Louie Vegaはハウス・ミュージック界のヒーローだ。90年代の彼のソロ作や、Kenny DopeとのMasters At Work名義での作品は、当時のハウス・サウンドを更なる高みへと導くほどの影響力を誇った。プロデューサーとして成功を収めている彼だが、彼自身は自分のことを何よりもDJとして見ている。1985年、ニューヨークの短命だったクラブ、The Devil's NestでプロDJとしてデビューした彼は、その後あっという間に世界中を飛び回る人気DJの座に昇りつめた。今も変わらず忙しい彼は、今のところ、2018年だけで27ヶ国でギグをこなしたと言う。

30年以上ものキャリアを積む過程で、Vegaは独創的なDJの手法を確立してきた。毎回、DJギグの前には専属の音響技師がVega用のDJブースをほぼゼロから造り上げ、４台のCDJとハイエンド・オーディオ機器を準備する。1回のセットの中で彼は同じ曲のリミックスを3、4バージョンかけ、さらにアカペラやエフェクトを重ねてライブリミックスに近いプレイをする。このプレイスタイルの基となっているのが、ニューヨークのクラブ黄金期に行ったZanzibarやBetter Days、そして14歳のときに姉に連れられて初めて行ったParadise Garageなどの伝説のクラブで培った経験である。そういったクラブには多大な影響を受けており、今でもインスピレーションの源であるとVegaは言う。

Vegaの話を聞いていて印象的だったのは、彼がいかに努力を惜しまないDJであるか、であった。以前、友人のバースデー・パーティーで一晩中レコードをプレイするため、1800ドルもの運送費を自腹で払ってレコードを何箱も送ったことがあったらしい。多忙を極めたツアースケジュールを毎週こなしながら、彼は今もニューヨークのCieloでの週半ばのレジデンシーを続けているそうだ。そういった彼の献身的な姿勢の根底には、音楽への深い愛情がある。「今、ダンスミュージックにはとても活気がある」と熱意たったぷりに話す彼に、異論を唱えるのは難しい。

最近のDJ時の使用機材について教えてください。

CDJを4つと、ミキサーはMODEL 1を使ってる。昔からロータリーを使ってきたから、MODEL 1は慣れるまで大変だったね。フェーダー・ミキサーを複数のギグで使ったのはこれが初だったんだ。数年前にRichie HawtinとBen Turnerに、イビサ島でこのミキサーを試してみないかと誘われたのがきっかけだ。俺が求めている音を出してくれた。ついてるフィルターもどれも良かったし、音域を細かくいじれるのが良い。俺のそれまでのDJの仕方とは違った、新しいプレイ方法だったんだ。それから、このミキサーのブランド大使に俺がなることになった。「これはロータリー主義者たちが怒るぞ」って思ったね。

もうひとつDJセットがあって、そっちも4台のCDJが中心だが、ミキサーはARS 6700なんだ。これは俺がこれまで聴いたなかで一番良いロータリー・ミキサーだと思う。長いことUREIを使っていたんだが、これはかつてのミキサーの音を思いださせてくれる。

あと、アイソレーターの3500 ARSを使ってる。これにはボリュームが付いているからアイソレーターでゲインをいじることができて、ミキサーのゲインを上げすぎなくてもいいから便利だ。あとDope Realのアイソレーターを使うこともあるね。これらは特注品で、市販されているものとは違うんだ。エンジニアの人たちと知り合いで、彼らは優秀だから俺の要望通りのものを造ってくれる。

たまにPioneer RMXを使うときもある。でも、あまり多くの機材は使わない。使う機材はとことんフルに活用するけどな。

フェーダー・ミキサーと比較して、ロータリー・ミキサーを使うことのメリットは何でしょう？個人的な好みでしょうか？ロータリーでしか得られないものはありますか？

好みだね。好きなほう、やりやすいと感じるほうを使えばいい。俺はどちらもやりやすいと感じるよ。ロータリーだとふたつのツマミを回すわけだけど、やはり流れの感覚が違うし、繋ぎはなめらかになりやすい。ふたつのツマミを同時に回すコツを掴めば、カットインなどもできる。Model 1を使う場合、俺はフェーダーを動かすのと同時にフィルターをいじっているんだ。だから感覚はやっぱり違うね。

