人気アルバムに収録されたものであれ数百枚限定プレスのヴァイナルオンリーのEPに収録されたものであれ、トラックはエレクトロニックミュージックの中心要素であり、何よりも形として押し上げることのできる唯一の場面です。以下は私たちのお気に入りトラック50曲。毎月のベスト・ミュージック特集とRAスタッフ/コントリビューターの意見から選出しました。それらは2018年を特徴づける内容であり、この先何年にもわたって聴かれることでしょう。

下部のコメント欄にあなたの意見を聞かせてください。個人的な2018年のハイライトのシェアはご自由にどうぞ。

トラックのプレイリストをApple MusicとYouTubeで聴くことができます。

- Eris Drew
  Hold Me (T4T Embrace Mix)
  Naive
  
  Eris Drewのプロダクションデビュー作は彼女のDJセット同様に高揚感がある。昔のBob Jamesのブレイクを使い、最初はあえぎ声のボーカルサンプル、そしてシンセのハープシコードへと続きクライマックスに向けて加速していく。しかしひっくり返ることはなく落ち着きを保ったままだ。そして最高のレイヴのように延々と続いていくようだ。
- Kasper Marott
  Keflavik
  Seilscheibenpfeiler
  
  これはやりすぎだと思うかもしれない。激しいキック、ゲートリバーブしたスネア、イタロベースライン、多数のブレイクダウン、エレクトリックギターの奇妙な音、そして135 BPM。しかしどういうわけかKasper Marrotの"Keflavik"にあるこの全てのパートは美しく一体となり、今年の最高のフロアトラックのひとつと言えるほどの見事な恍惚感を作り上げた。このデンマーク人プロデューサーの確かな躍進作。
- Raime
  Real People, Not Actors
  Different Circles
  
  Raimeの無重力グライムについての見解は、彼らの重くベースベヴィーなサウンドを逆だった。ストリング、わずかなヴォーカル、かろうじてそこにあるドラムといった相次ぐサンプルは、マレットのリードと決闘しながら、ランダムな間隔で現われては消えていく。ヒプノティックに反復し恐怖に満ち溢れたグルーヴでかつて知られたバンドによる、じっとしていられないほどに目まぐるしい4分間のトラック。
- Rush Plus
  Sweat
  E-Missions
  
  息苦しさがないようにどのようにしてハードで早いテクノを作りますか？ワシントンD.C拠点のデュオRush Plusはそれについて1つか2つ答えをもっている。"Sweat"は140 BPM周辺で浮かんでいるが、衝撃吸収材のように反響を吸い上げるスイングが功をなし決してその速さに聞こえない。90年代のクラシックからそのトリックを拝借し2018年バージョンにアップデートした"Sweat"は、楽しみ方を思い起こさせるような、つい表情が和らいでしまうテクノだ。
- Barker
  Look How Hard I've Tried
  Ostgut Ton
  
  「Debiasing」は2018年で最もパワフルなテクノEPであり、そこにキックドラムは一つもない。このメロディーの名作はBarkerがBerghainのハウスレーベルからリリースした初のソロ作品。古典的なテクノとトランスから描き出されており、90年代のダンスミュージックのもつ感情的な重さから明らかに現代的な何かへチャネリングしている。"Look How Hard I've Tried"はその中でも際立っており、乱雑に転がるコードが5分間のユートビアへと帰結する。
- James Blake
  If The Car Beside You Moves Ahead
  Polydor
  
  2016年以降、James Blakeはポピュラーミュージックの最高峰に存在し、BeyoncéやFrank Ocean、Kendrick Lamarらとコラボレーションしている。天使のような優しい声を持つひょろっとした男の子は変わったダブステップの制作からキャリアを始め、今や国際的なスターになった。だがこの新たに獲得した名声は彼のサウンドを清潔にしているのかというと、それは違う。今年リリースされた2つのソロトラックのうちの一つ"If The Car Beside You Moves Ahead"は、奇妙で、ネオンシンセと組み替えられたヴォイスの世界を走り抜け聴く者を魅了する。そして何よりも、素晴らしいポップはルールに従わなくていいという証明でもある。
- Leif
  Number 13
  TIO-Series
  
