日本国内のパーティーに若い人は「いない」のだろうか？その答えはもちろんNOだ。現在もテクノ / ハウスといったクラブミュージックの魅力に気づき、音楽にどっぷりとのめり込むニューカマーは確かに存在し、明確な指針と野心のもと、新たなステージに向かおうとしている。彼らを認識しサポートすることが、この文化の未来を担うと言えるはずだ。

個人的な話ではあるが、1990年に生まれた筆者が上京して遊び始めた頃には、Space Lab YellowもCisco Recordsもクローズし、すでに「あの頃はもっと楽しかった」と話す人も少なくない頃だった。2019年現在の20代は、日本のクラブカルチャーの上昇期を体験していない世代といっても過言ではないだろう。ならば私よりもさらに4歳〜6歳下…CDでのリリースも全盛期に比べると減少し、SNSや配信、ダウンロード販売が当たり前のようにある中で育った世代にとって、これまで、現在、これからのクラブカルチャーはどのように視えているのだろうか？それを当事者たちに聞くべく、この度本対談を企画した。

参加してくれたのはエクスペリメンタル・テクノを主軸としたパーティー解体新書でCall SuperやSimo Cellらの来日公演をサポート / オーガナイズし、Higher Frequencyのライター / 編集者としても音楽に関わってきたRomy Matsこと松原裕海。さらにMall GrabやNachtbraker、Avalon Emersonらを招き、今や国内でも指折りの影響力を持つハウスコレクティブとして成長したCYK TOKYOのKotsuとNari。そしてyoyakuのVarhatとJaneretをいち早く呼ぶなど、ミニマルハウスの急先鋒ともいうべきパーティーfluxのKaruta。いずれも20台前半（2019年3月取材時）でありながら、国内の実力派や成長著しい同世代、そして海外からも精力的にゲストを招致してパーティーを展開しているという点で共通している。今回は彼らがどのようなきっかけでクラブカルチャーに触れ、音楽に本気で向き合うようになったのか。そしてそれぞれのクルーが今後どのような展開を目指しているかを尋ねた。

お互いに顔見知りで、それぞれが主宰、出演するパーティーに遊びに行く間柄という4人。取材当日も終始楽しげに、絶えず意見を交わすあっという間の時間であった。

まずは皆がそれぞれパーティーを始めたきっかけを伺いたいです。だいたい2016～2017年からでしょうか。

ナリ：僕ら（CYK TOKYO）は2016年の9月からですね。同世代で四つ打ちメインのシーンってあの時ほぼ見当たらなかったし、パーティー自体も身内で集まるものが多かったんです。

コツ：身内でも楽しいけど、もっと外からゲストを呼んだり、他のパーティーにもアプローチできる集まりを作りたかった。まずは学生時代にDeemcというDJサークルで出会っていたナリとナオキ（Naoki Takebayashi）が起点になって、それぞれの知人だった僕と平井（DJ No Guarantee）が誘いに乗りました。それがCYKの始まりです。

ロミー：僕は最初にインディーロック系のライターとして音楽の世界に入りましたが、並行してダンスミュージックにも興味は抱いてました。僕は今Higher Frequencyの編集 / ライティングを手がけているのですが、きっかけは2014年にRed Bull Music Academy Tokyoに密着取材した時に、Higher Frequencyの方に「一緒にやりませんか？」と声をかけてもらったからでした。それからメディアの仕事や関わりもあってクラブに積極的に通うようになりましたね。

数年後に、自分でもパーティーをやってみたいと思い、まず学生時代にライター養成塾で出会って意気投合した平井くん（CYKのDJ No Guarantee）と、二人とも分からないなりにmultipleというパーティーを始めました。

コツ：ロミーは僕やナリより平井と古い仲なんですよ（笑）

ロミー：でも平井がある日「CYKってパーティーを始めるから、そっちに専念したい」って突然報告してきまして。なので僕もより自分の好きな音を追求しようということになりました。ちょうどそのぐらいの時期に、大学の先輩でベース系のパーティーをやっていたVJ Camelから誘いを受けて、一緒にテクノとベースミュージックにフォーカスしたパーティーとして2017年1月に解体新書を始めました。その後2018年にInqapoolがレジデントDJとして加入して以来、現在のメンバーで続けています。

