最近になるまでJon HopkinsはRicardo Villalobosが驚くほど長い尺でリミックスを手掛けるアーティストとして有名であることを知らずにいた。Hopkinsは笑っていたが、この一件は彼がエレクトロニックミュージック界で絶大な評価を得るアーティストであるにも関わらず、その音楽に対する彼の知識には大きなバラつきがあることを示している。「僕はDJじゃないし、レコードコレクターでもない」と35歳のアーティストは語る。「音楽制作は非常に多くのエネルギーを必要とする。だから、休憩中に音楽を深く掘り下げることはしない。僕は好きなものがハッキリと決まっていて、限られた範囲内で音楽を探している。自分が集めたアンビエントや歌モノのレコードから同じものを何度も聴いているよ」

ニューデリーに滞在していたHopkinsとスカイプで話をした時にハッキリと伝わってきたのは、彼はここに挙げたレコードを本当に愛していることだ。これらのレコードは彼のユニークなキャリアにインスピレーションを与えるものでありコンテクストを担うものである。ロンドンの王立音楽大学でクラシックを学んだピアニストHopkinsは、Coldplayと共に多様なエクスペリメンタル・アンビエントミュージックを制作し、King Creosoteのフォークトロニカをプロデュースしている他、精巧に作り込んだエモーショナルなエレクトロニカを収録したクロスオーバーアルバム『Immunity』を生み出している。こうした彼の方向性をさらに深く掘り下げているのが最近発表された『LateNightTales』ミックスだ。今回のPlaying Favouritesでは、ドラッグと超越瞑想、そして、Enoとサイケトランスについて、さらに、こうした事柄が、今や多大な影響力を持つクリエイティブな存在となった彼にどのように影響を与えてきたのかについて語ってもらった。間違っても彼にマイクロハウスのフェイバリットトラックを尋ねてはならない！

Eat Static
Panspermia
1995

自分の聞いている音楽が大雑把だと思われていたり、カッコ悪いものとして扱われていたりしたら、そんな音楽は一度も聞いたことがないふりをしてしまいがちだけど、実は僕はEat Staticの大ファンだった。シンセアレンジの部分が特に好きだったから、僕はそのことを堂々と公言すべきだと思っている。Ozric Tentaclesは数え切れないほどチェックしていたよ。彼らはいい時もあれば、酷い時もあったけど、僕はとてもピュアなものを目の当たりにしていると感じていたよ。

どちらもトビ系でトリッピーなバンドと思われていましたが、ティーンネイジャーのあなたは音楽を聞きながらトんだりトリップしたりしていましたか？エレクトロニックミュージックを聞くようになったのもそれがきっかけでしたか？

8歳の時から、エレクトロニックなものや、シーケンスが組まれたものならどんなものにも夢中になった。Jan Hammerの”Crockett’s Theme”、Pet Shop Boys、Depeche Modeとかね。Ozric Tentaclesや彼らがエレクトロニックミュージックをやった派生プロジェクトEat Staticを好きになったのは僕がティーンネイジャーになってからで、一緒にハイになって遊んでいた人から教えてもらって聞くようになった。ほとんどの作品はもう聞くに堪えられないものばかりだよ。彼らと言えばエリア51の話をサンプリングしたバカげたエイリアン陰謀説が有名だけど、そこには超越的で音楽的な瞬間があって、すごく面白いよ。このトラックは9/4とか結構無茶な拍子になっていて、使われているのはアルペジオとパッド、あとはエコーっぽいノイズだけなんだ。そうそう、このトラックでトリップしていたことをかなり鮮明に覚えている。

Eat Staticが属していたサイケトランスやPlanet Dog周辺のシーンにもクラバーとして遊びに行っていましたか？それとも家で聞くことがメインでしたか？

いや、全くクラブには行ってなかった。1997年に一度だけWhirl-Y-Gigに行ったことがあるよ。僕の音楽がクラブっぽくなった理由は、『Insides』のツアーを始めた時、このアルバムには全くダンスの要素は無かったんだけど、急にクラブでも公演することになって、そこで共演者の演奏を聞いてインスパイアされたからなんだ。仕事じゃなければクラブに行くことは滅多にないだろうけど、自分のセットが終わった後はイベントをとても楽しんでいるよ。

