Chapter

01

In Residence

Mystik, Seoul

世界12カ所でのベスト・ダンスフロアーでの祝祭

2016年に始動したIn Residenceシリーズは、1年間を通して世界12カ所のベスト・クラブを巡りながら各地でそれぞれ1ヶ月間にわたってパーティを開催し、クラブカルチャーを讃えようという企画である。クラブという空間は、日々脈動するダンスミュージックにとっての心臓部といってよく、今年我々が巡る12カ所のクラブは各地のシーンを盛り上げつづけている重要なヴェニューである。週末が訪れるたびにクラブのドアは開き、その中ではわたしたちの愛する音楽がプレイされている。

各地のクラブへそれぞれ1ヶ月間にわたって滞在するにあたり、我々はそれに連動した特集記事を展開していく。さまざまなメディアを組み合わせながら、これらの象徴的なクラブの全貌を捉えていこうと思う。

11月に我々が向かうのは、韓国・ソウルのMystikだ。Concrete、Robert Johnson、smartbarといった世界的にも広く知られるクラブを訪ね歩いてきた当シリーズとしては、やや意外なチョイスに思えるだろうか。だが、Mystikは過去5年間において密かな急成長を遂げているソウルのクラブシーンにおける中心的役割を果たしているクラブなのだ。実に考え抜かれたインターナショナルなブッキング、ますます存在感を増すレジデント陣、そして強力なサウンドシステムを備えたMystikは今やアジア圏のベスト・ナイトクラブと言っても過言ではない。

Nov 3 RA In Residence, Mystik, Seoul feat. Dixon, DJ Moritz, Oviduct

Nov 12 RA In Residence, Mystik, Seoul feat. Moritz von Oswald, Suna, Seongsoo

Nov 19 RA In Residence, Mystik, Seoul feat. Wata Igarashi (live), Diskonnected, Unjin, Modus Tollens

Nov 25 RA In Residence, Mystik, Seoul feat. Binh, Antwork, Magico

Chapter

02

主要情報

Mystikの概要

01
所在地
37 Itaewon-ro 27 ga-gil, Yongsan-gu, Seoul, South Korea
02
クラブ設立年
2011
03
サウンドシステム
Funktion-One
04
キャパシティ
170
05
レジデントDJ
Magico, Antwork, Moritz, Oviduct, Seongsoo, Cy Nico, Alexa, Aain, Beathlon, Sin, Nukid, Oslon, Oliver Hafenbauer, Oskar Offermann, Romi Behl, DJ Masda
06
ミュージック・ポリシー
あらゆるエレクトロニック・ミュージック

Chapter

03

歴史

躍進するソウル

今年5月のある日曜の朝8時、MystikではGieglingのSa PaとAteqがそのDJセットをフィニッシュしようとしていた。この夜の最後のDJを任されていたMystikのレジデントDJの1人、AntworkのセットにSa PaとAteqが加わることとなり、数こそ決して多くはないがエナジーに満ちたクラウドに向けて彼らは3人で代わるがわるディープでグルーヴィなハウス／テクノ（そして少しのアンビエント）をプレイしていた。この夜は5年前にオープンしたMystikにとって過去最長の営業時間となり、共同設立者であるDongyeul Kwak（通称Stevenとも呼ばれる）にとって、このクラブのこれまでの歴史におけるひとつのクライマックスといえる瞬間となった。

「最後の数時間はすごくスペシャルだったね」とKwakは回想する。「あの晩は本当に幅広い音楽がプレイされ続けていて、その中には挑戦的なものもあったけど、クラウドはしっかりとついてきてくれていた。クラブが混雑している午前5時まで僕はたいてい忙しく動き回っていて、普段は音楽だけに没頭し続けることは立場上難しいんだ。朝が近づいてフロアーに30人ほどのお客さんが残って、家に帰ってベッドに潜り込むまでの最後の数時間を楽しんでいる様子を見るのが一番好きだし、最も心地よく感じる時間帯だね」

2011年10月にMystikがオープンした当時、ソウルのダンスミュージックシーンはVIPテーブルやボトルサービスなどで虚飾されたEDMクラブの独壇場だった。当時Kwakはソウルのナイトライフが品のない享楽性に傾いていく様子を目にしていた。彼は2000年代中盤にソウル市内のいくつかのビッグクラブで働いた経験があり、人々がただ泡のように金を浪費する、彼が言うところの「あまりにも商業化されつつあるシーン」に対して疲弊感を感じ始めていた。