  Leifのトラックはどれも別世界へつながった窓のようだ。豊かな質感と変破りなリズムから引き出されたシュールで色彩豊かな場所がそこには広がっている。"Number 13"はそれが最も顕著で、グルーヴとメロディがキラキラと万華鏡のように光り、サイケデリックだけどどこか健康的な、まるで別次元から来たフォークソングのようだ。このウェールズ人プロデューサーは新作を出すたびに新たな境地へ達しており、今作も例外ではない。
- Flow
  Boy Girl Action
  Tardis
  
  90年代はUKダンスミュージックにとって素晴らしい時期だった、特にハウスとテクノが交差したコズミックゾーンにおいて。その時代の人気入手困難なテックハウス・トラックが多数存在し、その多くは未だにダンスミュージックの一流DJによってプレイされている。この11分に及ぶ巨大な鉄球は当時の未発表曲で、Eli VerveineとOscar SchubaqのTardisレーベルによって新たな息を吹き込まれた。2018年の世界中のダンスフロアを圧倒した曲だ。
- Peggy Gou
  It Makes You Forget (Itgehane)
  Ninja Tune
  
  もし今年を誰かの年と例えるなら、Peggy Gouだろう。この韓国人アーティストは150ものギグでDJをし、世界中のクラブやフェスティバルをやっつけ倒した。聴いてすぐクラシックだと感じたNinja Tuneからのデビュー作は、それを一部可能にしたと言える。"It Makes You Forget (Itgehane)"の弾力のあるベースライン、ハンドドラム、落ち着いたヴィーカルは、SadeやLarry Heardあたりの陽気なロマンチシズムを思い起こさせる。
- 700 Bliss
  Cosmic Slop
  Halcyon Veil
  
  Moor MotherとDJ Haremが今年タッグを組み一枚のEPを完成させた。何か大事の始まりであることは明らかだ。Moor Motherのハードコアな破滅的ポエトリーにHaramのゾッと張り詰めたインストゥルメンタルが融合した「Spa 700」は、アメリカで貧乏な黒人あることへの怒りと疎外感が具現化されたもの。そのEPのハイライトである"Cosmic Slop"は、両肩を握られ揺さぶられるような内容だが、それは決してサブベースのせいだけではない。
- DJ Koze
  Pick Up (12" Extended Disco Version)
  Pampa
  
  「一番美しいのはメロディーと陶酔感の間」とDJ Kozeは我々に語ってくれた。「'Pick Up'はその両方を持ち合わせていて、悲しげな声とディスコループが釣り合いを取りながら永遠に続いていく。ほとんど要素のないその簡潔さが好きなんだ。この中枢は、それ自体が想像して思考するための時間と空間をもっていること。僕がヒップホップを好きだった理由はそこにある。マジカルなループを見つけたら永遠にそれを聴くことができるんだ。だが見つけるのは容易じゃない。これは僕が一夜で、赤ワイン1本を空けて3、4時間で作った唯一のトラック。つまり最短で完成したが大きなインパクトをもった曲ということになる。」
- Krystal Klear
  Neutron Dance
  Running Back
  
  Gerd JansonがSugar Mountainでリリース1ヶ月前の"Neutron Dance"をドロップした時、多様で非常に大きなリアクションが沸き起こった。すぐさま叫び声が上がり、耳がニコリとし、皆そろって飛び跳ねた。このトラックは今夏そうしたリアクションを得続けてきただろう。ニューヨーク経由ダブリン在住のプロデューサーによるこの新たなウェイブハウス・カットは、複数レベルの郷愁をもたらし、"Bizarre Love Triangle"とTodd Terjeのアルペジオ調の恍惚感の両方をうまく取り入れたことでヒットした。
- Donato Dozzy
  Cleo
  Eerie Records
  
