今年の1月下旬、Baauer名義で音楽制作を行っているHarry Bauer RodriguesはStephen Colbertが司会を務めるThe Late Showの音楽ゲストとして約290万人の視聴者に向けて紹介された。アルバム『Aa』のスリーヴを抱えたColbertが簡潔なスピーチを述べた後、カメラは同作のプロデューサーRodriguesに向けられた。"Day Ones"がPAシステムを通じて流れると、彼はヘッドフォンをつけて肘掛け椅子に座り、自分のラップトップスクリーンを眺めながら、同トラックで使われている警笛音に合わせて首を上下させていた。この場面は短いながらも、Leikeli47のパフォーマンスへと続く重要な序章となっており、RodriguesがLeikeli47と一緒にステージに登場しなくても、"Day Ones"が彼の曲であることが分かるようになっていた。

「深夜番組でどうやってプロデューサーにライブショウをやってもらうのがいいかって考えていたんだ」と話すのはLuckyMeアメリカ支部のマネージャーTerence Tehだ。「カメラがHarryに向けられたら、彼にラップトップを開いてもらってスペースキーを押してもらう。それだけでよかった。オリンピックのFatboy SlimみたいにフェイクのCDJを置いて上下に跳ねるのとは話が違う。言ってみれば、僕たちが既に関わったミュージックビデオをライブバージョンで流したものなんだ。Harryがどんなものを耳にしているのか、彼の頭の中で流れているミュージックビデオはどんなものなのかを思い浮かべてみようと考えた。彼は確かに楽曲をプロデュースした人物ではあるけど、だからといってステージに上がってDJやスクラッチのふりをする必要はないよ」

このようなちょっとしたステージ演出はエレクトロニックミュージック・レーベルの仕事というよりも広告代理店のそれかもしれない。今年、LuckyMeはBaauer、Parc En Ciel、Bwanaによる3枚のアルバムをリリースしている。その3作品をまとめてみると、ひとつの変化が浮かび上がってくる。『Aa』はダブルプラチナムを獲得したアーティストであるBaauerの人気を上手く活用した作品だったが、一方でParc En Cielのアルバム『Path Integral』は『Samsara』にインスパイアされたドキュメンタリーと一緒に発表され、シンセを織り込んだポストロックを収めた同作の殺伐とした魅力が映像によって引き立てられていた。

それに比較するとかなり小規模のリリースとなったBwanaの『Capsule's Pride』（英語サイト）はダークウェブ上にフリーダウンロードで発表され、現在はサブページ上で管理されている。そのページをスクロールダウンすると、クラシックアニメ『Akira』の登場人物がフェードイン／アウトするのを確認できる（同アルバムは『Akira』のオリジナル・サウンドトラックと英語吹き替え版からサンプリングした素材のみを使って作られている）。こうしたリリース形式から、カルトアニメを使ったBwanaのブートレグ的解体手法に至るまで、『Capsule's Pride』は現代的で、同作の居場所がインターネット上であることは至極当然に感じられる。その一方で同作はノスタルジックでもある。それは『Akira』が使われているからというより、初期のデジタル世界の開拓者としてLuckyMeがMyspaceを通じて切り開いてきたインターネット・サブカルチャーの辺境を感じさせるからだ。

日々のレーベル運営は異なる3都市に住む4人から成る「極秘任務部隊」が担当している。レーベル設立者のひとりDominic Flanniganは数年前にスコットランドの首都エディンバラからロンドンに引っ越し、もうひとりの設立者Martyn Flynは引き続きエディンバラを拠点にしている。同じくエディンバラに住むPeter Marsdenは2013年に設立された映像制作部のLuckyMe Studioを運営している。約18か月前にはTerence Tehが参加し、同レーベルの許容範囲はもちろん、アメリカでの地場が広がった。Warpとニューヨークでシェアする事務所でTehは、エクスペリメンタル系R&Bボーカリスト／プロデューサーのLittlebabyangelと近しく仕事することができている。北アメリカとカナダの所属アーティストがかつてない勢いで増え続けており、そこへ新たに加わったのがLittlebabyangelだ。「Dom（Dominic Flannigan）が初めて仕事を任したのがTerenceだった」と話すのはClair Stirlingだ。Eclair Fifiとしても知られる彼女はレーベルのA&Rとイラストレーションを担当している。