アイソレーターはなぜ使うのですか？ミキサーにEQがついてますが、もうひとつ機材を追加する理由は何でしょう？

3500を追加することで、楽器のように扱うことができるんだ。曲を通じてオーディエンスと対話できる。曲に大胆なダイナミクスを加えることができる。曲の印象をガラッと変えることだってできるんだ。特定の周波数帯域を完全にカットしてしまうことができるんだから、とても楽しい。その場で、曲のアカペラをかけているかのように聴かせることだってできる。

曲を繋いでるとき、アイソレーターで中音域を少し下げると、音が若干暖かくなる。そして次の曲を入れる隙間を作るんだ。そうすることでスムーズに繋ぐことができる。または中音域と高音域をすべて下げて、ベースだけが聞こえるようにする。そして次にかける曲は低音だけ切っておいて、中高音は残しておく。そうやって繋げるとまた違った効果が生まれるし、キーが近い曲同士を重ねれば上手い具合に混ざって素晴らしいことになるよ。

細かく周波数を操作するために使用するのですね。その技術は習得するにどれくらい時間がかかったんですか？

これに関しては、技術的なことというよりは感覚的なことだから、どのくらいやれば良いのか説明することはできないが、聴けばわかる。ここ25年くらい、俺は自分のDJプレイを毎回録音してきた。たまにツアーで移動しているときにそれを聴いたり、ホテルルームのBGMにしたりするよ。

自分のプレイがどうだったかチェックするんですね？

自分のプレイはちゃんと聴くべきだと思うね。毎回すべて完璧にこなせると思っちゃだめだ。お客さんは大きなサウンドシステムで音楽を聴いている。だから録音したセットを聴き返すときは、俺はじっくり細部まで集中して聴くんだ。そういう性格なんだよ。プロとしてね。曲を繋いでいるときは、可能な限り綺麗で気持ち良い繋ぎにしようと心がけている。

次に来た曲のキックが前の曲よりもちょっと弱かったりすると、自分で聴いていて嫌なんだ。その曲の音量をもうちょっと上げて繋げるべきだったとわかる。そして覚えておく。次に曲を繋げているときに、次の曲がちょっと弱いと感じたら、アイソレーターでちょっと上げて力強くして、前の曲と合わせるんだ。お客さんは気づいてないだろうけど、俺は同時に3つや4つの機材を操作している。ただ曲を繋いでるわけじゃなくて、常に音の微調整を繰り返しているんだ。

1曲のなかで音が大きくなるところと、小さくなるところがある。だから音量が上がりすぎていると感じたら、曲のブレイクダウン部分に差し掛かったときに調整するといい。俺は全体の音量を下げるときは、下げても大丈夫なところまでじっくり待つ。突然音量を調整したらガクッと下がったのがバレてしまうからね。それが嫌だから、徐々にやる。少しずつ音量を下げていくか、曲のドロップ部分だと音を下げてもバレにくい。

あなたは片耳のヘッドフォンを好んで使用していますよね。なぜですか？

左耳を塞がないでおきたいんだ。常に周りの状況を耳で確認できるようにしておきたい。こういうヘッドフォンならそれができる。あと、帽子をよくかぶるからな。

答えは目の前にありましたね。あなたは誰よりも早くCDJを活用していたと思います。

ああ、結構早くから導入していたね。最初は皆「レコードからCDに変えるなんて、絶対にしないね」って言ってた。しかしそのうち、皆がレコードからCDに変えていた。それまでレコードの入った箱を4つ運んで世界を旅していた俺たちは、大量のCDケースを持ち運ぶようになって、今じゃ小さなハードドライブだけで済んでいる。