「僕は、こうした低俗さと縁を切り、本当に自分がやりたいことにフォーカスしようって思ったんだ」と彼は語る。

Kwakは2009年に梨泰院地区で友人たちと開催したいくつかのパーティを通して、現在のMystikに繋がる基礎を作り始めた。当時はほぼ1ヶ月おきにパーティが開催されていた。地元のDJたちにとって、よりディープでダークなハウス／テクノの側面を表現することはソウル市内の他のクラブでは決して許されなかったが、このパーティではまったくの自由であった。パーティは成功に終わったが、Kwakとその友人たちは信頼できるヴェニュー探しに苦悩し始めることになる。そんな折、彼らはEddie Yooという男と知り合う。「彼は僕らがやっているパーティを見て、僕らを信頼してくれた。そして、彼は僕らにとっての出資者となってくれたんだ」とKwakは語る。この資金を使って、Mystikはオープンしたのだ。

このクラブの内装は、虚飾を排したシンプルさこそが身上だ。このクラブにはVIPテーブルもなければ、ぎらぎらとしたデコもない。そこには、黒い壁とダンスフロアー、バー、Funktion-Oneのサウンドシステム、そして明滅する長い帯のような照明を備えた小さくてシンプルなクラブがあるだけだ（キャパシティは170名）。このクラブは梨泰院地区の裏通りに位置しており、梨泰院は近くにソウル市内最大の米軍基地が存在し、非常に賑やかで西洋化が顕著なエリアである。Mystikは必ずしもソウル市内で最初のアンダーグラウンド・ヴェニューというわけではない。過去、1990年代後半から2000年代にかけて、弘大地区にはJoker Red、Via、Club Tool、Mata MataそしてClub MWGといった先駆的ヴェニューが存在した（MWGはこの中で唯一現在でも営業を続けている）。そんな中、Mystikの開店はソウルにおけるアンダーグラウンド・ヴェニュー復権のきっかけを作ったのだ。

Mystikはそのオープン当初からソウルの小規模なハウス／テクノ・コミュニティに訴求したいという明確なヴィジョンを有していた。中でも、そのサウンドシステムはソウル市内にあるクラブの中でも最高レベルの状態を維持している。オープン当初のMystikは主にミニマルハウスにフォーカスしていたが、次第により幅広いジャンルのDJやライブアクトも取り入れるようになっていった。2016年にMystikでプレイしたFred P、DJ Masda、Boris、Resom、Prosumer、Mr. G、Lena Willikensといったラインナップを見れば、その一定の幅広さは理解できるだろう。

Mystikにはその中枢にいるKwakの存在感が如実に反映されており、彼が持つ大きなエナジーと音楽に対する純粋な好奇心はMystikからもそのまま感じられるものだ。彼はこのクラブにおける単なる共同設立者の1人という立場を飛び越え、レジデントDJの1人でもあるMoritzと共にこのクラブのブッキングも担当しており、国外からのゲストのケアも務めている。Kwakはさらにクラブのエントランス担当としても4年間働いてきた経験を持つ。「いまや、Stevenは僕にとって家族のような存在さ」と語るのは、Mystikで8ヶ月毎のレジデントを務めているOliver Hafenbauerだ。オッフェンバッハのRobert JohnsonでレジデントDJと音楽ディレクターを務めるHafenbauerは、良いナイトクラブがどのようなものであるべきかということについて一家言を持つDJである（RA In Residenceシリーズはこの5月にはRobert Johnsonを訪ねている）。

「僕がMystikで最初にプレイした時、デトロイト・テクノからブリープ・クラシックスまで様々な曲をプレイしたんだけど、クラウドの反応が本当に熱狂的でびっくりしたんだ」とHafenbauerは語る。「韓国のシーンはまだ歴史が浅いと聞かされていたから、これほどオープンマインドなクラウドに迎えられるとは思ってもみなかった。Mystikのタイトなプログラミング・ポリシーとドア・セレクションは素晴らしい。彼らがオープンした当初、こうしたスタイルはソウルでは一般的ではなかっただけになおさらさ。MystikはゲストDJに朝までロングセットをプレイするチャンスを与えてくれるから大好きなんだ。1回のセットで様々なタイプのダンスミュージックをプレイできるし、最後の1曲までクラウドが楽しんでくれるから、ここではすごくリラックスしてプレイできるのさ」