N.O.S.については、僕は設立から1年の2019年3月いっぱいで脱退したんですが、設立の当初にN.O.S.のメンバーとミーティングをしていた時に、CYKや解体新書、その他様々なパーティーはあるけど、レーベルとしても活動しているクルーは同世代にいなかったし、DJをやっているKazuho、k_yam、Frankie $、VJやヴィジュアルを作っているkenchanも楽曲制作ができるので、レーベル兼パーティーとしてリリースなどを絡めながらやろうという話になり、現在の形になっています。

カルタ：僕は映画がきっかけでJames Blakeやベースミュージックの世界に触れて、幼なじみのLen Tajimaはダンスをやっていたので先輩からハウスなどを教えてもらっていました。たまたま集まって話す中でMount Kimbieなど共通の音楽趣味で盛り上がり、それならパーティーもやってみる？と僕らをクラブに連れて行ってくれた先輩のYuと共に2015年にfluxをスタートしました。

実は始めた頃は今ほどミニマルハウス・テクノに魅力を感じていなかったんですが、2016年ごろ代官山AIRでのDJ Masdaさんのプレイにぶっ飛ばされて「この音楽を追求していこう！」と。そこから今に至ります。

Nari, Karuta, Romy Mats and Kotsu at IKI-BA, Tokyo

ここの皆が音楽をどのようにチェックして、掘っているかについても聞きたいです。DJではレコードもデータも分け隔てなく使っているようですが。

ナリ：僕はまずDJサークルの先輩にレコードの魅力を教わりましたね。大学が神保町なのでジャニスもよく使ってました。とはいえ今はフィジカルもデジタルも両方使うので、まずBandcampを第一にチェックしますね。Soundcloudも一時期飽きていましたが、また使うようになりました。コメント欄をチェックしたり、スピーカーにShazamを近づけたり。

コツ：僕は幅広いジャンルの音楽が好きなので、まずYouTubeで知識を深めましたね。今はネットのレコード屋を周遊するルートも決めていて、Bandcampももちろん使っています…でも個人的にハマっているのが昔のクラブ系CDを掘ること。レイヴ / IDMのコンピレーションやニューエイジの作品は割と安い値段で集められるんですよ。

ロミー：わかる！欲しい曲があると、まずはネットで探しますが、データでのリリースはないけど日本産のコンピCDに入ってるということも多くて。

僕は最近CDJのみでDJするので新譜はデジタル多めですが、僕が生まれた90年台中盤のテクノをレコード屋のエサ箱からごっそり買うのも楽しみです。あと、サポートしたいアーティストの音源や手元に残したいものもレコードで買いますね。

カルタ：僕の周りのDJはほぼレコードなので、それが当然と思ってレコードを買っていましたね…！新譜と中古は半々ぐらいのペースで買っていますが、周りにディガーが多いので、新譜をしっかり追って使いこなさないと勝てないなと感じています。あとラベルの色や絵で覚えるのが癖になっているので、そこもデジタルに移行できない理由ですね。

ナリ：俺もジャケの厚みとかで覚えてる！それだとDJ中にスリーブが入れ替わっちゃうとやばいんだけど、やっちゃうんだよね。

コツ：ジャケットと音を自分の中で結びつけていることもあるし、アートワークに選曲が引っ張られるのも面白いです。そこはレコードならではですね。

ナリ：最近はスタンプの絵からも音が鳴っているようにも感じるよ！

ロミー：それは流石に怖いね（笑）

データを中心にプレイするロミーくんも含め、皆ネットだけではなくレコードショップも頻繁に利用しているようですね。

ロミー：BoomkatやBandcampでチェックしたものを国内のレコ屋で買っていますね。店舗でもオンラインショップでも。理由としては、「海外から選りすぐりの盤を輸入してくれてありがとう」というローカルサポートの気持ちですね。

