2010年代は、私たちのエレクトロニックミュージックの聴き方、ひいては音楽そのものの聴き方に劇的な変化がもたらされた10年間だった。ストリーミングサービスが主役の座を奪い、ミックスCDはメディアとしてのCDの衰退とともに廃れていき、ヴァイナルはデジタルファイルにますます駆逐された。しかしこのような激動の時代にあっても、アルバムという形式は持ちこたえた。多くのアーティストにとって、アルバムは今なお音楽表現 — とりわけより繊細でクラブ的ではない音楽性 — のための最良の形式であり、リスナーはアーティストの音楽世界を存分に垣間見ることが可能となる。コンピレーションもまた同様の役割を果たし、一部のコンピレーションは私たちにシングルやEPでは到底不可能と思える深度と詳細さによって新たなサウンドや未知のシーンを紹介してくれる。それは今回のリストからも見てとれるはずだ。このリストでは、テクノ / エレクトロ / ブレイクビーツ / ジャングル / ポップ / アンビエント / ソウル / ゴム / シンゲリ / フットワーク / ヴェイパーウェイヴ / ハウス（ディープ・辺境・ローファイ）/ ポストダブステップ / R&B / ヒップホップなどなど、まさしく目眩を催すような幅広いサウンドが扱われているが、どれもダンスフロアー的な要求やEPの収録時間制限にとらわれていない作品ばかりだ。このリストはエレクトロニックミュージックがいかに豊かで自由な形態となってきたかを証明するものであり、これから先10年のエレクトロニックミュージックを雄弁に予言するものだ。

2010年代を決定づけた重要アルバムの数々を、Spotify、Apple Music、Buy Music Clubでチェックしながら振り返ってみよう。

トップ20:

- 2010
  Various Artists
  Shangaan Electro: New Wave Dance Music From South Africa / Shangaan Shake
  Honest Jon's Records
  
  Listen: Electro: Apple Music / Spotify Shake: Apple Music / Spotify
- 2010年代におけるエレクトロニックミュージックの重要な進化の一部は、従来とは異なるハブから到来した。それらはしばしば伝統的なジャンルや楽器がデジタルソフトウェアを用いて電子的に紡ぎ直された結果だった（その好例となるのが、ウガンダのエレクトロ・アチョリとタンザニアのシンゲリだ）。2010年、ロンドンのHonest Jon'sは南アフリカ発祥の高速エレクトロニックミュージックであるシャンガーン・エレクトロをまとめたコンピレーションをリリースし、クラブミュージックが急速にグローバル化されることになる2010年代の基調を定めた。
  
  Honest Jon'sの共同オーナーであるMark Ainleyはドキュメンタリー映像作家のWills Glasspiegelを通じてシャンガーンの重要プロデューサー、Richard MthetwaことNozinjaの存在を知り、AinleyはBasic ChannelのMark ErnestusとともにNozinjaの関わった楽曲をまとめたコンピレーションを制作した。『Shangaan Electro: New Wave Dance Music From South Africa』は2010年にリリースされたどんな作品とも異なるサウンドだった。Ernestusがベルリンで運営するHard Waxの店頭で発売前のホワイト盤がプレイされると、決まって問い合わせが殺到していたが、Ainleyはそのレコードを素っ気なくHonest Jon'sのラックに置き、一切の紹介や宣伝・マーケティングもしなかった。Ainleyは「店で働いている連中も含め、誰もこのレコードの素性を知らなかった。試聴してみて初めて分かるってわけさ」と語っている。
  
  このコンピレーションのあと、多数の12インチシリーズが続いてリリースされ、それらは2年後に『Shangaan Shake』としてアルバムにまとめられ、DJ RashadおよびDJ Spinnのフットワーク・デュオ、UKのイノベーターであるActressやPeverelist、デトロイトのTheo ParrishとAnthony "Shake" Shakir、そしてRicardo VillalobosやOni Ayhunなどクリエイティビティ溢れる異端児たちが参加し、Nozinjaが手がけた音楽はさらに幅広いリスナーやクラブに届けられることになった。
  
  - Aaron Coultate
  
  こちらもチェック: Equiknoxx - Bird Sound Power / Errorsmith - Superlative Fatigue
- 2010
  Sandwell District
  Feed-Forward
  Sandwell District
  
  Listen: Apple Music / Spotify
- Sandwell Districtは2010年代テクノ最初の傑作となる『Feed-Forward』をクリスマスの3日前にリリースし、瞬く間にコレクターズアイテム化した。Function、Regis、Silent Servant、Femaleらによる多大な影響を残したプロジェクトの最終章にあたる『Feed-Forward』はダンスフロアーから遥か遠く遊離した魅力を持つ実に強烈かつ輝かしい、巧妙なトラックのコレクションだった。これはマインドのためのテクノであり、このスタイルならではの4/4パターンにはどこか遠くの場所へ聴く者を押しやるクールで削ぎ落とされたアンビエンスが縫い込まれていた。
  
  しかし、『Feed-Forward』は単なるサイケデリック・トリップにとどまらない作品だ。時に冷ややかで（"Immolare"）、またある時にはひどくエモーショナル（"Falling The Same Way"）なトラックを備えたこのアルバムは、なぜこれほど多くの人々がテクノの終わりなきループに魅せられるのかという理由が刻まれている。この音楽は真に夢中にさせる力を秘めている。『Feed-Forward』は、今なおテクノを彩る影響をもたらしたコレクティブによる最後の作品であり、現代におけるテクノの形成を支えた稀有でむき出しになったアーティストたちのマインドの内面が示されているのだ。法外に高価であり、今後も決してリプレスされることもないが、ファンの多くは『Feed-Forward』のヴァイナルヴァージョンを手に入れられなかったことを永遠に悔やみ続けるはずだ。リリースから10年が経過しようとしている今、このアルバムはレアであると同時に、失われた惑星から届けられた遺物のようでもある。
  
  - Matt Unicomb
  
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- 2010
  Actress
  Splazsh
  Honest Jon's Records
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify
- 『Splazsh』のリリース以降10年の間に、Darren CunninghamはJohn Miltonの壮大なポエトリー、FM電波干渉、オーケストラの実験、そして “死んでいるという感覚” に着想を得た作品をリリースしてきた。しかし、2008年の控えめな作品『Hazyville』の次作として2010年にリリースされたActress名義での2作目となるアルバムは、一切の説明を添えられずに世に出され、そこには一定の不可思議なオーラが漂っているだけだった。
  
  都市居住者の孤独感、ウィードがもたらす妄想症、夜のバスでのまどろみ、そして都市の底からにおい立つ悪臭などを切り取った『Splazsh』は、Burial以降の系譜をたどりつつも、Lee GambleやZomby、Demdike Stareなど2010年代に登場することになる悪夢的な作品群を予示していた。しかし、レイヴ考古学者たちがある種気骨のあるリアリズムによって社会を映し出したいっぽう、『Splazsh』ははるか遠くの深宇宙から光を放っている。"Hubble"を聴いていると、まるで望遠鏡の逆側からテクノを覗き込んでいるような感覚になる。遠くの星の周りを小さな断片が周回軌道を描き、Model 500の捻れた残骸がその冷淡な輝きによって照らされている。明快で親しみのあるパターンは、潰されたハイハットやテレポートするベースキックによるCunninghamの無重力空間の中で常に時間軸をずらされている（"Bubble Butts And Equations"）。そして、"Supreme Cunnilingus"での凍てつくようにソリッドなビーツは、ぼろぼろのアパートメントの継手のようにきしみを立てる。"Maze"ではさらにダークさを増し、悪の銀河系帝国のための葬送行進曲を奏でている。
  
  このアルバムはすべてが荒涼さに支配されているわけではなく、硬質でグルーヴィーなトラックも収録されている。"Always Human"はリリース当時のRAレビューでTodd Burnが記した “クリスピー” という表現がふさわしく、"Purrple Splazsh"には80年代的なタッチもあり、その緩慢なファンク・ループはヴェイパーウェイヴを先取りしているかのようだ。当時、このアルバムの全貌は不完全で掴みづらいものに感じられた。しばしば安いイヤフォンの閉じられた空洞内で制作に取り組んだことで、Cunninghamはこのプロジェクトに広場恐怖症的な感覚を持ち込んだのだという。リリースから10年を経て、彼の世界観はわずかながらではあるが理解されるようになってきた。しかし、彼の手法がリスナーのマインドに根付いた今でも、『Splazsh』にはやはりある種グノーシス的な魅力がある — 宇宙の謎がまだ解き明かされていないのと同じように。
  
