ダンス・ミュージックを中心としたクラブ・カルチャーに属する人々は、ある種の神秘主義者であると筆者は見なしている。踊ることを通して、この世を取り巻く巨大な「理」の、そのごく一部にでも触れようとする情熱──それに触れないまま一生を終えることもあり得る──を持ち、音楽を音楽以上のものとする事とそれは定義できる。原始宗教と音楽の密接な関係、音楽や楽器そのものが「神」であったとする説も研究されている。

あらゆる宗教に儀式があるように、ナイト・クラビングにおける「音楽を音楽以上のものとする」ために必要な演出、それはある程度の暗闇であり、巨大なスピーカーであり、アルコールであり、近年ごく身近になったレーザー、スモッグ等のアトラクション……ここに「映像」も加わるだろう。

ツジタナオト──現在、香川県に在住のVJ。90年代後半より関西圏でテクノ系のパーティを中心にVJとして活動し、2012年以降はオーガナイザーとして「inMINUS」「UMBRA」「穴蔵夢」などを企画。高松/岡山の二都市を活動の拠点としつつ全国各地のパーティにVJとして出演し、またDJ WADA「Beetbeats (Sublime Records)」やHiroshi Watanabe「The Multiverse (Transmat Records)」などのミュージック・ビデオを制作する等、活動の場を広げている。

ツジタナオトの創る映像は徹底的にモノクローム──白と黒の画面構成をドグマとし、それが彼自身の持つミニマル／テクノに対する美意識をもとに、隆起するグルーヴを演出する。いわば音という目に見えない存在そのものに「影と光」を与えていくクリエイティブを担っている。

彼と親交の深いプレイヤーは「分子レベルで音の変化や展開を共有してくれる希有な映像パフォーマー。(DJ WADA )」「骨太で重く暗く力強いものから色彩豊かなものまで、素材を幅広く展開しつつ、一本筋の通った説得力のある世界を表現してくれるVJ。(Takaaki Itoh)」「重要性は高く、雰囲気、時間帯とその場の流れを音と共により様々な方向へと導いてくれます。(DJ ZEN)」と過去の共演について、またその映像についてコメントしている。

早秋の午後、瀬戸内海からほど近い彼の作業場となりのカフェで、これまでの歩みと胸中について語ってもらった。

もともと、VJを始めたきっかけはいつ頃にあるんでしょうか。

子どもの頃から映画が好きで映像には興味があったんですけど、そののち神戸芸術工科大学に入学しまして。森下教授という、映像作家もされている方のゼミに入ったんですが、教授は「なんとなく」作品を創ることをとても嫌う人で、表現においてコンセプトがしっかりあった上で全てにおいて説明できないとだめだって感じの人だったんで、映像を創るためのきちんとした「考え方」を教えてもらった気がします。大学の機材やMacは使い放題だったんで、ゼミ室に篭っていろいろ試しては実験的に映像を制作して遊んでいました。

で、大学内の音響系のゼミの友達が、クラブでライブするから映像を流してくれと頼まれたのが直接的なVJのきっかけですね。場所はたしか、神戸三宮のtroopcafeだったと思うんですけど。

その頃は現場に持ち込めるようなMacもないし、アナログ機材で制作した映像をVHSにダビングして、それをビデオデッキ数台で再生する、ビデオミキサーも高価で買えないから、ゲームスイッチャーでガチャガチャ切り替えて……VJとは言えないですね（笑）

その時はどんな映像を流していましたか。

ビデオデッキでの再生映像をゲームスイッチャーで切り替えるもんだから、ノイズが入るんですよ。まずこれが意図していないノイズなんで、気に入らないんです。だからいかにそのノイズをかっこよく見せることができるかを考えていて、だったらノイズ自体の映像を創ろうと。

ノイズを排するのではなく、どうやっても発生するそれを演出として利用してしまおう、と考えたのですね。

そんな感じですね。まずTVのスノーノイズをビデオカメラで撮影して、その後にその映像をビデオデッキでTVへ再生しまして。出力しているケーブルを抜いたり挿したり回したりしながら、手動でノイズを強引に歪めたり、グリッチノイズを発生させたりして、それをまた撮影する。そうして撮影したものを当時のABロールというアナログ編集機でかっこいいノイズの動きをしている部分だけを短いフレームでつなぎ合わせてコマ撮り風に創り変えてノイズだけで映像を構成する、そんな映像を制作していました。その頃の僕は塚本晋也監督の「鉄男」にとても影響を受けていたのでコマ撮りもそうだし、破壊的なノイズをどうにか創れないものかと試行錯誤していたのを覚えています。

