10. Convergence
3月10日 - 3月19日
複数のヴェニュー
ロンドン、UK

一晩中外出していることが仕事のうちであるこの業界においては、ミーティングがキャンセルになったり、出席率が低かったりして、時としてダンスミュージック・カンファレンスがゴタゴタな状況に陥ったとしても、さほど驚くようなことではない。しかしロンドンのConvergenceは、スタート3年目にして既に、プロフェッショナルたちによるカンファレンスとエキサイティングなナイトタイム・イベントのバランスが絶妙に取れている。デイタイムのパネルディスカッションやトークイベント、ワークショップ、インスタレーションをチェックすれば、街の選りすぐりのヴェニュー（The Roundhouse、Barbican、KOKO）にヒットする。そしてその幅広い音楽プログラム（Nurse With Wound、Omar Souleyman、Factory Floor）は、毎週末フェスティバル並に多くのDJやライブアクトがプレイするロンドンの中でも、同イベントを一際目立たせている。

RA Pick: Factory Floorのキュレートによるダーティーなエレクトロニクスの一夜は要チェック。

09. CRSSD Festival
3月5日 - 3月6日
Waterfront Park
サンディエゴ、USA

南カリフォルニアで（EDMの）超ビッグネーム無しのフェスティバルを開催するというのは、なんとも勇敢な計画であるが、それこそがCRSSDが強くコミットしている目標なのだ。北サンディエゴ湾を望む、芝生とヤシの木で覆われたウォーターフロント・パークを会場とする同イベントは、Ben UFOやGreen Velvetといったヘッズに人気のアクトや、Loco Dice、Tale Of Usらテックハウスの人気アーティストを招聘。CRSSDはこのリストの中でも最も新しいフェスティバルの1つであり（2015年に始動したばかりだ）、まだまだこれからといったところだろう。しかし、素晴らしいロケーションと非凡なブッキングポリシーのもと開催されるこのイベントは、Terri Harrelが昨年のレビューで記している通り、「南カリフォルニアの重要イベントへと成長する」要素全てを持ち合わせている。

RA Pick: 昨年のフェスティバルのハイライトだったサンフランシスコ拠点のJ.Phlipが、今年もきっとドカンとやってくれるだろう。

08. Big Ears Festival
3月31日 - 4月2日
複数のヴェニュー
ノックスビル、USA

Big Earsというタイトルは、「洞察力があり敏感なリスニング力のある人や、自分の耳をクリエイティブなツールとして使うことができる人、あるいは他の人が聞き逃しそうなことをしっかりとキャッチする人」を指している。これはラインナップの趣向にも反映されており、サウンドや音楽といった概念を広げてくれるような、様々なキャストが出演する。今年のラインナップの中で1番身近なアクトは、Philip Glass、Andy Stott、Nicolas Jaar。プログラムの多くはより難解であり、Wolf Eyes、Sunn O)))、Valgeir Sigurðsson、Ben Frostをはじめとするアーティストたちが、テネシー州東部の街のクラブやギャラリー、バー、シアターなどでパフォーマンスを披露する。Rolling Stone誌にして、アメリカで「最も粋で、最も幅広いフェスティバル」と言わしめただけのことはある。

RA Pick: クラウト・ロックの最重要バンドのひとつ、Faustの貴重なパフォーマンスは見逃し厳禁だ。

07. Horizon Festival
3月12日 - 3月19日
Bansko Ski Resort
バンスコ、ブルガリア

Horizonは、冒険好きなクラバーにはピッタリの雪中フェスティバルだ。ブルガリアの古い街、バンスコは、街の上にそびえるスロープと同じくらいアトラクションのような楽しさに満ちた街であり、数えきれない程の風変わりなバーや突飛なパーティースペースが、迷路のように入り組んだ街のあちこちに点在する。更に、物価が非常に安い。安い費用で済むスキー休暇ということで、Horizonは珍しいなイベントなのだ。4回目の開催にして過去最大規模の内容となっている今年は、Nina Kraviz、Levon Vincent、Âme、KiNK、Goldie、Mala、Gerd Jansonらの出演が決定している。

RA Pick: Bjarkiによる氷のように冷たいテクノは、バンスコの寒々とした気候とバッチリ合うだろう。

06. Ultra Music Festival
3月18日 - 3月20日
Bayfront Park
マイアミ、USA

多くのダンスミュージック・ファンにとって、"Ultra"はいろんなイメージを思い起こさせる言葉だが、良いイメージのものは特にないだろう。Madonnaがクラウドに対し「Molly（合成麻薬の一種）を見たか」どうか問いかけたとか、ティーンエイジャーの大群がPearl Jam "Better Man"のEDMリミックスで飛び跳ねているとか、クールでアンダーグラウンドな音楽イベントではない他の何かを想像する人が多いはずだ。しかし近年、かつてEDMの最強イベントと謳われたこのマイアミのフェスティバルは、少しばかり変化を見せている。もちろん、現在もメインアクトにはHardwellやDavid Guetta、Afrojackらが名を連ねている。しかし、それと同時にラインナップされているのは、Seth Troxler、The Martinez Brothers、Maceo Plex、Mind Againstといった面々。更には、思慮に富んだインディー・ダンスの象徴的存在であるCaribouまでもが、映画『Tron』にインスパイアされた同フェスティバルのフライヤー上では、AviciiやArmin Van Burrenと同じ列に表記されている。ファンタスティックな照明とサウンドのステージで、このようなアーティストたちをアメリカの若者達に紹介することによって、Ultraはエレクトロニックミュージックにおける重要な立ち位置を確立している。