ふたつのタイムゾーンで運営されている現在、LuckyMeをスコットランドのレーベルと呼ぶのは、IBMはアメリカの会社だとか、Legoはデンマークの会社だと言うようなものかもしれない。レーベルのタイトル数が増えていくにつれ、LuckyMeをクラブミュージック・レーベルと呼ぶとことさえも難しくなってきている。Hudson MohawkeやMachinedrumといったアーティストによる初期のEPは、LuckyMeを軸にして斜めからダンスフロアにアプローチしていたが、American Menが発表した『Cool World』でのマスロックを境に、レーベルは2010年から特定のサウンドを持たない存在に変わっていった。American Menのメンバーふたり、Steven Shade（Sevendeaths）とStuart Turner（Claude Speeed）は、それ以来、単独シンセとドローンによって描いた風景のみを収めたアルバムの制作に専念している。昨年、エディンバラの3人組NAKEDがリリースしたEPには、Beach HouseとAngelo Badalamentiの中間を思わせる、リヴァーブで包み込んだギターララバイが収録された。

こうしたレコードの持つ造詣はときとして有名なアーティストのリリースによって必然的に失われることがある。FlanniganがKanye Westの運営するクリエイティブコンサルタント会社DONDAとの仕事について口にしたので、筆者は彼にそのことを詳しく尋ねてみた。FlanniganとFlynはパリで3～4か月かけて『Yeezus』のリリース案に取り組んだそうだ。「これからはこの件で掛かり切りになってしまうよ」とFlanniganは激怒したふりをしながら語る。「マジでこの話は進行中だよ」

彼のこうした回答の仕方からは、どのように答えるべきかしっかりリハーサルできている印象を受ける。LuckyMeのイメージに誤解が生じないよう対処することは、彼らにとって日常茶飯事だ。"ウォンキー"、"アクアクランク"、"フューチャーベース"といった言葉がレーベルに付きまとっていた時期があった。Flanniganの回答が示唆しているように、アメリカとつながりを持つ彼らは細かくカテゴライズされがちだ。「インターネットの時代は、情報の量も音楽の量もすごく多いから、みんなは物事を多角的に評価する余裕がなくなるし、以前よりもはるかに早くカテゴライズしたがる。そのことにはかなりイライラさせられるよ。そうなってしまうのは理解できるんだけどね。僕も同じことをしているし。みんなは物事をきれいに小さく収めようとする。だから僕らはそれに対して常に抗議しているんだと思う」

一方、自由放任主義の立場を取っているのがTehだ。「僕はポジティブな面もあると思っている。みんなが何かにレッテル付けしようとするのは、それは何かが作り出されたということだからね」。LuckyMeのキーアーティストのひとりHudson MohawkeことRoss Birchardが作る音楽は、ときとして既存の言葉で音楽を語る行為を不適切だと感じさせる。さらに重要な点は、彼の音楽はクラブミュージックの定義を混乱させるものであるということだ。ヒップホップとR&Bエディットをグリッチサウンドでまとめ上げ、LuckyMeの第一弾として2008年に「Ooops!」を発表した彼は、その翌年、Warpから『Butter』というそのタイトル通りの高カロリーなデビューアルバムをリリースしている。Guardian紙は同作を「高速のジェットコースターで綿菓子を食べてヘリウムを吸っている」ようだと例えていた。同作以降、"マキシマリズム”について議論が交わされるようになった。マキシマリズムは、けたたましい蛍光色のMIDIテクスチャーでエレクトロニックミュージックを提示するアーティストに対して使われており、この言葉で大まかにまとめられるグループには、Warpと契約を交わしているLuckyMe関連のアーティストやRustieらが含まれる。

それから数年後、BirchardはLuniceことLunice Fermin Pierre IIと組み、後にTNGHTとして発表することになるトラックの制作を行った。この作品のコンセプトは明快だった。「どうやったらBusta RhymesやJa Ruleのレコードで聞けるようなビートを作れるのかって考えていた」と語るのはふたりのスタジオセッションに同行していたFlanniganだ。言ってみれば、このプロジェクトはウケ狙いだった。2012年3月、BirchardとPierreはSXSWにて幸先のいいデビューを飾り、同年の夏にリリースされた5曲入りEPは大絶賛された（英語サイト）。そして、彼らが定期的に大西洋をまたいでツアーをするようになったことで、事態は加速していった。モダンUKダンスミュージックとアメリカのオーディエンスにアピールするサザンラップの交差点として、TNGHTはメジャーレーベルにとってたまらないプロジェクトとなった。当時のメジャーレーベルが新興のトラップシーンに取り入る好機を彼らから感じ取ったからだ。TNGHTは『Yeezus』の"Blood On The Leaves"もプロデュースし、彼らの知名度を一層高めることになった。Laurent Fintoniのインタビューに拠れば（英語サイト）、ふたりはアルバム制作を提案された他、メジャーレーベルからはLuckyMeの名前ごと買収する話が挙がったようだ。BirchardとPierreは新たなサウンド誕生の一端を担ったが、当時はまだ識別不可能な状態だったそのサウンドに括り付けられることを恐れ、2013年後半にTNGHTの活動を停止することにした。

