2年前、Discogsは販売履歴を限定公開してくれ、私たちはそのデータの中から同プラットフォーム上で売買されてきた最も高額なダンスフロア・レコードを探り出した。その結果、エレクトロニックミュージックという領域にある、興味深く、貴重なダンスミュージックのリストが完成した。その後も中古市場はヒートアップし続けており、Discogs上での価格も高騰。このことを考慮して、我々は今一度データを調べてみることにした。

以下は、2017年から2019年にかけてDiscogs上で売買された最も高額なダンスフロア・レコードのうちの一部だ。

Various
1080° Snowboarding Original Soundtrack
Nintendo 64 Sound Series
$340

1998年に任天堂より発売されたこのビデオゲームのサウンドトラックは（コンポーザーは『ゼルダの伝説』や『マリオカート』の音楽も手がけた永田権太）、驚くほどたくさんのクラブトラックをフィーチャーしている。その中でも特に素晴らしい"Dance"は、かつてあったニューヨークの伝説的クラブThe Sound Factoryのダンスフロアを盛り上げそうなハウストラックだ。

Lory D
Unfinished Trax
Elektronik Outboarding Cast, Never Ending Trax
$386

この1998年発売の作品は、Lory Dのエネルギッシュなテクノの典型的な例だ。エレクトロとアシッドのタッチも感じる、ヘッズたちがトラックIDを強く要求しそうな曲の数々。

Kerri Chandler
Hallilujah
Unda-Vybe
$390

Kerri Chandlerによるゴスペル調のトラック”Hallilujah”は、広く知られる彼のキャリアにおける節目のひとつだ。かつてロンドンでは、UKガラージセットの中でこのレコードのピッチを+8まで上げてかけられることがよくあった。UKガラージの先駆的デュオTuff Jamはこのレコードを愛して止まず、”Hallilujah”のリミックスを自身たちのレーベルUnda-Vybeからリリースした。リミックス盤が店頭に並ぶことはなく、それゆえ、この時代のレコードの中でも最も入手しにくい1枚になっている。

Juan Manuel Almiñana & Jose Luis Gonzalez
The Ultimatum
Ferpas Music
$398

マキナとはハードコアとアシッドテクノの強烈なハイブリッドだ。バレンシアで生まれたこのスタイルは、90年代にスペイン各地で人気となった。このジャンルの典型の形成には、後にイビサのCircolocoとDC-10のレギュラーとなったDJ、José De Divinaも関わっている。

James "Jack Rabbit" Martin
There Are Dreams And There Is Escape
Yoton Records
$450

James "Jack Rabbit" Martinはアシッドハウスの影の立役者の一人だ。1990年に不慮の死を遂げるまでに彼がリリースしたのはたった数枚のレコードだったが、いずれも強力な作品だった。"Rabbit Trax I (The Next Generation)"のようなトラックは、Djax-UpやUnderground Resistanceによる、よりダークでより洗練されたアシッドサウンドの追求に先んじていた。「There Are Dreams And There Is Escape」はリリース当時のシカゴで大きく見落とされたが、30年経った今聴き直してみると、時代をずっと先取りした作品だったように思える。

The Anthill Mob
A Special Collection Of Enchanted Rhythms
Love Peace And Unity Recordings
$493

The Anthill Mobは、Confetti Records関連のカルト的人気を誇ったUKガラージアクトだ。彼らは繰り返しクラブスヒットを生み出し、ダークなベースラインと大きく揺れるドラムでいっぱいのそうしたレコードは、The Gass Clubを始めとするロンドン各地のスポットでアンセムとなった。このEPは、ミニマルヘッズ（Nicolas Lutzは彼らのファンだ）やガラージオタクが好む、削ぎ落とされたガラージチューンでいっぱいだ。

Mala
Alicia
Not On Label
$500

MalaによるAlicia Keys "Feeling U, Feeling Me (Interlude)”のブートレグリミックスは、ダブステップに独特のソウルフルなエネルギーを注入した。一つのジャンルの極致と言える。

Moodymann
Untitled
KDJ
$511

Moodymannは2018年に、この未発表アルバムのコピーをイベントでファンたちに配った。このアルバムが正式にリリースされることは決してないという噂もある。売り払った人たちにひとこと言わせてほしい。そのお金があなたの空っぽの心を満たすことを願っている。