CDJをどのように使っているか教えてください。

4台のCDJを使っている。きっと「なんであんなにたくさんのCDJを使ってるんだ？」って皆思ってるんだろうけど、色々な音楽やDJツールに常に手が届く状態にしておきたいんだ。俺は、DJセットを予めかっちり組み立てておくことはしない。アカペラのループをたくさん用意しておく、などといったことはしないんだ。Pioneerではループを保存できるから...

rekordboxの機能ですね？

そうやってループとかを用意しておいたりはしないで、その場でやるのが好きなんだ。ホットキューもそんなに使わない。自分のマインドは常に動的でクリエイティブにしておきたい。右端のCDJにはエフェクトやアカペラ、ツールなんかのプレイリストを出しておいて、それ以外の3台で曲をかける。俺は曲のアレンジメントをしっかり聴き込むんだ。毎回、最初の16小節で繋げるとは限らない。曲の中盤とか、後半とか、ヴァンプ部分で繋げるかもしれない。ヴァンプの部分で繋げると、また違った聴かせ方ができる。俺はコードやメロディーに集中して聴く。何と何を繋げたら相性が良いかを聴き分けようとしているんだ。事前に40曲かける曲を選んでおいて、ただそれを順番にかけていくんじゃなくて、その場でかける曲を決めている。Samsungの2テラのハードディスクを使っているんだが、小さくて軽量で動作が速い。ここに大量の音楽が入っているんだ。

ひとつのCDJでヴォーカル曲をかけているとしよう。そこに、サンプルをのせたビートを混ぜるかもしれない。同時に、アカペラを別のCDJで再生する。2曲がかかっている間にそのアカペラをループさせちゃうかもしれない。そして2曲のうちのヴォーカル曲がビート部分にさしかかったら、さらにもう1曲、ヴォーカル入りの別の曲を混ぜ始める。それを3台目のCDJでやるというわけだ。わかるかな？

CDJのSYNC機能は使いますか？

使わない。

なぜですか？それだけ色々なことを同時にやっていたら、その機能を使ってもおかしくはないと思いますが。

他の人がどうやろうが結構だが、俺は自分でミックスするようにしているよ。最低限の、そうだな「リアルさ」とでも言っておこうか、をキープしておきたい。そのぶんミスもあるが、その場でやるからこそ生まれるフィーリングもある。俺はその感覚を大事にしたいんだ。毎回チャレンジしたい。自力で2曲繋げて、さらに3曲目を上手く混ぜることをしたい。もしSYNC機能に頼っていたらできなかったであろう繋ぎ方ができるしね。

KennyとDJするとき、CDJが計8つ、ミキサーが2つという状況になるかと思います。ごちゃついてしまわないように、彼とのコミュニケーションはどうしていますか？

Kennyとプレイしているときは、ほぼ手話の状態だよ。目配せとか、うなづきとか、ハンドサインで意思疎通する。ふたりにしかわからないコミュニケーションの手段があるんだ。暗黙の了解もある。例えばもし彼がヴォーカルとビートをかけていたら、俺がそこに更にヴォーカルものをぶつけてくるということは絶対にしない。彼がやっていることに上手く合うものを探すんだ。

レコードでDJすることを恋しく想うことはありますか？

今でもレコード・イベントで回してるよ。ニューヨークで年に数回あるんだが、ビッグプロジェクトだから楽しいんだ。そのイベント専用の技術スタッフもいる。Moses Montoyaという音響技師がいるんだが、彼にお願いして、毎回イベントの前にブースをセットしてもらっている。Mosesは優秀で、俺が求めるDJブースを造る技をマスターしているんだ。何もない場所に数時間で完璧な俺専用のDJブースを造り上げる。見た目も格好いいし、俺のリクエストしたもの全てが揃ってる。俺がやるイベントは毎回来てもらっているよ。

