこれまで作っていたものと色んな意味で違うものが作れたなという感触があったんですよ。だからビートが有るとか無いとかは別にして、そういう作品を集めて一つのアルバムという形にまとめてみたいなと思うようになってきて。

なるほど。アルバムのタイトル『Ophelia』はHamletのOpheliaを指しているんですか？

どちらかというと、MillaisのOphelia。さらに言えば、夏目漱石の『草枕』で取り上げられるOpheliaですね。Opheliaは収録曲のタイトルでもあり、アルバムのタイトルでもあるんですが、曲の方は、4つ打ちやループの部分もあるし、グルーヴはひっかかるような感じだったり、もつれるようなところもあったりするんです。1つの曲を前半と後半で二分にするというのも私には初めてのことで。全体の鳴りはシリアスなような滑稽なような、綺麗なような物悲しいような怒っているような、感情としては支離滅裂なんですが、音楽的なつながりはそれでも残っている、という意味で一番私がこの数年やってみたいことを反映できたこともあってアルバムのタイトルにしました。

『草枕』の中で度々MillaisのOpheliaの話が出てくるんです。それに私の作った曲が対等するとは全く思わないけれど、それでも何とも言えないある種の不思議な表情、感情という意味でしっくりくるかなと思って。主人公の人は絵描きなんですけど、俳句ばっかり作っているんです。絵を描きに田舎に行っても、結局絵を1枚も書いてない状態で、お話は終わっちゃうんですけどね。でもその中で色んなことを考察したりしていて、それでも自分は画家だっていうことだけは確かなんですよ。そういう本を読んでいて、少し共感するというか、それでもいいんだって思えてきて。自分が音楽を作る人であるということに対してポジティブに思えることもあって、非常に影響を受けたし好きな作品ですね。

レーベル始動と時期を同じくして、12月に日本に帰国していますよね。このタイミングで帰国を決意したのは何故でしょうか？

もともとドイツに来た時、2年くらい住もうかなと思っていたんですけど、3年、4年くらい経っちゃった時に、何をベルリンで成し遂げたかなぁ、と思って。今日本に帰っても、ただ3、4年無駄にしただけかなぁ、とか色々思ったりして。帰りたいという気持ちはあったんですけど、色々、頑張ってからじゃないと後々後悔するかなと考えてなかなか決心がつかなかったんです。経験という意味では、ベルリンに来て一通りのこと、例えば、ヨーロッパで出来ること、ヨーロッパの良いところ、良くないところ、両方を少し分かったかなと思ったし、逆にヨーロッパには無い日本の良いところ、良くないところ、両方の環境を少し理解出来て、そうしたことを踏まえて私は日本に住もうかなと思ったので、その選択は間違ってないんじゃないかなと少し自信がついたからですね。

東京に戻ってからはどういう風に活動をしていく予定ですか？

住むのが久しぶりなので、家を整えるところから始めます。置いてある家具とかも15年くらい前の趣味のものなので、それを変えるところからですね（笑）