SpeedyQ's & Maxitrait
Untitled
Slaves Of Devil Our Master
$520

ハードコアシーンにおけるベテランSpeedyQ’sとMaxitraitは、耳をつんざくようなハーシュなエレクトロニックミュージックを生み出している。このジャンルが持つ反体制的なヴァイブとDIY精神からは、超高額盤だなんてかけ離れたもののようだが。

Daft Punk
Discovery
Virgin
$520

この『Discovery』の日本国内盤のアートワークは、漫画界のレジェンド松本零士が手がけたものだ。

Avicii
Levels
Universal Music
$563

アーティストの死後にその作品の価値が上がるという現象は十分に立証されている。このAvicii最大のヒット作のリミテッドエディションの売値は、彼が2018年に悲劇的な死を遂げてから上昇し続けている。

Silent Servant
Negative Fascination
Hospital Productions
$600

カバー写真に写っているのと同じポケットナイフが付属したこのボックスセット版は（ロサンゼルスの今は無きレコードストアMount Analogにて20組限定で販売された）、Silent Servantのゴス・テクノの世界観を現実にしたもの。

William Basinski
The Disintegration Loops
Temporary Residence Limited
$650

ミームが全てを物語ることも時にはある。

Universal Indicator
Universal Indicator Green
Rephlex
$650

Universal Indicatorのメンバーが誰なのかは表向きは公表されていないが、Richard D. James、Mike Cullen、そしてRephlexの共同創設者であるGrant Wilson-Claridgeがクレジットされていることが多い。このリリースは激しいアシッドとテクノを収録した3枚のグリーンヴァイナルで構成されている。Aphex Twinコンプリーティストは持っておきたい作品だ。

DeepChord
Immersions
Astral Industries
$650

このバージョンの「Immersions」は、クリアヴァイナルの内側にカラーリキッドを注入するという、革新的であまり展開されていない技術を用いて製造された。ちなみにリキッドを注入したレコードは他に、Gorillaz、Pink Floyd、Jack Whiteらがリリースしている。

Truth
The End
Funky Groove Records
$650

「ぼくは今は金を稼いで、とんでもない金額を使っている。Truthっていう90年代のテクノを買った。ブルーのラベルで素晴らしいレコードだよ。何回かセットでかけたこともある… でも£500もしたんだ」と、Aphex Twinは昨年語った。

KH
Question
Text Records
$650

Kieran Hebdenによる予想外のディスコエディットは2017年のビッグチューンのうちの一つで、当初はフリーダウンロードで容易に入手可能だった。それにもかかわらずFour Tetファンは、ロンドンのレコードストアで冗談かと思うほど少数リリースされたこの12インチ盤に大金を叩くのだ。

Patrol
Invisible
Panarecord
$682

Patrolによる”Invisible”は、お金でテイストは買えないということを証明している。Stock Aitken WatermanのB面トラックのように聴こえる、$682のイタロのレコード。

Wolfgang Voigt
Du Musst Nichts Sagen
Profan
$682

「Du Musst Nichts Sagen」で、Kompaktの共同創設者でありGas名義でも知られるこの男は、すでに恐るべきほど多くあった才能の、また新たな一面を露わにした。このレコードには自ら手掛けた抽象表現主義スタイルのアートワークをフィーチャー。サイン入りで25枚のみ生産された。

Radiohead
TKOL RMX
Ticker Tape Ltd.
$682

『TKOL RMX』はRadioheadのアルバム『The King Of Limbs』のリミックスを収録したボックスセットで、Caribou、Objekt、Blawanといったアーティストが参加している。この中には今作に限定収録のリミックスは一つもなく、つまり購入者は事実上、ただの段ボール箱に$600以上を支払ったことになる。

Depeche Mode
Blasphemous Rumours
Mute
$779

"Blasphemous Rumours"はDepeche Modeのキャリアにおける一つの節目であり、ここから彼らはゴス調のシンセポップへと方向性を固め、その歌詞の内容は宗教団体たちを怒らせた。この特定のシングルがこれほど入手困難になっている理由は、おそらくDepeche Modeの熱烈なファンたちの信仰心と関係しているのだろう。この12インチには少なくとも6バージョンが存在し、その中でも最もレアなオレンジヴァイナルは$800近くで売却されている。