  これはDonato Dozzyが"Cleo"をDJセットの最後でプレイした後、Marco Shuttleが彼に言った言葉である。「Donato、自分が何をしたか気づいていると思わないんだが。この曲は他とは違う、超越してるよ。僕がこれをプレイした時、そこにいた人はただうっとりと溶けていたんだ！」今年どこかで"Cleo"を聴いた人は彼が何を言わんとしているのか理解できるだろう。天使のように美しいリードが言葉では言い表せないほど深いところで漂っている。漂うリードは天使のように美しく深遠だ。16分音符のアルペジオはこの上ない至福の絶頂へと導いてくれる。Dozzyが存在するディープテクノシーンでアンセムが生むれるのは稀だが、"Cleo"には確かに賛歌が存在する。
- DJ Call Me
  Marry Me
  Highlife
  
  「授業中に、この曲をマックスの音量でかけたタクシーが通り過ぎたら... みんな立ち上がって歌い踊るだろう」と、一人のYouTubeユーザーがDJ Call Meの"Marry Me"についてそう言った。クワイトのヒット曲は、南アフリカで爆発的な人気を得た10年後の今年、スコットランドのレーベルHighlifeによってリイシューされた。甘ったるくひどくキャッチーなこの曲は、その生き生きとした精神が世界中のダンサーたちから笑顔を引き出した。
- Ploy
  Ramos
  Timedance
  
  "Footcrab"や"Swims"といったUKベースのアンセムが登場した時代を覚えてる？ダンサーたちが飛び跳ね叫んでいた時、これから来るアンセムの前兆を感じていたって？まぁこの必要最小限のビート・サイエンス・ボムならその当時の現象をもたらすだろう。ほとんどがパーカッションであるにもかかわらずすぐさま認識でき、大きなインパクトをもたらすけどドロップの使用により大きい場所にも小さい場所にもうまく働く、趣味のいいトラック。
- Marie Davidson
  Work It
  Ninja Tune
  
  "Work It"で、Marie Davidsonはあなたを鼓舞するスピーカーとなっている。"Now, I don't wanna see any fakeass workers / I need real builders.「今私は偽労働者なんか見たくない / 本物の起業家が必要なの」"。組立ラインのリズムも、Davidsonのチャーミングな声も、あなたに退勤のタイムカードを押させてはくれない。彼女のアルバム『Working Class Woman』のハイライトである"Work it"は、後期資本主義時代の為のヘルス・ゴスなSoulCycleアンセムなのだ。それも、最高の形の。
- Gila
  106 Slipper
  Hunnaban Inc.
  
  自分をたくさんのアシッドレコードを持ったDJだと仮定してください。その上、これまで良い音楽を聴き続け、次にかけるべき曲がもうない状況だとします。そんな時に信じてほしいのが、Gilaの"106 Slipper"はまだ必須の曲だということ。106 BPMのテンポで、これも当然303のトラックが普通なわけではないという内容。にじんだアシッドラインは"ウェアハウス"に響き渡るエコー効果によってミックスの中で高くとどろいている。重要なポイントは、まるで次のトラックがすぐにプレッシャーをかけるかのごとく強烈なパーカッションが迫り続けてくる点だ。
- object blue
  Act Like It Then
  Tobago Tracks
  
  Object Blueは今年2枚の素晴らしいEPをリリースした。彼女のデビュー作となった"Act Like It Then"はからかうように敵対的で、今年最も威厳のある著名人の一人のCardi Bのサンプルを使っている。ガラガラと鳴るパーカッションのアルペジオは、中国語で話すヴォーカルラインが入るまでカオスへと導く。そして簡潔に、内省の一時へ向かって全てを落ち着かせていく。
- Overmono
  Daisy Chain
  Poly Kicks
  
