私たちは6月初めに、RAが社内外での人種的平等の推進のために実施するいくつかのアクションを発表しました。今回は、編集部における改善計画について具体的にお伝えします。

ダンスミュージックとは、ディスコ、ハウス、テクノ、ジャングル、ドラム&ベース、ダブステップなど、クラブでDJがかける全てのものに私たちが使用する不完全な総称であり、元々はブラックミュージックです。しかしある時期から、それは自明のことではなくなりました。現在では多くの人たちが、これらのサウンドが持つブラックのルーツを知って驚きます。この観点のギャップに、RAや他の媒体は責任を負っています。

ここでの私たちの目標は、大義名分に口先だけで賛同することではなく、媒体としての焦点を根本的に変え、ミッションを考え直すことです。私たちのリーチとリソースを活用した黒人のアーティストとライターのエンパワーメントに尽力し、もっと一般的に言うと、私たちのシーンにおける社会的平等を推進するためにできること全てを実行します。そして、このカルチャーのホワイトウォッシングに加担するのではなく、正すのに役立てればと願っています。

改善点のほとんどは、どのストーリーを伝えるか、そして誰がそれを伝えるか？という2つの疑問に関係します。黒人アーティストを紹介するのにもっとたくさんの時間を使い、そして黒人ライターとエディターに私たちの取材範囲をガイドしてもらう必要があることを私たちは承知しています。最初の目標を達成するために、ハウスやテクノなど既に私たちの編集コンテンツの中心となっているサウンドに加え、フットワーク、グライム、その他今後登場してくるであろう新たなサウンドに至るまで、黒人がリードするジャンルをしっかりと取り上げるよう、ライターたちを後押しします。

私たち自身もまた、そうしたサウンドを発掘するために、よりしっかりとリサーチしていきます。他の業界がそうであるように、ダンスミュージックは、私たちに音楽を送るプロモ会社から、世界中のラインナップを形作るブッキングエージェンシーとクラブ、フェスティバルのネットワークに至るまで、特権階級にいてコネのあるアーティストを優遇することがあまりにも多い構造になっています。私たちのライターには、過小評価されている、真にインディペンデントなレコードやアーティスト、そして（パンデミックが収束し安全に開催できるようになった時には）イベントを見つけるために、そうした構造を超えたところに常に目を向けるよう働きかけます。

今後は、これまで見落としてきた、あるいは白人の視点から取り上げてきたブラックダンスミュージックの歴史を、より深く掘り下げていきます。現在英語版サイトで進めているTurtle BuggことTajh Morrisによる特集シリーズでは、まさにそれを目標としており、その第1弾が5月に公開されました。また、これらのジャンルの歴史を、それが生まれたコミュニティの視点から読み解く、新作と掲載済みの特集記事をアーカイヴ化するシリーズをローンチします。英語版サイトで毎週掲載している、ダンスミュージックのアーカイヴからの作品に光を当てるRewindレビューでは、ブラックコミュニティから生まれた重要なエレクトロニックミュージックに更に重点を置いていきます。

それと同時に、シニアエディターから管理職、スタッフライター、そしてフリーランスに至るまで、スタッフの欠員がでた時には、私たちのチームを多様化させる機会として活かします。RA英語版での執筆に興味のある方は、こちらのガイドで応募方法をご確認下さい。（日本語版での募集は現時点では行っておりませんので、予めご了承ください。）

確かに、どんな形であれ、今はチームを大きくするには難しい時期ではあります。新型コロナウイルスは、当面の間、私たちの主な収入源に甚大な影響を与えています。RAの多くの従業員は一時解雇、あるいは時短勤務の状態にあり、エディターやその他の上級社員も対象となっています。また、3月からはフリーランサーとの契約を一時的に停止しています。しかしこの数週間で、私たちは黒人ライターのためだけの予算を編成しました。近い将来、この予算を増やすことができればと思っています。

新しいライターを迎えるほか、RAでの執筆に興味のある初心者を対象とした公開ライティングワークショップやプライベートレッスンなど、スタッフによるメンターシッププログラムを実施予定です。

またこの機会に、私たちのソーシャルメディア・プラットフォーム上での人種差別に対する私たちの方針を、改めて皆さんにお伝えしたいと思います。人種、ジェンダー、宗教、階級、セクシュアリティ、国籍、外見などに基づく、いかなる差別も私たちは容認しません。これらの価値観に反する投稿が発覚したユーザーは、コメントを削除し、アクセスを禁止します。

私たちにはやるべきことがたくさんあると気が付きました。RAは設立以来ずっと、白人のレンズを通して音楽を見てきた、白人中心の組織でした。これは私たちのオーディエンスとコミュニティに対する仇であり、私たちのアウトプットを明らかに損なってきました。サイト上での視点を狭め、2019年に掲載したGottwoodフェスティバルのレビュー中の人種差別的な一文のような酷い過ちを犯すこともありました。私たちの至らない点が、私たちのコミュニティ、そして私たちのスタッフの両方の中で、痛みやフラストレーションを引き起こしてきたことは重々承知しています。これまでの失敗について深く反省し、そこから学び、媒体として軌道修正していくために最善を尽くしていく所存です。同僚から評論家の皆さんに至るまで、長年にわたり私たちが責任を全うするために時間とエネエルギーを割いていただいた方たちには、心から感謝しています。

2人の白人男性として、自分たちの特権によってこのウェブサイトの発行人欄のトップに辿り着き、その特権が自分の視点と意思決定を形成してきたのだということを、私たちは認識しています。私生活の中で、そしてエディターとして、私たちの意思は一歩下がり、自分たちよりも力や特権のない人たちをサポートすることにあります。それが、ここにまとめたこと全ての基本理念です。

私たちがコミットする編集面での改善点を、以下にまとめました。日本語版サイトでは翻訳掲載のない記事もありますので、予めご了承ください。

• 7月と8月中に、黒人ライターによるレビューと特集記事を最低6本掲載
• 2020年に英語版サイトで掲載する特集記事の30%以上はBIPOCのライターによる執筆とする
• 2020年に公開するRA Podcastの50%以上はBIPOCのアーティストによるものとする
• 2020年内の残りのRewindレビューの70%以上は、ブラックエレクトロニックミュージックの作品にフォーカスする
• 黒人中心のジャンルを、より深く、より頻繁に取り上げる
• エレクトロニックミュージックにおいて過小評価されてきた歴史を伝える特集シリーズをスタート
• エレクトロニックミュージックの重要ジャンルのルーツに迫る、大規模な歴史シリーズの実施
• スタイルガイドの変更。まずは、人種、民族、文化的な背景によって“Black”を使用する際はBを大文字で表記し、ライターはアーティストの国籍あるいは民族性を過度に強調しないこととする
• 8月末までにRA編集部のインテグリティガイドラインを公開

また、今後数ヶ月間でプランを具体化することを目指し、より一般的なコミットメントを以下の通り実施します。

• RAでより多くの黒人アーティスト、レーベル、プロモーターを取り上げる
• フリーランサーと社員両方で、より多くの黒人ライターをRAに迎える
• 編集部の上級職に、より多くの黒人を配置する

私たちの取り組みは、これが全てではありません。私たちはもっと努力します。他の多くのダンスミュージック団体と同様、RAは、ブラックカルチャーとアーティストに受けた恩を返すことは永遠にできないでしょう。しかし今後どんな行動を起こす時も、その恩は常に私たちの心の中にあるでしょう。これらのアクションは、永続的で継続的なプロセスの始まりに過ぎません。フィードバックを頂ける方は、community@residentadvisor.net までご連絡ください。