その頃、影響を受けたVJはいましたか。

僕が始めたころには周囲にVJという存在はいることにはいたんですが、かといってDJほどは人数いなかったので、そのままほぼ独学でここまで来たのが正直なところです。ただ、大学時代VJをやり始めて間もない頃、一度大阪に宇川直宏さんがVJとしてプレイしに来ていて、プロのVJってどんなだろうってワクワクしながら遊びに行きました。その時はオリジナルの映像とヨーロッパ映画のサンプリング映像だったりをMIXした感じのVJで、今と変わらず宇川ワールド全開でした。

宇川さんも香川出身の人ですよね。昔の宇川さんのイベント写真を見ると、ブースに大量のVHS、数台のデッキを積んだ要塞のようなブースでVJしていますよね。

映像機器は音響機器に比べて値段が高いんですよね。宇川さんは地元の先輩でもあり、高校の先輩でもあるんですが、その時宇川さんが使っていたビデオミキサーも業務用の機材で「こんな高い機材、自分はいつ買えるんだろう……」と途方に暮れたのを覚えています（笑）。

VJ以外の映像表現──映画や美術作品で、影響を受けたものはありますか。

映画監督でいうと松本俊夫氏、寺山修司氏、塚本晋也氏……その中でも特に、学生時代に松本俊夫氏に凄く影響を受けました。先ほど話した大学の恩師・森下教授は松本俊夫氏の弟子で、著書の中にも名前が出てくるんですけど。教授を通じて、松本俊夫氏の手掛けた映画『ドグラマグラ(‘88)』『薔薇の葬列(‘69)』などを観ました。

松本俊夫氏は、昨年亡くなられましたが、非常に前衛的な作品を創っていた映画監督ですね。

特に『ドグラマグラ』は何回も観ました。あの狂気的原作をどう再現して、映像化しているのか……初めて観た時、最初はベッドで寝転がって観ていたんですけど、最後は画面にかじり付いて観ていて……。

あの物語は、主人公がベッドで起きるシーンから始まるけど、実はその展開自体が虚構だった、というような構造なので、その見方はかなり物語に取り込まれてしまってる状態ですね（笑）

子供の頃からタイムトラベルものの映画が好きだったんですが、「ドクラマグラ」は通常のタイムラインとしての時間の概念というものをぶち壊して物語を構成する、そこにとても惹かれました。それをきっかけに邦画の面白さ──日本独特の行間のある表現の面白さに気づきまして。そこから、それまではあまり気に留めていなかった日本文化に対する価値観も変わった気がしますね。例えば漢字とか……漢字そのもののカタチとしての美しさに惹かれますね。今でもビジュアルとして、漢字をVJ素材のひとつとしてよく使っています。

美術ならナムジュンパイク氏、ジェームズ・タレル氏の作品は影響を受けました。それから、ロンドンのデザイン集団TOMATOの存在も大きいですね。

音楽についてはいかがでしょうか。

一番最初は普通にロックとかグランジを聴いてたんですが、15,6才の時に『電気グルーヴのオールナイトニッポン』を聴き始めて、それ以来ダンス・ミュージック、テクノに興味を持ち始めて。

2000年前後には、DJ WADAさんやCo-fusion、MAYURIさん、KIHIRAさん、REE.Kさんなどの音楽をよく聴いてました。その頃は割と、今よりも少しハード目のテクノをよく聴いていたかもしれません。そこからだんだんミニマルやクリックなものに興味が出てきて……確か神戸のタワーレコードの試聴ブースで田中フミヤさんのKARAFUTO名義のアルバムを初めて聞いて衝撃を受けたのを覚えています。僕の今のVJのスタイルにも影響しているんですが、ミニマルなものを聴き出した頃から、誰かのDJやLiveを聴くときに、曲ではなく、音の構成としてのグルーヴみたいなものを気にしながら聴くようになりました。

そこからさらにいろんなテクノを聴くようになって、今はDYSTOPIANのRødhådようなアンダーグラウンドテクノが好きでよく聴いています。フロアや空間とリンクした一晩の構成やストーリー性というトータル的な表現を大切にしたグルーヴ感が好きで、VJとしてプレイするときでもその感覚は大事にしています。