  もし材料が良ければ複雑なレシピで味をごちゃ混ぜにする必要はないよね？それがこの曲から学んだ教訓だ。ブレイクビートのボムをシェイクしたこのトラックはTrussとTesselaが簡潔な中に生み出した7分のマスタークラス。ここでの歩調合わせは注目に値するほど素晴らしく、ブレイクダウンの後ベースが絶好の瞬間に戻ってきた時はなんとも言い難い爽快感がある。
- Pangaea
  Bone Sucka
  Hessle Audio
  
  “Bone Sucks”は「奇妙なバンガー」の標準的な定義と言える。ベース、ブレイクス、レーザービームのようなレイヴシンセを携えているが、この曲には全てをちょっとバカっぽく、そしてひどく記憶に残るようにさせる奇妙さがある。またそれが典型的なHessle Audio作品たらしめていて、目新しさへの情熱とユーモアのセンス、ダンスフロアをパンクさせるのに十分な生々しいパワーのバランスがうまく取られている。
- upsammy
  Another Place
  Nous'klaer Audio
  
  「3018年に聞いてもまだかっこいいはず」と、あるRAユーザーはDe SchoolのレジデントupsammyによるデビューEP「Another Place」についてコメントを投稿した。このタイムレスなクオリティは、タイトルトラックでとりわけ顕著に感じる。20年前のデン・ハーグで作られたと言っても不思議ではない、非常に冷酷でアトモスフェリックなブレイクビートボムだ。それが2018年に21歳のプロデューサーによって作られたという事実が、upsammyの才能を証明している。
- OCB
  Aquaquest Pt.2 (The Anticlimax)
  Casa Voyager
  
  モロッコ拠点のレーベルCasa Voyagerは（レーベル名はカサブランカにある駅名に因んでいる）、躍進の年を過ごした。ハイエネルギーのテクノやファンクの要素を含んだグルーヴの他に、同レーベルはアシッドとエレクトロ、ハウスのエモーショナルなブレンドである、OCBの"Aquaquest Pt. 2 (The Anticlimax)”を世に送り出した。この心の琴線に触れるようなダンスミュージックはCasa Voyagerの得意分野であり、"Aquaquest Pt. 2 (The Anticlimax)”以上にそれをうまく表現しているトラックは他にない。
- Joy O
  Seed
  Hinge Finger
  
  過去数年間、Joy Orbisonはトラックを作っていなかった。彼は、アンセムを作っていたのだ。彼のヒット率はペースダウンしたが（彼が我々のトップトラックリストに登場したのは2013年が最後だった）、ビッグなフックと両手を宙に掲げる瞬間が不足しているからといって、気をそらしてはいけない。このサウスロンドン拠点のプロデューサーは現在、自身のキャリアにおける最高傑作のいくつかを生み出している。今年発売された傑作EP「81b」のオープニングトラックである”Seed”はその輝かしい例であり、ルードなリズムのコアを持った最高のバンガーだ。
- Aphex Twin
  T69 Collapse
  Warp Records
  
  まもなく医者たちはエレクトロニックミュージックファンたちを奇妙で新たな疾患があると診断し始めるかもしれない。”Aphex Twin疲労”だ。飛行船、ポスター、謎めいた地図。少々度が過ぎる気もしますよね？だがここで重要なのは、その音楽が今も尚最高にヤバイという点だ。Richard D. Jamesが今年の「Collapse」EPのようなレコードを作り続ける限り、彼に長いことイライラし続けるのは難しいだろう。今作のハイライトは"T69 Collapse”。発作的な展開と金切り声のような音色によるジェットコースターのようなこの曲は、その他全ての素晴らしいApex Twinトラック同様、リスナーの口をあんぐり開け、そして困惑させる。
- Shackleton
  Wakefulness And Obsession
  Woe to the Septic Heart
  