  - Chal Ravens
  
  こちらもチェック: Flying Lotus - Cosmogramma / Kaytranada - 99.9%
- 2011
  Kuedo
  Severant
  Planet Mu
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify / Soundcloud
- 『Severant』のリリース前、Jamie TeasdaleはVex'd名義での作品からの差別化をどのように図るべきか思い悩んでいた。00年代中盤、Roly PorterとのプロジェクトであるVex'dは最もヘビーな部類のダブステップを現出させたが、それだけに新たにソロとなったTeasdaleが次にどのような展開を見せるのか期待が高まっていた。はたして、彼が思い悩む必要はなかった — Kuedo名義として、Teasdaleはかつて閉所恐怖症に支配されていた場所でオープンスペースを切り開いたのだ。これは諦めずに完遂された再生であり、内向的な新世代プロデューサーたちに絶大な影響を残した。
  
  適材適所の巧みなバランスが『Severant』をリリース以後もTeasdaleと同様の傾向を持つアーティストたちにとって長らく影響源となる一因となった。Teasdaleは高速フットワークのリズム（当時はまだフットワークがシカゴ以外のシーンに定着し始めたばかりだった）、時折深く差し込まれるLex Luger調のトラップベース、ふんだんに飾り付けられたメロディックなシンセによるユニークな組み合わせを形成した。その均衡は見事であり、ある時はCarly Simon「Why」のサンプルが怒涛のハイハットの上でバレエ的な優雅さで滑り、またある時には明るいトラックの中に微かな恐怖感が付きまといながらもまったく破綻を感じさせない。Teasdaleは『Severant』が未来にインスパイアされたものではなく、過去の “ロマンティックな未来主義” というアイディアを援用していると言及してきたが、そこには確かな裏付けがある。映画『 Blade Runner』の世界観が2010年代に落とした長い影はネオンに彩られた時代精神とおおむね同調し、このアルバムがストーナーや夢想家、Sci-Fi愛好者にとってベッドルームでのフェイバリットになる助けとなったのは間違いない。1982年と2049年という時間の隔たりに挟まれた『Severant』の広大な音楽性は、永遠の楽しみを与えてくれる。
  
  - Gabriel Szatan
  
  こちらもチェック: Machinedrum - Room(s) / Clams Casino - Instrumentals
- 2011
  The Caretaker
  An Empty Bliss Beyond This World
  History Always Favours The Winners
  
  Listen: Bandcamp / Soundcloud
- James Leyland Kirbyは1999年からThe Caretakerとして細々と活動してきたが、時間的な関心が激論を引き起こす題材となり、悲しみが重要なコモディティであった2011年に新鮮な衝撃をもたらした。『An Empty Bliss Beyond This World』はいわゆるメモリーミュージック全盛の時期にリリースされ、リスナーたちに過去との関係性を想起させるOneohtrix Point NeverやJames Ferraroらの冒険的な作品群とひとまとめにされた。1920年代のイージーリスニングレコードの寄せ集めがどのようにして傑出した存在となったのかを説明するのは一見難しく、それがいかにして2010年代で最も深遠な芸術的ステートメントとしての評価を確立したかを解析するのはなおさら難しい。ともあれ、『An Empty Bliss Beyond This World』におけるテーマは表面下に見出された崩壊であり、そこにおいてこそ魅力が存在する。他のアーティストたちが記憶の深い部分を解き放ついっぽうで、Kirbyはその手かがりさえない状態で何が起こるかを探っているのだ。
  
  ディキシーランド時代のSP盤ジャズやボールルームに軽くトリートメントを施した『An Empty Bliss Beyond This World』は、型にはまった形式から抜け出す感覚を伝えている。ミュートされたコルネットは曲から曲へと漂い、オーディオは不自然に位相を変え、ループは1小節丸々鳴らされることもなく、多くのトラックは不意にフェードアウトして無に帰する。それでも、このアルバムは過度に分断的なものには聴こえない。なにかがおかしいとは思いつつも、その問題を的確に言い当てるには無力で、結局は黙して従ってしまうような感覚なのだ。このアルバムは動きが停止するということの悲劇そのものであり、あてどなく続くワルツなのだ。
  
  The Caretakerの作品はさらにダークさを増していく。The Caretakerが2019年にリリースしたアルバム『Everywhere At The End Of Time』の最後を飾る"Place In The World Fades Away"では、『An Empty Bliss Beyond This World』でのささやかなノイズはもはや轟音と化し、それがすべてとなっている。したがって、心地よくも不穏で、美しくも恐ろしい、底知れぬ深みへとどこまでも沈み込んでいく不変の感覚を伝える非凡な重厚さを持つ音楽の年代記において『An Empty Bliss Beyond This World』はWilliam Basinski『The Disintegration Loops』の系譜上に並べられるべきだろう。
  
  - Gabriel Szatan
  
  こちらもチェック: Oneohtrix Point Never - Replica / Huerco S. - For Those Of You Who Have Never (And Also Those Who Have)
- 2012
  Jam City
  Classical Curves
  Night Slugs
  
  Listen: Apple Music / Spotify
- Jam Cityほどドラマティックな転身を果たした2010年代のプロデューサーは他に考えられるだろうか？　2015年までに、ロンドンのJack Lathamは自身のデビューアルバムにおける辛辣で光沢のある音世界を「冗長だ」と断じ、ドリーミーなベッドルーム・ポップへと転向した。しかし、『Classical Curves』は2012年のリリース以後もクラブミュージックにおいて驚くほどの影響力を維持し、その精緻に作り上げられた派手なプロダクションは若い世代のアーティストたちとってひとつの基準として常に参照されてきた。
  
  このアルバムはUKにおけるポストダブステップ期に登場した — つまり、Lathamが所属するNight Slugsのレーベルメイトたちがダブステップ没落の始まりと同時にロンドンのナイトライフを再起動していた時期だ。Lathamはジャージーのクラブ直系の痛烈なリズムにグライムの荒涼とした空虚な空間性を組み合わせた。このアイディアはその後しばしば模倣されることになるが、2010年代を通じてLathamの手法を上回るものは滅多に現れなかった。
  
  『Classical Curves』の捉えどころのなさが最も良く表れているのが、"The Courts"で貫かれるゴムが軋むようなサウンドだ。もちろんただの古いスニーカーのソールなどではなく、大量生産されつつも人為的にレアに仕立て上げられ、資本主義家のフェティッシュオブジェともいえるAir Jordanの履き古しだ。カッティングエッジなクラブプロダクションの実験であると同時に消費者主義の通例に対する皮肉まじりの問いかけである『Classical Curves』は、知的でありながらフィジカルな作品だ。
  
  - Chal Ravens
  
  こちらもチェック: Fatima Al Qadiri - Asiatisch / Ikonika - Contact, Love, Want, Have
- 2012
  Voices From the Lake
  Voices From the Lake
  Prologue
  
  Listen: YouTube
- 30分にわたって続くウルトラディープなテクノを経て、『Voices From The Lake』のムードはひとつのメジャーコードの到来とともにシフトする。他の音楽であれば、その効果は限定的であるはずだ。だかここでは、そのメジャーコードの効果は晴れた朝にカーテンを開け放つのに等しく、NeelとDonato Dozzyのサウンドの世界へさらに引き込む感情の爆発だ。ごくわずかなエレメントで構築された『Voices From The Lake』は極めて優れたプロデューサーにしかなしえない方法でストーリーを語り、微かなメロディーやアトモスフィアを使って繊細でありながら明快なナラティブを紡いでいく。このイタリアのディープテクノ達人たちによる最大の功績は、なによりもまずテクスチャーによって目眩を引き起こすようなスタイルを推し進めている点であり、『Voices From The Lake』の魅力は我々がダンスミュージックの4/4グルーヴに耳を傾ける限り不変だろう。
  
