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rural 2015
掲載日
Jul 28, 2015
文
Daisuke Ito
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アンダーグラウンドでマニアックなエレクトロニック・ミュージックを主体としたオープンエアーフェス=rural。Labyrinthとも異なる独自の選択眼で選ばれたラインナップで、コアなテクノ/エレクトロニック・ミュージックのファンの間では夏の風物詩になりつつある。そのruralが今年は7月18日(土)~20日(月・祝)に開催された。新潟県・津南マウンテンパークへと開催地を移して2年目となった今年の模様をレポートしていこう。 開催当日までは季節外れの台風の接近もあり、その影響を気にかけながら筆者は土曜日に現地へ向かった。道中はかなり激しい雨に見舞われていたが、現地からの報告だと雨風ともに無事に止んだとのこと。昨年も開催前までは雨に悩まされたが、今年も奇跡的に天候に恵まれることになった。ダンスフロアは前年同様、メインとなるOpen Air Stageと、サブエリアのIndoor Stageという2つ。各ステージのサウンドシステムはIndoor StageはPioneerの新しいPAシステムを採用。Open Air Stageは前年同様にVoid Incubusだが、ステージ前にウーファーが増設されたおかげで、昨年ステージから離れた際に感じた、低域や音量の物足りなさも解消され、音質面は格段と向上したようだ。開催期間中はOpen Air Stageが日中から夜明けまで、Indoor Stageに関してはノンストップ(48時間!)でアーティストがラインナップされているため“いつでも踊れる”のがruralの強みでもある。だが、マウンテンパークの津南の素晴らしいロケーションと広大なキャンプサイトのおかげか、来場者は思い思いの時間を過ごしているような…そんなゆったりとした印象がある。筆者は前年度もそんな感じでruralを楽しませてもらったが、例によって今年も、数多いラインアップの中から、特に印象に残ったアーティストについてレポートしたい。
土曜日のラインナップで最もVoidのスピーカーを震わせたのは間違いなくENAのライブセットだろう。彼はパフォーマンスの度に毎回セットを大幅に改良しながらライブに臨んでいるが、今回はVoidという低域再生力に優れた再生環境を最大限に生かすことに成功したようだ。アブストラクトな音響的サウンドに加えて、地鳴りのような低域をフロアに充満させることで、ENAはその傑出した個性を十二分に表現していた。そして、今回のruralのラインナップで前評判から大きな話題となっていたHypnobeat。James Dean BrownとHelena Hauffが2012年に開始したプロジェクトで、3台のRoland TR-808とTR-707を中心にハードウェアを用いた演奏は実に有機的であった。2人のインプロヴィゼーションが生み出すサウンドは、テクノとアブストラクトなブレイクビーツの中間のようなテイストで、基本的にはリズムマシンの音色をダブワイズするというシンプルな発想だが、そのサウンドの多彩は白眉。改めてハードウェア・ライブの底力を見せつけられるようなパフォーマンスだった。 日曜日のアクトで最も印象的だったのはORPHXのライブセット。1990年代よりトロントで活動するインダストリアル(男女)デュオである彼らにとって、ruralが初来日のパフォーマンスとなった。モジュラーシンセとラップトップ・コンピューターを駆使したハイブリッドなシステムから繰り出すサウンドは純度100%のインダストリアル・テクノという硬質な世界観。もともとフリーキーなインプロを得意とする彼らだが、近年はよりビートにフォーカスしつつも変幻自在な要素を盛り込んでいる。Basic Channelのようなダブ・テクノのようなテイストもありつつも、ノイジーに攻めるパートは徹底して冷酷かつハード。長年インダストリアル・サウンドを貫く彼らならではの説得力に加えて、それらをきちんとダンスセットに落とし込むセンスも素晴らしく、それに加えて真夜中の暗闇に溶け込んでいくような…すべてが完璧なライブだった。
rural 2015の印象としては、世界的なハードウェアライブの回帰現象もあってか、やはりライブ・パフォーマンスの印象が強く残った。ヴィンテージのリズムマシンを駆使したWata Igarashiのライブセットのサウンドも印象的だったように、これらはサウンドシステムが提供する音質の高解像度化にも起因するだろう。やはりPAシステムの高音質化の恩恵を最も受けるのはアナログマシンを主体としたライブであるし、そういった意味でもこの流れは当分続くのかもしれない。だが、そういったライブアクトとはまた別の視点でフロアを彩ったDJ陣の活躍も素晴らしかった。Shawn O'Sullivanのライブセットから、深夜にミニマリスティックな世界観を展開したCio D'Or、Wata IgarashiとORPHXの間で実験的かつ奔放なセットを披露したDJ Nobu、日曜の昼下がりに緩くサイケデリックなダンスセットを提供したJane Fitzも特筆すべきものだった。 そして、もうひとつ印象的だったのは、ラストを締めたFunctionが最後の時間帯に披露したハウス・セット。ruralにしては意外な展開だが、これが最高のフィナーレとなったのは残ったオーディエンスの笑顔を見れば明らかだった。昨年も指摘したが、ruralのオーディエンスはコアな音楽ファンが多く、ハウスだろうがテクノだろうがお構いなしに楽しんでいる印象がある。インダストリアルだったりストイックなサウンドが多いのとは対照的に、フロアの雰囲気はいつもピースフルなのもruralならではだろう。今年の大盛況のフィナーレを受けて、来年もハウス・セットが登場するのか?今からrural 2016のラインナップが楽しみだ。
Photo credit: Alexis Wuillaume
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