- このアルバムではGeorge Evelynが、"気分が良い" 状態であることを示していると言えるだろう。彼の実験的な電子音は、初期Warp時代の音を定義づける一躍を担った後、Nightmares On Waxの中心的メンバーであった彼は80年代後半のハードエッジなビートのエクレクトリック・ミュージックの思潮にうんざりして独自の道を模索していた。そして今日、22年の歳月と無数の煙たい日曜日のセッションを経て、彼は独自の何かを見つけ出したと言える。イビザを拠点にしているプロデューサーの最新のアルバム『Feelin Good』は、フルHDの360度Nightmares On Waxエクスペリエンスのノーカット、ディレクタ―・エディションである。
『Smokers Delight』や『Carboot Soul』のように過去に傑出したベース、ギターやキーボードがあったにもかかわらず、『Feelin Good』はさらなるレベルへと昇華している。それはサンプリングからの脱却で、本物の楽器をミュージシャンが生演奏し、ボトムアップから構築した純粋なオーケストラだ。トランペット、ドラム、ボーカル、バイオリン、フルート、サックス、チェロがこれまでよりも遥かに充実した、より豊かで本格的なサウンドに仕上がっている。もちろん、ダブ、ファンク、ソウルのレコード・カルチャーで揉まれて育っただけに、その経験から全ての曲が、湿気や土臭さを含んだ加工がされている事は何ら不思議ではない。
Evelynの最近のアルバムから見受けられたヒップホップ色から距離を置く事によって、ソングライターとしての彼の才能が遺憾なく発揮されている。アフロ・キューバンをごちゃ混ぜにした"Be, I Do"、新感覚のレゲエ"Now Is The Time"、そして至福のバレアリック・チューン "There 4U"。もっとエネルギッシュなトラックでファンクネスがループする"Tapestry"、さらには、粋なファット・ボトム・ハウスの"Eye (Can't See)" がそれらを物語っている。
しかし、George Evelynはひとつのジャンルに縛られることなく自由に制作しており、それが結果として最もNightmares On Waxを決定付けている。オープニング曲の"So We Are Here"は春の訪れと旅立ちの悲しさを帯びているし、"Master Plan"はあまりにも愛らしさに包まれていて、今すぐソファーに崩れ落ちそうだ。世俗的な影響を長く受け続けたアーティストはコマーシャルなチルアウトに辿り着くパターンが多いが、Nightmares On Waxはそれをも凌駕して楽しんでるようだ。
トラックリスト 01 So Here We Are
02 Be, I Do
03 Master Plan
04 Luna 2 feat. Wolfgang Haffner
05 Now is the Time
06 Give Thx
07 Eye (Can't See)
08 Tapestry
09 There 4u
10 Om Sweet H(Om)e