  このアルバムは永遠にLabyrinthと結びつけられるはずだ。言うまでもなく、Labyrinthは年に一度日本の山中で行われるアンビエント / ディープテクノ / エクスペリメンタルミュージックの祝祭だ。NeelとDonato Dozzyはこのアルバムのリリース数ヶ月前にLabyrinthでVoices From The Lakeのプロジェクトを初お披露目しており、一点の曇りのないLabyrinthのサウンドシステムを通して一晩の最後を飾った。『Voices From The Lake』の世界へ迷い込むのにワールドクラスのサウンドシステムは必ずしも必要ではないが、良質なヘッドフォンと忍耐力は役に立つ。このアルバムはプロデューサーたちがピアノやストリングス、メロディーといった型にはまった記号に頼らずに魅惑的でエモーショナルなサウンドを創出し、アブストラクトなトーンが組み合わされることでマジックを現出させるテクノ固有の力の証明だ。
  
  - Matt Unicomb
  
  こちらもチェック: Petre Inspirescu - Vin Ploile / SW. - Untitled
- 2013
  DJ Rashad
  Double Cup
  Hyperdub
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify
- シカゴでフットワークが誕生した当時、主にこの街のダンスバトルやスケーティングリンク、そしてアンダーグラウンドなクラブでしかフットワークを聴くことはできなかった。しかし、2010年代序盤になると、このジャンルは生まれ故郷を飛び出し、ヨーロッパやアメリカの各地へ飛び火し、フットワークのオリジネイターたちに脚光が当たることになった。いったい誰がこのクレイジーなスタイルを編み出したかについては今も諸説入り乱れているものの、フットワークが突如として世界中のメインストリームに躍り出たのはDJ Rashad『Double Cup』に負うところが大きい。UKのHyperdubから届けられることになったこのアルバムにより、長きにわたってシカゴで培養され、ゲットーテックに影響されたサウンドはついにより広範なオーディエンスへのアクセスを手にした。その磨き抜かれたサウンド、極めて精緻なパーカッションはシカゴ外のクラバーたちの関心を刺激した。
  
  リリースから7年が経過しようとしている現在でも、『Double Cup』はその推進力に満ちたエナジーを維持している。"Show You How"での甘くエモーショナルな共鳴を経て、"She A Go"のようなより飾り気のないサウンド、果ては挑みかかるような"I Don't Give A Fuck"に至るまで、このアルバムはフットワークの多様性を見せつけている。ハーモニックなコードによって壮大で内省的にもなりえたはずだが、細切れにされたパーカッションの隙間にサンプルをちりばめてクラウドを引き込んでみせる。
  
  DJ Rashadが2014年にこの世を去ったあと、DJ SpinnやDJ TayeをはじめとしたTeklifeのアーティストたちが新たなフットワークの盟主となり、この音楽をこれまで未踏だった領域へと引き上げている。フットワークが進化を続け、そのダンス的な起源から遠ざかっている疑念もある中、Rashadの不朽のレガシーは今もそのクリスピーなハイハットや緻密な構造、かつてフットワーカーたちを熱狂の渦に叩き込んだ無限に続くかのようなドラムパターンを通して確認できる。
  
  - Kiana Mickles
  
  こちらもチェック: Various Artists - Bangs & Works Vol. 1 / Rustie - Glass Swords
- 2013
  Jessy Lanza
  Pull My Hair Back
  Hyperdub
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify
- 2013年にHyperdubから何の前触れもなくリリースされたデビューアルバム『Pull My Hair Back』によって、Jessy Lanzaは一躍時の人となった。Jeremy Greenspan（Junior Boys）との共同作業による脈打つようなハードウェア・シンセ、ヴィンテージドラムマシンのサウンドに組み合わされた鳥肌の立つようなヴォイスにより、彼女のサウンドはすでに完成されていた。
  
  Lanzaの音楽は80年代のシンセポップ、90年代ダンスミュージック、そしてクラシックR&B / ソウルが渾然一体となっている。言葉にならないヴォーカルや吐息が実際のリリック以上にリスナーの頭にこびりつくほど、90年代ダンスミュージックとクラシックR&B / ソウルは彼女のソングライティングにとりわけ影響を与えている（彼女は電話番号の読み上げさえもロマンティックに聴かせることができる）。その結果、『Pull My Hair Back』ではさまざまなテクスチャーとフィーリングが紡がれている。"Kathy Lee"のようなトラックでは、彼女の声が現れたかと思うと冷たいガラスに吹きかけた暖かな息のように消え去っていく。それ以外にも、まばゆいほどに奇妙な"Fuck Diamond"のようなトラックでは彼女の声はエレクトロニクスのテクスチャーに埋め込まれている。さらに"Keep Moving"のようなトラックはあたかもHyperdubにJimmy Iovineが投資した異世界のラジオでかかっているようなファットなディスコアンセムになっている。
  
  このアルバムを支えているのはあらゆるテクスチャーを際立たせるヴィンテージなエレクトロニクスであり、これら古いマシンのちょっとした不具合もこのアルバムの暖かで親しみやすい印象に一役買っている。唯一の欠点は、わずか36分で終わってしまうその短さだろう。当時、LanzaはHyperdubがLPの最終的な曲順を決める際に数曲をカットしたことを明かしている。だが、おそらくこれは狙い通りのものだろう。Lanzaのとらえどころのない存在感から壮麗なエレクトロニクスに至るまで、『Pull My Hair Back』はリスナーにもっと欲しいと思わせる儚い喜びのおかげで中毒性のある作品に仕上がっていたのだ。
  
  - Andrew Ryce
  
  こちらもチェック: HTRK - Psychic 9-5 Club / Stellar OM Source - Joy One Mile
- 2014
  Andy Stott
  Faith In Strangers
  Modern Love
  
  Listen: Apple Music / Spotify / Soundcloud
- 一匹オオカミとして知られるAndy Stottは、かつてマンチェスター近郊のオールダムにあるMercedes-Benzの工場で塗装工として働いていた。自動車やバイクのメカニカルな音を取り入れたりインスピレーションを見出したりするエレクトロニックミュージックのプロデューサーたちが数多く存在することを考えると、Stottのケースはとりわけ興味深い。彼が用いる音色のパレットはテクノの硬直したパターンとは程遠く、またどのジャンルともまったく趣を異にしている。彼のアルバムの数作では、オペラ歌手もゲスト参加している。6年前、彼は6分間にもわたって死者を悼む霧笛を鳴らし続けるかのような1曲を作り上げた。
  
  Stottは彼と同じくジャンル間の狭間で活動するアーティストたちとは一様に評価できないという点だけでなく、主に彼自身がみずからの比較対象となっている点でも異例の存在だ。この感性がこれ以上なく注ぎ込まれているのが『Faith In Strangers』であり、これは大きな意味で真にクロスオーバー的な作品であり、ダブ / スローなテクノ / ポストパンク / 愛と恐怖の狭間での性急な揺らぎなど彼自身の過去のアルバム（そしてダンスミュージックの歴史）のあらゆるエレメントをミックスし、純粋なStottらしさのDNAをより磨き上げて提示している。まさにStott以外にはなしえないサウンドであり、あまりにも彼の確かで究極的な資質が表れているため、このアルバムを聴き、その長所と短所を正当に見極めるためには彼の過去の作品を洗いざらい聴き返す必要があると思えるほどだ。
  
  Stottの作品群は、2010年代エレクトロニックミュージック・プロデューサーの理想的な軌跡を示す非常に適切なテンプレートのように感じられる。まずジャングルやシカゴハウスなどさまざまなジャンルの水準にわたる必修科目をこなし（彼はかつてあるインタビューにおいて「長い間、僕はとにかく自分の中のシステムから脱しようとしていた」と語っている）、そこからアーティスト個人のみに帰属する誠実でパーソナルなフォームへと進んでいくというわけだ。Stottの場合、その過程はクラブミュージックの解体（ここでは作り込まれた偏執的でコンセプト性の高い作品を示す）ではなく再建であり、さまざまなジャンルから細かなパーツをかき集め、それらを再編して蘇生させる。機械的というより錬金術的なのだ。
  
