Claudio PRC - L Synthesis

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  • Claudio PRCによる灰褐色のプロダクションはダブ・テクノを軸に飾り気のないサウンドを展開するPrologueというレーベルにとってまさに理想的な存在と言える。2012年にリリースしたアルバム『Inner State』以来となるPRCのニュー・マテリアル「L Synthesis」には彼と同郷のイタリアンDonato Dozzyと同種の煌めきを帯びたシャーマニズムが落とし込まれており、メロディックな安っぽさの一切ないトランスとも言える。 「L Synthesis」はドローン的なダブ・ツール"Nur"から"Oes"での冷徹な発露に至るまで、じわじわとその密度を増していくかのような作品だ。"Kar"では4/4的な揺らぎがかすかなシンコペーションをにじませているとはいえ、このEP全体でひとつの長いトリップを形成しているかのようだ。PRCはまだ弱冠26歳と若いプロデューサーではあるが、すでにモノトーンな色彩を帯びた荒涼とした世界観を確立している。"Nur"では洞窟のようなリヴァーブの残滓のなかでドローンが加速して厚みを増しているが、他のエレメントが動き出して空間が窮屈になりそうなたびに絶妙なかたちでコントロールしている。"Kar"ではメタリックな鋭角さを削り取り、ベースラインが暴れそうになるのを押さえつけている。この明晰さは実に印象的で、同時に直感的な肉体性も感じられるのだが、その整頓された構成にむしろ居心地の悪さを内包していると言えなくもない。
  • トラックリスト
      A1 Nur A2 Kar B Oes
RA