Resident Advisorには19年の歴史があり、すでに一度10年間の総括特集をやったことがある。2000年代を代表するアルバム、ミックス、トラックをまとめた当時の記事を今眺めると、ある程度の歳を重ねた人なら、とてつもない懐かしさに浸ることになるだろう。（2000年代のベストトラックにMetro Areaの“Miura”が選ばれていたが、今でも色褪せない。）当時の特集を振り返ると、その後の10年間でどれほど時代が変化したかがわかる。2010年代のエレクトロニック・ミュージックは、白人男性以外の人々の活躍が目立つ10年となった。非白人、女性、トランスジェンダー、ノンバイナリージェンダーのアーティストがシーンにおいて存在感を増し、そういった人たちの活躍がもたらしたポジティブな影響は計り知れない。また、西ヨーロッパや北米以外の地域のコミュニティーが世界的に評価される事が増えた。こういった変化のおかげで、現在のエレクトロニック・ミュージックはより一層多様で、活気があり、グローバルに成長している。

これから数週間に渡って、2010年代を代表するトラック、アルバム、ミックスやリイシューをまとめた記事を公開していく。想像に難くないと思うが、これは楽しく、ときに辛い作業であった。RAのスタッフ陣全体にお気に入りの作品を提出してもらい、その後編集チームがその作品群をなんとか一貫した形に落とし込むべく削っていった。トラックとアルバムはそれぞれ100作選び、なかでも、2010年代を形作った重要リリースを20作ずつハイライトしている。特集を組むにあたって、常に同じ質問を自分たちに問いかけた。この作品は、その後に続いた音楽に意味のある形で影響を与えたのか？そして、今でもその魅力は色褪せないか？

また、2010年代に起こったダンスミュージックのサウンド、シーン、そして政治面における地殻変動を紐解く特集記事として、Steph Leeによる、2010年代の世界各地の新しいクラブサウンドに関する記事を公開した。

言うまでもなく、過去10年にリリースされたお気に入りを全て載せることは不可能であり、仕方なく削った素晴らしい音楽はある。この一連の特集があなたの2010年代の楽しいダンスフロアの思い出を呼び起こしたり、聴き逃した作品を聴くきっかけになってくれれば、幸いである。