そしてTakaya Nagaseもいる。彼は土のうとか、タンテの下に置く小さなクッションのようなものとか、針のクリーナーなどを用意してくれる。彼が持っているものは最高級のものばかりだ。Takayaは、俺がDavid Mancusoの使徒と呼んでいる人たちのひとりなんだ。彼のスピリットやパーティーを受け継いでいる人たちで、Joyというパーティーを主催している。Joyに遊びに行ったとき、Douglas ShermanやTakayaたちがいた。音がすごく良くて衝撃を受けたよ。どんな曲がかかっても、ノイズがまったくないんだ。アルバム・バージョンでもなんでも、すごく出音が良い。その音に惚れたね。それから通うようになって、ここ半年で3、4回は行ったよ。レコードを持っていくようになって、よく話すようになり、TakayaにJoyの音響は誰が担当しているのか聞いてみた。すると、音響は彼がやっていると、実は大工でもあるんだと彼は言うんだ。だから俺は彼に言った。「俺は今度レコードで回すんだけど、Mosesと一緒に俺の音響セットアップをやってくれないか？」とね。そして彼が来てくれて、最高な環境づくりをしてくれた。それから、レコードで回すときは毎回「Takaya、Moses、出番だ」だね。オールナイトのイベントをレコードでやるなら、俺は4、5箱は必要だ。なんせ、一晩で様々な音楽を楽しむ音楽の旅をするんだから。一晩中DJするなら、選択肢が多くないとだめだ。

Moses Montoya

Vega Recordsのリリース作を見てみると、Louie Vegaリミックスが10曲入っていたりします。たしか「I Choose You」がまさに10曲でしたね。なぜそれほどリミックスを作るのですか？

自分がDJしているときと同じ感覚でリミックスしているんだ。DJツールをたくさん提供したい。様々なバージョンを用意するから、それを使って遊んで欲しいんだ。俺のように、クリエイティブなDJをやってみて欲しいんだ。ただメインバージョンだけをかけるDJもいるし、メインバージョンとインストだけをシングルとして出す人も多い。しかし俺は色々なツールを提供したい。俺のやっていることにインスパイアされている若者に、君にもできるんだ、って伝えたい。そのためのツールは俺が提供するから。

DJでやっていることは、どれほどプロデューサーとしての仕事に影響を与えますか？DJ中に新曲をかけてみて、客の反応を見ることはありますか？

ああ、まさに水曜日のRootsでのギグがそうだね。300人くらいの小さなパーティーなんだが、このパーティーにすごくインスピレーションをもらう。あそこで水曜の夜を過ごすことで、何曲も生まれたよ。スタジオで制作したものをまずあそこでテストするんだ。もし反応が良ければ、この方向性で良いんだ、ってわかる。

新曲を初披露したときの客の反応が一番良かったときは、いつでした？

ありがたいことに、Kenny Dopeと一緒に作った曲が、多くの人々の心をつかむ瞬間を何度も目撃してきた。例えば、ずいぶん前に"The Nervous Track"をSound Factory Barで初披露したとき。あるいはGeorge Bensonの"You Can Do It"をかけたとき。イタリアの3000、4000人くらいの観衆がまるでコンサートみたいに合唱していた。思い出深い瞬間は数え切れないよ。多くの人々にそういった形で感動を与えることができて本当に嬉しい。

以前ヨハネスブルグにいたとき、ちょうどFunkadelicとGeorge Clintonと作った曲が完成したばかりだった。ちなみにこれは俺の前のアルバム、『Louie Vega Starring… XXVIII』に収録されていて、グラミーにノミネートされたんだが、それをかけたときのことは忘れられないね。2回目のサビが始まったころ、ふと思いついてアイソレーターで高音以外をカットしたんだ。するとオーディエンスが皆歌いだした。鳥肌が立ったね。すぐにサビを覚えて合唱してくれたんだ。

80年代にDJを始めたときのことについて教えてください。どういった機材を使ってました？

最初にプロとしてプレイしたのがThe Devil's Nestというクラブだった。1985年のことで、2台のタンテとBozakのミキサーだ。それが最初だった。それから86年にニューヨークシティで、旧FunhouseのHeartthrobでやるようになった。そこではいつもUREIを使ってた。

