- スウェーデンの2人組、SHXCXCHCXSHの前作アルバムが「死ぬほどシリアス」(英語サイト)なものだったのなら、現在に至るまでの間に、彼らは少し気軽な印象になっているようだ。彼ら曰く、SHXCXCHCXSHという名前の読み方は簡単ではない。Avianのボス、ShiftedもSHXCXCHCXSHのことを「スウェーデンの2人組」と呼んでいる。幸い、彼らは既に自身の素晴らしさを証明しており、昨年の前作アルバムでは、長尺テクノ・トラック7曲によって、地平の彼方まで行き再び戻ってくるという音旅行が繰り広げられていた。『Linear-S Decoded』では、SHXCXCHCXSHは若干ではあるが饒舌になり、過去の作品よりも逸脱している感があるが、より一層素晴らしくなっている。
『Linear-S Decoded』に収められたトラックの多くは、1つのアイデアをもとに、様々なパラメーターをかすめながら、時には当てもなく漂い、時にはファイヤーストームへと成長していき、そしてもっぱら驚くほど色彩豊かなものを繰り出している。4分を超えるトラックはほとんど無いが、鞭を打ち付けるようなドラムを用いた"Drain This Lord"や、でこぼこの坂を転がり落ちるようなReeseのベースラインを用いた"This Hmming Raverie"など、4分を超えるトラックはかなり印象に残る。
様々な方法で興味を惹きつけられ続けるため、本作からハイライトを選ぶのは難しい。狂人のように旋回する沼テクノ"Helical Dialog"や、タイトルが示しているような夏っぽさとは全くかけ離れた緊張感とドライブ感溢れるトラック"Sunny Day In Ostrogothia"といったトラックがある一方で、方向性を変えて、夢見心地で漂うShedスタイルのトラック"Under Shore"では、リスナーを押しのけようとしているような低域のサウンドが、躍るブレイクビーツと眩いシンセとバランスを取っている。こうした遊び心こそ『Linear-S Decoded』を浮き上がらせているのであり、一見、関連性が無いものを存分に用いてテクノのシリアスな姿勢を切り抜けているのだ。
こうしたことを考慮したとしても、今年のテクノ・アルバムの中で、本作は最も驚異的で妥協無き作品の1つとなるだろう。SHXCXCHCXSHは、昨今のインダストリアル・テクノのゴツゴツとした質感ではなく、90年代エレクトロニカの気の抜けたアレンジによって、本作を少し馴染み易いサウンドにしている。こうしたサウンドがリバーブと呻くサウンドによる真っ暗なトンネルの中をほとばしっていようと、もしくは、嬉しそうに跳ね回っていようと、SHXCXCHCXSHが匿名テクノのファンを獲得していることは間違いない。
トラックリスト01. Entering The S-Cloud
02. Drain This Lord
03. Wading Guise
04. The Roots
05. Elocution
06. Helical Dialog
07. The Under Shore
08. The Repelling Of The Quantitative Invasion
09. A Sunny Day In Ostrogothia
10. Rudimental Retreat
11. This Hmming Raverie
12. Sub Mission - The Atlantic Vision
13. Monolithic Conclusion