- いや、べつにこのタイトルは『きかんしゃトーマス』のトックハムハット卿へのトリビュートというわけではない。3つのトラックで構成されるこのEPには、ひとつだけ際立った瞬間がある。タイトルトラックとなる"Fat Controller"ではGlimpseとMartin Dawsonという気心の知れた2人が勢いのある威圧的なグルーヴをじりじりと展開している。下地となっているベース・シンセのモチーフは低いところで蠢きつづけ、バリトンの効いたスピーチ・ヴォイスはぎりぎりのところでフィルター処理されている。
Roman Flügelの繊細なトリートメントを施されたリミックスにおいて、"Fat Controller"は淡くスペーシーで、ディープなアナログ調ハウスに仕上がっている。豪奢なシンセ、絶妙なパーカッション、エコーの効いたリムショットや不安定なウィンドチャイムが組み合わされ、多彩なアイデアが盛り込まれつつも実にシンプルなサウンドを実現している。まさに職人技の見本といったところだ。いっぽう、HypercolourのボスAlex Jonesは（比喩的に）Glimpseと寄り添い、不穏かつ歯切れの良いダーク・ハウス"Faulty Female"を披露している。やはり印象に残るのはRoman Flügelによるリミックスのほうだと言わざるを得ない。