Robert Johnsonはヨーロッパで最も愛されているナイトクラブの1つだ。21年前にオープンし、予定通りに行けば、この店はもっとずっと長く続いていくだろう。だが、今はその予定を立てることが難しい。再開までのタイムラインは日々変化し続け、同クラブが来年の春、秋、あるいはそれ以降に営業再開できるかどうかは誰にも分からない。Robert Johnsonは今、難局に耐えているのだ。

オーナーたちは、きちんと再開できるようになるまでは営業再開するのを拒んでいる。つまり、ガーデンパーティーも、ソーシャルディスタンシングを保ったレイヴも、ダンス場所を指定するサークルもないということだ。共同オーナーであるAta Maciasの言葉を借りれば、「そんなのRobert Johnsonじゃない。」オーナーたちは自分たちの信条を曲げることを拒み、その姿勢こそがこの小さなクラブを素晴らしい存在たらしめているのだ。そして、チームはファンたちの優しさと大家との良好な関係性を頼りに、一歩も譲らない姿勢を取りながらサヴァイブしている。彼らは資金調達セールを実施したほか、間もなくレーベルLive At Robert Johnsonからは過去最大規模のコンピレーションがリリースされる。不透明な未来にも関わらず、クラブを存続させようとする原動力から、彼らはエネルギーを得ているようだ。

Andrew Ryceは先日、Maciasと、Live At Robert JohnsonのレーベルマネージャーであるFlo Reinkeに、同クラブの2020年の状況を尋ねた。

クラブが休業に入ってからはどのように過ごしていましたか？

Flo: クラブはロックダウンが始まる1週間前に閉めました。家から出ないで、もっと自分たち自身のことを気遣って、レーベルにフォーカスしたり、いくつかリリースの予定を立てたり。最初の数ヶ月間はかなり調子良かったんですけど、夏以降はあまり。21周年の大型コンピレーションの準備を進めています。あとはSEE YOU SOONキャンペーンも始めました。やることはたくさんありましたけどうまくいったと思います、クラブが存続できる可能性が見えてきました。変な時代になりましたよね。

クラブが開いていない時にコンピレーションをまとめるのはどんな感じでしたか？心持ちは違いましたか？

Flo: すごく面白かったですよ、コンピレーションの話を始めたのは1月でしたし。メールをあちこちに送ったんです、クラブに関係する人たちに参加してほしかったので。予想以上の人数が集まりました。そしたらコロナウイルスが全部を変えてしまって、はっきりとしたタイムスケジュールは無くなりました。6月の周年に合わせてリリースしたかったんですけど、10月に延期になって。でもいいんです。クラブに関係の近い人たちの音楽をリリースするっていうのが大事だったので。21周年に合わせて21曲ですよ。それを実現できたっていうことが重要なんです。

このリリースをAndrew Weatherallに捧げた理由は？

Ata: 30年以上友達だったんだよ。Klang ElektronikとPlayhouseから僕たちの関係は始まって、それからずっと一緒に仕事をしてきた。僕にとって彼は世界一のDJ。僕の一番好きなDJで、Robert Johnsonのレジデントだったこともある。彼の死は本当にショックだった。

コンピレーションは僕たちの21年間だけじゃなくて、Weatherallとも関係ある。「また今度」ってことでね。宗教的な意味があるわけじゃないけど、コンピレーションを彼に捧げることがMr. Andrewに敬意を払う唯一の方法だと思った。この捧げるっていうのは、メディアとかそういうことに関してはそんなに重要じゃない。僕たちの問題だから。僕たちは彼を愛している。大きなスクリーンに映す必要はない。それはKompaktがしたことで、僕たちがやりたかったことじゃないから。21年間を、良い形で祝いたかった。

Weatherallには今年の周年への出演をオファーしていたんだ。しかも僕たちの歴史の中のベストストーリーの1つが、彼が以前のアニバーサリーパーティーで最後のDJとしてプレイしていた時の話なんだけど、最後の1曲をかけた時、サブウーファーが燃えちゃってさ。本当に燃えたんだよ。なんてったって3日間鳴らし続けていたからね。それが僕たちの関係性、僕と彼の関係性。だからこの作品は彼に捧げた。このマスターピースのボックスセットは、マスター自身に捧げられたものなんだ。

