- 数少ない情報から判断するに、どうやらNY*AKは控えめなプロデューサーのようだ。彼のSouldCloudのプロフィール欄には"thanks for listening!"とシンプルな文章が掲載されている。Bandcampにアップされている彼のEP「The Truth Will Find You」の「親友のNY*AKことAndrew Scottがデトロイトハウス、ディスコ、ソウルへの愛を祝福する」という説明文にも同じく控えめな雰囲気が漂っている。なるほど確かにScottのディープハウスに息吹を与えているのは、愛と真実を呼び込むソウルフルなボーカルサンプルとクラシックなサウンドだ。通常、彼の音楽はニッチなハウスレーベルからリリースされているが、今回の「Dollar」はNinja Tune傘下のTenhnicolourよりお目見えとなった。
「Dollar」ではエッジの効いたサウンドは使われておらず、Theo Parrrishのような卓越ぶりで整然と色付けが行われている。作品を満たすのは柔らかくきらめくシンセパッド、ジャジーなハイハット、そして、超ワイドなドラムサウンドだ。"Xager"と"Goodbye"はみずみずしいトラックだ。この2曲では微かにボーカルが聞こえる程度だが、残り2曲ではそれが個性になっている。カシミアのようになめらかなファンキーグルーヴに乗る"Shadow"は中盤、女性ボーカルのハーモニーが入ってくると、さらに柔らかな印象になる。"Dollar"のテクスチャーはロウでありながら気品があり、終盤近くの高らかなシンセメロディと共にトラックは一気に加速していく。本作にソウルをもたらしているのはこのようなディテールだ。とはいえ、あらゆるハウスミュージックを対象に考えても、このようなアレンジは決して斬新なものではない。
トラックリストA1 Xager feat. Ian Blevins
A2 Shadow feat. Mark Hand & Misumami
B1 Dollar
B2 Goodbye