カルタ：どういう音が来てるのか？というのも新譜の内容や中古の価格傾向を見るとヒントを得られるので、特にTECHNIQUEの実店舗には定期的に行きます。天邪鬼なのであえて在庫が残っている盤をプレイして、「これ何！？」って聞かれたら「まだあの店で買えるよ！」と返したりするのも楽しいです（笑）

コツ：もしかすると俺がこの中で一番レコード持ってないかも…幅広いジャンルの曲が必要な現場が多いのでデータでバラ売りで買えると助かるんですよね。レコードもなるべくコスパ重視、4曲すべて使えるような盤を優先して買っています。

カルタ：でも、ある1曲を目当てに買ったレコードを久々聞いたら、別の曲が良かったりするのも面白いっすよね！こっちもいけるじゃんって。

ロミー：僕もその現象があると思ってるから、データでも基本EPのまま買ってる。その3～4曲をEPとしてまとめた意向を尊重したいというのもあるけど。

ナリ：僕は一定期間ヘビープレイした盤はあえて目の届かない方の棚に入れます。久々に聞いて驚く楽しみを作るために、あえて塩漬けに（笑）

みんなそれぞれの音楽媒体 / フォーマットにメリットを感じていて、いい意味でこだわりはないように思えますね。

ナリ：先輩に「ナリはレコードでDJするから偉い」とか言われることもあったけど、そんなつもりはないです。レコード中心のパーティーであえてUSBだけでDJやったこともあるし、何ならそのパーティーの次の回から他の人もみんなUSB使い始めてた（笑）

カルタ：僕のDJでCDJを使うことがないからデータやCDを使ってないだけで、レコードだけでやることに対して良し悪しとか考えてませんね。ただ僕の好むミニマルハウスだとレコードオンリーのリリースも多くて。でも逆のケースでデジタルオンリーの場合もあるかと。

ロミー：レコード、データの音に関してもそれぞれの良さがあると思いますし、それよりも表現する際に体の延長線としてどのツールを使うのか？ってことだと僕は考えています。

コツ：慣れと好みですよね。麺をフォークで食うのか箸で食うのかみたいなものですよ（笑）

もう少し遡って、そもそも皆の世代はどんなきっかけで音楽にハマるんでしょうか？

ロミー：僕自身や周りを見渡すと、ロックやポップのカルチャーから流れてくることが今でも多いと思いますね。でもエレクトロクラッシュ以降、打ち込みのサウンド自体はあらゆる音楽に当たり前に入っているので、テクノ、ハウスも昔以上に耳馴染みしやすいのかなと。

カルタ：そうそう。音楽自体には入りやすいんだけど、クラブのハードルが未だに高い！過度にチャラいか、排他的なイメージを持っている人が多いです。

やはり皆にとっても、課題はやはりクラブに来る人を増やすことなんですね。

ロミー：知り合いがDJだったりして「クラブに行く」きっかけ自体は割とあるとは思うんです。そこから「クラブに通う人」を増やすことが重要で、そのためには圧倒的なパーティー体験を提供するしかないと思うんですね。その点CYKは常に良い意味でわかりやすくて、かつ特別な夜を作ろうとしていると感じますね。

ナリ：確かにそこは意識していますね。初めてCYKに来た人がパーティーの楽しさを知って、他の場所にも足を運んでくれるのは何より嬉しいです。でもパーティーフォトなどで作為的にパーティーのムードを誇張するのは好きではないですね。

コツ：パーティー中でもネットでも、リアルな雰囲気を伝えたいんです。パーティーの記録にフィルムを選んでいるのも生の熱気や親しみやすさを伝えたいから。CYKはたまたま集まった仲なので、それぞれのDJスタイルと選曲も未だに違います。なのでお客さんが好みの音楽を見つけて楽しむ間口も広がっているのかな。

ロミー：僕らはやはりSNS世代で、共有するのが当然になっています。先輩の世代だとあえて情報を隠して「わからないからこそ楽しみ」とするところを、僕らだと写真や動画でシェアされたものをきっかけに、より知りたいと思って来るケースが多い。