Boards Of Canada
Boc Maxima
Not On Label
$795

『Boc Maxima』は、Boards Of Canadaのブレイクスルーのきっかけとなった作品『Music Has The Right To Children』の前作であり、収録曲の中には被っているものが多い。ごく少数のみカセットテープもリリースされたが、そのほとんどはバンドメンバーの友人や家族に配られた。そして昨年、これまで知られていなかったヴァイナルバージョンがDiscogsに浮上。これは正規のリリースだったのか？いや、そうではなさそうだ。だからといってこのレコードに誰かが$795を費やすのを思いとどまらせたか？そういうわけにはいかなかったようだ。

Sergio Ferraresi
Horizons Vol. 7 Galaxi
Abramo Allione
$795

ライブラリーミュージックとは広告や放送のために特別に作られた音楽を指す。大抵は少数のみ制作され、レコードストアで販売されることはまずない。そしていつも決まってひどい音楽だが、たまに素晴らしいものもあり、故にそうした良い作品はレコードディガーたちを引き寄せる。Sergio Ferraresiによる『Horizons』はおそらくSFテレビ番組のために制作されたものなのだが、その地球外的なサウンドスケープとシンセサイザーディスコのブレンドは、予想外にも広い層にうけることとなった。Black Devil、あるいはArpadysの革新的なコズミックサウンドの隣りに並べておきたい一枚だ。

Various
ID&T
ID&T
$800

このCDには1994年の頃のID&TとThunderdomeの名刺が付属されており、レイヴの歴史を物語る作品とも言える。人々はThunderdomeをとんでもなく愛しており、現在までに1800人もの人が魔術師のロゴのタトゥーを彫っていることも、ここで言及しておきたい。

Throbbing Gristle
D.o.A. The Third And Final Report
Industrial Records
$844

Throbbing Gristleのセカンドアルバムの初期プレスには、その音楽同様に、ぎょっとするほど不快なボーナスが付属していた。それはベッドの上に座る上半身裸の少女の写真をフィーチャーしたカードカレンダーと、彼女の写真を使ったポストカードだ。これらが付属したレコードは1000部のみで、ポストカードまでがそのまま残っているコピーを見つけ出すのは、Gristleファンにとっては聖杯を捜すようなもの。セラーからは、「本物のコンプリート盤がこの先また見つかるとは思わない方がいい」とのコメントがある。

Leslie Winer
Witch
Virgin
$965

Leslie Winerは80年代から90年代にかけてカルチャーのメインストリームとアンダーグラウンドを横断してきた。ファッション誌Vogueの表紙でValentinoやChristian Diorのモデルを務めた経歴を持つ彼女は、その後音楽キャリアをスタートさせたが、そこで商業的に成功することはなかった。とは言うものの、彼女のデビューアルバム『Witch』はトリップホップに大きな影響を与えた、ソウル、ヒップホップ、ダブ、そしてパンクの間の奥地に佇む作品だ。こちらのバージョンにはニューヨークの重要アーティストであり、かつてのWinerの恋人でもあるJean-Michel Basquiatによるアートワークをフィーチャーしている。

Midori Takada
Through The Looking Glass
RCA Red Seal
$1023

主にYouTubeの計り知れないアルゴリズムのおかげで、『Through The Looking Glass』はTakadaがマレットで生み出すミスティシズムの完全リバイバルと重大な再評価に拍車をかけた。Takadaの有機的なアンビエントLPの再発見とリイシューは、InoyamalandやHiroshi Yoshimuraといった彼女と志を同じくする80年代の日本人アクトへの注目が、世界的に復活している真っ只中に起きた。これらの事実全てが、1983年にRCA Red Sealからリリースされたオリジナルプレスが超レア盤であることを意味する。

Macintosh Plus
Floral Shoppe
Beer On The Rug
$1300

『Floral Shoppe』は、おそらく究極のヴェイパーウェイヴ作品だ。Vektroid、Peace Forever Eternal、そしてPrismCorp Virtual Enterprisesといった名義でも活動するポートランド拠点の多作なプロデューサーRamona Andra Xavierによるこのテープは、手短に言うとブロゴスフィアの花形と言えるスタイルを確立した。