  Vengeance TenfoldとAnikaとのコラボレーションで素晴らしい方向転換を経た後、Shackletonは『Furnace Of Guts』で自身のトレードマークサウンドに回帰した。特徴的なShackletonイズムに溢れた今作では、ユークリッドリズムがデジタルミラーの広間で非西洋的ドラムを屈折させ、合成的なシンセが絶滅した文化の仮想楽器の音色にねじれ込んでいく。また、"Wakefulness And Obsession”は最近のShackleton作品の中でも最もストレートなトラックでもあり、ダンスに対する非常に深い見通しが感じられる。
- Abby Echiverri
  Nadezhda
  The Bunker New York
  
  もし彼女のデビューリリース『Ab Initio』が何かの予兆だったとしたなら、Abby Echiverriの広範囲に及ぶ音楽とオーディオに関する経歴が、彼女に強力な手段の数々を身に付けさせたということになる。それら全てが、抜け目のないテクニックによって構築されたエレクトロトラック”Nadezhada”で一体となった。サウンドそのものは極めてレトロフューチャリスティックだが、パッケージとしてはモダンで自信あり気に感じられ、パフォーマンスの臨場性が、粗い反応のマシンレコーディングやゲームボーイのきらめく超新星サウンドと融合されている。
- Batu
  Flash React
  XL Recordings
  
  スローダウンしたフットワーク、もしくはスピードアップしたブリストルテクノ？”Flash React”を特定するのは難しいが、そのミステリーこそがこの曲の一番の魅力なのだ。アコースティック調のドラムはパーカッションアンサンブルに焦点を置いており、ミニマルなパタパタと言う音の軽いタッチが、迫りくる攻撃を示唆している。パンチが到達したとき、不協和音の断片の影から素早く効果的なジャブが現れ、’90年代後期のドラムンベースに見られたパラノイドなアーバンランドスケープを思い起こさせる。この半分想像によるコネクションは、ダブワイズなジャングルにそっとシグナルを送るサブが時折リピッチすることによって、追い風を受ける。それでも尚、色調の大部分は驚くほど陽気であり、そのライトな気質によって、この曲は一体何なんだ、と我々は今一度考えさせられる。
- rRoxymore
  Mythical Technology
  Don’t Be Afraid
  
  rRoxymoreは以前から独特の方向性を持っていたが、フィールドレコーディングのアンビエンスと、IDM調の奇抜さを、遊び心のあるメロディーとミックスした"Mythical Technology”は、特に魅惑的な作品だ。さらにオマケとして、中盤3分の1頃から4つ打ちのキックに切り替わり、ハーフタイムのジャングルチューンにでもありそうなサブラインと融合する部分も楽しめる。
- Peach
  Silky
  Intergraded
  
  混雑したダンスフロアでの午前5時以降。盛り上がった夜だったが、あなたと友人たちは疲れ始めてきた頃だ。ベッドの中で過ごす日曜の朝がどんどん魅力的に思えてくる。このシナリオで、DJがあなたをダンスフロアで躍らせ続けさせる為にプレイできるトラックは限られている。Peachによる”Silky”はそのうちの1曲。ディーヴァの声とミステリアスなシンセのトーンは、いかにもクラウドたちが喜びそうな要素だ。だが、”Silky”に深みを与えているのは、ビートに気取った大胆さを与えているゴムバンドのようなビシッとしたパルス音と、楽しげなタップダンスを思わせるストリングスという、2つの明確なディテールだ。
- DJ Lilocox
  Fronteiras
  Príncipe
  
  DJ Lilocoxの初のソロ作品の共通テーマはリズムだった。それは、このポルトガル人アーティストと彼のPríncipeの仲間たちが非常に得意とするところであり、『Paz & Amor』の魅力の大部分は、その絶妙なバティーダのドラムパターンにある。だが”Fronteiras”に、Lilocoxはかなりの感情的な重みと、刺激的な深夜のムードを引き起こす穏やかなコードを加えた。
- LSDXOXO
  Burn The Witch
  
  LSDXOXOが1月にミックステープ『BODY MODS』を自主リリースした後、その収録曲は1年中各地のクラブでプレイされた。その中でもMissy Elliottのトラック"I'm Really Hot”のジャジーな間奏をサンプリングした”Burn The Witch”は、ハードなドラムと色っぽいヴォーカル、そして捉えどころのないリズムが印象的な、最もスムースな1曲。これほど押しの強いトラックは、今年はそうそうない。
- SOPHIE
  Immaterial
  Transgressive Records
  