  - Mina Tavakoli
  
  こちらもチェック: Morphosis - What Have We Learned / Lee Gamble - Diversions 1994-1996
- 2014
  FKA twigs
  LP1
  Young Turks
  
  Listen: Apple Music / Spotify / Soundcloud
- FKA twigsがこれまでリリースしてきたほぼすべてのレコードに対し、ファンや批評家は惜しみない賛辞を送ってきた。2010年代初頭に彼女のデビューEPがリリースされてから昨年のRA Album Of The Yearに輝いた『MAGDALENE』にいたるまで、このマルチな才能を持つアーティストは一貫してエクスペリメンタル・ポップにおける最も話題を呼ぶ存在でありつづけてきた — その理由とは？
  
  2014年にYoung TurksからリリースされたFKA twigsのデビューアルバム『LP1』を聴けば労せずして理解できるが、彼女のアイディアは常に時代を先取りしている。現代のアーティストはあらゆることを並行してこなさなければならないが、彼女はシンガー / ダンサー / プロデューサー / ディレクターといったさまざまな役割を最初からひとりで担ってきた。ポップミュージックとクラブミュージックの両方において、UK独自のサウンドとジャンル間の異例なハイブリッドが進行している。Arca、Sampha、Clams Casino、 Dev Hynesをはじめとしたプロデューサー陣が参加した『LP1』は、ベーシーなローエンド、重層的なリバーブ、軽快なグルーヴなどが不可分にミックスされたこのスタイル面での変化を示す最初の兆候が含まれている。このアルバムのベストチューンは"Lights On"、"Two Weeks”、”Hours”などで、今でもショップやカフェなどで耳にする機会が多いが、FKA twigsの柔らかで脆弱なヴォーカルは失恋で痛手を受けたリスナーたちによってこれからも愛聴されることになるだろう。
  
  - Steph Lee
  
  こちらもチェック: Tirzah - Devotion / Fatima - Yellow Memories
- 2014
  Objekt
  Flatland
  PAN
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify / Soundcloud
- 2014年にデビューアルバムをリリースするまでに、2010年代最良のアーティストとしてのTJ Hertzの地位はすでに確立されていた。彼の超自然的なまでに精緻なプロダクションはそのキャリア初期から一線を画していた。その水準は今や考えられないほどのレベルに達しており、他のプロデューサーたちにとっては同様の刺激に満ちた完璧性を実現するために必死で取り組まなければならない新たなスタンダードを高めた。Objektが間違いのない存在であるという共通認識は、オーディエンスと批評家たちに定着している。しかし、彼が12インチEP群で極めた見事な美学をより繊細さが要求されるアルバムフォーマットに反映させることは新たなチャレンジとなった。
  
  このチャレンジに対し、『Flatland』ではテーマと工夫の反復を全編を通じて織り込むことでアルバムにおけるナラティブ展開の道しるべとした。リスナーを驚かせる瞬間がふんだんに用意されているのは予想通りだが、このアルバムを真に機能させているのはリスニング体験を決定づけることになる聴き心地の良さを配慮したObjekt持ち前の勤勉さだ。細心の注意が払われたトラックの配分、効果的なコントラストと印象に残るモチーフなどがひとつのスタイルに反映され、このアルバムは現代のダンスミュージック制作における従来の固定観念を変化させた。
  
  - Mark Smith
  
  こちらもチェック: Autechre - NTS Sessions 1-4 / Barker - Utility
- 2015
  Jlin
  Dark Energy
  Planet Mu
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify / Soundcloud
- フットワーク発祥の地シカゴからわずか30マイル（約48km）のインディアナ州ゲーリーに住むJerilynn Pattonが2015年に『Dark Energy』をリリースした当時、彼女の名はほとんどシーンに知られていなかった。元鉄鋼工場従業員であったJlinはフットワークのゴッドファーザーであるRP Booの薫陶を受けていたが、そのデビューアルバムにおいて彼女は抽象的な力としてのエレクトロニックミュージックという独自のビジョンを提示し、フットワークを特徴づけていたヒップホップやソウルのサンプルをあえて排し、代わりに自製のサウンドを使い、ホラー映画からのわずかなサンプルを使用するスタイルにみずから制限した。
  
  不気味で残忍でありながら、それでいて水晶のようなクリアさを持つトラック群はダンスフロアー向きというよりは鬱気味のアンセムで、当時彼女自身が語っていた “腹の底に棲む獣” の怒りを呼び覚ましている。"Black Ballet"はバトルダンスとDarren Aronofsky的ボディホラーを真っ向から組み合わせ、脊椎を打ち砕き肋骨をガタガタと揺さぶる。"Guantanamo"での悪霊に取り憑かれたハリウッドの子供たちのサンプルはリスナーに冷や汗をかかせる。それからリズムはどんどん加速し、衝突して砕け散る。"Black Diamond"は儀式的ダンスがダイアルトーン・ファンクや遠く離れた音世界と衝突し、1本の電話線の中でひしめき合う第四世界のファンタジーを想起させる。
  
  この作品をリリースしたあとのPattonは劇場でのエクスペリメンタル・アートの分野へ転向し、Wayne McGregorのバレエ作品のためのスコア、William Basinskiとのコラボレーション、Rick Owensのランウェイショーのためのサウンドトラックなどを手がけているが、その壮大なビジョンは最初から彼女の中に存在していた。
  
  - Chal Ravens
  
  こちらもチェック: 33EMYBW - Arthropods / Nídia - Nídia é Má, Nídia é Fudida
- 2016
  Various
  Gqom Oh! The Sound of Durban Vol.1
  GQOM OH
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify / Soundcloud
- 2015年当時、ゴムは南アフリカ・ダーバンで生まれて急成長を遂げ、南アフリカのストリートに暮らすティーンエイジャーたちがベッドルームからひとつのローカルシーンを育てていた。プロデューサーたちはKasimp3という音楽共有プラットフォームに新しいトラックをアップロードし、リスナーたちはそれぞれが見つけたトラックをFacebookやWhatsAppでシェアし、キッズたちは制服姿のまま自分たちのダンス映像を携帯電話のカメラで録画していた。ゴムはこのような素朴な始まりから世界的な現象にまで発展を遂げ、その不穏なドローンはナイロビからニューヨークまであらゆるDJたちのセットに浸食した。この10年間を通じ、UKのレーベルGoon Club Allstarsからのリリースを通してゴムはますます勢いを増し、それからまもなくGqom Oh!（このダークで不穏なアフリカ産ハウスを広めたローマ拠点のDJ Nan Kolè）から決定的なコンピレーションが届けられることになる。
  
  『Gqom Oh! The Sound Of Durban Vol. 1』はまるで宇宙からやってきたモノリスのような作品だ。完全に新しいジャンルであり、極めて機能的で即効的だ。このコンピレーションは最もハードでヘビーなゴムを提示するとともに、霧がかったベースのドローンの中で炸裂するパーカッションとそれを彩る金切声のようなヴォーカルや不気味なメロディーフレーズといった定型以上の作品も紹介されていた。Emo Kid & DJ Bradolzはゴムの定型を使い、そこに執拗な2音のメロディーを加えた。Forgotten Soulsは1990年代トランスのリフを援用した。Julz Da Deejayは通常の構造を覆し、ピッチの高いドローンと肉感のあるベースのリズムを組み合わせた。その洗練された構造、切実な臨場性、テクノとの親和性の高い店舗によって、ゴムは明白なDJウェポンとなった。Kode9やScratcha DVAらはゴムにいち早く着目した。
  
  『Gqom Oh! The Sound Of Durban Vol. 1』のレガシーは、ただ単に人気のトラックが収録されていたことによるものでも、その後のDJ Lagなどの成功の足がかりになったことによるものでもなく（そもそもDJ Lagはこのコンピレーションに参加していない）、現代的なクラブセットにおいてひとつひとつの収録曲が今なお威力を持ちえているゆえでもある。グローバルなベースミュージックに受け入れられ、ロンドンやLA、上海のプロデューサーたちが取り入れるようになっても、ゴムはそのインパクトを微塵も失っていない。
  
