- Ólafur ArnaldsとNils Frahmが揃ってErased Tapesに登場するのも当然だ。彼らのスタイルは多くの意味で非常によく似ているからだ。Arnalds自身は卓越した思慮深いコンポーザーであり、アコースティックとエレクトロニックの両世界の間を堂々と行き交っている。一方、独りでピアノに座るもよし、接続し合ったキーボードとエフェクトペダルのセッティングから音楽を引き出すもよしというFrahmsは、モダンクラシックの名手だ。これまでに発表された3枚のEPとスタジオでのライブパフォーマンスを2枚組CDにまとめた『Collaborative Works』は、ArnaldsとFrahmの共同作業がどれだけ自然に感じられるのかをさらに明らかしている。
延べ100分超えの18曲を収めた『Collaborative Works』は、まとまりがあるひとつのアルバムになるように制作されてはいない。別々に発表されたEPを繋ぎ合わせようとする試みは無く、トラックリスト内でEPごとにまとめて並べているだけだ。5曲入りの「Loon」の瑞々しいシンセサイザーと散在するメロディによって『Collaborative Works』はスタートし、その後、ArnaldsとFrahmによる初コラボレーション作品「Stare」からエレクトロアコースティック3作品が登場する。今回のアルバムで最も強力な魅力を放っている曲は「Stare」に収録されている。華麗に拡散する"a1"や、高密度のパッドで膨らませた"a2"では共に、ふたりの鋭いメロディ感覚や、意識を没頭させるサウンドテクスチャーが披露されている。そして、2012年にレコーディングされたものの今年前半までリリースされなかった「Life Story Love And Glory」の自由に流れるピアノ作品2曲によって、既出作品を収めたディスク1の幕が閉じられる。
ディスク2でフィーチャーされているのは、ArnaldsとFrahmがツアーに出る前にベルリンのDurton Studioで一緒に演奏し、即興を行った映像作品『Trance Frendz』の音楽だ。同作品を見れば、ふたりの共同作業の優雅さが容易に見て取れる。ふたりは背中合わせになったまま、別々のピアノやオルガン、そしてシンセサイザーをコントロールし、言葉や身振りでコミュニケーションを取ることはほとんど無いにも関わらず、驚くほど息が合っている。オーバーダビングを行わずにレコーディングした収録曲は広々としていながら、物足りなさや不完全さを感じさせることはない。セッティングが限られていることで、結び付き合ったふたりの才能が際立ち、眠りへと誘う"20:17"や脈打つ"00:26"からは特に親しみが感じられるようになっている。
この3年間で、ArnaldsとFrahmは一緒に多くの音楽領域をカバーしてきた。豊かなアンビエント作品、探求心溢れるコズミッシェ、そして、デュアルピアノ作品が『Collaborative Works』の主な聴きどころだが、ふたりはその間にある領域も探求している。本作がカバーする幅広さを考えれば、失点部分が出てくるのはしょうがない。特に"Wide Open"や"W"におけるリズムの躍動は周囲から浮いてしまっている。そしてふたりのピアノ演奏が同時にぼやけてしまっているときもある。とはいえ、このような才能あるコンポーザーによるコラボレーション作品すべてをひとつにまとめたリリースについて、不満を挙げるのは難しい。
トラックリストCD 1:
01. Four
02. Three
03. Wide Open
04. w
05. m
06. a1
07. a2
08. b1
09. Life Story
10. Love And Glory
CD 2:
01. 20:17
02. 21:05
03. 23:17
04. 23:52
05. 00:26
06. 01:41
07. 03:06
08. Untitled