  SOPHIEのデビューアルバムは、ポップミュージックを極めて独創的なサウンドデザインで改良した。作品全体にエレクトリックな瞬間が存在するが、”Immaterial”はその頂点と言える。甘ったるいヴォーカルと、聴くとセロトニンが分泌されそうなコード進行、そしてアイデンティティの移り変わりを歌ったリリックで構成された、唯一無二のポップアンセムだ。SOPHIEが幸せでたわいもない遊びをしている、そんなトラックだ。
- Bruce
  What
  Hessle Audio
  
  より探索的なトラックも得意とする彼だが、Bruceによるバンガーは彼の切り札と言える。このブリストル出身のアーティストによるデビューアルバムは、彼に自身のサウンドの極地を探る自由を与え、収録曲の”What”は、”Not Stochastic”以来、彼のキャリアにおいて最も激しいダンスフロアプロダクションとなった。最初は何かを隠しているようだが、トラック中盤で女性の声が粒状となり砕けた氷の凍てついたシートへとなだれ込み、緊張感が増す。そして3分の2を越えた頃に彼が赤いボタンを押すと、どこか東洋っぽいトーンのリードラインが響き渡り、”What”に衝動的な激しさを与えている。
- Joy O & Ben Vince
  Transition 2
  Hessle Audio
  
  “Hessle AudioからのJoy O”という言葉が何かを思い浮かばせるのだとしたら、それがサックスの音色が乗ったサイケデリックマイクロハウスであることはおそらくないだろう。だが、それが"Transition 2”なのだ。Ben Vinceによるトリッピーなサックスをフィーチャーした、晴れやかで、オフビートで、大きくうねるグルーヴァーだ。とても奇妙なサウンドがとても完璧に、自然に聴こえるレコードは、それぞれ10年以上に渡り活動を続けるアーティストとレーベルが、そのエッジを失っていないことを証明している。
- Daniel Avery
  Quick Eternity (Four Tet Remix)
  Phantasy Sound
  
  Four Tetによる2018年のリミックスワークの中には、BicepやノルウェーのポップシンガーSigridとの注目作も含まれているが、Daniel Averyに提供したリワークほど彼のサウンドをキャプチャーしたものはない。当初、6月にロンドンで開催されたフェスティバルField Dayで限定販売された12インチは、その数週間後に正規リリースされ、より広いオーディエンスにその魅力が伝わった。きらめくガラージから始まりズタズタのテクノで終わるまで、複雑できめ細かい音色が響き渡る、魅惑的な9分間だ。
- Schacke
  Automated Lover
  Kulør
  
  先月我々は、Courtesyによる新レーベルの第1弾リリース『Kulør 001』を、「コペンハーゲンの高速テクノシーンの素晴らしい入門書」だと評した。コペンハーゲンにおける過去30年間のトランス時代の影響が感じられる作品だ。コンピレーションのハイライトであるShackeによる”Automated Lover”は、クランチーかつダークで、複雑なシンセの音色が鳴り始めた後はヘヴィーながらもウェイトレスな何かが生まれている。
- Donato Dozzy
  Nine-o'-Three
  Tresor
  
  Donato Dozzyの2018年は、”Cleo”でダンスフロアをトランス状態に陥らせただけではなかった。彼はこの、自身のサウンドのドキッとするほどアグレッシブな一面を露わにした猛烈なクラブトラックを完成させた。コンプレスした303のサウンドと抑制されていないキックドラムが結合したパワーは、決定的な脅威となっている。インダストリアルな力強さを持ったアシッドが、その道のりから何もかもを消し去る。
- Djrum
  Sex
  R&S Records
  
  今年発表となったアルバム『Portrait With Firewood』で、Djrumは初めて本物の楽器を使って録音した。その結果、チェロ、ピアノ、そしてヴォーカルのパートが、彼の艶のあるドラムンベース〜テクノトラックを彩る、シネマティックで感情的に豊かな作品が完成した。LPのリードシングル”Sex”は、印象的かつストレートなエレクトロで始まる。中盤で現れる難解なストリングスのアレンジメントは、ダンスフロアでの不意に心を打つ瞬間におあつらえ向きだ。
- uon
  J
  West Mineral Ltd.
  