Steve Monite
Only You
His Master's Voice
$1335

ブギー（ディスコの終焉から登場したファンキーでシンセ中心のサウンド）の伸び伸びとしたムードは、80年代初めのナイジェリアに漂っていた楽観的なムードによく合っていた。同国が石油産業による好景気のおかげで経済が急成長し始めた頃だった。ナイジェリアのブギーはそもそもユニークなのだが、『Only You』は当時リリースされた他のどの作品にも似つかない。タイトルトラックは、303に似た奇妙なベースラインが響く、変わりネタのシカゴハウスとレフトフィールドポップの中間のようなトラック。同作はカルト的プロデューサーTony Okorojiが手がけ、ローカルのシンセの名手でありエンジニアでもあるNkono Telesも参加している。

N'Draman Blintch
Cosmic Sounds
Cosmic Sounds
$1420

N'Draman BlintchはWilliam Onyeaborと共にレコーディングをし、3年間で3枚の風変わりなディスコのアルバムを発表した。1980年以降、Blintchは地上から忽然と姿を消したかのようで、その消息は現在も不明。ただ明らかなのは、「Cosmic Sounds」はダビーなディスコバンガーが満載で、Antal、Midland、Young Marco、Motor City Drum Ensembleらは有名な同作のサポーターだということだ。

Timeless Legend
I Was Born To Love You
Dawn-Lite
$1429

"I Was Born To Love You"は、ロンドンのクラブPlastic Peopleでかけられた最後の曲のうちの1つだ。Floating Pointsの十八番だったが、この曲は80年代以降のソウルシーンにおけるアンセムであり、そのレガシーがオリジナル盤の法外な高値に反映されている。

Kraftwerk
Showroom Dummies
Capitol Records
$1818

たった50枚限定で制作された日本限定のDJプロモ盤。Kraftwerkの最も貴重なレコードのうちの1つだ。

Orlando Julius & The Ashiko
Love, Peace & Happiness
Jungle Records
$1818

Orlando JuliusはアメリカのR&Bとアフリカンスタイルを融合させたアーティストで、Lamont Dozierの1977年のヒット曲"Going Back To My Roots"のギターラインを作ったことでよく知られる。このクラシックディスコトラックは、Odyssey、Richie Havens、FPI Projectといったアーティストにカバーされてきた。（悲しいことにJuliusの名前がクレジットされることは無く、彼がロイヤリティを支払われたことも一度もないそうだが。）「Love, Peace & Happiness」は70年代後期にアメリカで録音され、ジャズに影響を受けたソウルとアフロビートのグルーヴの素晴らしいフュージョンを実現した。音楽のクオリティをよそに、同作は大西洋の両側で大ゴケし、以来オリジナル盤を入手するのは不可能に近くなった。

Pedro Santos
Krishnanda
CBS
$2443

Pedro Santoによるサイケデリックソウルの最高傑作は、ブラジル産レコードの中でも最も需要の高い1枚だ。Santosはスピリチュアルな領域によって動かされるパーカッションの名人であり、この作品にはリズムと、倫理観、認知、そして存在を歌ったリリックの、独特のブレンドが存在する。他の多くのレア盤同様、同作もまた際立って美しいアートワークを持つ。当然ながら、『Krishnanda』には根強いファンがおり、その中にはGilles PetersonやDJ Nutsのようなディガーたちもいる。

Coil
Horse Rotorvator
Boudisque
$2500

Coilのセカンドアルバムのテストプレスは数多く出回っているが、こちらの1987年のオランダ盤ほど高値が付いているものは他にない。このバージョンにはプレスリリース、フライヤー、ブックレットが付属しているほか、故Jhonn Balance自身のサインが書かれている。彼は謎の問いかけを残した。「Where Is The Damingo?（The Damingoはどこだ？）」