VJとしては90年代、2000年代はどのような活動を行っていましたか？

その頃は関西を中心に、そこから地元香川県・高松市に帰ってきてしばらくVJはしていなかったんですがゆっくりと再開していきました。その当時の高松では、テクノだけでなく様々なジャンルのパーティがいろんなハコで開催されてました。僕は基本的にテクノが中心とされていたパーティでよくプレイさせてもらってました。そんな中で今の自分が遊びに行きたいパーティを自分でオーガナイズしてみようと思い2012年に「inMINUS」というパーティを立ち上げました。それ以前から、尊敬していたDJ WADAさんと別のパーティで一緒になったのをきっかけに仲良くさせてもらっていて、WADAさんのトラックのMVを制作するコラボレーションを何度か行っていました。そんな流れもあって最初のゲストにWADAさんに登場してもらって。

それ以降も、MAYURIさんやREE.KさんMASAさん、KIHIRA NAOKIさん、Shhhhhくん等に出演してもらいました。いずれも僕自身が尊敬しているアーティストの方々です。
それから、僕は岡山のDJのZEN君と2人で「six」というオーディオビジュアルユニットとしても活動しているんですが、そのZEN君と共同オーガナイズパーティ「UMBRA」を2015年に高松と岡山で立ち上げました。このパーティは「inMINUS」よりも更に深い領域に踏み込みつつ、近県のパーティ仲間にも出演してもらうことで、アンダーグラウンドなネットワークをより強いものにしていこうというコンセプトで始めました。UMBRAでは引き続きWADAさんをはじめ、DJ NOBUさんやTakaaki Itohさんにプレイしてもらいながら、妥協を許さないどこまでもストイックな地下空間を表現できれば……と思って開催しています。

ツジタさんの映像は、単に色のある映像を白黒に変換しただけ、という訳ではなく、最初から白黒で組み立てられているのが構成からして見て取れますよね。

白と黒だけの映像で表現しようとすると、パッと見はかっこいいんですけど、それが長時間続くと気を抜いた瞬間に単純なものと化してしまうんです、モノクロ映画の撮影時の照明が難しいのと同じだと思います。一晩という長い時間をモノクロームの映像だけで飽きさせずその世界観を表現することの難しさにトライする、それが改めて面白いですね。

以前、ノイズ喫茶iLでYPYの日野君と一緒にプレイした時の僕のVJをkotetsu君が「光と影」と形容してくれて、実はその表現がとても気に入っていて今も使わせてもらっているんですが（笑）あと、最近では以前よりも一つの画面内における白と黒の割合を変えて、黒の割合が多くなるように心がけています。逆に「影と光」というか。というのは、TVでもそうであるように映像って消す（何もない状態になる）と黒になるんですけど、その「黒いものの中で黒を表現する」ためにはどうしたらいいか、ちょっと難しいんですけど、これがここ最近の映像を制作する時のテーマですね。そうなってくると映像内のオブジェクトの動きも以前よりスローになってきたり、より奥行き感を求めたりと、質感もアンダーグラウンドな表現としてより深く潜っていけるような映像とプレイを目指して今も試行錯誤しています。

VJの映像素材というと、普通にメーカーが販売しているループ素材を購入することも出来ますが、ツジタさんがVJで使っている素材はすべて自作らしいですね。

僕は映像の門を叩いた時から、映像は自分で創るのが当たり前だったんで。随分後からVJ素材って売ってるのかと気がついたぐらいです。やはり自分が表現したい映像のためには自分で創るのが一番じゃないかと。時間の使い方や表現の方向性もより具体的に構成できますし、何より他と違うオリジナリティがそこには生まれると感じていて。
例えば黒い円の映像を創るとします。それがPC内のみで描かれた円なのか、手描きで描かれた円を撮影して動かすものなのか、その手描きの場合マジックで描いたのか絵の具なのか。そんな細かい部分でアイデンティティは生まれると思っていて、自分が表現したい映像を思い浮かべながら制作初期段階からこだわることは大切なことだと考えています。

現在のクラブ・カルチャーにおけるVJの立ち位置、その可能性や問題点を教えてください。

もちろんジャンルにもよるし、それぞれのVJスタイルにもよると思います。オーバーグラウンドなシーンにおいてのVJはよりエンターテイメント性が強いものだから明るい演出として今もしっかり成立していると思いますし。

確固たるスタイルのあるサイケデリック・カルチャーなんかは別として、僕が主戦場としているアンダーグラウンドテクノのシーンだと、海外でもあまりVJの存在を見ないような気がします。つまりそのシーンにおいてVJとは「パーティ中でいなくても成り立ってしまう」ものなのかと。実際DJだけでももちろん成立しますし、スモークとストロボやレーザーがあればなお、しっかりと成り立ちます。だから、「不要では」という葛藤を今も抱えながらVJしていますね。（VJは）いらないんじゃないか、いや、不要なものに価値を見出す、そんな自問自答の繰り返しです。