  - Chal Ravens
  
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- 2016
  BBF Hosted By DJ Escrow
  Babyfather
  Hyperdub
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify
- 『BBF Hosted By DJ Escrow』ほど抜け目なく多面的なアルバムを、いったいどのように回顧すべきなのだろう？　これは難問だ。まず気づくのは、DJ Escrowが『People Just Do Nothing』（架空の海賊ラジオ局を舞台にしたBBC制作のシットコム）さながらの惨めな海賊ラジオのホストを演じるこの作品のユーモア性だ。Dean Blunt、DJ Escrow、Gassman Dの3者によるこのコラボレーションプロジェクトがリリースされた2016年当時、大いに取りざたされた話題のひとつがこのユーモアセンスだった。しかし、このアルバムの性質をユーモア性だけに集約してしまうのは違和感がある。これは単に笑わせるために作られたアルバムではない（とはいえ、Bluntに関してはそうではないとは言い切れないが）。このアルバムは痛切さや悲しみ、怒りも込められているのだ。
  
  純粋なサウンド面だけでこのアルバムを語るのも全く不十分だ。もちろん、このアルバムはBluntが過去に作ってきた中でも最良のヒップホップ / R&B / ダブトラックであることに間違いはない。ベースが牽引する「Shook」は素晴らしく、Arcaをフィーチャーした「Meditation」はあのTimbalandも顔負けの最高にドープなビーツで、その一方で「The Realness」はこのアルバムの優しくエモーショナルな軸を体現している。しかし、ただこのアルバムのグルーヴに身を任せているだけではBluntのリリックやEscrowの喋りを通じて表現されるこのアルバム本来の社会的・政治的な文脈を見落としてしまう。ただ金切り声を上げるようなホワイトノイズにも間違いなくメッセージが込められており、またアルバム全体のナラティブを繋ぎとめ、嫌というほど繰り返される「This makes me proud to be British（英国人に生まれてよかったって気になるよな）」という皮肉についても言及を忘れてはならない。このようなアルバムはもう二度と出てこないであろうと言う以外に、『BBF Hosted By DJ Escrow』を回顧するのにふさわしい言葉はないだろう。
  
  - Ryan Keeling
  
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- 2017
  Fever Ray
  Plunge
  Rabid Records
  
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- 現今日において、Fever Rayのセカンドアルバム『Plunge』収録曲の“To The Moon And Backにある「I want to run my fingers up your pussy（あなたのプッシーを指で撫でたい）」という一節はそれほど騒ぎ立てるようなことではないはずだ。何しろNine Inch Nailsが「I wanna fuck you like an animal（お前と獣のようにファックしたい）」と歌い上げMTVヒットを出したのは20年も前のことである。しかし案の定、スウェーデンのとある新聞は『Plunge』について、「ストックホルム郊外の42歳の女性が自身の性的欲望を表現することの正当性に疑問を感じる」と評した。この呆れるほどの性差別には解しかねるが、『Plunge』を聴いて心を動かされないことなど想像できない。DreijerのFever Rayとしてのセカンドアルバムは、性の目覚めを示し、そしてそれを隠そうとする社会の体制を非難した、痺れるような自己発見の叙述であった。Fever Rayのデビュー作が難解でミニマルだったのに対し、本作はワイルドで熱狂的だ。その扇動的なリリックの後ろでは、Peder Mannerfeltとの共作による鞭を打つようなネオン色のトラックが響いている。Dreijerと彼女の弟OlofによるThe Knife名義での最後のアルバムとなった『Shaking The Habitual』のサウンドとテーマを基に構築された『Plunge』は、今世紀最高峰のポップ / エレクトロニックアーティストの1人が新たな高みへ到達する様を見せつけた。
  
  - Will Lynch
  
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- 2017
  Tzusing
  東方不敗
   L.I.E.S
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify / Soundcloud
- L.I.E.S.から登場したTzusingのファーストEPに見られる硬いドラムの音色と捻くれたメロディーは、Ron Morelli主宰の同レーベルが2014年にリリースした他の音楽の中でも瞬時に目立つ存在となった。同作は後に『A Name Out Of Place』というタイトルのアルバムとしてコンパイルされた三部作のうちの1枚だが、Tzusingが私たちを驚かせたのはそのレコードが最後ではなかった。コンパイルされたそのアルバムは、中国人アーティストである彼のテクノプロデューサーとしての進化を記録していた。ビートはよりファンキーに、プロダクションはよりリッチに、そしてメロディーはより軍国主義的になっていた。そして2017年にデビューアルバムの『東方不敗』が発表され、私たちはまたもや驚かされた。Tzusingがプロデューサーとして別格であることを決定づけた、青天の霹靂のような作品であった。
  
  「中国のキッズのおかげで本当にDJスキルが磨かれた」と、Tzusingは2017年に私たちに語っている。それは上海と台北（彼が活動の拠点とする2都市）のオーディエンスのことで、そこで彼はテクノ以外の音楽をプレイできた。彼のDJセットはトラップ、ヒップホップ、さらにはEDMに近似する音楽をも含み始めたのだ。弾むリズムと伝統楽器をフィーチャーしたアルバム『東方不敗』ではこれらの影響が表面化しており、中国のメロディーと思想が全く無理なく取り入れられている。武術の習得のため自らを去勢した、武俠映画の登場人物の名前にちなんで名付けられたTzusingのアルバムは、テクノをしなやかで強健で、予測不可能なものとして表現した。今作が、十年紀の終わり間近に起きたスリリングで新しい中国のクラブミュージックの波に刺激を与えたのは、当然のことだ。
  
  - Andrew Ryce
  
  こちらもチェック: Gesloten Cirkel - Submit X / Silent Servant - Negative Fascination
- 2017
  Arca
  Arca
  XL Recordings
  
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- Arcaがこの10年間で最も印象的なアルバムの1枚をリリースする前、彼女は他のいくつかの傑作アルバムにも携わっていた。Kanye Westの『Yeezus』、Frank Oceanの『Endless』、Björkの『Vulnicura』、そしてFKA twigsの『LP1』である。これらのプロダクションクレジットによって、このベネズエラ出身のアーティストは音楽業界のメインストリームの中で一目置かれる存在となった。その一方で、自身の実験的な作品として2014年の『Xen』、2015年の『Mutant』を完成させたAlejandra Ghersiは、彼女のアンダーグラウンドなヴィジョンを存分に見せつけた。これらのアルバムはリズムとフューチャリスティックなサウンドデザインのカオティックなブリコラージュであり、複雑な情緒的性質によって非常にはっきりと特徴付けられていた。いずれもエレクトロニックミュージック史において傑出した作品であり、従来のジャンルやスタイル、アイデンティティにまつわる考え方が崩れ、そして改革されていく時代の変遷を示した。
  
  そして、Ghersiがこれ以上刺激的になることはないだろうと思っていた矢先の2017年、セルフタイトルアルバム『Arca』が発表された。私的で、絶望的、そして魅力的なこのアルバムは、Ghersi自身の歌声によるイントロダクションによって、前作とは一線を画していた。彼女はスペイン語で、例えば彼女の肌を剥がすように誰かに懇願するような歌詞を、悲しげに歌い上げた。彼女の言葉のダークな官能性は、そのプロダクションのシュールな雰囲気と完璧にマッチした。ステージ上で儚げなのと同じくらい大胆不敵に再構築された今作によって、Arcaはこの10年で最もアイコニックなパフォーマーのひとりとなった。
  
  - Steph Lee
  
  こちらもチェック: Klein - Lifetime / Laurel Halo - Quarantine
- 2018
  Skee Mask
  Compro
  Ilian Tape
  