Alva Noto + Ryuichi Sakamoto
Aurora
2005

これはAlva Noto + Ryuichi Sakamotoのセカンドアルバム『Insen』の一曲目に入っていたトラックだ。僕が感動したのはこのトラックには全く異なるふたつの音世界が存在していること。完全にオーガニックで手を加えていないピアノに、Alva Notoが自身のサウンドを加えていて、その中間を埋めるものは一切ない。完全に有機的なものとデジタルなものがぶつかり合っていて、深く人間的でありながらエレクトロニックなものが浸透している。デジタルなサウンドに合わせて生楽器を加工するのではなく、そのままにしておくこともできるんだってこのトラックを聴いて気付いた。そのコントラストがどちらの要素にもポジティブな効果をもたらしていることは『Insides』にも大きな影響を与えているよ。Sakamotoの即興演奏にはスキル、美しさ、そして、自然さがあって大好きだ。彼は少しの音だけでとても深いムードを描くことができる。「less is more（少ないことは豊かなこと）」の見事なお手本だ。

あなたの作品のように、このトラックもかなり掻き乱されていてグリッチーですね。2000年前後にあったラップトップ主体の実験的なエレクトロニカやマイクロハウスも好きでしたか？

そのあたりの音楽は全く意識していなかった。エレクトロニックミュージックという意味では、僕の知識はとても限られた範囲のものでしかない。当時はもっとフォークなものを聞いていたし、King Creosoteのアルバムのプロデュースをしていた頃だ。確か誰かがこのトラックをかけてくれたんだ。たぶん、それがきっかけで興味を持つようになって、エレクトロニックミュージックを再び意識するようになったのかも。

あなたが今回選んだトラックの多くにも言えることですが、”Aurora”もかなり尺の長いトラックです。自分が気に入っている曲の長さについて教えてください。もちろん、Villalobosのような人は極端な例だとは思いますが。

実は二週間くらい前にMari Kvien Brunvoll ”Everywhere You Go”のリミックスバージョンを耳にするまで、Villalobosが長い曲をやっているって知らなかった。そのリミックスはそれほど展開があるわけではないけど、ずっと終わらないでほしいと思うトラックだった。たぶんVillalobosは「なんで終わらせないといけないんだ？」って思ったんじゃないかな。それで長いバージョンにしたんだよ。自分なりの世界を創造できることは素敵だと思う。僕も年を取るごとに曲が長くなっている。単に自由にやるのが好きだからだよ。僕はラジオに出ることがないから、好きなだけ曲を長くすることができる。

Daniel Avery
Platform Zero (Volte-Face Remix)
2015

このトラックのように長い時間をかけてビルドアップして壮絶なピークに向かっていくという構造は、クラブトラックとしては普通ではありません。この点については、あなたにも似ているところがあると思いますか？

何をもって普通の構造になるのかはよく分からないな。このインタビューってどこまでぶっちゃけていいのかな？このトラックをすごく好きな理由は・・・ドラッグ体験にとても似ているからなんだ。踊ってトリップして部屋に戻るっていう感じ。機能的なリズムなんだけど、夢心地な感覚が反響しているようなスペーシーな要素があって、その部分は自分と繋がりを感じたよ。

その通常とは異なる精神状態についてですが、超越瞑想を実践されているのは本当ですか？

一日に二回やっている。とてもいいよ。超越瞑想を始めて気付いたのは、瞑想直後にトラックを聴くと、全く異なる次元が生まれているように感じることだ。まるでトラックを可視化したように、色彩がさらに鮮やかになり、上手く言葉にできないけど、それまで気付かなかった性質が感じられるんだ。物事を知覚する能力が瞑想によって拡張しているように感じる。アイデアを早く掴めるようになるし、より深くアイデアを捉えられるようになるんだ。

聴いている音楽をさらに直感的に体験するために自分自身を開放するという意味で、ドラッグと瞑想は似ていると思いますか？

ふたつは関係していると思う。ドラッグを使えばどんな感覚になれるのかを知ることができる。一方、瞑想を学べば自然な方法で同じ場所に至ることができる。音楽の歴史を変えてきたバンドはどれも、自分自身を開放して己を高揚させてきた。エレクトロニックミュージックも例外ではない。最終的には悪い影響が出てくるものを摂取することなく、あの境地に至る道を見つけられるのは間違いなくいいことだよ。