Daybreak
Everything Man
PAP
$2700

Patrick Adamsは70年代から80年代にかけて活躍した大物プロデューサーで、彼独特のシンセが降り注ぐサウンドで知られ、その音色はLeroy BurgessやInner Life、Salsoul Orchestraらのヒット曲の源にもなった。こちらのAdamsの作品は、彼のいつもの力強いディスコよりもフィラデルフィアのソウルに近く、ノーザンソウル収集家やビートディガーの中には熱烈なファンがいる。ちなみにMadlibは、Talib Kweliの"Everything Man"でこの曲をサンプリングしている。オリジナル盤は短命だったレーベルPatrick Adams Productionsからリリース。尚、同レーベルはPersonal Touchの「It Ain't No Big Thing」をリリースしていることも注目に値する。

94 East feat. Prince
Be My Fortune Teller
Polydor
$3250

94 Eastは、かつてプリンスがギターで参加していたミネアポリスのファンクバンドで、そのキャリアが波に乗る前にPolydorに契約を解除されてしまった。1977年に録音された「Be My Fortune Teller」は同バンドのデビューシングルであり、当時のセッションは同作のプロデューサーHank Cosbyにとって困難なものだったと思われる。彼はPrinceのアイディアに興味がなかったようだ。その年の終わりに、Princeは自身のデビューアルバムを発表。その後94 Eastが、未発表曲やPrinceとの非公式コラボレーションを収録したデビューLPを世に出すまでには、実に8年がかかった。

Bernie Williams
Ever Again
Bell Records
$5195

The Wigan Casinoはおそらくレア盤をセールスポイントにした初めてのクラブだっただろう。同クラブは原型的なノーザンソウルスポットであり、アンフェタミン混合のダイエット薬でハイになったダンサーたちは、オブスキュアな140BPMのソウルミュージックで夜明けまで踊っていた。Bernie Williamsの"Ever Again”は当時この店のビッグチューンだった。この曲は元々はGene Woodburyが録音した商業的失敗作で、フィラデルフィアの小さなレーベルDel-Valからリリースされた。その2年後に録音されたWilliamsバージョンもオリジナルと同じくらいコケたものの、イングランド北部の雨降りの街で思いも寄らないファンを獲得した。

LaRom Baker
You're The Best
The Record Company
$6000

LaRom Bakerの「You're The Best」はソウルとディスコの間の興味をそそる場所に存在する。素朴なレーベルからひそかにリリースされたこの1曲収録の7インチは、ローファイファンク愛好家の間でカルト的な人気を誇る。

Röyksopp
Melody A.M.
Wall Of Sound
$8412

このRöyksoppのアルバムのリミテッドエディションは、たった100部のみ存在する。その事実だけでもコレクターたちを興奮させるのに十分かもしれないが、Banksyによるステンシルアートワークが、この作品を更に価値ある芸術作品へと仕立て上げている。Banksy関連のリリースは決まって高音が付くのだ。最近では彼がやったParis Hiltonのアルバムのパロディーに$900が付いた。また、Banksyの絵を無許可で使用したDirty Funkerによるひどいエレクトロハウス・リリース「Flat Beat」の中古価格は$999にまで上った。シュレッダーにかけられたBanksyの作品が140万ドルで取引されるような世界では、Banksyのブートレクヴァイナルが熱心なバイヤーたちをも魅了するのも理にかなっていると言えるかもしれない。

Prince
The Black Album
Warner Bros. Records
$27,590

『The Black Album』は店頭に並ぶ前に破棄されたPrinceの失われたクラシックだ。前回我々が調査した時、『The Black Album』のコピーは$15,000で取引されていた。その後2018年6月に、1枚のコピーが$27,590で売買され、Discogs史上最高額のアイテムとなった。このレコードは、Princeが全て破棄を命じた『The Black Album』のカナダプレス盤の中から唯一救出された1枚で、Columbia Recordsの元従業員のコレクションの中で30年近く眠っていたそうだ。

『The Black Album』はDiscogsで最も高値が付いたレコードだが、歴史上最高額のレコードには実は程遠い。まずはAphex Twin『Caustic Window』のアセテート盤が、eBayで$46,300で売却された。その遥か上をいくのがWu-Tang Clanのアルバム『Once Upon A Time In Shaolin』で、USの起業家Martin Shkreliが200万ドルで購入している。そしてこのアルバムは現在、Shkreliが証券詐欺で有罪判決を受けたことによって、アメリカ合衆国連邦政府が所有している。