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- 2013年3月にUKのアーティストTesselaが発表した“Hackney Parrot”は、ジャングルのアーメンブレイクが現代のダンスフロアの為に再文脈化された音楽トレンドを決定付けるトラックだった。そこからせきを切ったように、数年以内にブレイクビーツは至る所でかかるようになり、ハウスとテクノに新しい息吹を吹き込んだ。その初期の提唱者の1人が、テン年代を代表するブレイクビーツテクノレーベルIlian Tapeからいくつかの重要EPを発表した、Skee MaskことBryan Müllerだ。ミュンヘン拠点の同レーベルから2016年にリリースされた彼の傑作デビューアルバム『Shred』は、魅惑的なテクスチャと美しく整えられたリズムに溢れていた。テクノに新たなスターが誕生した瞬間だ。
  
  だが、Müllerにとってはそこからが本番だった。2018年、勝利の方程式にこだわり続ける代わりに、彼は自身の才能を再定義するアルバム『Compro』を発表。今回はブロークンボムが、IDMジャムとジャングルヒーターと同居する作品となった。“Vli”や“Cerroverb”のようなトラックは、テクノのアルバムの中でアンビエントが補足部分ではなくハイライトに成り得ることをきっちりと証明した。リズムや雰囲気、そしてラフながらも常に放出される魂の広がりは、息をのむほどだった。“Rev8617”の弾力性のあるメロディーや“Dial 274”の唸るシンセなど、様々な音色が唯一無二のものに聴こえた。今後数年間、いやおそらく数十年間にわたり、新鋭プロデューサーたちは『Compro』を聴き、2つの重要なことを学ぶだろう。それは自分の腕を熱心に磨くこと、もう1つは実験を恐れるなということだ。
  
  - Carlos Hawthorn
  
  こちらもチェック: ASC - Nothing Is Certain / Convextion - 2845
- 2018
  SOPHIE
  Oil Of Every Pearl's Un-Insides
  Transgressive Records
  
  Listen: Apple Music / Spotify / Apple Music
- PC Musicが出現した当時、私はPC Musicが嫌いだった。2010年代前半、そのプラスチックのような光沢と甘ったるいキュートさに本当に驚き、不快に感じたのを覚えている。そして今、同レーベルの初期ヒット作の一部である“Nothing More To Say”や“Bipp”、“Lemonade”を振り返ってみると、グラスゴー出身LA拠点のアーティストであるSOPHIEがプロデュースしたこれらの曲は、私をハッピーにし、そして普通に感じさせるのだ。私たちに付きまとうアイディアは、時にもっと深い何かを論じる。皆が気付いていたかどうかは分からないが、PC Musicは2020年代のエレクトロニックミュージックにヒットした、最大の嵐の1つと言えるだろう。
  
  発売元はTransgressive Recordsだったが、SOPHIEによる2018年のデビューアルバム『OIL OF EVERY PEARL's UN-INSIDES』は、PC Musicのスタイルがいかに遠くまで羽ばたいたかを示した。アルバムはカッティングエッジながらもどこかで聴いたことがあるようで、アヴァンギャルドなエレクトロニックミュージックの感性を、セロトニンが流れるような商業的なポップと融合させていた。スリルを感じさせるほどハードになる瞬間もありつつ、そのクラブビートの中には、ジェンダーアイデンティティに言及するバカげていて独創的なリリックが埋められている。今思えば、私はSOPHIEが『OIL OF EVERY PEARL's UN-INSIDES』をリリースする以前は一度も自身の顔を直接的に出していなかったことを忘れていた。それは、今となっては彼女がいない世界など想像もできないからだ。
  
  - Steph Lee
  
  こちらもチェック: Fever Ray - Plunge / Holly Herndon - Proto

The wider 100

Here's 80 more electronic music albums that defined the 2010s.

- 2010
- Flying Lotus
  Cosmogramma
  Warp Records
  
  In the run-up to Cosmogramma, Flying Lotus was selling his new album as a space opera, a map of the universe, a window into how it feels to be on DMT, and the musical representation of an out-of-body experience—and you have to admit, he succeeded on all fronts.
  
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- 2010
- Various Artists
  Bangs & Works Vol. 1
  Planet Mu
  
  This landmark compilation introduced most of the world outside Chicago to one of the most dynamic dance music genres of the 2010s—and to names like DJ Rashad, RP Boo and DJ Spinn.
  
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- 2010
- Four Tet
  There Is Love in You
  Domino
  
  This lovely record, which includes "Love Cry, "Angel Echoes" and a tribute to everyone's favourite London club, set Kieran Hebden on the path to stardom.
  
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- 2010
- ASC
  Nothing Is Certain
  NonPlus+
  
  The zenith of autonomic drum & bass perfectly showcased the style's emotional depth and dedication to song craft.
  
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- 2010
- Ikonika
  Contact, Love, Want, Have
  Hyperdub
  
  The middle ground between a neon-streaked Akihabara arcade and a smoked-out Croydon basement, Ikonika's playful synergy of chiptune squarewaves and dubstep rumble still feels fresh today.
  
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- 2011
- Clams Casino
  Instrumentals
  Type Records
  
  A marvel of disembodied voices and degraded fidelity, the newcomer from New Jersey's gift was juicing hidden depth out of his samples and parlaying them into woozy rap beats so lyrical and emotive, they work best without verses on top.
  
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- 2011
- Machinedrum
  Room(s)
  Planet Mu
  
  Travis Stewart's best album infused the itchy rhythms of footwork with silky R&B melodies for one of the post-dubstep era's defining records.
  
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- 2011
- Morphosis
  What Have We Learned
  Delsin
  
  Rabih Beaini ended the 2010s as a towering figure in experimental music, but he started the decade with this LP of elegant techno.
  
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- 2011
- Nicolas Jaar
  Space Is Only Noise
  Circus Company
  
  The Chilean-American's exquisite debut album showed the world that he wasn't just a nifty house producer; he was a musical alchemist.
  
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- 2011
- Grouper
  A I A: Alien Observer
  Yellow Electric
  
  No one balances wrenching grief and heart-in-mouth beauty as spectacularly as Liz Harris.
  
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- 2011
- Oneohtrix Point Never
  Replica
  Software
  
  Daniel Lopatin's fifth album was the first that sounded truly, shockingly new, stretching and tearing apart sounds from '80s-era TV commercials with uncanny results.
  
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- 2011
- Rustie
  Glass Swords
  Warp Records
  
  The Glasgow producer's debut album is where progressive rock meets Saturday morning cartoons meets aquacrunk—a dazzling world of guitar solos, hyperactive beats and pop hooks that has never been equalled.
  
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- 2011
- Surgeon
  Breaking the Frame
  Dynamic Tension
  
  Breaking The Frame melded Surgeon's influences, from drone to dubstep, peaking with the ingenious "Radiance," a kick-less techno track that floods dance floors like a tsunami.
  
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- 2012
- Silent Servant
  Negative Fascination
  Hospital Productions
  
  In the 2010s, '80s post-punk and EBM seeped into blackened techno palettes. LA producer Juan Mendez did it best, crafting dance floor tracks steeped in minimal synth melancholia.
  
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- 2012
- Grimes
  Visions
  Arbutus Records
  
  A DIY synth pop masterpiece where Claire Boucher sings about sexual assault and drug use, among other topics, her fairy-like voice rising above the warm sounds of a half-broken Roland keyboard.
  
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- 2012
- Dean Blunt & Inga Copeland
  Black Is Beautiful
  Hyperdub
  
  The height of Dean Blunt and Inga Copeland's musical partnership was the best Hype Williams album in all but name: 40 minutes of warped grooves, sultry R&B and raucous free jazz, all buried under hiss and decay.
  
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- 2012
- Daphni
  Jiaolong
  Jiaolong
  
  As if one festival-conquering alias wasn't enough, Dan Snaith swapped the blissed-out jams of Caribou for Daphni with these wonderfully quirky bangers.
  
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- 2012
- John Talabot
  ƒin
  Permanent Vacation
  
  Melodic and heartfelt, the first album from a would-be house superstar had us enthralled.
  
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- 2012
- Terrence Dixon
  From the Far Future Vol.2
  Tresor
  
  Terrence Dixon is a singular force in Detroit, and this album for Tresor contained some of his most striking productions, not least the gorgeous "Fountain Of Life."
  