ナリ：一つこだわってるのは、現場のムードを装飾せず伝えること。フライヤーなどパーティーの情報も慎重に載せています。僕らがメッセージ動画とか作って「待ってるよ！」とかやるのは、過剰かなと…遊ぶ側の目線は常に持って、やりすぎないようにしたいなと。

ロミー：こういう言い方が良いか分からないけど、CYKクルーは至って普通の人たち。だからこそ共感反応の発信源になれるんだと思います。

カルタ：僕が好きなミニマルは音やフレーズ自体がわかりやすくハッピーではない分、遊んでたりDJをやってる姿は楽しくないと！とは思っています。ストイックすぎて近寄れないというのは正直あると思うので。

僕が地元のSound Community Dubで友達やお客さんといい距離感でやるパーティーを続けているのも、気軽に場と音楽をペアで楽しんでほしいと思っているからです。そこから発展して自分の好みに合ったクラブやフェスにも行ってくれるといいなと。実際僕も友人を連れて行ったりしています。

パーティーに関する言及が出たところで、みんながなぜ積極的にDJ活動やパーティーを手がけ、特に海外からもDJ / プロデューサーを招致しているのかをぜひ聞きたいです。

コツ：僕らはCYKを始めてからすぐに先輩やクラブの方から声をかけてもらえて、活動初期から来日したDJのサポートとして呼ばれる機会が多かったんです。そこで海外とCYKの交流が生まれて、直接「日本でやりたい」と話が来たこともあります。

特に転機となったのはMall Grabの初来日ですね。これまでのハウスとは一味違った新しい音のDJなので「どんな先輩よりも俺らが一番合う！」という気持ちで臨みましたし、Circus Tokyoからの厚いサポートもあって成功を収めることができました。以来、ただゲストを呼ぶだけじゃなく「一緒にパーティーを作る」というスタンスで、僕らが呼んでこそ輝く人を国内外から呼ぶのがCYKのコンセプトになりました。

ロミー：意外に思われるかもしれないですけど、僕も解体新書で「海外アクトを呼ぶ」ことをそこまで意識していないです。CYKと同じく「パーティーを共に作りたいDJ」にフォーカスしているので。例えばContactでCall SuperとPangaea、HarukaさんとYakenoharaさんをそれぞれのフロアにお招きしたのも、第一には2フロアでの理想の空間作りを目指してのことで、そこに海外アーティスト主義的なものや国内外のアクトに対する差はありません。

カルタ：僕らが2017年にyoyakuのVarhatを招いたのは、ミニマル界隈の実力派DJが軒並み先輩たちのパーティーで呼ばれるなか、少し上の世代（当時20台半ば）で運営されているyoyakuクルーを知って、ぜひ彼らと一緒にやりたいと思ったから。yoyakuはハウス寄りのグルーヴなので、その方向性なら既存のパーティーよりも俺たちにハマるかもと…まさに日本で呼べるのは俺らでは！という気持ちで始めましたね。

VarhatとJaneretを呼んでから、ヨーロッパから日本に来たいと窓口として頼ってくれるDJも増えました。先日もSatoshi Tomiieさんに「Varhatが来るから、一緒にぜひ」と指名をもらえたり。着実に次につながっていると思います。

CYKやN.O.S.は韓国でもDJを手がけるなど、呼ぶだけではなくアジアを含め積極的に海外に出ていますが、そこもクルーの活動として意識していますか？

ロミー：まさに海外に出るのは僕らの世代のミッションだとも思っていて、今でこそ声をかけてくれる人がいますが、僕個人の考えとしては、まずは身銭を切ってでも繋がりを作るのが大事だと感じています。実際最初は韓国にプライベートで行ったんですが、そこで出会った人たちが僕らのやってることにシンパシーを覚えて、今ではお互いに招き合う関係になっています。

海外に出て感じたのは、音楽面での差はなくても、国の政策の違いは大きいなと。例えば、韓国ではいくつかのクラブが不透明な税をかけられて、レイアウトの変更を余儀なくされたり、クローズしなければいけなくなったり、危機的な状況があった話も聞きました。要は、ゲストを呼ぶための予算を、突然、維持費とか税金とかに割かなきゃいけなくなる悪循環があるんです。中国もSNSが使えなかったり色々制限がありますし…