Smog
Running The Loping
2005

このプロジェクトはBill Callahanによるものですね。確か彼はローファイなフォークを制作していますよね。

このトラックが描いている世界はかなり違うんだ。声とアコースティックギターとドラムしか使われていない。ほんの少しだけの素材で超越的で催眠性があるものを生み出している。僕も音楽にはそういったクオリティをよく求めている。詩的でおかしな歌詞をぶつぶつと歌う彼の声や、全ての素材をそのままにしているところなんかは、聞いていて相当リラックスできる。『A River Ain’t Too Much』はそういうトラックばかりだけど、このトラックは特にそうで、気だるい響きがあって普遍的だ。

Seefeel
Charlotte's Mouth
1993

僕にとってこの『Quique』は非常にインスピレーションを感じたアルバムだった。ファイフ（スコットランドの一地区）で開催されたFence Collectiveのイベントで、Seefeelの”Climactic Phase Three”を初めて聞いたけど、”Charlotte’s Mouth”の方が大きな空間が広がっていて、陽気さや多幸感は控えめで、一際美しいトラックだと思う。基本的にこのトラックは和音のループふたつとギターのようなサウンドの短いセクションだけから成り立っている。おそらくループをベースにした音楽の先駆けとなった作品だと思う。僕はFieldのファンということもあって、このトラックを思い出したんだ。このレコードは当時、有名だったのかな？

そうですね。イギリスの音楽誌はSeefeel関連のシューゲイズシーンを全てチェックしていました。あなたが最近制作している音楽はもっと勢いのようなものがありますが、それでも引き続き壮大な空気が漂っているあたりは多くのシューゲイズ作品に通ずると思います。

僕はLushを聞いていた。Lushもシューゲイズシーンに関わっていたバンドだ。だけど、僕がSlowdiveを聞き始めたのは、シカゴのPitchforkで彼らを見てからだ。僕がシューゲイズサウンドを聞くようになったのはかなり遅かったけど、もしかしたらシューゲイズが影響を与えていた音楽から僕も影響を受けていたかもしれない。思いがけないところからこの手のサウンドを徐々に聞くようになっていったね。「壮大な空気が漂う」って見事にこの音楽を言い表しているね。僕も全く同じように感じている。「シューゲイズ」って名前はとても不適切だと常々思っていたんだ。僕にとってこの音楽は内省的なサウンドというよりも、もっと優雅で陶酔的だからだ。

スコットランドのフォークミュージック集団Fence Collectiveに触れましたが、あなたは彼らと密接に仕事をしていました。最終的にはマーキュリー賞にノミネートされたアルバム『Diamond Mine』をKing Creosteと制作するわけですが、この一連の関係はどのように始まったのでしょうか？

あの時期は僕の音楽にとって大きなターニングポイントになった。友達がPip DylanとKing Creosoteの曲をパーティーでかけていて、緩い感じや、くだけた感じ、それに、分かりやすくて楽しい感じに感動したのを覚えている。それからKing Creosoteの膨大なバックカタログを探り始めて、ある時、彼に会いに行って自己紹介をしたんだ。そして彼をボーカルに迎えて何か一緒に作れないか聞いてみた。そうやって、コラボレーションが始まったんだ。すごくしっくりきたね。

Fenceの人たちが気軽に曲を書いてレコーディングする様子を見て、僕ももっと自由にもっと滅茶苦茶にやっていいんだって気付いた。ちょうどセカンドアルバム『Contact Note』の制作に一年を費やしていた頃のことだよ。『Contact Note』はクラシック路線じゃないアルバムなんだけど、あまり聞いてもらえなかったよ（笑）。技術的に細部まで作り込んでいて、クオンタイズをかけてグリッドにしっかりと沿わせていたんだけれど、僕の数学的な制作プロセスは彼らによって粉々に打ち砕かれたね。僕の音楽がもっと自由な響きを持つようになったのはそれからだ。今は、そういった不完全さを押し進めていきたいと思っているよ。