Mystikでは定期的に国外からのゲスト・アーティストを招聘しているが、同時に地元ソウルのアーティストたちの育成にも力を注いでいる。「僕らはローカルシーンを強化して、これから世に出ようとしているアーティストたちの手助けをしたいんだ」とKwakは語る。Mystikは現在Alright Alnightというマンスリー・パーティを企画しており、ここではローカルDJをプッシュすることに注力している。HafenbauerはMagicoとAntworkというAlright Alnightにおける2人のレジデントDJに対して「彼らはマニアックなミニマルトラックでも臆せずプレイできる度量を持っているね」と太鼓判を押す。2016年末に日本や台北、ハノイをツアーすることになっているというMagicoとAntworkについて、Kwakは誇らしげに語りながら回想する。「僕がMagicoとAntworkに初めて会ったのは2007年に遡る。彼らは当時まだDJは始めていなかったけれど、Mystikにはオープン当初から毎週末遊びにきてくれていたんだ。単純に、音楽が聴きたいがために、毎週金曜と土曜には必ず足を運んでくれたのさ。そして、オープンから5ヶ月ほど経ったある週末、彼らは『ここで僕らもプレイしたいんです』って言ってきたんだ。僕は彼らがDJするってことは知らなかったんだ。そこで『何だって？　君たちもDJできるの？』って聞いたら、すでに数年間練習しているって言うのさ。じゃあ、というわけで僕らは彼らに木曜日にプレイするチャンスを与えることにした。当時はまだ木曜もお客さんが少なかったしね。ところが、彼ら2人は初回から素晴らしいプレイをしてくれてね。その結果、僕らは彼らをMystikのレジデントDJとすることに決めたんだ」

Mystikの登場は、ソウルのクラブシーンに大きな刺激をもたらした。2016年現在、ソウル市内ではCakeshop、vurt、Pistil、Midnight、Alley Sound、Seendosi、Constant Value、FaustそしてMWGなどで様々なスタイルのサウンドがプッシュされており、この拡大するクラブのネットワークはヘルシーな状態となっている。「昔に比べると、今のソウルのクラブシーンは隔世の感があるね」とKwakは語る。「今はソウル市内に4軒から5軒ほどのアンダーグラウンド・クラブが営業していて、それぞれ思い思いのスタイルで営業している。あるクラブはテクノ専門だったり、また別のクラブはヒップホップ専門だったりするけど、どちらにせよあまりビジネスライクになり過ぎていないところが共通しているね」

この4月にはソウル市内で初のダンスミュージック専門のレコードショップClique Recordsがオープンし、ベルリンのNTSやBerlin Community Radioを参考にして生まれたネットラジオ局Seoul Community Radioも立ち上げられた。この6月に本放送を開始したばかりのSeoul Community Radio設立者、Richard Priceは次のように語る。「Seoul Community Radioの設立理念は、韓国のアンダーグラウンドに潜むタレントが世に出て、彼らがグローバルな聴衆にそのサウンドを届ける手助けをすること。そして、世界中で急成長している様々なシーンで何が起こっているかについて韓国のリスナーに知ってもらうと共に、韓国で急成長するシーンの現状をありのままに国外へも発信するということなんです」

「ソウルのエレクトロニック・ミュージック・シーンは長い道のりを経てきましたが、今ようやく多様なシーンが揃う基礎ができたと思います」と語るのは、地元のキュレーター兼雑誌発行者にしてDJも務めるUdo Lee。「Clique RecordsやSeoul Community Radioの登場によって、こうしたシーンの基礎はより一層強固なものになったと思います。たとえ近い将来にEDMブームが死に絶えても、ソウルのアンダーグラウンド・シーンには音楽本位のヘルシーなシーンがしっかりと残っていくと思いますよ」と彼は続ける。

Mystikがこれから克服すべきチャレンジはまだ残されている。このクラブがオープンした2011年以降、梨泰院エリアは大きく変貌した。「2011年当時、梨泰院に注目していたのはごく一部のDJやクラバーたちだけだったんだ」とKwakは語り、「それから数年経って、ここは急速にトレンディなエリアになってしまった。主に、雑誌やTV番組のせいでね。このエリアに足を運ぶ人々も増えたけど、その分客層は悪くなってしまった。音楽を目的にしているわけではない、ただ馬鹿騒ぎしたい人々が増えちゃったんだよね」と続ける。これにより、Mystikはより厳しいドア・ポリシーを設定せざるを得なくなってしまい、Kwakは「おかげで、これまで30回ぐらいはいざこざに巻き込まれることになってしまったよ」と語る。