80年代半ば当時は、どういったDJに影響を受けていましたか？

Larry Levan、Tony Humphries。David DePino、Paradise Garageで金曜にやっていたJoey Llanos。InfernoでやっていたDavid Morales。Kenny Carpenter。FunhouseのJellybean Benitez。Better Daysで回してたBruce Forest。彼らのDJは本当に凄くて、とても多くを学んだよ。

Bruce ForestのDJスタイルはとても変わっていた。ダンスミュージックをかけるヒップホップDJみたいだったよ。すごいエネルギッシュなプレイだった。自作のサンプラーを持ち込んで、その場でレコードをサンプリングするんだ。そんなことをやっていたのは彼が初じゃないだろうか。そしてDavid Coleとかキーボードプレイヤーを呼んで、セッションするんだ。その後、Moralesもそこでプレイするようになった。Bruceはとても革新的だった。黒人のゲイが中心のクラブで回す若い白人DJだったしね。実際のところ、あの頃の凄腕DJたちは皆ゲイクラブで回していたんだ。俺はブロンクス出身のストレート（異性愛者）だが、姉たちがゲイクラブに遊びに行って、「Louie、あそこで回してるDJを聴きに行ったほうがいいよ」って教えてくれたんだ。クラブの熱気、かかってる音楽、曲の繋ぎ、聴いたことのないレコードたち。とにかく衝撃を受けたね。Larry LevanをParadise Garageで見たときも同じだ。最初に行ったのは1980年のこと。俺は14歳で、姉たちに連れられて行ったんだ。

14歳でParadise Garageですか？

Paradise Garageで素晴らしい音楽をたくさん聴いた思い出は一生忘れないよ。あの頃はLarryがGwen Guthrie、Grace Jones、Man Friday、The Peech Boysとかの曲を手がけてたときで、そういった曲をGarageで聴くことができた。Tony Humphriesの場合は、ちょっと違っていた。俺たちはニューヨークシティに住んでいたから、車でジャージーまで行かないといけなかった。

ニューアークでしたっけ？

ああ、ニュージャージー州ニューアークだ。ZanzibarのHumphriesを聴くならそこまで行かないといけないが、行ったら朝の8時、9時ぐらいまではいたね。俺がこの頃遊びに行っていた場所はどこも素晴らしいサウンドシステムがあった。Paradise GarageとかZanzibarとか、たいていのシステムはRichard Longの仕事だった。想像してごらんよ、究極のサウンドシステムで素晴らしいDJのプレイが聴けて、一晩中人々が踊って楽しんでいる空間を。そのときの経験があったからこそ、今やっていることをやろうと思ったんだ。

Garageのサウンドシステムに匹敵するサウンドシステムは現在あると思いますか？

いや。しかし、近いものを感じるのはあるよ。昔やっていたYellowはとても良かったね。Nowadays、Analog BKNYとか。こういったクラブはParadise Garageより小さいが、音は素晴らしいし、規模が同じだったら同等と言えるかもしれない。

その時代に学んだDJテクニックなどはありますか？

アカペラの使い方だね。あとサウンド・エフェクトを使った雰囲気づくりとか、暗い空間での照明の扱いとか。クラブにおいて照明はとても重要だが、それが軽視されている気がする、世界中どこでも。重要視している人が少ない。俺はありがたいことにAriel Figueroaに照明をお願いすることができるから、ラッキーだよ。

Body & Soulの照明を担当した人ですね？

それ以前からだよ。91年に俺がSound Factory Barにいたときも彼はいたし、92年にはTwiloでやっていた。それ以前は、TracksでDavid DePinoと一緒に仕事していた。Arielはかなりのベテランで、音楽を熟知している。センスが良いんだ。俊敏さが猫みたいだよ。一番大事な瞬間というものを感じ取ることができるんだ。ライトを扱うDJみたいだ。

彼は他の照明技師とどう違うと感じますか？

音楽を生き生きさせるんだ。彼は曲を通じて客と対話する。照明で様々なことをするし、曲のメロディーを照明で際立たせているとも言える。ライトをただオン・オフするだけではなく、色々なことが同時に起きている。照明で対話するのが上手いんだ。