TNGHTが実態と乖離していることに気付いたときのことについて、筆者はFlanniganに尋ねてみた。すると、次のように回答が返ってきた。「SXSWに行くと、DJアカデミーが開催されているんだ。そこを通り過ぎたとき、ひとりの男がSeratoを使ってTNGHTの曲に乗せてカッティングしたり、スクラッチしたりしていた。でもそれはYouTubeからリッピングしたものだった。いろんなサウンドロゴを混ぜたトラックをYouTubeにアップしていたから、すぐに分かったよ。『あいつは俺たちのことなんて知りもしないんだろうな。曲だけしか聞かれていないんだ』って思ったことを覚えている」

これは、音楽と音楽をまとめ上げるアイデアについて徹底して話し合ってきた結果だ。しかし、FlanniganはA&Rそのものは「最小限であるべき」だと主張する。「僕たちのリリースペースはかなり遅い。その理由の一部は、僕たちは作品とではなく、アーティストと契約を交わすからだ。もし、アーティストが完全に作り上げられた作品を持ってきた場合、僕たちがそれに関わる可能性は低い。それよりももっと長い時間をかけて作品に従事することが必要だと思っている」。LuckyMeと所属アーティストは共通のDropboxアカウントをシェアして、デモをアップしたり、そのデモについて話し合いながら編集／変更を行ったりしている。この工程には数か月、ときには、さらに長い時間が費やされることもある。FlanniganとFlyn曰く、Luniceのアルバムは制作に4年の歳月を要したそうだ。

「アーティストと継続的に対話することになる」とFlynは話す。「そうやって音楽がしかるべきときに生まれる。僕たちはいつもプロジェクトについて話し合っている。話し合いに時間がかかるときもあれば、トラックの完成までに時間がかかるときや、マスタリングに時間がかかるときもある。僕たちはエキサイティングだと思う人たちを招き入れて、その人たちがどう成長していくのかを見てみたいんだ」

FlanniganとFlynが出会ったのは1998年。ふたりがまだティーンネイジャーで、エディンバラのアウトドアグッズの販売店でキャンプ用品を売っているときだった。「職場にいた他のみんなは週末になるとハイキングに行っていた」とFlanniganは回想する。「でも僕たちがそこで働いていたのはNorth Faceの服を安く手に入れてヒップホップの恰好をするためだった」

当時、インヴァネスからエディンバラに引っ越してきたばかりだったFlynは次のように語る。「みんなが『昨日は何をやっていたの？』って聞いてくるから、『昨日はThe Venueに行ったから、ぜんぜん寝てないんだ』って答えていた」

ふたりは共にヒップホップ・ヘッズだったが、Flynの方が少しだけ知識豊富で、Company Flowの『Funcrusher Plus』やRawkus Recordsのコンピレーション『Soundbombing Vol.1』といった作品をFlanniganに紹介した。Flanniganが18歳になると、彼は美術学校に通うためにグラスゴーへ行き、そこでヒップホップのイベントを立ち上げた。そのときに使われた名前がLuckyMeだった。この名前は、FlanniganがFlynから受け取った”意識の流れ”の概念を用いたメールに由来している。同イベントのフライヤーには、「hip-hop, hip-hop, and hip-hop」とミュージックポリシーが掲げられていた。しかし、そのようにヒップホップだけにフォーカスした姿勢は長続きしなかった。Flanniganが頻繁に口にするのは、LuckyMeはグラスゴーを触媒にして多くの影響を受けたことだ。中でもとりわけ影響を受けたのがOptimoやNumbersが運営していたレギュラーイベントだった。

「グラスゴーにはとんでもない空気が漂っていた。グラスゴースピリットにまつわる神話みたいなものがあって、たぶん、僕たちもそのスピリットをある程度広めているんだと思う。当時は本当にその空気を感じ取ることができたんだ。みんなはいろんなことをやっていたし、僕たちのようなバカをやっている部外者さえもしっかりサポートしてくれた。そんなことをする義務はないのに、サポートしてくれたんだ。そうしているうちに気付いたんだ。おしゃれで、スケートをしたり、クールなことにかかわっている人はみんなOptimoに行っているってね。そういう人はヒップホップのイベントには行っていなかった」