RA Pick: JackmasterがResistanceステージを大いに盛り上げてくれるはずだ。

05. Electron
3月24日 - 3月27日
ジュネーヴ、スイス

過去13年間かけて、Electronはスイスで最も愛されるエレクトロニックミュージック・フェスティバルへと着実に成長してきた。ラインナップを見れば、その人気の理由も一目瞭然。Brian Enoが出演するオープニングコンサートから、Carl Craigとのファイナルバッシュまで、そのプログラムはありとあらゆるエレクトロニックの時代精神を反映している。しかしおそらくもっと重要なのは、同フェスティバルがジュネーヴの中でも1年で最も存分に狂乱できるチャンスであるということだ。Truss、Paula Templeといったテクノアクトから、The Black Madonna、Motor City Drum Ensembleなどによる温かなセット。更にはベルリンのアヴァンギャルドの名門レーベルRaster-Notonの20周年記念ショウケースが行なわれるなど、正にワールドクラスのイベントとなっている。

RA Pick: KompaktのボスMichael Mayerが、Fonderie Kuglerでのオールナイト・セットでフェスティバルの幕開けを告げる。

04. DGTL Festival
3月25日 - 3月27日
NDSM Docklands
アムステルダム、オランダ

AmsterdamのDGTL Festivalには特別な何かがある。過去の開催で、オーガナイザーたちは会場内を奇抜なデコレーションで装飾するのに力を注いでおり（2015年は巨大なロボットやエイリアンのようなものが歩き回っていた）、今年もきっと同じようなことを期待していいと思う。3月末にNDSMの造船所跡地で開催される同フェスティバルは、計6つのアリーナにMaceo Plex、Rødhåd、Motor City Drum Ensembleといったビッグネームたちが登場する。

RA Pick: Prins ThomasとGerd JansonのB2Bに勝るグッドヴァイブスが存在するだろうか。

03. SXSW
3月10日 - 3月15日
複数のヴェニュー
オースティン、テキサス

SXSWと比べると、1年のうちこのリストに登場する全てのイベントは皆小さく見えてしまう。ヴェニューの数は数十軒、ブッキングされるアーティストは2,000組以上に及ぶ。音楽プログラムだけでもこのボリュームなのだ（フルプログラムには、映像や"インタラクティブ・メディア"なども含まれる）。もちろん、ここ最近のSXWSは、かつてのように自由で打ち解けた、インディー精神のあるイベントではないかもしれない。長蛇の列やブランド・パートナーシップがお馴染みの光景となってしまっている。しかし、これほどカッティングエッジなアーティストが一挙集結する場所は、世界のどこを探しても他にないことも事実だ。年を追うごとに、ラインナップの中でもエレクトロニック・アクトの数が増えてきており、2016年はサッと見ただけでもグライム（Mumdance）からフットワーク（DJ Spinn）、ジャージークラブ（UNiiQU3）、そしてストレートなテクノ（Zenker Brothers）が名を連ねている。SXSWの包括的な傘の下に納まらないジャンルやスタイルなど、何もないかのようだ。

RA Pick: 地元テキサスのアップカマーBill Converseが、とっておきのプレイを聞かせてくれるに違いない。

02. MUTEK.ES
3月2日 - 3月6日
複数のヴェニュー
バルセロナ、スペイン

バルセロナは素晴らしいフェスティバルに事欠かさない街だが、モントリオール発のMutekのスペイン版であるこのイベントでは、よりディープでニッチなエレクトロニックミュージックを聴くことができる。4日間に渡り様々なヴェニューでイベントが繰り広げられる今年のフェスティバルでは、Kara-Lis Coverdaleがリッチなドローンをプレイ。同じく前衛的なブッキングと言えるFranck Vigrouxは、オーディオヴィジュアル・アーティストKurt D'Haeseleerとのコラボレーションによる、「デジタル以降の人新世へのロードトリップ」を披露するとのことだ。そんなヘヴィーなコンセプトのほかにも、Gerd JansonやSteffiによるクオリティの高いダンスミュージックや、RroseやReagenz（Move DとJonah Sharpe）の陶然とする雰囲気を楽しむこともできる。

RA Pick: Ricardo VillalobosとMax LoderbauerがVilod名義のライブを初公開する。サンプルとモジュラーを駆使したセットに期待大。

01. Bloc
3月11日 - 3月13日
Butlins Resort
サマセット、UK

少なくともずレイヴの楽しさの1つは、子供のように無邪気な気持ちに戻れるところにある。10歳を過ぎた頃から、自分だけの楽しみを夢中になって追いかけたことがあるだろうか？バトリンズのマインヘッド・リゾートにて昨年復活を果たしたBloc.以上に、そんな気持ちを思い起こさせてくれるフェスティバルはなかなかない。バンガローでの睡眠やウォータースライド、昔懐かしいアーケードによって、例えば「当座貸越手数料」のような単語がボキャブラリーに加わる以前の自分に戻ったような気分になる。更にはThom Yorke、Floating Points、Nina Kraviz、Surgeon & Blawan、Ben UFO、Jane Fitz、Intergalactic Garyといった素晴らしく幅広いライブアクトやDJ陣がラインナップ。Jeff Millsとレイヴしたり、『ザ・ハウス・オブ・ザ・デッド 2』のゲームで盛り上がったりと、必要なものは何でもすぐそばにあるような気さえしてくる。アヴァンギャルドでありながらも低俗な、先進的なフェスティバルと狂乱のお泊まり会が融合したBloc.は、地球上類を見ないほど、UKのとっ散らかったレイヴ精神が見事に表現されたフェスティバルである。

RA Pick: このようなラインナップの中からピックアップするのは難しいが、Andrew WeatherallとOptimoによるB2Bは間違いなく最高だろう。