SEE YOU SOONのキャンペーンについて教えてください。

Flo: 僕たち—Sandra、Patrick、Ata、Pascal、そして僕は、ただ単にお金を集めるんじゃなくて何かお返しをしたいと考えていました。なのでキャンペーンではポスターと21枚のクラブカードを用意しました。そして、クラブと近い関係にあるアーティストたちと一緒に、他の人たちとは違うことをしよう考えました。16人のアーティストによるオリジナル作品が完成して、今その最後となるAnne Imhoffの作品が出たところです。

成功でしたか？

Ata: すごくたくさんの人が盛り上がってくれたよ。喜んで何かを買って、少し上乗せでクラブに募金もしてくれた。お金を作るにはこの方法しかなかった。ただお金をくださいなんて言えないし。ありがたいことに、たくさんの人が次回はあるのか、次はいつなんだって聞いてくれている。たぶん1年で12個のアイテムを作るかもしれない、ドイツのクラブは来年も閉まったままだと思うから。それが大問題だよね。来年で1年経っても、まだこうして休業してなきゃならないなんてさ。

再開の見込みのあるタイムラインは？

Ata: タイムラインなんてないよ。政府は何も教えてくれないし。世界各地で起こっていることは知っているし、薬やワクチンの開発状況も追っているけどね。クラブは最初に閉鎖しなきゃならなくて、最後に再開される場所だってのも分かっている。

Flo: 5月には大丈夫かもしれないとも思っています。早ければ来年の5月か6月、でも10月か11月頃になるかもしれないし、ワクチンによりますね。それ（ワクチンの完成）が完全なクラブ体験を再開することができる唯一の方法ですから。僕たちは、完全なクラブ体験ができるようになってから再開しようと決めたんです。そうじゃないと意味がない。

なぜそのことがそれほど重要なのでしょうか？

Ata: クラブ、ダンスフロア、汗ばんだダンスフロア。それがどんなものかわかるでしょう。友達と一緒に踊る。それが僕たちにとってすごく重要だから。（ドイツ語の訳を尋ねる。）性的な緊張感とかね。

Flo: クラビングの強烈さってことです。

Ata: もしダンスフロアに性的な緊張感がなかったら？お互いにすごく近づいて、汗をかきながら、大音量の音楽や、光と闇の中で。良い夜を過ごすにはそれが重要な要素の1つとなる。良い音楽と、サウンドシステムの強烈さ、踊る人たち。みんながお互いから1メートルずつ離れて立って、しかもマスクをしていたら、良い夜を過ごすことなんてできない。そんなのRobert Johnsonじゃない。

屋外イベントを開催することは考えましたか？

Ata: それも同じ問題。うちはいくつもエントランスがあったり、広い屋外エリアがあるような洒落たクラブじゃない。そして人が多く集まるとそこから選択されていく。僕たちはお客さんを選んだり、お金を持っている人だけを入れるようなことはしたくない。僕たちは1つの国、1つのダンスフロア、1人のダンサーなんだから。700人入るのに250人だけでダンスフロアを作るなんてとても無理だよ。一緒に踊れないダンスフロアなんて、そんなの考えることすら僕にとっては無理だ。

資金調達キャンペーンの実施は別として、1年以上も営業せずどうやってクラブを存続させるのですか？

Ata: 僕たちはラッキーな状況にいてね。ビルのオーナーが…

Flo: ボートクラブなんです。

Ata: 家賃がそんなに高くないんだけど、もっと家賃を下げてもらえないか今交渉している。ボートクラブの人たちは可能だと言ってくれていて、今後1年間はめちゃくちゃ安くしてもらえるようにこれから話すところ。そうしたら1年間閉めても大丈夫。大きな問題を抱えているベルリンとかの他のクラブとは状況が違うんだよ。

政府から十分な支援はありましたか？

Ata: あんまりないね。

Flo: ないですね、そこが一番重要で。あらゆる経済的な問題と解決策から置き去りにされている感覚があります。クラビングにアート、音楽業界、ガストロノミー… ドイツ全体で減収が見られます。消費支出が176億ユーロ減少したとDer Spiegelが昨日報じていました。そこが経済の大部分を占めていると皆分かっているのに、気にする人はあまりいない。十分な支援はありません。