Flanniganにとってグラスゴー美術学校での4年間は勉学の面でも重要だった。LuckyMeの各リリースには特有の個性がある。それは音楽だけでなく、それを取り囲むビジュアルからも伺うことができる。美術学校でFlanniganは個人的な偏向デザインを避け、「簡潔なものに仕上げるために適したもの」を優先することを学んだという。

「それは単に見栄えを良くすることとは全く違うんだ」と彼は語る。「なぜなら、ときにはわざと見栄えを悪くするときもあるから。見栄えを良くするだけならすごく簡単なんだ」

LuckyMeのスリーヴデザインには少なくとも従来の視点で見たときに魅力を感じられるものがある。Jacques Greeneの初期作品で使われているギリシャ像のデザインは、カナダのアーティストであるGreeneの磨き抜かれたハウス／ガラージ・ハイブリッドサウンドに適している他、Cid RimやCashmere Catの作品で使われた写真は高級雑誌に掲載されているファッションを思わせる。一方で、彼らはそうしたスタイルをパロディとして駆使することもよくある。Cashmere Catの"Wedding Bells"のPVでは、若いカップルが一緒に時間を過ごすロマンスコメディ風のシーンが使われており、そこに映画批評家が称賛するような形式でSoundCloudやYouTubeのコメントが挿入される（Funny Deathという人の「Life changing」というコメントもあれば、「Cashmere Cat is a girl」というお世辞ではないコメントも登場する）。「Joseph Marinettiのカバーは気持ち悪くて人工的だ」とFlanniganが語るのは、テイクアウトのハンバーガーが黒の高級レザーシート上に置かれた「PDA」のアートワークだ。「わざと聞き心地のいい音楽にしなかったんだ。気持ち悪くなるほど甘ったるい音楽だったから、カバーデザインもそうした」

今月上旬、筆者はグラスゴーのサウスサイドにあるDJバーThe Rum ShackでプレイするEclair Fifiを見に行った。会場は地下にあり、暗い色の木製家具とアクアマリンの色をした壁は船舶のキャビンを思わせた。そこでRustieことRussell Whiteがシークレットゲストとして60人を相手にDJしていた。そのほとんどがバーの向かいに置かれた長椅子に座って酒を飲んだり会話をしたりしていた。時間は午後10:30に差し掛かっていた。友達が多く、気楽な雰囲気で音楽がプレイされる同会場は、エディンバラの小さなクラブOctopus Diamondで初開催されたLuckyMeのイベントにRustieとEclair Fifiが出演した10年前へタイムスリップしたかのようだった。その後まもなくしてStirlingがDJブースに立ち、Tiger & Woodsによる"No More Talking"から、ニューウェーブ風アシッドトラック、ヒップホップのエディットへ、いとも簡単にミックスしていった。それからしばらくして聞こえてきたのはムーディーでポリリズミックな音色に散りばめられたCoronaの"Rhythm Of The Night"の断片だった。そうしたカラフルなコントラストを織りなすStirlingがプレイする音楽はLuckyMeと同じ意味で筋が通っていた。つまり、確立されたテイスト、ジャンル、DJ構成を問い直し、格段に面白い回答を彼女自身で見出していたのだ。

「私が何か曲を流して、それをDomが耳にすると、彼はすぐに気に入るのよ。彼には事前に曲の話をしておいて徐々に情報を植え付けているからなの」と彼女は必要に応じてLuckyMeのA&R役を担っていることついて語る。「すべて自然に起こっていることなの。私はLuckyMeを自分のテイストにしてやろうとしているんじゃない。単に自分が好きなものを流しているだけ」。DrumapellasとSynthapellas（80年代ハウス／イタロのレコードのB面によく収録されていたバージョン違いのトラック）をフィーチャーしたLuckyMeの新シリーズでは、指揮を執るStirlingがより重要な役回りを担うだけでなく、自身のDJセットで実際にプレイできるフィジカルな作品を作り出している。今月上旬にリリースされた第一弾は、Mickey OliverとShanna Jaeによる「Never Let Go」という1988年のシカゴハウスの再発盤だ。「私はこれまでラテン・フリースタイル、808を多用したシカゴハウス、それに、イタロをプレイしてきた」と彼女は語る。「私の代表的なスタイルのひとつはビートだけのトラックにメロディアスでカラフルなトラックを混ぜていくミックスなの。そういうトラックを使ってヒップホップのインストとか、もっとハードで音数が多いものとかをミックスしている。これまでずっと何かしらリリースしてみたいと思っていたし、音楽制作もしてきたわ。でも今は、再発盤をリリースしたり、リミックスをキュレーションしたり、シリーズ企画をまとめたりするほうがしっくりくるの」