アンダーグラウンドなパーティで明るくない空間的演出が求められる場合も、もちろん多くあります。プロジェクターからは光源としての映像が出てるんで、どうしても少しはフロアが明るくなってしまうことがあるんで、過去には「じゃあVJいらないじゃないか」と落ち込んだこともよくありました。

でもそんな「VJ＝明るい空間になる」というこれまでの定義を覆すために、クラブとしての非日常的暗さを維持しながら、独自の映像表現で投影することができるなら、それはアイデンティティーを確立できる大きなチャンスじゃないかと。その大前提のもとで「なんとなくな空間映像」ではなく、どれだけ表現という立ち位置の映像を主張できるか、それを常に試みています。

iPhoneの登場でSNSが普及し映像というものが以前より身近なものとして受け入れられています。今では当たり前になったマッピングなどの新しい投影法も増え今は高性能なプロジェクターなどの機材も昔に比べれば格段に安くなりました。プログラミングも身近なものになりつつあります。そうした状況を味方にするだけでもアイディア次第で表現の可能性がまだまだ転がっていると思います。

現場以外での活動として、アーティストの楽曲のビデオも制作していますよね。ここ数年、手掛けた作品で印象に残っているものはありますか。

DJ WADAさんの楽曲"Beetbeats"のMVは、ここ数年の自分の作風の大きなターニングポイントでした。それまではMVを制作するときもVJのときも、極端に言うと1音1音すべてに映像の動きや変化をリンクさせようと躍起になっていたんですが、自分の中にあったその固定概念を壊して、もっと楽曲自体の大きな世界観を映像で表現することにプライオリティを置いたのがこの作品です。この作品は墨が水中に溶け込んでいくいろんな動きを何度も撮影したあとに加工・編集をしたんですが、このMV制作以降、作品の捉え方がより俯瞰できるようになった気がして、少し自分の中での幅がひろがったような感覚を覚えた作品ですね。

もう一つは、TransmatからリリースされたHiroshi Watanabeさんの"The Multiverse"のMVですね。元々は何度かパーティでご一緒していたHiroshi WatanabeさんからMVを創ってみないかと話をもらったんですが、VJを始めた頃にはまさかあのDerrick Mayの主催するTransmatから自分が制作した映像を配信できるとは想像もしていなかったので。さすがに配信された日は嬉しかったですね。老舗レーベルとのやりとりなんかもとても勉強になりましたし、素晴らしい経験をさせてもらいました。

MVはどれも印象深いです。産みの苦しみはありますが、一つの完結される世界観を作品の中に凝縮できますし。最近だと2018.8.17にリリースされたCD HATA × KOYASのお二人のNEW EPの中の"Roll Pusher"のMVも僕が制作させてもらいました。

パーティで印象に残っているものは。

2017年6月、神戸でのパーティ「6 hours」オーガナイザーの熊木君に、ZEN君とやってるのオーディオビジュアルユニット「six」として呼んでもらったんですが。僕ら2人だけで6時間という企画でした。出発地点と着地点だけZEN君と打ち合わせして、あとは互いの現場判断なんですけど。結局僕らは止まれなくて7時間やってしまって、最終的にはハコからストップがかかったんですけど（笑）終わってから2人で話してたのは、あと1〜2時間は余裕でやれたなっていう。その場合は中の構成も別の展開になっていただろうし、それはそれで面白いかなと。

それをこなせるだけの引き出しと、互いの関係性があるんですね。

数え切れない現場をZEN君と一緒にやってきてお互いの呼吸というかシンパシーというか、そうした感覚的な部分が同調していくのを毎回感じていて。six結成以前の互いの積み重ねなんかもあるんでプレイしている僕らが一番楽しんでると思います。この時の経験で、sixとしてプレイする時でも普段のVJとしてプレイするときでもそうですが、空間内の構成やミクロからマクロに対してのストーリーの大切さみたいなものを再度考えることができたと思っています。