Ata: ドイツだけじゃなく、世界のどこでもそうだけど、エレクトロニックミュージックは政府にとっては未だに“文化”ではない。良いクラブと聞いても“文化”とは考えないんだよ。ドイツにはいろんな種類のクラブがある。ビールやジントニックをメインに売る店もあれば、カルチャーとアート、良いミュージシャンを存続させている、良いプログラムを組む店もある。僕たちはこのことについてたくさん議論してきた。例えば「Berghainはクラブじゃない、文化だ」とかね。Robert Johnsonだって同じだ。ドイツには本当に本気でやっているクラブが10から20件ある。そういう店が真剣に受け止められていないんだ。政府の連中はクラブに行かないし、関わりもしない。だから僕たちが感じていること、やっていることなんて彼らは理解できない。それが一番の問題だよ。

Flo: 小さな劇場やヴェニューなども同じ問題を抱えています。パンデミックが起きてから半年が経ちますが、（支援は）何もありませんでした。どうなるんでしょうね。

ベルリンにはクラビングやカルチャーに関連する組織がたくさんありますが、フランクフルトではどうですか？

Ata: ないんだよ。やろうとした人たちはいたけど、ベルリンのクラブコミッションのようなものは僕たちにはない。ベルリンの一部の人たちはクラブコミッションは良くないと言っているけど、必要だと言う人たちもいる。フランクフルトの市民局で何度かディスカッションをしたけど、誰も何が起きているかよく分かっていなかったよ。今は10件のクラブで4回のパーティーを開催できることが決まった。共同で企画して、大きなセンターの屋外エリアを使うんだけど、レギュレーションがすごいくだらなくてさ。僕はこう思ったよ、「OKありがとう、気にしないで。家にこもって、友達や子供たちとバルコニーでダンスするから。その方が楽しいよ」

Flo: やっても無駄のような感じがしますよね。みんなを落ち着かせるためにやるだけというか。本当の解決にはなりません。長期的に見てもうまくいきませんよ。もうすぐ寒い時期がやってきますし。しかも警察、もしくはその他の当局の目の届くところでパーティー？そんなのもはや、僕たちがクラビングとして理解している文脈でのパーティーじゃありません。

クラビングに対する考えや気持ちは、クラビングができなかった半年間で変わりましたか？

Ata: たまに、「OK、これで終わりだ」と思うことがある。そしてたまに、踊りに行かなきゃと思うこともある。出かけてダンスフロアを爆発させなきゃって。全員がこの疑問について考えているよ、「再開後最初のパーティーではどんなことが起きるんだろう？」と。中には第二次世界大戦後のようになると思っている人もいる、3日間ぶっ通しでパーティーとか。様子を見るよ。だって、週末にDJできないんだよ？ずっとこんな週末が続くなんて狂ってる。この状況がもう半年か1年間続くとしたら、52歳の自分はどうしたらいいか分からないね。たぶん僕はそれで終わりかも。もう家に帰るさ。

Flo: 少し不思議な気分です。僕たちのルーティンと生活が全部変わってしまった。あなたもよく分かるでしょう。金曜と土曜の、僕たちのルーティンは完全に崩壊しました。あちこちで小さいレイヴが起こっていますけど、ちょっとリスキーなので僕は行きません。再開後どうなるか、見ものです。クラブは1年、2年閉まったままかもしれないし… 予想がつかないですね。計算も予測もできないですから。みんなめちゃくちゃクレイジーになるか、何も起こらないかもしれないし。もしかしたらクラブシーンはまた一から始めなければならないかもしれません。でも、今一番大事なのは皆が安全でいることです。それが一番重要。

現在、クラブは閉まっていますが、Robert Johnsonとそのレガシーの中で、あなたたちにとって一番重要なものは何ですか？

Ata: たくさんのスペシャルなパーティーかな。うちに遊びに来る人たちは、どれほどこのクラブと、ここで働いている人たちが好きかっていう話をしてくれる。自分たちがやっていることは正しかったんだ、これからも続けていこうって気持ちにさせてもらえるよ。何度か、仲の良い友人たちだけでダンスしたパーティーがあった。その後は帰って良いアフターパーティーをしてさ。ここは音楽、シチュエーション、ダンスフロア、そして友情を共有する場所なんだよ。

再開する際、クラブ、またはプログラミングに関して何か変更は予定していますか？

Flo: クラブは長い間生きながらえてきました。僕たちには越えてはならない一線があって、それがあるからこそ21年間も続けてこられたんです。今になってシステムを変えるつもりはありませんよ。