一方で、Kwakはソウルのクラブシーンが着実に成長を遂げていることを実感しており、ただ単に他の国のクラブシーンを盲従的に追随するよりもはるかに重要なことだと言う。「ここはソウルであって、ヨーロッパではない。分かるよね？　文化もまったく違えば、クラウドもまったく違う。もちろん、プレイされている音楽自体には共通する部分も多いけれど、たとえばあるクラブがPanorama Barを参考にしてそのままコピーしているだけじゃ... 」と言って、Kwakは一瞬口ごもる。「そのクラブは絶対にPanorama Barのようにはなれないでしょ」

だが、Mystikにおける今後の見通しは明るい。冒頭で述べたGieglingのパーティにおける最長営業記録はZ@p、Antwork & Magicoをフィーチャーしたパーティがすぐに塗り替え、彼らは朝の10時までパーティを続けた。「今年は僕らにとってターニングポイントとなる1年だったと思う」とKwakは語る。「以前に比べてもパーティの時間はどんどん延びているし、こうしたプロセスを見ているのは楽しいね。もちろん、みんなが音楽を通して深く繋がり合っているから」

地元のローカルDJたちとインターナショナルなゲストDJたちの間に立って日々過ごしているKwakにとって、最も嬉しいのはMystikにおけるクラウドの成長ぶりだという。「僕はこのクラブにどんな人たちが遊びに来ているのかダンスフロアーでいつも注目して見ているし、その中で新しい世代のDJたちとも知り合うことも多い」とKwakは語る。「僕らが特別なパーティをやる時には必ず足を運んでくれるある男がいてね。本当に、いつも必ず来てくれるんだ。彼はとりわけ社交的なタイプではなく非常に寡黙だけど、彼は最後まで本当にクレイジーにダンスし続けてくれるんだ。そして、朝になって音が止まるとサッと1人で帰ってしまう。ある夜、僕は彼に尋ねてみたことがあるんだ。『君はDJをやっているの？』ってね。そうすると彼は『はい』って答えた。普段はどんなクラブでプレイしているの？　って訊くと、彼はコマーシャルなクラブのいくつかでDJをしているそうで、彼はただ自分の聴いたことない音楽を聴いて感性を広げたいがためにMystikへ来てくれているそうなんだ。今、ソウルのシーンには数多くの若く才能あふれたアーティストたちが出てきていて、これはこの街のシーンにとって最も良い面のひとつだよ。でも、まだまだ先は長いよね」

Chapter

04

レジデント陣

...写真紹介

Chapter

05

重要人物

Seongsoo

レジデントDJ

クラブで従業員として働きながら、そのレジデントDJとなる例は決して少なくない。Lena WillikensはデュッセルドルフのSalon Des Amateursでバウンサーとして働いていた経験があるし、The Black MadonnaはDJとして表舞台に出るまではシカゴのSmart Barでブッキング担当として働いていた事は有名なエピソードだ。MystikのレジデントDJの1人であるSeongsooの場合、彼はクラブ専属のフォトグラファーとして働いた後、2016年5月に同クラブのレジデントDJ陣に加わった。これまでSeongsooはクラブで正式なDJプレイを経験した事は一度もなかったが、Seongsooには十分な準備が備わっていたといえる。彼はクラブの専属フォトグラファーとして、4年間毎週末毎にあらゆるタイプのDJたちを間近に見聞きし、DJというアートについて学習を重ねてきたのだ。

直接的ではないにせよ、SeongsooのDJスタイルの形成においてもうひとつ大きな影響を与えたものがある。平日の昼間、Seongsooは友人のDJ Chimanと共にPressworksという印刷スタジオを運営しているのだ。「彼のスタジオは、ソウル市内の忠武路という昔から多くの印刷工場が立ち並ぶエリアの一画にあるんだ」とSteven Kwakは説明する。「そこでは日中から近隣の印刷工場から錆び付いた印刷機械が鳴らすノイズが常に響きわたっているんだ。彼は日夜そんなインダストリアルな音に囲まれて仕事しているというわけさ」