  定義上、アンビエントミュージックは目立つような音楽ではない。そして、このようなリストに入ることも少ない。そして”J”は、抜きん出ているというよりも、沈み込むといったほうが適切だ。ダブテクノなパルスはトラックに潮汐運動を与えている一方、シルキーなトーンは、没入できる、軟泥のような濃度を与えている。それによってリスナーが”J”の深さに捕らわれると、他のディテールは波打つ水面と遠く離れた場所にあるランドマークを伝える。漂流しているのだ。だが、不安に感じるほど遠くもない場所で。
- Fatima
  Caught In A Lie
  Eglo
  
  『Yellow Memories』から待つこと4年、新作『And Yet It's All Love』と共に、より気合いを入れ、より賢くなったFatimaが戻ってきた。希望、悲しみ、そして個人的成長についての黙想でいっぱいの、美しいアルバムだ。RAのMax Pearlは、今作を「複雑かつキャッチー」と評したが、LPのセカンドシングル”Caught In A Lie”はまさにその通りのサウンドだ。Fatimaの変幻自在なフローが、柔軟で素朴なNatureboy Flakoのビートの上で響くこのトラックは、心をまっすぐ打つ、モダンR&Bの最高峰だ。
- Róisín Murphy
  Plaything
  The Vinyl Factory
  
  Róisín MurphyとMaurice Fultonが今年春に全4作に及ぶコラボレーションEPシリーズを発表した時、それは重要ポップアーティストとディスコファンクアンセムの達人による、理想のパートナーシップのように思えた。その結果は期待を上回るものだった。8曲全て格別だったが、中でも”Playing”は最も素晴らしい響きだった。Murphy自身の音楽業界における苦闘を鑑みているものの、回復力をテーマにしたトラックに付随する熱狂的なファンクのキーには、エフォートレスな臨場性が感じられた。個人的体験から普遍的な何かを表現した”Plaything”は、強力なクラブ、あるいはポップのレコードである。
- Beta Librae
  Problem Solving Program
  Allergy Season
  
  "Problem Solving Program”は、ニューヨーク拠点のBeta Libraeの成功の年の中でも抜きん出た1曲だ。この曲をこれほど素晴らしくしているものは何だろう？それは磨り減ったテクスチャかもしれないし、ジャングルに影響を受けたリズムかもしれないし、あるいは目眩がするような90 / 180 BPMのデュアルテンポかもしれない。5月にリリースされた彼女のLP『Sanguine Bond』同様、"Problem Solving Program”はBeta Libraeが、ニューヨークで最も期待できる新鋭アーティストの1人であることを証明している。
- Blawan
  Tasser
  TERNESC
  
  2018年最大のテクノアルバムに収録された、Blawanの”Tasser”での踊り方は2つある。1つは、ストレートで執拗なドラムパターンにワンツーステップの決まった動きで追うという方法。そしてもう1つは、曲中をジグザグと進む見え隠れするシンセラインを、腕をバラバラに捻れさせながら踊るという方法だ。あなたがどのように踊ろうが、これはとてつもないクラブバンガーだ。だが、戯け者の遊び心も保っている。
- Sinjin Hawke & Zora Jones
  God
  Planet Mu
  