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- 2012
- Laurel Halo
  Quarantine
  Hyperdub
  
  Not quite pop, not quite ambient, this artfully unsettling debut album solidified Laurel Halo as one of the decade's most forward-thinking and important artists.
  
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- 2012
- Raime
  Quarter Turns Over a Living Line
  Blackest Ever Black
  
  A masterclass in negative space and slow-moving dread whose powerful sense of isolation turned it into an unlikely hit.
  
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- 2012
- Lee Gamble
  Diversions 1994-1996
  PAN
  
  A deconstructed club ur-text that built ambient worlds out of breakdowns from golden-era jungle tracks.
  
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- 2013
- Stellar OM Source
  Joy One Mile
  Rvng Intl.
  
  A powerful collection of bombastic drum programming, impassioned singing and curdled 303 leads, that until recently looked like it would never be followed up.
  
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- 2013
- Felix K
  Flowers of Destruction
  Hidden Hawaii LTD
  
  Fusing Basic Channel-school ambiance with ultra-minimal drum & bass, Flowers Of Destruction quietly influenced the next decade of techno-drum & bass mutations.
  
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- 2013
- Kelela
  CUT 4 ME
  Fade to Mind
  
  A star-making mixtape of smoky downtempo and club-ready R&B that showed off Kelela's many strengths.
  
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- 2013
- Jon Hopkins
  Immunity
  Domino
  
  Nine months in the making, Jon Hopkins poured his heart and soul into this stunning album—and it shows.
  
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- 2013
- Kyle Hall
  The Boat Party
  Wild Oats
  
  Lo-fi house? Fourth wave Detroit? Nah, it's just KMFH. On The Boat Party, Hall shrugged off the pressure of his hometown's legacy, zeroing in on a soulful, percussive sound all his own.
  
  Listen: Apple Music / Spotify

- 2013
- Special Request
  Soul Music
  Houndstooth
  
  A major force in bringing jungle and hardcore crashing back into vogue, Paul Woolford's first album as Special Request is wall-to-wall belters.
  
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- 2013
- Donato Dozzy
  Plays Bee Mask
  Spectrum Spools
  
  From the moment that opening melody glitters through the rain to the final, soaring notes of "Vaporwave 7," Donato Dozzy's reinterpretations of Bee Mask's 2012 track (itself an overlooked ambient classic) is pure transcendence through and through.
  
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- 2014
- Moodymann
  Moodymann
  KDJ
  
  On which the elusive legend fully inhabited the frontman position and invited us into his psyche and his city while delivering some of his best songs to date.
  
  Listen: Apple Music / Spotify

- 2014
- Fatima
  Yellow Memories
  Eglo
  
  A triumphant debut for an extraordinary singer and a modern-day demonstration of the power of "scenius"—Fatima, the Eglo family (Floating Points, Alexander Nut) and heavy hitters like Theo Parrish and Knxwledge came together to make an album that will stand the test of time.
  
  Listen: Apple Music / Spotify

- 2014
- HTRK
  Psychic 9-5 Club
  Ghostly International
  
  Smoky and sensual, Psychic 9-5 Club marked a bold new chapter for the Australian duo following the death of founding member Sean Stewart.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2014
- Fatima Al Qadiri
  Asiatisch
  Hyperdub
  
  The Kuwaiti multimedia artist took one of UK dance music's most peculiar sub-subgenres—"sinogrime"—and made a concept album about cultural appropriation, counterfeit goods and Orientalism that still bangs.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2014
- The Bug
  Angels & Devils
  Ninja Tune
  
  Alternately steamrolling and caressing the listener, Kevin Martin's fourth album as The Bug managed to balance militant grime-dancehall detonators with moments of existential resignation.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2014
- Mica Levi
  Under the Skin OST
  Rough Trade
  
  As Kelly Lee Owens pointed out to us, the fact a mere 1-2 percent of film soundtracks come from female composers is grimly lopsided—so when Mica Levi's dark and disquieting score for alien flick Under The Skin began hoovering up industry awards, it felt like a step in the right direction.
  
  Listen: Apple Music / Spotify

- 2014
- Gesloten Cirkel
  Submit X
  Murder Capital
  
  Before electro was massive again, a little-known Russian artist quietly released the genre's defining LP of the decade.
  
  Listen: Bandcamp / Spotify

- 2015
- user18081971 (Aphex Twin)
  Soundcloud Uploads
  
  In true RDJ form, even flying a branded blimp over London to tease comeback album Syro couldn't match the thrill of when 17 hours and 27 minutes of vintage Aphex began trickling onto an unmarked Soundcloud account one morning in January 2015.
  
  Listen: YouTube 1 / YouTube 2

- 2015
- Petre Inspirescu
  Vin Ploile
  Mule Musiq
  
  Applying [a:rpia:r]'s logic of graceful restraint to jazz, soundscapes and pastoral clicks 'n cuts across numerous tracks titled "Delir" (the Romanian word for madness), Petre Inspirescu turned in the most strange and satisfying record of his career.
  
  Listen: Apple Music / Spotify

- 2015
- Björk
  Vulnicura
  One Little Indian
  
  Björk staged a triumphant comeback by presenting herself at her most vulnerable and defeated, with harrowing lyrics, career-best vocal performances and stunning orchestral arrangements (and some help from Arca).
  
  Listen: Björk / Spotify

- 2015
- DJ Sotofett
  Drippin' For A Tripp (Tripp-A-Dubb-Mix)
  Honest Jon's Records
  
  The Norwegian iconoclast worked with a host of talented friends (Lauer, Maimouna Haugen and Gilb'r, to name a few) on a debut album as messy, brilliant and genre agnostic as the byzantine Sex Tags catalogue.
  
  Listen: YouTube

- 2015
- Aleksi Perälä
  The Colundi Sequence Level 10
  AP Musik
  
  An introduction to the tuning system that dominated techno in the second half of the decade.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2015
- Lnrdcroy
  Much Less Normal
  Firecracker Recordings
  
  First a cassette, then a sought-after vinyl release, these low-key house tracks from the Canadian coast wonderfully channeled the overcast, maritime setting that inspired them.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2015
- Domenique Dumont
  Comme Ça
  Antinote
  
  The Balearic duo's debut album was so ebullient, playful and faintly trippy, it could double up as an alternate soundtrack for Animal Crossing.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2015
- Helena Hauff
  Discreet Desires
  Werkdiscs
  
  No one did more for electro this decade than Helena Hauff, and as a producer this was her crowning achievement.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2015
- Nmesh / Telepath
  ロストエデンへのパス (The Path To Lost Eden)
  Dream Catalogue
  
  This split album was the apotheosis of sample-based vaporwave, where slowed-down loops of Muzak, clips from Apocalypse Now and tender instrumentation combined for a work of staggering beauty that crowned Dream Catalogue as the genre's most important label.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2015
- Julia Holter
  Have You In My Wilderness
  Domino
  
  Julia Holter is one of the most critical avant-garde composers and artists of her generation, and while her other albums exist in the mistier realm of pop experimentalism, this one is a special, bright moment in her catalogue—a crisp burst of light filled with life and longing.
  
  Listen: Bandcamp / Apple Music / Spotify

- 2015
- Elysia Crampton
  American Drift
  Blueberry Records
  
  An otherworldly sample collage that interrogates the history of Virginia, Andean traditional music and self-identity, American Drift positioned Elysia Crampton as one of the USA's most visionary new electronic artists in just four songs.
  
  Listen: Spotify / Soundcloud

- 2016
- Marie Davidson
  Adieux Au Dancefloor
  Cititrax
  
  Davidson's music builds tension with a bracing mix of cold wave, jacking drums and experimental soundscapes, but what sets these anxious anthems apart is her commanding, antagonistic vocals.
  
  Listen: Apple Music / Spotify

- 2016
- Equiknoxx
  Bird Sound Power
  DDS
  
  Jamaican group Equiknoxx emerged fully formed on their out-of-nowhere 2016 debut, making dancehall sound bright, psychedelic and quirky with their dayglo aesthetic and impish sense of humour.
  