Brian Eno and Harold Budd
Lost In The Humming Air
1984

このトラックは僕のオールタイム・フェイバリットかもしれない。浮遊感があって、超越的で、恍惚を誘発させる。音楽作品というよりも自分の意識の中で揺らめく金の雲みたいなものだ。一日の最後にはよくこのアルバムをかける。僕の制作もこのアルバムには大きな衝撃を受けた。とても柔らかなドローンが彼方で鳴っているんだ。この作品の音響面を担当したのはDaniel Lanoisだったと思う。あの夢心地なサウンドは全てEnoによるものだと思っていたけどね。あとHarold Buddによる即興ピアノも聞ける。だけど、ピアノの音は加工されていて、一音一音が鳴るたびに優雅でとてもトリッピーな残響が生まれるんだ。このレコードはサウンドプロセッシングそのものがひとつの楽器に成り得ることを教えてくれた。

あなたはEnoと一緒に制作をしていますよね？

僕らは何年も一緒にたくさんのことをやってきた。彼とは2003年に会って、『Another Day On Earth』で一緒に制作したんだ。その後『Small Craft On A Milk Sea』をやって、彼が手掛けていたColdplayのアルバムにも少し参加した。あとは『The Lovely Bones』のサウンドトラックもやったね。The Necks、Karl Hyde、Leo Abrahamsたちを迎えてシドニーで行った即興パフォーマンスプロジェクトThe Pure Sceniusに参加したことは僕の音楽人生のハイライトだよ。

彼との共同制作はどのようなものなのでしょうか？Enoという存在が相当なプレッシャーになったでしょう？

彼の制作のやり方は僕が思っていたものとは違っていた。僕は彼のことを本当にテクニカルなサウンドメイカーだと思っていたんだけれど、実際はアイデアの火付け役／ディレクターに近かった。彼は音を鳴らしてメロディを奏でたり調整をしたりするけど、細かなディテールにいつまでも労力をかけることは絶対にしない。彼は人に指示を出してトラックを形にしていくことが結構多い。それは僕にとっては好都合だった。僕ができることと言えば即興だからね。Leo Abrahams（HopkinsをEnoに紹介したのは彼だった）とは学校に通っていた時から一緒に即興演奏していたし、制作でも一回一緒にやってからは、Leoとの作業はそれほどストレスには感じなかった。Leoはとてもリラックスしているやつだ。すごく子供っぽくて、卑猥なことを言う楽しいやつだよ。

The Orb
Ubiquity
1997

実はこのレコードは発売日に買ったんだ。すごいでしょ。

素晴らしいです。

あはは。ありがとう。このレコードが出たのは、僕のドラッグ時代が終わりを迎えている頃だった。このトラックにはとてもサイケデリックな世界が広がっていて、当時はどうやってあのサウンドを作っているのか見当もつかなかった。今でも素晴らしいと思う。スウィング感のある跳ねたビートが奇妙だよね。中盤になると急にサウンドが柔らかくなって、脈絡のない雰囲気に変わっていく場面があるんだ。揺らめくリバース音も使われているよ。今聞いてもびっくりさせられるし、それがこのトラックを好きな理由だ。このトラックは曲というよりも旅のように聞こえる。すごく奇妙なトリップ体験だ。

このトラックは様々な音が入り混じっているように聞こえますね。東アジアの音階からトロピカルなリズムまで、たくさんの要素が展開しています。圧倒してくるような音楽は嫌いじゃないんですね？

このアルバムはアイデアに溢れていて、もはや詰め込み過ぎなんじゃないかと思う場面もあるけど、僕にとっては何かしら接点を見出せるものがあるんだ。ミステリアスで超越的なものがこのトラックには存在しているね。

Animal Collective
In The Flowers
2009

私の友達も世界中の批評家もAnimal Collectiveが大好きですが、私はどうも好きになれない。どうしてこのトラックが重要なのでしょうか？私が納得行くように説明してください。

2007年に彼らはFour TetやCaribouと一緒にロンドンのScalaに出演していて、その公演に行くまでは僕もそれほど彼らのファンだというわけではなかった。公演での彼らはとてもワイルドだった。クレイジーなメンバーたちが叫んだり手拍子したりして、僕の思っていた彼らとは全く違う印象だった。その後に彼らのレコードを聞いたら、素敵な瞬間もあるんだけど、どうも好きになれなかった。『Merriweather Post Pavilion』には理解に苦しむトラックが何曲か入っていたけど、一曲目のこのトラックは大好きな曲のひとつだ。コード進行が格別ですごくオリジナルで変わっている。そこにボーカルが入ってくることで脈絡のないコードがしっかりと物語性を持ってつながりあうんだ。これにはやられたね。そこからトラックは揺れるタンバリンと反響するクラップが重なり合ってヘビーなキックと一緒に突進し始めるんだけど、そんなことになるだなんて思いもしないほどあり得ない展開なんだ。それだけじゃなく音楽的にも上手くできている。とてもエキサイティングなトラックだ。