  Sinjin Hawke & Zora Jonesは、彼らが主宰するレーベルFractal Fantasyがビデオを用いて3Dヴィジュアルを眩惑的なフォームへと捻じ曲げるのと同じような方法で、ジャンルをフューチャリスティックな形に捻じ曲げる。”God”はその最高の例だ。ドラムはUKファンキーとレゲトンの間のようで、不気味なヴォーカルはブルガリアの聖歌隊の録音から引用したようにも聴こえる。オリジナルの素材が何だったのかを見つけ出すのも難しい、るつぼのようなトラックであり、最高に創造的なクラブミュージックである。
- Special Request
  Brainstorm (Gerd Janson & Shan Remix)
  Houndstooth
  
  素晴らしいリミックスは、時にオリジナルの重要な要素を割り出し、そして増幅させる。Gerd JansonとShanはこれまでにも、2017年の”Surrender”を含むいくつかのビッグトラックでコラボレーションしてきた。”Brainstorm”の"House Mix”で、彼らは自身たちの内なるMurkを取り入れ、Paul Woolfordによるオリジナルをピークタイムハウスチューンに変身させた。このバージョンではオリジナルの全体に散りばめれたスピンバックを生かすよりも、ピアノの連続音と、Kerri Chandlerプロデュースによるヴォーカルにスポットライトが当てられている。
- Talaboman
  Dins El Llit (Superpitcher Remix)
  R&S Records
  
  Superpitcherのシャーマニックなサウンドは、Talabomanの昨年のアルバム『The Night Land』の収録曲であるディープでスペーシーなチューン”Dins El Llit”と完璧にマッチした。11分以上に渡り、ステレオ音場周辺でバウンスするヴォーカルの下でメロディーが広がり、障害を超えるごとにリスナーの脳を深く掘り下げていく。内向きなヒプノティズムと間の抜けた楽しさの間に存在する、今年最も夢中になれるリミックスの1つだ。
- Alva Noto
  Uni Blue
  Noton
  
  今年Notonのボスは、彼のグリッチーなサウンドデザインをより感情的なフォームの中で再構築した。”Uni Blue”はその最たる例だ。ハリウッドのSFの最後のシーンのような絶望的なドラマ感のあるこのトラックは、壮大で感情を秘めたシンセが無限の領域に流れ出す一方、独特のパーカッションが広大な背景に対照をなし、驚異的なスケール感を生み出している。
- Nathan Micay
  First Casualty
  Whities
  
  Nathan Micayは図々しいユーモアの感覚を持っていると誰もが思うだろう。彼はBeats In Spaceに出演した際にはSmashing Pumpkinsの曲をかけ、USBには常に”Macarena"のダブミックスを入れている。だが、Micayは繊細な一面も持っており、それをほろ苦い楽観主義的感覚があちこちに感じられるビッグルームクラブトラック、"First Casualty"で明らかにした。朗々と突き進んでいくかつ、ワイドスクリーンで高精細。感傷的なサンライズの時間帯に映える、今年最高のトラックだ。
- Nkisi
  Dark Orchestra
  Arcola
  
  今年最も恐ろしく、かつ爽快なトラックの1つである”Darknoise”は、底知れぬ悲しみの感情を呼び起こすハーモニーのために間を取りながら、ダークサイドハードコアにおけるモッシュピット集団のメンタリティを、孤立したディストピアに植え付けている。極端に手短かに、他のどのプロデューサーが一生のうちに成し遂げるよりも、たった数分間により多くのパワーを凝縮している。
- Laurel Halo
  Raw Silk Uncut Wood
  Latency
  
  Laurel Haloは、リリースごとに驚くほどのスタイル的飛躍を見せる。今それらを振り返ると、彼女の過去の作品はどう聴こえるかではなく、どう感じるかによって繋がる。そして、印象、もっと正確に言うとテクスチャこそが、”Raw Silk Uncut Wood" の全てである。合成的なホーンとオルガンが絡み合い、楽観的な雰囲気から悲歌へと変化し、その後Oliver Coatesによるチェロによってトラックは終結を迎える。どういうわけかこのアンビエントトラックは、彼女のポップとクラブのエクスペリメントと同様に、感情を和らげることへの願望を放っている。