2010年、FlanniganとFlynはThe Blessings名義で「Galaxy High」というEPをリリースした。同作は、Hudson Mohawke、Brainfeeder、そして、Rush Hourのコンピレーション『Beat Dimensions』にまで遡ることができそうなサウンドの断片を散りばめたエクスペリメンタルなビート作品だ。彼らはある程度の野心を持ってこのプロジェクトをスタートしたが、逆に「Galaxy High」が障害になってしまったそうだ。Flanniganは次のように説明する。「リスナーにとって、あのEPは僕らのテイストがどんなものかっていう判断基準になってしまったんだ。それによってレーベルがどことなく小さな存在になってしまったように感じたよ。レーベルの裏でA&Rがどんな決定をしているのかすぐに分かるようになってしまったからだ」

それ以来LuckyMeは相容れない要素を持つ目標の達成に取り組んでいる。その目標とは、ビッグになりすぎることなく成長することだ。多くのレーベルにとって順調だと受け入れられる場面は、LuckyMeにとって過度に露出している状態の危険信号として映る。Flannigan曰く、2010年のSónarのレーベル・ショーケースは「あまりにも上手く行き過ぎたから、翌年は自分たちを戒めることにした」そうだ。

TNGHTの人気に便乗することは、レーベルにとって全く魅力的ではなかった。LuckyMeがどの程度の露出を求めているのかを理解するには、彼らのレーベルロゴを思い浮かべてみるといい。円形状に囲まれた瞳のロゴは作品の底面にひっそりと彫り込まれた品質保証マークであり、かつてのFlanniganのようにラップCDのライナーノーツを読むような、作品をくまなくチェックする人にだけ分かるようになっている。冒頭のThe Late ShowにBaauerとLeikeli47が登場している間、そのロゴが3秒だけステージ上に映し出されるのだが、それは熱心なファンに向けられたちょっとした仕掛けだった。FlanniganとFlynにとっての成功は各プロジェクトの規模によって変わる。つまり彼らはダークウェブ上で音源をフリーダウンロード可能にすることで、何十万回もストリーム再生されるBaauerのシングルと同じくらいの満足感を得ることができるのだ。そんな彼らにも抽象的ではあるが、重要な評価基準がある。レーベルのオーディエンスが気にかけるかどうか、もしくは、レーベルメンバーが頻繁に使用する言葉で言い換えるならば、オーディエンスが「ゲットする」かどうかだ。

「僕たちは何かを支配したいわけじゃない」とFlanniganは語る。「LuckyMeがこれまでに築き上げてきたことや打ち出していることをとても誇りに思っている。既存のテイストを壊したり、境界や排他性を取り払ったり、DIYな音楽がみんなのキャリアへと構築されていく新たなあり方を打ち出したりすること。それがLuckyMeでやりたいと思っていることなんだ。そして、僕らはそれをやってきたと思っている。この音楽は僕たちが実際に知っているよりも多くの人に影響を与えてきたと僕は思う。本当に大事なのはそこなんだ。どんなときも僕たちと一緒にいてくれる人たち。今はそういう人たちのためにレーベルをやっているんだ」

Label of the month mix

ミックスを担当したMartyn Flynは、エクスクルーシヴ・トラックと今後発表予定のトラックを多用していながら、2008年からLuckyMeが築き上げてきた自由な価値観を見事に捉えている。

Tracklist /
Sevendeaths - Subordinate Claudes
Baba Stiltz - Stranger
NAKED - Skinlessly
Claude Speeed - An Imperial Message
Lunice - Gasp
Mike Slott - Simple Dreams of Simple Days
Bwana - I Thank U
Mickey Oliver ft Shana Jae- Never Let Go (Aden RMX)
Baauer - Body VIP
Sam O.B ft Anthony Flammia - Velvet Sky
Cid Rim - ASDW demo
TStewart - The Image Generation 1
Suicideyear - Musicbox
Inkke - Chores
Littlebabyangel - ?