実際、ZENさんも、それからWADAさんも、ツジタさんのVJについて「凄く細かい部分まで音や展開の変化が共有できる」と仰られていますね。

そういってもらえるのは、本当にありがたいですね。素直に嬉しいです。僕としても表現するものの方向性はリンクしていたいというのが大前提ですから。例えば柔らかい音の時に直線的な硬い映像を投影しても違和感しかないですし。さらに言えばフロアに対しての明るさもそうですね。プロジェクターの光量よってフロア自体の非日常的な没入感がなくならないように常に素材と出力数値のバランスを見ながら映像を組み立てています。やはり空間演出としての映像ではなく、一つの表現というカテゴリーの中でのVJとして、そしてなるべくDJ、そしてフロアと同じ視点に立った誤差の少ない感覚的共有表現を基本としてはプレイしているつもりです。

ZENさんとは岡山のyebis ya proでよく共演しているとのことですが。

ZEN君主催のアンダーグラウンドテクノパーティの「えん」や、「えん」が全面プロデュースする「バベル」で主にやらせてもらってます。毎回大きなテーマが掲げられその中でいかに感覚的に映像で表現していくか、課題とともに自分の表現について深く考える機会もあり、自分の中でも大切にしているパーティです。

そのベニューでもあるyebisu ya proの丹正さんは、ハコのオーナーとしてとても理想的な人なんですよ。出演者側に対してもパーティシーンに対しても、非常に理解のある人なので僕もZEN君も毎回常に攻めの姿勢で伸び伸びやらせてもらっていて、本当にありがたく思っています。

ほかに地方で面白い、または思い出のある街やクラブ、アーティストやオーガナイザーはいますか。

大阪のS.O.W LASER主催のパーティ「WOLS」は、Takaaki Itohさん、Loeちゃんがレジデントのテクノパーティで。真っ暗で広い空間の中に硬質なテクノとレーザーに四方八方から包まれるような押し寄せてくるような感覚で。僕自身もタイミング合えば遊びにいくパーティなんですが、一度入るとラストまでいないと勿体ない素晴らしいパーティです。

広島には「crossbreed」というパーティを主催している、Masataro君を中心としたPMCというチームがいて以前も出演させてもらったこともあるんですが、終始笑顔なクルーと一緒に設営段階からパーティを創り上げていく感覚が本当に楽しくて。

ハコでいうと、地元香川にも浜吉君のノイズ喫茶iLや、NAOYAさんがオーナーのCLUB AXISがありますし、DELTA MARKETのように僕らをバックアップしてもらえるお店もあります。また、実験的に多様なカルチャーをミックスさせた岡内大三君主催のANTICAL、愛媛にはチャーリー君のやってる音溶、池ちゃんのやってる徳島のチャラパルタ、岡山の老舗Deleteや広島のEdgeなんかも……。どこもこだわりのあるパーティを常に提示していて、そこにゆるぎない意志みたいなものを僕は感じていて、刺激をもらっていますね。

演者にせよオーガナイザーにせよ、またハコにせよ、地方で続けていくのはかなり情熱が求められるでしょうしね。

地方で主催する場合、自分たちが表現したい一晩──アンダーグラウンドなクオリティを保って──と集客とが伴わない場合が出てきますし、かといって妥協したくない。あとショップ自体減ってて、ポスターやフライヤーを置いてもらえないことも少なくありません。SNSがあるとは言え、やはりコミュニケーションツールとして直接フライヤーを通じて会話をすることには敵わないとも考えていて。あと、地方の小箱だと物理的にVJのスペースが確保できない場面なんかも……。

ただ、告知からパーティの内容まで、いろんなタイミングや要素がピタリとハマって、パーティが生き物のように、僕らの手を離れて転がりだす瞬間があるんですけど、その時はプレイしていてなんとも言えない高揚感を感じつつ素直に嬉しいな、と。パーティって奥が深いなと今でも思います。

志や情熱が自然と伝わる瞬間と言えますね。

自分たちの表現したものを共有してもらえた感覚というか、フロアのベクトルが一つの方向も向いてるというか。あの感覚は本当に気持ちのいい瞬間だと思います。あと、地方に住みながらVJを続けていて、だんだん県外からのオファーが頂けるようになったのは本当に嬉しいしありがたいことだと思っています。同じような情熱や志、そして高いクオリティを持ってる人たちと様々な繋がりが生まれて、いろいろ僕自身の環境も変化しつつあります。やはり、香川県で活動しているということにどこかコンプレックスはあったと思うんですが「自分は地方にいるからどうしようもない」というのは言い訳でしかないとも思っていて。アピールするためのやり方はいくらでもある時代だと思うし、積み重ねを経て、目標とする場所やパーティで自分の思う映像表現が出来るように試行錯誤しています。

ツジタナオトは、Resident Advisorが共同キュレートするMUTEK JPのナイトプログラムでLemnaと一緒にプレイします、お見逃しなく。