日本も含めですが、クラブカルチャーはそれぞれの形で国と戦っているので、僕らは僕らの立場で何ができるかを考えたいですね。ネガティブな例ですが、韓国で表現の場が少なくなっても僕らが韓国のDJを呼び続けることで助けられるかもしれない。

コツ：政府の動きはさすがにコントロールしきれないけど、国を超えて手を繋げばリスクを分散できるかもしれないなと。

ロミー：単純に今もゲストのフライトシェアで各国のパーティーは助け合っていますし、それに限らず繋がることで得られるメリットは大きいと思います。

カルタ：ヨーロッパと比べると、日本はどうしても追いかける立場になってしまうけど、アジアの各国が手を組めば、ヨーロッパと同じぐらい熱いシーンを作ることもできるのかなと。

コツ：実際ヨーロッパのトップDJと比べても遜色ないほどの実力派DJがアジアに増えている実感があります。カルタが言っていることも夢ではないですよ！

先ほどの「海外との繋がり」の話も含めてですが、今後それぞれのクルー、個人がどう動いていきたいか、改めて伺いたいです。

コツ：今後国内外での活動にしっかりと道筋があることを、CYKをチェックしてくれている方々に伝えていきたいですね。最近は僕らよりさらに若い世代に影響を与えている実感もあります。とは言えDJとしてやすやすと追いつけないように、腕は磨き続けたいですね。

ロミー：韓国Contraのブッカーに「CYKとN.O.S.にレジデンシーをやって欲しい」と言われたことは、僕らにとって大きな一歩ですね。起用してくれた理由の一部としては「韓国のクラブシーンは一度途絶えてしまっているからこそ、綿々と続く日本のシーンで活動する若い世代に頼みたい」と。そして「このレジデンシーを足がかりにもっと遠い国でも活動してほしい！」と言ってくれたので、みんなでその期待に応えたいですよね。

カルタ：僕は国内外にこだわらないのと同じぐらい、東京でやることにもこだわらなくていいかなと。まだ明かせませんが、地元横浜の周辺で新しい候補地も見つかっていて、しっかりセルフコントロールできるハイクオリティなパーティーを、ローカルの強みを活かしてやっていこうと思ってます。

また、これから音楽を続けるにあたってレーベル、制作活動は必要不可欠だと思っています。yoyakuとの繋がりもあるし、Kamome Sound Systemの先輩方をはじめ師匠もたくさんいるので、早いうちに形にしたいなと。

ロミー：あと、N.O.S.からリリースしたk_yamのトラックがrinse.fmでプレイされた時は、レーベルとトラックメイクが持っている可能性を感じましたね。本当に些細なことでも世界に届くんだなと。N.O.S.ではまずは素早く世に出すことを考えてデジタルを選択しましたが、皆レコード好きなので、いつかはフィジカルでもリリースしてくれると思います。

話してくれた指標の先にあるものってなんでしょうか。抱いているビジョンについても、ぜひ伺いたいです。

ロミー：ヨーロッパを訪れた際に現地のプロモーターと話すと、日本人のDJとアーティストに対してとても興味を持っているんです。いま第一線で活躍している方々がいて、分かり易く言えば、「DJ Nobu、Gonno、Fumiya Tanakaの次は誰だ？」という期待を抱いてくれています。先人が築いてくれたこのレールを絶やさないためにも、アグレッシブに外に出て、周りに刺激を与えていきたいなとは考えますよね。

活躍のベースを海外に移す以外でこの音楽を突き詰められる方法はあるはずと思っているし、そのベースとなる環境作りにも取り組みたいですね。

カルタ：今の日本のシーンに疑問があったり課題意識があって…というより、何より音楽が好きだからやってるんですよね。でもDJとして声をかけられる以上は責任を持ってやりますし、それをずっと続けるためには、まず自分の力をつけることが重要かなと。

正直やりたいことがあれば距離は関係ないです。Varhatを呼ぶにあたってフランスまで直談判しに行きましたけど、たかだか10～20時間、気持ちがあればいける！って思いましたね。

