2001年にResident Advisorを開設して以来、「ローカルのエレクトロニックミュージックシーンをサポートし、より大きなエレクトロニックミュージックのコミュニティに繋げる」という私たちのミッションは変わっていない。しかし、この核となっている目標以外については、非常に多くのことが変化した。現在もメディアとして完全に独立を保っているが、はじめはオーストラリアのシドニーのシーンに特化したWebサイトだったものが、国際的な広がりを持つオンラインマガジン、イベントデータベース、そしてチケット取り扱いサービスとして成長してきた。私たちは本日、この精神を念頭に置き、RA Pollsの実施を終了することを決定した。この決定は、クラブカルチャーやエレクトロニックミュージックという、私たちが愛する世界への良い影響となることを願ってのものだ。

RA pollsを始めた当初は、記事の中で取り上げきれなかったものを投票結果が補っているように感じられた。Mixmag、DJ Mag、Pitchforkといった他のマガジンは、以前からこうしたランキングを実施していたが、いずれのサイトも、RAが支持してきた"アンダーグラウンド"と呼ばれる層にあるエレクトロニックミュージック全般、そしてそのシーンの中で素晴らしい活躍を遂げているDJ、プロデューサー、クラブ、レーベルの国際的なネットワークをカバーしきれていなかった。上記のマガジンは規模の違いこそあれ、それぞれが熱心なファンを抱えていたにもかかわらず、彼らのランキングのリストにアンダーグラウンドのエレクトロニックミュージックのシーンの立役者たちが挙がることはなかった。

RAは2006年に、トップDJを決める初のRA Pollの投票を開催した。当時は当サイトのコントリビューターからの投票に限定し、その年のハイライトをまとめるというシンプルなアイデアで実施したものだった。2008年には初めて読者に投票を呼びかけ、それ以降、毎年RA Pollsを実施してきた。最初のRA Pollsから10年以上経ち、その目的は変わらないものの、投票自体やシーン周辺をとりまく状況は驚くほど変化した。

Michaelangelo Matosの著書のタイトルにあるように、アンダーグラウンドとは膨大なもの（The underground is massive）だ。RAが扱ってきた世界はよりプロフェッショナルに、より競争が激しく、より利益が重視される世界になった。この傾向はRA pollsの投票の中にも年を追う毎にはっきりと表れるようになった。大好きなアーティスト達を讃え、過ぎ行く年に乾杯しようという気楽な気持ちで始めたものが、より重大な評価基準として取り扱われることになった。こうした指標がいつの間にか、イベント出演者のラインナップから、アーティストのギャラ、そしてシーン全体の空気感（特に今頃の時期）に至るまで、クラブカルチャーの様々な部分に影響を及ぼすようになり、このRA Pollsもサイトで一番読まれている記事になっていた。

RA Pollsに対して私たちが負う責任は重くなり、果たしてこの投票が私たちのミッションに合致しているのか、シーンから求められているものなのかと考えるようになった。幾度にもわたる”自己分析”、すなわちRAの内部や、その他エレクトロニックミュージックのコミュニティの人々との話し合いを経た結果、RA Pollsは私たちのミッションに合致しておらず、シーンからも求められているものではないという結論になった。

もし、私たちがRA Pollsを実施する目的が、過去1年間に起こったことをまとめる事にあるとすると、2016年のRA PollsにおけるDJ投票、そしてライブアクト投票の結果は、高まる不安が頂点に達した結果だといえる。投票結果は均一で、シーンの多様性を反映したものではなく、音楽的にみても、私たちがサイトで取り上げている音楽や、クラブでプレイされている音楽の中のほんの一部しか反映されていなかった。しかし、これらもまだ些細なほうの問題だ。より深刻な問題は、投票結果のリストに載ったDJとライブアクトが驚くほど男性だらけ、しかもその大部分がアメリカとヨーロッパの男性で占められていたことである。この結果では、数え切れないほどの非常に才能ある女性達が週末のクラブでプレイし、フロアを満杯にしていた2016年のエレクトロニックミュージックシーンの現実を反映しているとはとても言えない。このような事を続けていては、これまでRA Pollsがエレクトロニックミュージックに対して果たしてきた貢献まで台無しにしてしまうことになる。

もう一つ重要なのは、ダンスミュージックはクィア（セクシャルマイノリティ）のコミュニティから生まれたアートで、有色人種の人々によって形作られ、そして全てのジェンダーの人々からの支持によって人気になっていったものだということを再認識することである。こうした事実は近年のRA Pollsの投票結果から伺い知れるものではない。投票結果のリストは、良く言ったとしても「シーンの現実を誤って伝えているもの」であり、悪く言えば「白人男性が他の誰よりも優遇されるという有害な力関係を補強するもの」でしかない。これは、変わらなければいけない理由として十分なものだ。

もっと基本的なところで言うと、私たちはアーティストをこうした方法でランクづけしたくないという結論に達した。アーティストを支持率の高い順からリストアップする事は、例えトップになったアーティストにとっても良い影響を及ぼさない事であり、とにかく自分が上位になればいいという私利私欲的な雰囲気を作り出してしまう。この観点から、トップレーベル、トップトラック、トップアルバム、トップミックス／コンピレーション／ポッドキャストという、スタッフによる投票を集計したランキングについても実施をやめることにした。

その年にめざましい活躍をしたアーティストの存在を知らしめることは未だに価値があり、それに関しては今後も年一回のペースで取り上げていくが、単にRA Pollsの代わりになるものではなく、もっと異なる形式のものになる。全3回の特集を通して、この一年間にエレクトロニックミュージックのシーンに多大に貢献したアーティスト、レコードをシーン全体から取り上げる。特集の中で誰について、そして何について言及するかは、どうか私たちを信頼してほしい。この年末特集は只今鋭意制作中であり、私たちの意欲も、特集の内容も、より良く前向きなものを目指して取り組んでいる。私たちの記事は常にグローバルで、有名DJから、ベッドルームで作られた珍妙で新奇な音楽まで、このコミュニティにいる全ての人々のバックグラウンドや視点を取り込んだものであるべきだ。

RA pollsをやめるという決定は、この記事の冒頭で触れたことに端を発している。RAのスタッフは己の人生をエレクトロニックミュージックに捧げた人々で構成されている。私たちは、RAでの役職という部分を超えて、DJ、プロデューサー、プロモーター、ファン、そして未だに思い出しては鳥肌が立つような、ダンスフロアでの素晴らしい思い出を持った人々である。これこそが私達が愛し、尊敬する世界であり、その世界こそが私たちが愛と尊敬をもって接しているものである。

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