このトラックは歌詞が最高ですね。レイブでの悟り体験とダンスの自由について歌われています。ですが、トラックには多くの要素が詰まっていて慌ただしく、賢さをひけらかしているように感じられるため、私としては試験問題を出されているような気分になります。

僕は基本的にすごく複雑な音楽を聞いたりはしないけど、このトラックはとてもダイレクトだと思う。たくさんのことが展開しているけど、そこには明確さがあるんだ。君が歌詞について触れてくれてよかったよ。「今晩だけこの身体から離れられるなら」っていう部分があるでしょ。そういうことを生きている間ずっと考えていて、突然、自分のフェイバリットソングの中で同じことが触れられていたら、相当アガるよね。

Bibio
Saint Christopher
2011

このトラックは『Mind Bokeh』っていう相当おかしなアルバムのラストに収録されている。アルバムにはびっくりするくらいポップな瞬間がたくさんあるんだ。すごいなと思うけど、それほど自分の好みであるわけでもない。でも、このトラックには、僕が好きな部分でもあるんだけれど、彼らしい一面が表れているんだ。これより前のアルバムでは、彼はギターだけで素晴らしい音楽をたくさん作っていて、真空管やテープを使ってレコーディングしていた。時には、水に浸けたテープを使ってレコーディングすることもあって、サウンドが全体的にぐらぐらして、一度も味わったことのないのにノスタルジアを感じるものになるんだ。Boards Of Canadaがエレクトロニックでやっていることを、彼はギターサウンドでやっている。この曲はギターとエフェクター、それにとてもシンプルなビートから成るループで編み込んだタペストリーみたいなトラックだ。彼が描く憂鬱で低調な空気は本当に美しい。

Yo La Tengo
Green Arrow
1997

これは『I Can Hear The Heart Beating As One』っていう素晴らしいアルバムのトラックだ。アルバムはディトーションギターを前面に打ち出していてボーカルはその向こう側から聞こえてくるミックスになっている。かつてのMy Bloody Valentine的なやり方だね。一方、このトラックはアルバム中盤に収められていて、びっくりするくらい静かな休息のひと時を提供している。気だるくて美しく、それでいてとてもシネマティックなインストナンバーだ。

そのシネマティックな一面は多くの人があなたの音楽を聞いて感じているものです。この一面はどのようにして培ったのでしょうか？

間違いなく直感的に生まれたね。ロンドンではハックニーに住んでいてボウにスタジオを構えているんだけど、僕はこのエリアに閉じ込められているような気分がするんだ。十分にスペースがあると感じられない。僕は音楽の中にスペースを見出したり、瞑想をして自分の内側にスペースを見つけたりするのが好きなんだ。あと、音楽から映像を喚起させることを考えるにあたって、映画音楽は僕に大きな影響を与えている。僕は映像と音楽を別々には考えない。僕がやっと予算を手に入れた時、ミュージックビデオを映画並みのクオリティにするためにたくさんの力を注いだのもそのためだ。その時の経験は僕にとって大きなステップになったよ。

このインタビュー中、私は「瞑想的」という言葉をメモに書き留めました。あなたは自分が聞く音楽を語る時、何度もこの言葉に関連した事柄に触れています。孤独なスライドギターを使ったこのトラックも特に心穏やかな作品ですよね？

間違いなく僕にはそういうもの（瞑想的なもの）が必要だ。『Immunity』のアルバム公演を158回やってきたけど、その制作のせいで不眠症になったんだ。音楽はどれも素晴らしいけれど、僕は音楽に平穏を求めている。このトラックで大好きなのは、誰がギターを弾いているのかは知らないけど、自分自身に向けて、自らを癒すために弾いているように聞こえるところだ。僕らは幸いにもその場に居合わせてその音を聞いているだけのことなんだよ。