ナリ：僕は海外だけでなく、日本のローカルシーンにもより目を向けたいなと思っています。ここ数年、地方だと同世代の仲間が少なくて、行動したくてもできない人がいるのを実感しました。僕らがサポートすることで、各地をさらに盛り上げ、日本の底力を上げたられたらと。BonoboでCYK & Friendsを開催した理由もそこが大きいです。

CYK & Friendsにも出演し、その以前にはRomy Matsがブッキングを担当したCHAOSのサブフロアでのDJ経験もある京都のToshikiからもメールで話を伺うことができた。彼は現在2つのパーティーを主催しており、Syn-CではCYKとRomy Matsが出演し、もう一つのSensationではKarutaがゲストとして招かれている。まさに彼らの同志といえる存在だ。

Toshikiくんが生まれ育った京都のクラブミュージック文化について教えてください。どのようなきっかけで音楽を知り、クラブに行き始めるのでしょうか？

京都の中心である市内は、学生の街と言われていて、狭いエリアに大学が密集しています。そこでDJやパーティーを始めようという若者が僕らのホームでもあるWest Harlemなどに集まって、交流の中から新たなパーティーが始まったりします。実際、僕もその一人で京都精華大学の音楽コースで出会った友達がクラブミュージックを教えてくれて、歳の近い者同士とWest Harlemでパーティーを始めたことが今に繋がっています。

現在は僕より3〜4歳若い年齢のDJも現れていて、レコードだけでDJしてる人も多いですよ。Jet Set京都店の他、中古のレコード屋が数多く存在しますから。その中でも僕が良く通っているのは”ほんとレコード”。中古本と新旧譜問わずレコードが店内には並んでるし、店主さんの人柄がゆったりまったりで、初めてでもすぐその場に馴染めるあたたかさがあります。

京都のシーンは急激に発展するわけではなく、じっくり時間をかけて育っていくように思います。都市の空気感や時間の流れ、人の雰囲気ともリンクしているところがあるのかもしれませんね。

今SensationとSyn-cという2つのパーティーを主催してますが、それぞれのパーティーを始め、続けている理由を伺いたいです。

テクノ、ハウスに惹かれてから、特にハマったのがミニマルで、青木さん（AOKI takamasa）と出会ったことがきっかけとなりました。大阪で開催されているLetusを始めとした、ミニマルのパーティーによく足を運ぶようになり、そこから京都でもこういう音が鳴るパーティーをやりたい！と同じ大学のSuguruと始めたのがSenstionです。始めた当初は京都の代表的なミニマル・テクノパーティーにしたい思いが強かったのですが、今はクルーとの歩幅や距離感もいい感じになって、みんなとパーティーをやれることが続ける大きな理由になってます。一方で今後はもっと音にもフォーカスしていきたいので、各メンバーのスキルアップに加え、トラックも作りたいです。またこれまで国内のアーティストを軸にブッキングしてきましたが、国外にも一緒に遊べる仲間がほしいし、コネクションをつくっていきたいと思っています。既に、今年の秋にフランクフルトからゲストを一人呼ぶことが決まっているので楽しみです。

Syn-cは学生の頃始めたパーティーの続編的なもので、DJが楽しくて楽しくて、次から次へと前に進みたくて気づいたら僕とToreiしか残ってなくて、じゃあ二人でパーティーやろうよって始まったのがSyn-cやったっけな…。ブッキングはToreiのセンスに任せていて、僕にはないチョイスを受けてプレイするのは楽しいです。CYKのケンくん (DJ No Guarantee) も遊びに来てくれて、そこから東京とのつながりも生まれました。僕にとってSyn-cは、音楽的に自分の新たな可能性を引き出してくれて、新鮮な体験をくれるパーティー。とにかくひたすらに突っ走って、新しい要素を発見して変化していくToreiが隣にいるのは新鮮でわくわくしますね。