  Listen: Apple Music / Soundcloud

- 2016
- Convextion
  2845
  a.r.t.less
  
  For his first album in a decade, Dallas's respected electronic veteran Gerard Hanson turned away from darkness to dish out squelchy, spacey and surprisingly funky machine music of the highest calibre.
  
  Listen: Bandcamp / Soundcloud

- 2016
- Huerco S.
  For Those Of You Who Have Never (And Also Those Who Have)
  Proibito
  
  A sublime exercise in texture and melody that marked Huerco S, best known at the time for his leftfield house productions, as an essential ambient artist.
  
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- 2016
- Yves Tumor
  Serpent Music
  PAN
  
  Serpent Music laid the blueprint for one of the strangest pop personalities of the last few years, though here the pop vocals and indie rock melodies were still buried under layers of samples and subaquatic funk.
  
  Listen: Soundcloud / YouTube

- 2016
- Various
  Chromophore
  Slow Life
  
  The sixth release on the label that helped make deep house cool again was a slick introduction to its spacey, late-hour sound.
  
  Listen: Soundcloud

- 2016
- Kaytranada
  99.9%
  XL Recordings
  
  Following Kaytranada's shot to fame with his viral remix of Janet Jackson's "If," this mature debut brought vintage funk, disco and house into a contemporary context, and also established the Canada artist's authority as a producer.
  
  Listen: Apple Music / Spotify / Soundcloud

- 2016
- SW.
  Untitled
  Sued Records
  
  Dazzling rhythms in moonlit atmospheres touched with streaks of melancholy, this beautiful LP revealed new depths to the sound of Germany's excellent SUED label and its mysterious cofounder, SW.
  
  Listen: YouTube

- 2016
- Beatrice Dillon & Rupert Clervaux
  Two Changes
  Paralaxe Editions
  
  Loop-finding experimental music that sits in a rarified middle-ground between Miles' wide-open '70s period and the bleeding-edge electroacoustic experiments of Moritz von Oswald, Villalobos, Brinkmann et al.
  
  Listen: Bandcamp / Soundcloud

- 2016
- Kaitlyn Aurelia Smith
  EARS
  Western Vinyl
  
  Kaitlyn Aurelia Smith is a force with the Buchla, though her music feels free of any weight while she "combines modular texture, deft orchestration and alien vocals into one tidy package," as Matt McDermott previously described her breakout album—"an impressive feat by any standard."
  
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- 2017
- Various
  Mono No Aware
  PAN
  
  This impeccabe ambient compilation did more than showcase a softer side to artists known for their hard-hitting club music: it invited us to imagine a different state of being, opening the door to a magical inner world.
  
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- 2017
- Nidia
  Nídia é Má, Nídia é Fudida
  Príncipe
  
  Nídia's debut album captured the always-in-flux, multi-faceted Lisbon sound at its most bracing yet emotional, with paeans to her neighbourhood and old friends that sound like tarraxo love songs.
  
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- 2017
- Karen Gwyer
  Rembo
  Don’t Be Afraid
  
  The cheeky call-and-response track titles on Karen Gwyer's best album are almost as entertaining as the canny techno fusions within, brewing something unique from familiar ingredients like vintage Detroit, EBM and outsider house.
  
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- 2017
- Errorsmith
  Superlative Fatigue
  PAN
  
  Precision-tooled to be as mathematically bonkers as possible without inducing migraines, Errorsmith threw romping rhythms, springy SFX and helium'd vocals into a particle collider and walked away with solid gold.
  
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- 2017
- Caterina Barbieri
  Patterns Of Consciousness
  Imporant Records
  
  Caterina Barbieri's second album captivated listeners with her compositional mastery, rich analog textures and mathematical melodies, which transformed minimal arrangements into dazzling holographic shapes.
  
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- 2017
- Varg
  Nordic Flora Series Pt. 3: Gore-Tex City
  Northern Electronics
  
  Gore-Tex City caught Varg smack in the middle of the crossroads that made him a techno star—dead serious dance music one minute, and slam poetry about Red Bull the next—with gorgeous production that belied the always-on-the-go, lonely travel lifestyle that inspired it.
  
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- 2017
- DJ Python
  Dulce Compañia
  Incienso
  
  You may think "deep reggaeton" sounds like a joke, until suddenly you realize you've listened to this album 15 times. Music for staring, dancing, loving, living.
  
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- 2017
- Octo Octa
  Where Are We Going?
  HNYTRX
  
  On Where Are We Going?, Maya Bouldry-Morrison revealed her new, true self to the world: full of love, soaring melodies and beats made to trigger tears of joy on the dance floor.
  
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- 2017
- Pan Daijing
  Lack 惊蛰
   PAN
  
  Unsettling, intimate and utterly captivating, Lack 惊蛰 cemented Pan Daijing's place as one of this decade's most fearless and distinctive avant-garde artists.
  
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- 2017
- Various
  Sounds Of Sisso
  Nyege Nyege Tapes
  
  This roundup of furious interlocking rhythms and slick MCs from the neighborhoods of Dar Es Salaam put singeli on the map.
  
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- 2018
- Deena Abdelwahed
  Khonnar
  InFine Music
  
  Deena Abdelwahed sang in protest of societal control, the migrant crisis and other pressing social justice issues in this 2018 album, taking elements of Tunisian music and experimental club to compose an otherworldly whole that was compellingly reflective of the year's political climate.
  
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- 2018
- Tirzah
  Devotion
  Domino
  
  Inspired pop songs with lo-fi production make for a low-key album overflowing with ideas, from intimate gospel-tinged tracks to seductive R&B.
  
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- 2018
- Autechre
  NTS Sessions 1-4
  Warp Records
  
  Simultaneously the longest, most accessible and most advanced Autechre record of all.
  
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- 2018
- Various
  Kulør 001
  Kulør
  
  A flag in the ground for a riveting new strand of fast trance-techno, Courtesy's label gave the world a collated look at what IBON, Sugar, Schacke and more were pumping out in Copenhagen.
  
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- 2019
- Nkisi
  7 Directions
  UIQ
  
  Informed by her research of psychoacoustics, Nkisi merged Afro-diasporic rhythms and gabber-like drums, producing a futuristic club style that reached far beyond genre constraints.
  
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- 2019
- Anthony Naples
  Fog FM
  ANS
  
  Anthony Naples' consistent strike rate makes picking the best of his work tricky—but on Fog FM, the robust house, grainy techno and lysergic swirl of ambient he has dabbled in across various records fused together wonderfully on a single package.
  
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- 2019
- Holly Herndon
  Proto
  4AD
  
  Herndon's best album created a lot of buzz thanks to the "AI baby" she raised as part of its production, but Proto's biggest triumph is creating an affecting album out of technical and academic processes and ideas.
  
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- 2019
- Klein
  Lifetime
  ijn inc.
  
  Klein's knack for storytelling gleams in her debut album, a shadowy soundscape drawing from 18th-century tonalities, Spencer Williams film snippets and elegant sampling to convey the turmoils of her religious upbringing.
  
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- 2019
- Barker
  Utility
  Ostgut Ton
  
  A spellbinding record with a singular vision: kick drums are so passé.
  
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- 2019
- Moor Mother
  Analog Fluids Of Sonic Black Holes
  Don Giovanni
  
  Moor Mother expanded her theory of Black Quantum Futurism with charged spoken word, negro spiritual samples and buzzing synths, offering poignant stories of black resilience that transcended space and time.
  
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- 2019
- Karenn
  Grapefruit Regret
  Voam
  
  Dance music embraced modular synthesis this decade, but no techno artists did it better than Karenn, who captured their era-defining sound on this explosive album.
  
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- 2019
- 33EMYBW
  Arthropods
  SVBKVLT
  
  Inspired by the "mechanical beauty" of Arthropods, 33EMYBW spools odd rhythms, warped vocals and obliterating bass squalls into weirdo club beats that felt as fresh as anything that came out in the 2010s.
  
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- Listen to highlights from the definitive albums of the 2010s on Spotify, Apple Music and Buy Music Club.
  
  Stay tuned for more lists rounding up the best tracks, mixes and reissues of the 2010s. We'll also be publishing a series of features that unpack some of the seismic shifts in dance music's sounds, scenes and politics over the past ten years.