サウンドシステムの質が悪くても、パーティーを盛り上げることはできますか？

だからアイソレーターを持ち込むんだ。そこで音を可能な限り調整する。最低でもそこで少しは良く聴かせることができる。可能な限り、出音が良くなるよう努力するだけさ。

サウンドチェックは誰が担当しているのですか？

飛行機でギグに向かうときは、いつもうちの音響スタッフがついてくる。俺専用のDJブースを造り上げる手順がもう確立されているんだ。俺がサウンドチェックをやるときは、うちの音響スタッフがクラブの音響スタッフと話をして、音のEQを始める。可能な限りサウンドシステムの出音を良くしたいからね。だからアイソレーターは便利だ。箱に備わっているEQを先に調整してから俺のアイソレーターを調整したりする。俺のアイソレーターは31バンドEQではなくて、ミッドレンジ、ベースとハイの3つしかないから。

問題があったらMosesが解決してくれる。彼はパーティーの途中でもブースの下に潜り込んで何が原因なのか調べてくれる。ベースの振動でケーブルがゆるんだり、色々なことが起こるからね。だから準備万端でいるべきだし、専属の良い音響スタッフを雇うことは重要だと思う。

専属の音響スタッフがいるDJはあまり知らないと思います。他にもそういうDJはいるんですか？

何人かいるよ。Joseph Capriati。Timmy Regisford。彼らも音響がついてる。ちゃんとそういうところまで気にしているDJはいる。他のDJもそうするべきだと思うね。もちろんそんな予算がないならそれは仕方がないが、その場合は可能な限りベストは尽くすべきだし、サウンドチェックは絶対にするべきだ。DJによっては、音響スタッフもいなければ、サウンドチェックすらしなかったりする。Pioneer 900とCDJが2つか3つあれば大丈夫、みたいな。音の鳴りを確認しないで本番迎えて、ひどいことになったりする。なにかあったときは、例え音響の人のせいだとしても、客はDJを見るわけだからね。

ギグの合間に練習はしますか？

ツアーをすること自体が練習になっていると思う。頻繁にDJしてるから常に腕を磨くことができている。それよりも新曲をじっくり聴いて覚えることのほうが重要だ。

今後、スケジュールをもう少しゆったりさせたいと思うことはありますか？

好きじゃなかったら続けられないよ。これまで以上にワクワクしているんだ。今そうなのが不思議なぐらいだが、アイディアがどんどん湧いてくるし、今ってこの音楽にとってとても良い時代だと思うんだ。ひとつの周期なのか、若い子たちがまたこの音楽に夢中になっている。今、ダンスミュージックにはとても活気がある。世界中のあちこちで、ハウスやテクノを聴く若者がいて、しかも彼らは新しい音に対してオープンだ。今の世代は寛容的だと思う。

これまでと変わらず、やる気に満ち溢れているようですね。

間違いないよ。去年は素晴らしいアーティストをたくさん呼んで、ビッグなハウス・アルバムを作って、ハウスへの俺なりのトリビュートをした。今年は『NYC Disco』プロジェクトをやってるし、来年の2019年はジャズにフォーカスする予定だ。最高な人たちとコラボレーションの話をしているよ。MoodymannとかCarl Craigとか、Jazzy Jeffと彼のフィリーのクルーとか。これ以上名前は出さないでおくが、ジャズの巨匠とかともスタジオ入りする予定なんだ。

あともうひとつ、ちょっと前に行ったギグですごく興奮したことがあった。今年の正月にTotal Refreshment Centreというところで、Gilles PetersonのためにDJをした。そこでGillesにロンドンで今起きているジャズのムーヴメントについて教えてもらったんだ。それに触発されて、こういったプロジェクトをやることにしたんだ。今考えてるのは、Elements Of Lifeのリズム・セクションを中心とした俺のバンド、E.O.L. Soulfritoを連れて、フィラデルフィア、デトロイト、LA、ロンドン、シカゴといった街に行って、そこのミュージシャンたちとジャムセッションをしてレコーディングすることだ。すでに2019年のことで頭がいっぱいだよ。