Toshiki

これまでDJを続ける中で知り合った、関西の新しい世代についても紹介してほしいです。

大阪だと、去年の10月からFLOWってパーティーを始めたTAIKIとIzumi Kimura。初回ゲストが僕とToreiだったんですが、同世代でこんなわくわくメラメラしてる人がいたんや！って出会えたのが嬉しかったです。あとSyn-cをやる前のパーティーから呼びあってるMOLDIVEのKaitoとG’n’b。大阪NOON CAFEを拠点に開催していて、毎度サウンドも装飾もじっくり空間を作り込んでる。DJはもちろん、フロアではずっといい音が鳴っていて、いつも悔しい思いしながら踊らされてます。神戸はTroopcafeを中心に若者も大人もバランスよく出入りしてますね。Sensationの仲間でもあるショウヘイ（PF）を筆頭にTroopcafeで働きながらDJしてる同世代の人がいたり、今はカナダにいるけどpixieも神戸拠点に各地でも活躍してる魅力的なDJです。名前は挙げきれていないけど、関西にはまだまだ各地で活躍している歳の近いDJがいます。

自らのパーティーでの交流や東京でのプレイを通じて、県内外の仲間がどんどん増えていると思いますが、そこを踏まえてこれからの目標を伺いたいです。

ひとまずは個々がキャリアをしっかり積むことが大事かなと。パーティーに来た人たちが音にフォーカスしたときにがっかりされないように質を高めていきたい。国内各地でそれぞれが自分たちのパーティーを育てつつ、個人としても成長しつつ。それが僕ら世代の国内のシーンを育てていくことに大きく繋がると思います。

ここ数年CYKやロミー (Romy Mats)、ハルカ (Karuta) も含め、20代前半で都道府県を越えて本気で遊んでいる人たちに出会えたのがめっちゃ嬉しい。とにかくみんなピュアで、会うとそれぞれの状況や理想をシェアして熱くなれる。だから、いざみんなが手を取り合ったら、きっと想像もつかない楽しいことができるんやろうな…って勝手に思ってます。

僕はクラブミュージックの中でも大好きなミニマル・ハウス、テクノの良さがもっと広まるようにアプローチしていきたいです。自分のパーティーでは歳やキャリア関係なく、自分の感性で素晴らしいと思った人や、実際に出会いたいと思う人をゲストとして招いて、僕たちの作る空間で一緒に遊んでもらって繋がっていきたい。それが連鎖して広がって、どこにいっても一緒に本気で遊べる友達がおるのが理想です。とにかく長いこと本気で遊びたいし、そのためにどんな時でもぶれへんような状況をホームで育てつつ色んなアクションを起こしていきたいです。

皆の話を聞いていると、それぞれの違いを強みとして認め合っているのだと実感します。

カルタ：それはありますね。特にCYKはある種ダンスミュージックの入り口になってくれる唯一無二の存在。そこから派生して、いつか僕らのパーティーに来てくれる人もいたら嬉しいです。

コツ：実際そうなってほしいと僕らも思っています。僕らがハウスを軸に様々な傾向の音をプレイする一方で、一つの音楽性を追求するパーティーも必要だと思うし、そこに促す役割は担っていきたい。

ロミー：若い人がハウスを入り口に他の音を求めた時に、僕らがまた違った音で楽しめるパーティーを作り、保つのも役目だと思っています。実際に去年あたりから解体新書のエクスペリメンタルな音でも楽しんでいる若い人が増えているのを感じています。

僕にはできない役割を仲間が担ってくれるのはありがたい。では僕ならではの仕事とは？と考える。そうして互いの機能を活かしあい拡大していくのが僕らの世代の在り方だと思っています。

カルタ：せっかく興味を持って遊びに来てくれたのに、そのパーティーやDJがダサかったらこの音楽を嫌いになってしまうかもしれない。だから僕らは僕らでクオリティを磨き続けなければ。

ロミー：僕らの世代は「欲がない」って思われることも多いですが、大いに欲はあるんです。でも余所まで踏み込む欲張りではないんですよ。あれもこれも手を出すのではなく、互いにやりたいことを追求したいと思っています。

カルタ：気軽に賞賛し合えるのも、僕らの世代の強みかもしれませんね！