- Anton Zapのクラブ・フォーカスで調和のとれたディープハウスに慣れ親しみつつあったリスナーにとっては、この「Water」はその認識を大きく変える1枚となるだろう。新旧のマテリアルから構成され、EPと呼ぶにはあまりにも長いヴォリュームで届けられたこの作品は、Zapのアンビエントに対する偏向にスポットを当てている。
タイトルトラックは10分にもおよぶ心地よいダウンテンポ・サウンドスケープの旅だ。すっきりとしたベースラインに繊細なパッドと大海原のようなサウンドの断片を敷いたこのトラックは聴き手を素晴らしく引き込ませるイントロダクションとなっている。"Road Trip Song"にはささやかでハウシーなヴァイブがあり、羽毛のように軽い殻の表面下には分厚いグルーヴが垣間見える。"Fade To What"はふたたびビートレスのトラックとなり、柔らかで繊細な地平が広がる。
新曲となる"Funky Man"にはZapの新たな側面が覗く。低いブレイクビーツとエッジの立ったコード、グルーヴィなベースを組み合わせたこの曲はダンスフロアーでの機能性ぎりぎりの部分に位置しており、このEP中で最もZapらしさに溢れた"Captain Storm"への滑らかな移行を用意している。この曲はもともと2008年にJus-EdのUnderground Qualityから発表されたものだが、その中毒性の高いベースラインとクリスプなキックは、彼を際立った存在感を放つディープハウス・プロデューサーへと押し上げる大きな要因となった。コズミックなミニマル性を落とし込んだ意欲作、"Miniature"で幕を閉じるこの作品はこのモスクワ在住プロデューサーのたゆまぬ探究心のクロスセクションを高い調和性と説得力で提示している。
トラックリスト01. Water
02. Road Trip Song
03. Fade To What
04. Funky Man
05. Captain Storm
06. Miles And More
07. Miniature