韓国の映画産業や写真芸術、印刷などを支えてきた忠武路だが、90年代には韓国の映画産業関連企業のほとんどが江南区に移転して一気に寂れてしまった。しかし、Seongsooにとってここが存分にインスピレーションを吸収できる場所である事実に変わりはない。このエリアの狭い通りには無数の電気配線が絡み合いながら建物の間を蜘蛛の巣のように繋いでおり、その下ではバイクがスタジオや印刷工場の間をせわしなく走り回っている。近年、再開発による立ち退きに直面している忠武路だが、Seongsooはこの土地が有する豊かな歴史を今のうちに記録しようと努めている。Seongsooにとって、忠武路は産業とクリエイティブが交錯し火花を上げる接点のような位置づけなのだ。「彼のDJセットからは忠武路の街の息吹が聴こえてくるようだよ」とKwakは評する。「彼がテクノDJの道へ進んだのは至極当然と言えるよね」

Chapter

06

サウンドシステム紹介

Funktion-One

「クラブに出掛ける動機はひとそれぞれだと思うけど」と前置きしながら、MystikのレジデントDJの1人であるDJ Oviductは切り出す。「でも、何よりもまず良い音楽と良いサウンドシステムが保障されていれさえすれば、他の理由は二の次だよね」

このシンプルな理想は、Mystikがオープンした2011年当時から一貫してキープされている。Mystikのフロアースペースは広さにして約125平方メートル足らずの小規模なものだが、そこにはFunktion-One（トップにRES4／サブウーファーにF218）が堂々と鎮座している。「僕らがFunktion-Oneをサウンドシステムに採用した理由は主に2つある」とSteven Kwakは語る。「まず、低域の出力特性がソリッドであるという事と、第二にどれだけ長い時間クラブの中に居ても耳が痛くならないということ。僕らのサウンドシステムはこの空間にうまくフィットしていると思う。ハウスやテクノ以外にも多彩なジャンルのエレクトロニック・ミュージックの帯域に対応してくれるのはもちろん、様々なDJの固有のフロウにも対応する。サウンドとDJが非常に有機的なかたちで一体化するんだ」

Mystikがオープンした当初、このサウンドシステムは当然大きな評判となった。だが、先ごろ行われた改装工事の際、Kwakとクルーたちはさらなるサウンドシステムのクオリティ向上に取り組んだ。「僕らは、これまで過剰な吸音をしていた壁材などを取り外し、むき出しのコンクリートにしたんだ」とKwakは語る。この変更は、大きな変化をもたらしたようだ。「リノベーション前のMystikは低域から高域までをきっちりとカバーしていて、居心地の良いレコーディングスタジオのような音場だった。今のMystikでは、よりテクノ向きというか、あえてちょっとだけラフな鳴らし方になっているんだ」とKwakは語る。この変更にはもちろんリスクはあったが、Kwak自身は実施するだけの効果は十分にあったと感じている。「もちろん良い点もあれば悪い点もあることは理解している。実際、リニューアル前のサウンドを懐かしむ人たちも一部にはいるからね — クラブのどの場所にいても、等しく心地よく暖かいフィーリングを感じられるあの感覚をね。でも、Mystikが今求めているのは、素晴らしく生々しい、ほとんど色づけのないサウンドなんだ」

Chapter

07

ミックス

Mystikのサウンド

レジデントDJ、MagicoとAntworkによるミックス

Mystikはディープでミニマルなハウスとテクノにとっての安住の地である。以下に紹介するミックスは、まさにそうしたスタイルに特化した2人のDJ、MagicoとAntworkによるミックスである。Magicoによるミックスは彼が自宅でレコーディングしたものである。「僕は、自分の手持ちのヴァイナルとデジタルファイルを見直し、フレッシュで注意深いヴィジョンを反映させようとしたんです」と彼は語る。一方、Antworkによるミックスは彼がマンスリーで出演しているVoiceというパーティでつい最近ライブ録音されたものだ。

「このミックスを世界中にいるミュージック・ラバーのみなさん、そしてとりわけこれまで僕らを支え続けてきてくれたMystikの友人たちと共有することができて光栄です」とMagicoは付け加えた。

MystikのRAプロフィールページはこちら。In Residenceシリーズの詳細は、In Residenceページを参照。